リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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Another6 選ばれし子供
前書き
選ばれし子供として。
おもちゃの町を離れた子供達は、川沿いをゆっくり歩いていた。
大輔「ああ、昨日は滅茶苦茶大変だった。」
ブイモン[いやあ、久々に手応えのある1日だった。]
ロップモン[そりゃあ、あれだけ大暴れすればそうだろうね……]
げんなりしたロップモンの表情と声に全員が同情した。
ブイモン[腹減ったなあ]
大輔「朝飯あんなに食っただろうがあ!!!!」
空腹を訴えるブイモンの脳天に鉄拳が炸裂した。
アインス「まあまあ、大輔。丁度いい頃合いだ。そろそろ昼食にしようか」
大輔「悪いなアインス。」
アインス「気にしなくていい。そろそろみんなもバテてきたところだろうしな」
ブイモン[よーし、飯だ飯だ!!どおりゃああああ!!!!]
やたらでかい雑草を掴んで思いっ切り引っ張ると米が出て来た。
ヤマト「米!!?」
丈「ひ、非常識だ!!」
普通なら有り得ない現象にヤマト達は仰天、丈に至っては現実を受け入れられないでいる。
ロップモン[アインス、お味噌と豚肉とネギ、後ジャガイモ、こんにゃくがあったよ]
大輔「お?でかしたぞロップモン。今日は豚汁だな。ブイモン、魚頼んだぞ」
ブイモン[任せろ!!!!]
川に飛び込むブイモン。
大輔「このままじゃ足りないな。みんな、食材集めてくれませんか?」
太一「あ、ああ、この草引っこ抜けばいいのか?」
大輔「はい、空さん。タケノコがあったので今日はタケノコご飯にしますから、米頼みます。ミミさんは、木の実集め。」
ミミ「はーい」
大輔「ヤマトさんは俺と一緒に食材探ししません?人手が欲しいんです」
ヤマト「ああ、分かった。その、大輔。タケルも連れて行ってもいいか?」
大輔「タケル?…別に構いませんけど」
ヤマト「そうか…」
心なしかヤマトが安堵したように見える。
そんなにタケルが心配なのかと大輔は疑問符を浮かべそうになったが、ヤマトにとってタケルは普段一緒にいられない大事な弟だ。
自分もかつては弟のような息子といたことがあるからヤマトのタケルに対する気持ちは多少は分かる。
大輔「お互い目が離せないのがいて大変ですね」
ヤマト「は?」
ミミ「キャアアアアアアアアアア!!?」
ブイモン[大輔ーっ!!でかいの穫れた!!]
光子郎「それ…川魚なんですか…!!?」
川から上がったブイモンが持ち上げているのは馬鹿でかい巨大魚。
大輔「いきなりでかい奴を穫る奴があるか!!しかも1匹じゃ足りねえよ!!もう1匹穫ってこい!!」
ブイモン[はーい、ミミ~、光子郎~。こいつ焼いてくれ]
光子郎「ええ!!?」
ミミ「イヤアアア!!無理無理無理無理!!」
ブイモンの滅茶苦茶な頼みに光子郎は顔を引きつらせ、ミミに至っては涙目だ。
ロップモン[あ、私が焼いとくからブイモンはもう1匹お願い]
ブイモン[おう]
再び川に飛び込むブイモン。
空「あれ…どうやって焼くのかしら…?」
もし出されたら自分は断ることが出来るだろうか?
未知の食材に戦慄を覚える。
大輔「でけえ草。もしかしたら大物かも」
ヤマト「本当にここは何でもアリだな」
大輔「こりゃ人間には無理かも、ガブモン、進化してくれ」
ガブモン[ええ!!?俺がやるの?]
大輔「ん?文句あんのか?そうかー、ガブモンは俺達に自分の分を譲ってくれんのか!!サンキュー」
ガブモン[やらせていただきます!!]
ヤマト「…扱いが上手いな」
デジモンは基本的に個人差はあるが大食らいである。
だから食い物を使われるととことん弱い。
ガブモンがガルルモンに進化して穴を掘り始める。
すると掘った穴からステーキ肉やら野菜やら何やらが出て来る。
タケル「お、重い…!!」
野菜を沢山入れた袋を持つのに踏ん張っているタケルにヤマトが助け舟を出す。
ヤマト「持ってやるよ」
タケルから袋を受け取り、ガルルモンの背に。
タケル「あ、ありがとうお兄ちゃん」
大輔達は大量の食材を持ってキャンプに。
アインス「さあ、みんな。食べてくれ」
全員【いただきまーす!!】
太一「久しぶりの米だ!!」
光子郎「味噌汁も久しぶりですね。」
メニューはタケノコご飯に、豚汁、巨大魚の丸焼きなど。
巨大魚を除けば、元の世界で慣れ親しんだ味にじんと来る。
大輔「あれ?丈さんは?」
太一「あっち」
大輔「ん?」
大輔が太一が指差した方を見遣ると三角座り状態で頭を抱えていた。
大輔「何やってんですか?あれは?」
ゴマモン[んー?何でも“草から食材なんて出るわけない”とかブツブツ言ってるんだよ]
大輔「はあ?」
今更何を言っているのだ。
この世界には現実世界の常識なんぞないに等しい。
それに今までだって非常識なことなど腐るほどあったではないか。
大輔「仕方ないな」
どうせなら温かいうちに食べてもらいたいと丈の元に向かう大輔。
大輔「丈さん飯ですよ飯ー。」
丈は聞こえていないのかブツブツ言っている。
イラ☆
大輔「丈さーん」
丈「僕は…常識人なんだ…、慣れてたまるか…」
ブチ☆
大輔「…飯だって言ってんだろ!!!!」
首根っこを掴んで強引に連れてくる。
唖然としている太一達に苦笑しながら、アインスは丈の分を盛って渡す。
大輔「丈さん、非常識非常識って言ってますけど、今までここでその常識が丈さんを救ってくれましたか?寧ろ丈さんが目を逸らしている非常識が救ってくれたじゃないですか」
アインス「城戸、非常識を受け入れたくない気持ちは分かるが、それに振り回されすぎるのもよくない。さあ、食べろ。お腹が空いてるから思考も暗くなるんだ」
アインスに渡された器を受け取り、食べ始める。
ブイモン[少し食休み入れたら出発な]
全員【うん】
大輔「ふう…」
タケル「大輔君」
大輔「ん?」
後ろを見遣るとアインスと共に来ていたタケル。
アインス「今日はあまりらしくなかったな。やはり少し疲れているのではないか?」
大輔「いや…別にそんなんじゃ……」
アインス「変にプライドが高い所は伊藤一輝に似たな」
大輔の兄貴分で、今は助けた家族と共に暮らしている一輝。
大輔「……」
タケル「ねえ」
大輔「ん?何だタケル?」
タケル「返事聞かせて貰ってないなって…友達になろうって…」
大輔「え?ああ、あの時か…色々ありすぎたから頭からすっぽ抜けちまったぜ…いいぜ、友達になることにいいも悪いもねえし」
タケル「ありがとう!!僕、大輔君と冒険出来て嬉しいよ!!」
大輔「ああ、そういや、お前も2年生だしな。」
今更だが、今のタケルは小学2年生で今の大輔と同い年だ。
タケル「でも凄いよ大輔君。料理が出来たり、色んなこと出来たり、何か、大人っぽい」
大輔は思わず苦笑した。
これでも、孫までいた立派なお祖父ちゃんでもあったのだ。
大輔「褒め言葉として受け取っとく。タケル、ヤマトさんがいない今のうちに言っておくことがある。」
タケル「え?」
大輔「これから先、何があるか分からない。もしかしたら1人になる時が来るかもしれない…いつまでも誰かが…自分の傍に誰かがいてくれると思わない方がいい。誰もいないその時に頼れるのは自分だけだ…行くぞ」
タケル「え?アインスさん。どういうこと?」
アインス「…ようするに、もしもいつか高石が1人で行動する時が来た場合、今のままではいけないということだな。最低限、自分に出来ることを出来るようにしなければな」
タケル「………」
アインス「さあ、出発しよう」
タケル「…うん」
アインスについていくタケル。
タケルの頭の中には大輔の言葉がグルグルグルグルと渦巻いていた。
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