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地球の断章~深き海より暁を喰らうモノ~

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プロローグ

 
前書き
初めまして、ラーテル19と言います。
暁での投稿は初めてとなります。

読者のみなさん、どうぞお手柔らかにお願いします。 

 
古代より、人は自身の理解が及ばぬモノを様々な形に当て嵌めてきた。
マグマを吹き出し噴火する火山を「火の神」と。天空の黒雲に走る稲妻を「雷神」と。
豊かな恵みを与える大河を「水の女神」と。理不尽な死を齎す疫病を「馬に跨り、大地を駆ける死神」と。

 自然という未知に対して、人はそれを「神」と定義しそれを崇めることで怒りを鎮めようとした。
人にとって「神」は畏れるモノだった。

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 西暦1939年から1945年までの6年間、世界は「第二次世界大戦」という名の戦禍に包まれた。
数多くの武器と炎が大地を、海を、空を焼き無数の命が散っていった。世界には戦火の爪痕が残り至るところに兵器の残骸が残った。
戦争の終盤、アメリカは究極の兵器を作り出した。『核兵器』である。
敵対国・日本で、二度爆発したそれは地上に太陽を出現させ、熱と爆風を以て多くの命を吹き飛ばし、毒の雨を降らせた。

やがて、戦争は終わった。
しかし、失われた命は帰ってこなかった。空に散った命も、陸で絶えた命も、戻らなかった。


1946年、夏。未だ世界の傷が癒えない中ビキニ環礁で新たな核兵器『水爆』が炸裂した。

それは、深い海の底にまで響く衝撃だった。
失われた命が、兵器の残骸と共に眠る海の底。空に散った命、陸で絶えた命も、受け入れ、せめて静かに眠る場所とした海にも太陽が現れた。

深い、深い、海の底。
積もり積もった残骸と、無念を抱いて共に沈んだ命。

『眠ることさえ、許されないのか』

沈んだ命は、暗い海の底で嘆き、悲しみ、そして、怒りと憎しみを募らせていった。


――――――――――――――――――――――――


 1954年。日本の大戸島において、人類史上かつてない出来事が起こる。
未知の巨大生物が大戸島近海に出現、多くの船を沈め、大戸島に上陸し、人類にその巨躯を見せつけたのだ。
その巨大生物は、大戸島の故事に倣い、「呉爾羅(ごじら)」と呼ばれた。

謎の生物、ゴジラに関してそれを最初に発見したと日本人の古生物学者・山根恭平は一つの仮説を立てた。
「ゴジラは、度重なる核実験によって姿を変えられ、さらに安住の地を追い出された古代の生物ではないか?」と。

この説は、非常にセンセーショナルではあったが世間の関心を惹くものではなかった。
それは精々、「核」を戦後ビジネスの目玉にしようとした為政者たちにとって少々都合が悪い程度のものだった。

しかし大戸島での邂逅から数か月後、ゴジラが日本の首都・東京を襲ったことで、事態は急変する。
機関銃は勿論、高圧電流も戦車砲も、爆撃機の攻撃も物ともせず、都市を蹂躙し人を焼き殺し、我が物顔で去り後に大量の放射能を残したゴジラに対し、世間はようやくその「恐ろしさ」
に気づく。

「ゴジラは戦争の負の象徴」「核兵器が生み出した怪物」。中には「先の大戦を、10年と経たず忘れようとしている人々に対する警告」と唱える者もいた。

怪獣・ゴジラ。それは現代人にとって、理解の及ばぬ存在だった。


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 現代兵器の通用しないゴジラに対し、ある科学者の発明品が対・ゴジラ兵器として使用されることが決まった。
若き天才科学者・芹沢大助が、自身の研究過程に於いて生み出した副産物『オキシジェンデストロイヤー』。水中の酸素を一瞬にして破壊し、あらゆる生物を跡形もなく消滅させる、原水爆以上の脅威を秘めた兵器。

為政者による悪用を恐れ、その存在をひた隠しにしてきた芹沢だったが先のゴジラによる東京の悲惨な現状を訴えられ、一度だけの使用を決意した。

東京湾に潜むゴジラに対し、オキシジェンデストロイヤーはその威力を発揮した。
東京湾の全生物を半永久的に死の海となること、そして芹沢大助の命と引き換えにゴジラを葬り去った。
死の間際、洋上に浮かぶ船の上の人間に対して怨嗟の籠った断末魔を浴びせて、ゴジラもまた海の底へと沈んでいった。

その後、日本政府はゴジラの正体についての推測及び研究の一切を禁止し、またオキシジェンデストロイヤーの存在を隠匿した。
為政者にとって、軍にとって都合が悪かったからだ。

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 ゴジラの死から3年後の1957年。世界に再び、衝撃が走る。
全世界の海に、未確認生物が現れ航行する船舶を無差別に襲撃するという事態が同時多発的に発生した。
最初に確認されたソレは、まるで魚と魚雷が合体したような異形の姿をしていた。やがて、人の姿をしたものも確認される。
やがて未確認生物は深海から現れ、前大戦で轟沈した戦艦に酷似した兵装を持ち、更に現実の海軍と似た編成を執ることも起因し未確認生命体は「深海棲艦」と呼称されるようになった。
各国は空と海の両方から深海棲艦に対して攻撃を仕掛けた。しかし、深海棲艦は攻撃を物ともせず逆に人類を迎撃していった。
最初の襲撃から2年後(1959年)、人類は深海棲艦に制海権を奪われ更に陸上の一部も制圧されてしまった。
海路を奪われた人類は空路を模索したが、深海棲艦側の艦載機により空路もままならなくなり国家は半強制的な鎖国状態を強いられることとなった。

 この事態にアメリカ、ソ連をはじめとした核保有国は国連に対し、核兵器の使用を要求。事態を重く見た国連は一度だけの使用を許可。
深海棲艦が多数終結していた太平洋上のある島に対して、核兵器を投下した。結果、島にいた多数の深海棲艦を撃破することに成功した。
またこの攻撃に際し、日本政府は独断で撃破された深海棲艦の残骸を回収することにも成功していた。

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 日本政府は回収された深海棲艦の残骸を解析。そこから得た解析結果を元に、人類は前大戦で使用された兵装の一部を特殊な培養液に浸し、そこに無機物に棲息する細胞を投下。
そこから培養を繰り返すことで、対深海棲艦用の人工生命体を生み出した。
何故かそれは、人間の女性の姿をしていたが深海棲艦の情報を元にしたためだと結論付けられた。深海棲艦の人型の個体がなぜ女性の姿をしている理由も不明だったが、ともかく人類は打開策の初期段階に入ることができた

そうして産まれた人工生命体は、体組織や思考回路も人間の女性、特に思春期の少女に酷似していた。
初期に産まれた数体の人工生命体に対して、人類は一定の良識と軍事知識を教育することを決定。しかし、戦艦を元に生まれた人工生命体は本能レベルで戦闘行動を行うことができることが判明したため
教育方針を変更。これは開発側に人工生命体をあくまで一人の人間の少女と見る者が多かったことが起因していた。
この方針転換を日本政府も承認した。それは先の核攻撃の後、深海棲艦側の行動が沈静化していたからだった。人類に僅かながらの猶予が生まれたのだった。

 人工生命体の教育が完了しつつあった頃、人工生命体用の兵装が完成する。彼女たちの元になった戦艦の兵装に酷似した兵装を身に着けた人工生命体は、即時戦闘に参加した。
時に深海棲艦に制海権を奪われて5年もの時間(1964年)が経過しており、満を持した着任となった。
初戦は小規模戦闘ではあったが、人工生命体は深海棲艦を多数撃破、ないし轟沈させることに成功。それは核攻撃以降、人類側初の快挙となった。

その後人工生命体開発の情報は世界の主要国に伝わり、それを元に各国は自国にて新造艦を建造、それらの人工生命体たちは苦戦することがなかったわけではないが目ざましい戦果を挙げていった。
命令に従順、かつ臨機応変に対応、獅子奮迅の活躍を見せる彼女たちはその愛くるしい容姿も手伝って「艦娘(かんむす)」と呼ばれるようになった。

艦娘着任から10年の月日が流れた1974年。人類は深海棲艦側に奪われた陸地の奪還し、分断されていた海路を開いた。それは一重に艦娘たちの活躍に寄るところが大きかった。
艦娘は一兵器の枠を超え、崇められるようにもなった。
それは戦艦の一部から産まれたという未知の出自に対する、多くの人間側の無知を露呈する結果でもあった。

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 それから更に10年が経過した1984年9月。日本の領海・伊豆諸島の南端、大黒島において島の火山が突如、噴火する。
無人の島ではあったが、休火山であったため日本政府は調査隊を派遣することを閣議決定する。
3か月後大黒島に向かう調査隊への深海棲艦側の攻撃を懸念し、調査隊の防衛に戦艦長門、軽巡洋艦酒匂、日本に譲渡された重巡洋艦プリンツ・オイゲンが参加することになった。

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 火山の噴火。地球の息吹とも取れる、その自然現象が起こしたのは島の隆起だけではなかった。
深い、深い、海の底。30年の時が経ち、忘れ去られたものが静かに胎動を始めていた。

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後書き
プロローグはこんな感じです。
設定に関しては二番煎じやオマージュがあるかもしれません。

間を開けないよう、頑張って書いていきますので感想・ご意見お待ちしています。 
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