魔法科高校~黒衣の人間主神~
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九校戦編〈下〉
九校戦八日目(3)×試合後の攻略話とインターバル後の対二高戦
次の試合は一高対二高なのだが、インターバルがたった三十分というのは些か短く感じた。ま、確実に今日対戦するのであればと考えると一条は一高選手が消耗してくれる事に歓迎すべき事だが、その考え方をしていると性根が卑しくなってしまうので思考を頭の片隅に置いた。次のステージはまだ発表されてないが、試合が終わってもスタンドに腰掛けたまま隣席にいる吉祥寺に話し掛けた。
「今の試合、どう思う?」
「将輝が訊きたいのは試合の総括じゃなくて『彼』の事だよね?」
省略した言葉を正確に補足されて、一条は苦笑いを漏らした。
「そうだ。ジョージ、お前なら奴をどう攻める?」
「僕も将輝もだけど、一度名無し選手と戦った事があるなら尚更ではあるね。戦い慣れているし、身のこなし、先読み、ポジション取り・・・・魔法の技能もそうだけど、戦闘技術の両方を警戒した方がいいかもしれないね」
「魔法技能はどうなんだ」
「そうだね・・・・『術式解体』には驚かされたけど・・・・彼が使っているのは半世紀前に開発されようとしていたエレメンツだ。最後は現代や古式でもあり得ないはずなのに、彼は影の中に入り自由気ままに動いて見せた。エレメンツはゲームで言うなら、属性かタイプとも言う所かな。だから警戒すべきは、フィールドかこちらの人数によるものかもね」
「フム・・・・」
「考えてみれば最初の接触時、ディフェンダー二人を何かで戦闘不能にしてから残りのディフェンダーの動きを止めてみせた。一高と戦うだけのルール変更により、モノリスが開いた後に送信後戦闘員を排除する。どれだけ強いのかは分からないけど、障害物がないフィールドなら例えエレメンツでも防ぐ事は可能だと思う」
「ジョージが自身無さげな言い方だと、奴は相当強い相手だと見た方が良さそうだ。正面からの撃ち合いだったとしても、警戒は怠らない方がよさそうだ」
次の試合を待つ一高選手控え室では、幹比古とレオに軽い回復魔法を当てていた俺がいた。想子を補給している様子から見て、肉体的な疲れも見て取れた俺だったので、深雪が門番となっている間に仕上げた。
「これはなかなか心地が良いぜ一真。これが一真しか使えない仙術って奴なのか?幹比古」
「そうだと言いたいね、仙術は古式魔法の中でも修得に時間が掛かる系統だと言われているから。それが出来る一真はホントに凄いよ」
「お褒め頂き光栄だね。これくらい朝飯前だ、二人とも終わったからヘルメット被って良いぞ」
「お兄様、そろそろ終わりましたか?それなら今度は深雪にやらせて下さい」
二人に簡単な回復魔法というより、気持ちを落ち着かせる仙術をした。終わったら今度は深雪がしてくれるので、終わらせた後に深雪の手が光出したと思えば回復魔法をする深雪。あまり消費してないのかすぐに終わった後、俺の肩や背中をマッサージしたいと言う深雪だったので、うつ伏せになってから本格的なマッサージを始めた。それを見たレオと幹比古は、この兄妹は何でも出来るんだと改めて再確認した。
「一真も凄いけど、織斑さんも本格的だね」
「そうだな、本格的なマッサージが出来るなんて俺らよりも歳誤魔化しているんじゃねえの?と疑問に思いたいぜ」
「・・・・あー、そこだそこそこ・・・・俺らは歳誤魔化していたらここにはいないぞ」
「随分と凝ってますねお兄様。それにもし私達が誤魔化していたら容姿も違うはずですよ」
「ま、そうだな」
とそこへキャンパスの仕切りをめくって真由美と真夜が入って来た。俺ら兄妹の姿を見た瞬間、真由美と真夜が同じ事を思ったに違いない。
「(流石は親子ね、一真君のマッサージをしている深雪さんが娘で一真君が父だと知ったら驚くんじゃないかしら?)」
「(あらあら、流石は織斑家の父親と娘よね。深夜に言っといたら、今度はこちらに来そうだから言わない方がよさそうね)」
「・・・・ん?そこにいるのは七草会長と真夜か」
気配を感じたので気持ち良さそうにしていた俺だったが、すぐに顔を上げると真由美と真夜がそこにいたのでマッサージを終わらせるために深雪もラストスパートをしていた。終わらせてから、俺はうつ伏せから立ち上がると真由美は俺に言う事があったので告げた。
「八高戦お疲れ様、と言っても次の試合のステージが決まったから報せに来たのよ。そしたらお母さんと鉢合わせしたから」
「私も知っているからね、次のステージは市街地となったわよ一真さん」
真由美と真夜が言った後に、俺らはあの事故があったのにまたですかと言いたい程だった。
「昨日事故が起きたステージなのに、そこでやれと?」
「しょうがないと思うけど、ステージ選択はランダムだから考慮されてないのよ」
「真夜の言う通りだが、次またあったら大会委員会のメンバーを全員解雇する気でいると達也から連絡があった」
「無能な大会委員会もこれに懲りずだったらの話よね?今度は大丈夫だと思うから」
「会長さんもそこまで言うのであればですが、早速移動します」
「ご苦労さま」
真由美が頷いた時には、レオと幹比古の準備が終わっていた。レオはエレメンツビットの柄にメモリを差してから、軽く準備して幹比古はエレメンタルメモリを腰の横に差した。メモリについてはここにいる真由美も真夜も知っているから、別に隠す程ではなかった。それにエレメンツビットの事を心配していたレオだったが、それに関しても大丈夫と言いながら今回の策を念話で伝えた。
『市街地ステージだろうと、刀身は所有者周辺に浮くようにしているから攻撃時だけ柄を振ればいい事だ』
『打撃力に関しては、俺の腕に負担が来る所をちゃんと負担掛からないようにしているし、振り回すスペースがあっても無くても関係ないもんな』
『今回の策も、僕はいつでも精霊を使った魔法を使えるから便利だと感じてしまうね』
俺ら三人だけの念話によって、次戦う時の策を話していた。外から見てもまさか念話を使えているとは思ってもいないだろうし、俺らの魔法は現代でも古式でも少し違った魔法だとしても系統外で納得させてしまう。一高対二高の試合は、昨日の事故があったにも関わらず双方のモノリスが屋内の中層階に置かれていた。
具体的に言うと五階建てビルの三階だ。自らの責任・過失を認めようとしない強情さについては、魔法大学も事務方は官僚機構なのだと再認識するしかない。最も昨日の事故は大会運営側の責任とも過失とも言い切れない部分があるが、それを許さないのが主催者蒼い翼だ。九校戦が終わり次第、大会運営側と委員会のメンバーを解雇させて全員が蒼い翼のメンツと入れ替えるとの手筈だ。
それに俺としては、見通しの良い屋外に置かれるよりいくらでも隠せる場所があるビルの中の方が都合がいい。俺は風と同化しながらディフェンダー二名を倒しながら進んでいたが、敵に見られる事なくモノリスが置いてあるであろうビルに潜入する事が出来た。
建物には影があったので、影を潜る事で誰にも悟られずに来たのは辿り着く時間としては最短だった。この試合は決勝トーナメントに進めるとはいえ、トーナメント組み合わせは予選一位と四位、二位と三位だ。準決勝より決勝で三高と当たった方がいいと考えたので、少し時間を遅めにしてからモノリスと選手をリタイヤさせるつもりだ。
『幹比古、今大丈夫か?』
『こちらは大丈夫だよ、何とかレオとの連携でモノリスは無事だよ』
モノリス・コードで通信機使用については禁止されてないが、使用する学校は少ないが念話を使った通信手段をしている学校は俺らぐらいだろう。通信機は電波の発信地点なら、今の時代は簡単に探知されるからだ。それに六人に増えたとしても、俺らの攻撃を躱せる者は今の所はいない。
『そろそろ動く、モノリスの位置を探査してくれ』
『了解だよ。それに風の精霊で探査出来るし、情報共有出来るからとてもお得だね』
『まあな、こちらはディフェンダーを二人倒したからそっちもそろそろ攻撃を』
『了解だぜえ一真』
気合と共にレオが使うエレメンツビットの刀身が、レオ周辺に浮いているが敵が現れたらサイクロンメモリとメタルメモリで軽く柄を振るうようにして円を描く。するとオフェンス三人の内二人は、素早く飛ぶビット攻撃を直撃してから戻ってきたビット。
「幹比古!」
聞こえないとは知りつつもビルのどこかに隠れているので、風の精霊と共に見ていた幹比古はレオに呼ばれると同時に雷撃が二人目に襲い掛かる。そして三人目はモノリスにコードを打ち込んだ瞬間を狙ってレオが音声認識のデバイスで魔法を使った。
「Halt(ハルト)!」
口元に仕込んであるマイクを通じて、音声認識スイッチが左腕のデバイスを作動させた。二つのデバイスを同時操作というパラレル・キャストだが、ゼロが同時操作するようにしといたのでパラレル・キャストではない。エレメンツビットは、元々対ドウター戦の試作品として作られたモノでありISで使われるビットに慣れてもらうためだ。
「ウオリャアァァアアア!」
エレメンツビットを敵オフェンスに向けた電撃を纏いながら撃ち出した為、痺れと打撃力により気絶した。それを見て確認したのか、レオは三人のヘルメットを脱がせていた。大会ルールにより、ヘルメットを敵に取られた選手はそれ以上の競技行動を禁止されている。
『一真、こっちに来たオフェンス選手三名倒した』
『了解した。こっちもあとはモノリスのコード読み出しとディフェンダー一人を片付ける事だ』
俺がいた位置は、残りの者には見えないような死角だった。残り一名となった者は探しているようだったが、モノリス付近にいた。ディフェンダー二名が戻ってくる事はなかったので、慌てていたが一人になったとしても全員倒してやると思った矢先。俺が喚起魔法でやったとしても、幹比古の出番が少なくなるので風となった幹比古の目がモノリス目の前に来てた事を知らない残り一名は外に行っていたので、チャンスだと思い報告した。
『一真、モノリスの位置が分かったよ』
『了解した』
魔法にとって物理的な距離というのは、意味を持たない事を知っている。巨大な情報プラネットフォームであるイデアには、物理的な距離などそもそも存在しない。イデアを経由しない、サイオンを直接撃ち出す類の無系統魔法だけが物理的な距離の影響を受ける。
人間というのは五感に縛られて、経験に縛られてしまうからか物理的な距離が遠ければ遠いと認識してしまう。認識上の距離が、魔法にとっての距離となってしまうので認識上の距離が遠くなれば、それだけ魔法も効果が薄くなる。
遠くのものに魔法を掛ける秘訣は、対象物を近くに感じる事。その分精霊魔法は、精霊と交信する意志を通わせる事で精霊を近くに感じるようになる。だけど、それは現代の魔法師が使う事で発揮されるので俺達が使う事は、この枠には全くと言っていい程ハマらない。
視覚同調というのは、精霊を手元に招き寄せてそこに記録されている情報を読み取るのではなく、影響下に置いた精霊からイデアを経由したリンクを通じてリアルタイムに情報取得する技術が感覚同調。それを視覚情報限定にする事で、鮮明な映像を取得できる技が視覚同調。
本来の幹比古なら、大気流動現象の独立情報体である風の精霊を操る事で容易に敵のモノリスの位置を把握出来た。だが俺達が知る幹比古は、エレメンタルメモリの力により自ら風と同化しながら直接モノリスの所まで行く事が出来てしまうからだ。
「さてと、ここからが本番なのか?それにしても最後のディフェンダーは、気配だけでこちらに来ようとしても無駄なのにな」
そう言ってから、俺は位置を特定してから非常階段から見たら奥側だった所の真下にモノリスがあるので、そこに鍵を撃ち込んでから残りの選手が鎌鼬で攻撃してきた。なのでそれを無効化させようとしたが、それだと面白くないので躱し続けた。幹比古は割れたモノリスからコードを携帯端末から読み取ってから、第一条件クリアという合図が鳴った事で残りの一名を片付けると思った。
「これが鎌鼬だと?本物の鎌鼬を喰らいやがれ!」
そう言ってから腕から風を生んで振ると、相手選手の鎌鼬よりも威力は強くないが相手選手を壁に激突した所で試合終了の合図が鳴った。この選手は緊張による視野狭窄を起こしていたのか、階段を上がってきたらしいので息が上がって見えた。ディフェンス向きとは思えない程であったが、敵の配役ミスは歓迎すべき点ではある。急遽召集されたのかもしれんが、俺らにとっては楽に過ぎなかった。
「何だか拍子抜けしたかのような試合だったわね」
「一真君もそうだけど、二人の魔法もなかなか面白い使い方だったな」
真由美の漏らした言葉に同感しながらだった摩利は、レオや幹比古が使う魔法についてだった。一真が使った魔法はエレメンツの一つを使ったに過ぎない事であり、エレメンツ使いがいるとは観客や他校の生徒ですら知らない情報。風と精神干渉系統は、四葉の技を使ったに過ぎないと思ったのは深夜と真夜だけ思った事。
そんでレオや幹比古が使った魔法も、一真が使うエレメンツ擬きではある。エレメンツメモリとエレメンタルメモリ、同じ力を発揮すると思うがそれぞれに力が発揮する所が違うだけだ。レオのは、それぞれ戦闘の際に使用するメモリを自動選択したゼロにより、攻撃する事が出来て、幹比古のは四大精霊とのリンクをしながら魔法より精霊術者の方が近い存在となったからだ。
「にしても、織斑少将『今は一真さんですよ先生』おっと失礼したが、一真さんは実に面白い使い方をする。今の所魔法を使ったのは『術式解体』だけだが、エレメンツを一真さん以外の者でも使えるようにするとは」
「一真さんには秘密にしとかない事情がありますし、ですが二人の選手はエレメンツメモリとエレメンタルメモリを使っているそうですよ」
「なるほど、だがエレメンツとエレメンタルは同じに聞こえる。メモリの力が同じに聞こえるが、藤林は知っている様子のようだな」
「それはそうですよ、ガイアメモリに関しては色々と知ってますからね。フラッシュキャストも精霊の目も必要ありませんが、エレメンツを使った魔法師は今まで確認されていませんから。それに先生も一真さんの事をよく知っているじゃありませんか」
独立魔装大隊の山中軍医少佐と藤林少尉は、観客席で随分と突っ込んだ会話をしている。知識がある者が聞けば飛び上がるぐらいの驚く内容であるが、目立たぬ夏服姿で客席に紛れ込んでいる二人は一見恋人ではなく、医者と看護師に見えている。響子が先生と言っているので、誤解に一役買っているし一真からは観客席にいるなら余り目立たぬような事はするなと指示を受けたからだ。
断片的に聞こえてくる耳慣れぬ単語も超心理医学関係の専門用語かと周辺にいる観客達はスルーしていた。ま、ガイアメモリやエレメンツと言っても何の事すら分からないので言葉として言っていたとしても、一真が二人周辺が発した言葉の一つ一つが修正されているので問題はないと思っている。
「それでも見えないはずのものを見えているような行動をしたとしても、注意深い者の不審を誘うでしょう。一真さんだけが持つ全てを見通す心眼は、知覚魔法というよりも異能な力ですからね。『精霊の目』よりも正確に見る事で、創造神の力に勝る事は耳目を集める事になります」
「創造神黒鐵様である一真さんだから出来る力だと言って納得出来る者は、我々記憶共有者だけだからな。あの九島老師でさえも、我らの同志だと聞いた時はとても驚いたが話してみてホントに同志だと認識したのでな」
「実際に私らと共に朝鍛錬でも鍛錬用のを着て一緒に鍛錬をしていましたからね、記憶共有者同士で一真さんの元部下なら別に呼び捨てで構わないと仰っていましたよ。見た目だけで、老師と呼ばれるのは癪に触ると言ってました」
「俺達も覚醒前までは一真さんの存在を知らかったからか、時々一真さんの部下時代を思い出すと長話にはなる」
二人は昔話を始めていたが、実際に藤林少尉は元部下でIS部隊を率いてきた者でガイアメモリや我らの技術を知っている存在と山中軍医少佐である幸典は主にMS部隊や歩兵部隊のメンバーだった。二人が話していた精霊の目と心眼の違いについてだが、言い方はエレメンタル・サイトと言う。
イデアの「景色(形色)」を視る能力の事で、四系統八種の現代魔法は、イデアを経由してエイドスに魔法式を投射する事。現代魔法を使う魔法師は皆、イデアにアクセスする能力を持っているからでありイデアにアクセスして『存在』を認識する事が出来る本来の主人公はこの能力を拡張している。
拡張効果は絶大でありこの世界に実体を持って存在する限り、イデアにエイドスを刻まぬものは無いので五感や物理次元の感覚拡張に過ぎないとも言える。「透視」や補助システムのもたらす情報によって魔法座標を定める事ではなく、エイドスを認識して直接照準する事も出来る。エレメンタル・サイトにより狙われて逃れる事が出来る事は、まさに存在しない者だけだと思っているかもしれない。
一方で織斑一真が使う心眼については、イデアやエイドス関係なく全てを見通せる力でありこの能力の使用者は今の所は二人だけだ。創造神黒鐵と女神雪音である織斑一真と織斑深雪のみ使えるが、深雪だけは大天使化しないと使えないという限定的である。ここにはいない妻の奏や息子の優斗もある程度は使えるが、全てを見通す程の力は無いに等しい。
「そういえばエレメンタル・サイトには誤った翻訳だと聞きましたが、先生は何か知っていますか?」
「俺も余り詳しくないが『それなら俺が説明をしようか?』一真さん」
『一応念話で語っているので注意してもらいたいが、そもそも定着してしまったから本来の意味が解らないまま「専門用語」になってしまった。エレメンタル・サイトの本来の意味は「元素を視る力」だから、要するに四大元素である炎、風、地、水であるからな。最初に翻訳したバカな学者が、形容詞として使われる「エレメンタル」を四大精霊と勘違いしてしまい、「四大精霊の眼」を縮めて「精霊の眼」となってしまった』
『なるほど。だから勘違いに気付いた者は大勢いましたが、「精霊の眼」の語感が「元素視力」より魔法的だと言う事で、視的で少々非科学的な理由で修正されないまま放置してしまったという事ですかな?織斑少将』
『そういう事だが、まさか烈が加わるとは思わなかった。誤訳は専門家とそれ以外の者達をますます隔ててしまうからか、現代でもそう言う風に呼ばれているという事だ。俺が使う心眼は一見エレメンタル・サイトに似ている部分はあるが、全く違う能力だと知っていてもらいたい。それと「雲散霧消」と「滅」では機密指定されたとしても滅を使う事でどういう魔法か分からないからな。次の試合まで時間があるので、あとの解説は烈がしてくれ』
「手の内を見せまくりな一真さんではあるけど、それはそれでいいと思いますよ。何しろ一真さんが力を限定的にしない方が、最早可笑しな状況ですわ」
「確かにな、それにしても『滅』や『無効化』にエレメンツを限定的にしないのは烈のお陰ですかな?」
『そう言う事だ、一真様が限定的にするよりかは面白味がないからな。響子や幸典と名前で呼ばれるのも、久々だと思われるがそれも新鮮でいいだろう』
そう言う事でエレメンタル・サイトと心眼についてはもういいとして、久々に名前で呼ばれた事で烈や二人も心の中では嬉しかったらしい。何せ今の役職では、烈の事を九島閣下か老師と呼ばなければならないし、烈もまた藤林少尉や山中軍医少佐と呼ばなければいけないのだから。それと観戦していた客の中には、何も俺ばかりが注目に浴びている訳ではない。レオのエレメンツビットもそうだが、幹比古の精霊魔法をよく知るエリカでさえ昔と大違いな事を見せられたのか。
「ミキもミキで、一真君に一から鍛え直したと聞いたけどホントに使えるようになったんだね」
「えっ?そうなんですかエリカちゃん」
「まあねぇ~昔のミキは事故を起こす前は天才少年と呼ばれていたけど、感覚同調やら他の精霊魔法でも事故前よりもいい感じになっているからね」
「確かに吉田君周辺には精霊が活発化してますけど、一真さんが鍛え直したというのは聞いた事があります。一真さんがやる精霊術者と吉田君がやる精霊魔法は、プロセスが大違いのはずなんですけど、あそこまで出来るのは至難の技としか言い様がありませんね」
「そう言えば美月は精霊を見分ける目を持っているんだっけね。精霊魔法が成功したかどうかは分かんないけど、対人魔法戦技を磨き続けた千葉家の娘なのかもしれないからか、表情の変化や魔法がいつ使ったかはある程度なら読み取る事が出来る。一真君曰く『剣士の眼』って言ってたけど、今のミキなら自信も力も事故前よりもアップしている」
美月は水晶眼を持っている魔法師で、エリカは自己加速・自己加重魔法を用いた白兵戦技で知られている千葉家の娘であり、得意な事は剣術だ。それを両方持っているのは今の所は織斑一真しかいないと思われるが、精霊術者でありエレメンツ使いで更に剣術にも長けている。
剣もただの剣ではなく、聖剣エクスカリバーを持っている事自体があり得ない事とは思いながらも知っている人物は限定されている。ブランシュ日本支部を潰した時に量産型を渡されたエリカやそれを見ていたレオも知っているし、桐原や十文字会頭もな。
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