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ソードアート・オンライン ーEverlasting oathー

作者:ゆぅ駄狼
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Sixteen episode 少女との約束

セイとユイが消えてしまってから既に二週間も経っていた。
正確には"消えた"というよりは"オブジェクト化"したと言うべきだろうか。
セイとユイは俺達とずっと一緒にいる。
二人はペンダントの様な物になってユウキとアスナのそばにいる。
ペンダントはリズに頼んで作って貰ったのだが、ペンダントは初めて作ると言ってはしゃいでいたな。
……さて、現状はと言うとだな………


「君達に集まって貰ったのは他でもない、この第75層の攻略だ」


そう、次の層に行く為にこの第75層を攻略するということで攻略会議に来ている。
来ている人数も今までよりも数は多い。
25、50層の時も人数は多かったのだがそれほど危険なボスなのだろうか。


「ヒースクリフ団長、迷宮区はもう攻略済みなんですか?」


「迷宮区は既に攻略済みだ。しかし、ボスの情報は掴めていない」


「「「「「「…………?」」」」」」


ヒースクリフが言ったことに対しては集まっている殆どのプレイヤーが頭の上に疑問符を浮かべていた。
だが、この返答に関しては俺も疑問符を浮かべていた。
普通、攻略会議は多くの迷宮区の情報やボス情報を集めてから行う。
しかし、今回の攻略会議では迷宮区は突破しているがボスの情報は無いと言っている。
ボスの情報が全く無いのにボス攻略会議を開いているのだが攻略会議をする意味が全く無い。


「ボスの情報が掴めていないって……じゃあ何で攻略会議なんて開いているんですか、迷宮区も突破したんですよね?」


「正確には情報は"ある"が"無い"」


「あるけど無い?」


「今までは正確な情報なのだが、今回は予想の情報となる」


「予想の情報……合っているかも分からない情報って事ですか」


俺がそう言うと回りが騒ぎ始めた。
何故騒いだって?
当たり前だ。
死んだら終わりのデスゲームに確実じゃない、しかもボスに挑む命知らずが何処にいると言うのだろうか。
誰も予想の情報なんて当てにしないだろう。


「第25層、50層と続いて25層刻みに他のボスとは違い、ボスは異常な強さを見せている。次のボス、第75層のボスも確実言っていいほど強いだろう」


「確かに25層刻みでボスが強くなっているのは確かですね。"区切り"と言ったとこですね」


「ユウヤ君の言ったとおり、区切りと見た方がいいかもしれない。私のギルド、血盟騎士団はボス攻略の為に調査隊をボス部屋に向かわせたのだが……ユウヤ君ならどうやって調査をするかね?」


「俺ですか?」


俺が調査するとしたら……か。
俺だったら自分の身の安全の為に勿論戦うなんて事はしないな。
調べるのはどんな形状の武器を持っているのか、二足歩行かどうか、ブレス系統の攻撃パターンを持っているのか、くらいだろうな。


「俺ならまず戦うなんて事はしないし、相手の武器、外見、攻撃パターンを見ます」


「ふむ……良い判断だ。君は調査が終わったら帰ってくるかね?」


「……はい?」


「私が出した調査隊は戻っては来なかったのだよ」


「戻って来なかった?」


「ボス部屋が転移結晶無効化エリア、あるいは新しい効果がついたエリアとなっていて病むを得ずにボスとの戦闘となり戦死したのだろう」


「途中でPKに会ったって事は無いんですか?」


「勿論、その事も考えたのだが次のボスは間違いなく強いだろうと思い、十人のレベルが高いプレイヤーを向かわせたのだから余程の事が無い限りプレイヤーキラーに会うことは無いだろう」


確かに血盟騎士団のプレイヤーは皆優秀だ。
しかも十人体制でボス部屋に向かったのだからPKに会うことは無いだろう。


「転移結晶無効化エリアあるいは新種の効果エリアという予測情報とボスを見てから得る情報でしか戦えない」


「ほぼ初見で挑むってところか……」


「うむ……話はこれだけだ。準備を整い次第、第75層のボス部屋前に集合してくれたまえ」


ヒースクリフが解散と言うとその場にいるプレイヤーの殆どはボス攻略の準備へと向かった。
俺達もボス攻略の準備へと向かった。


「今回のボスも苦労しそうだな」


「苦労だけならいいけどな」


「そうだね……25層や50層の時は沢山の人が死んじゃったし……」


「今回のボス攻略では今までと違ってキリト君の二刀流やユウヤ君の神聖槍があるから被害は最低限に抑えれる……と思う……」


「俺も久しぶりにボス攻略に来てやったぜ」


「サンキューなエギル」


「まぁ俺様、クライン様の見事な刀捌きで楽勝だろうよ!」


「クライン……お前死んだな」


「死亡フラグって言うんだよね?」


「死んだわね」


「くたばれ」


「これは死ぬな」


「キリト、てめぇだけ喧嘩売ってるだろ」


その後は俺達は回復ポーションなど戦闘で必要な道具を揃えてボス部屋の前に向かった。



第75層 ーーーー迷宮区ーーーー



嫌な予感がする……
俺の予感は良く当たるんだよなぁ……
また……死人がでるのか……?
その死人がユウキだったら……
クソッ!縁起でもねぇ事思ってんじゃねぇぞ俺!


俺がそう思っていると後ろから何かが抱きついて来た。
後ろにいる奴は優しく俺を抱きしめた。


「ユウヤも怖いの……?」


「ん……そうか?」


抱きついて来たのはユウキだった。
ユウキは心配そうな顔で俺を見ていた。
ユウヤもってことはユウキは怖がっているのだろうか。

……ユウキは俺が守る。
心配なんかする必要なんて全く無かったな
俺がユウキを守り抜けばいい話だしな


俺は抱きついているユウキをそのままおんぶした。


「わわっ」


「なーに心配そうな顔してんだよ。お前だけはこの俺、旦那様が必ず守ってやるよ」


俺の言葉を聞くとユウキは笑顔で頷いた。


「じゃあ旦那様にボクを守ってもらおう!」


「へいへい、任せとけい」


「いつ見ても熱いなお前ら〜、見てる俺も火傷しちゃいそうだぜ」


「クラインはずっと独身だもんな」


「うわ、つらっ」


俺がクラインに現実という槍を投げて虐めていた。
虐めながら歩いていると前方に大勢のプレイヤーがボス扉の前で装備の確認などの最終チェックをしていた。
大勢の人集りの中心にいるプレイヤー、ヒースクリフが俺達に気付くと話し始めた。


「さて、集まった様だな。それではこれより第75層のボス攻略を開始する。諸君らの健闘、武運を祈る」


ヒースクリフはそう言うとボス部屋に入る大扉の方を向いた。
沢山のプレイヤーが息を飲んだ。
多くのプレイヤーは緊迫した空気、死ぬかもしれないという恐怖と既に戦いを始めていた。
その中、ヒースクリフは顔だけ俺の方を向くと俺に話しかけてきた。


「多くのプレイヤーは恐怖と戦っているのに君からは全く恐怖を感じられない、怖くないのかね?」


「怖くないですよ。俺が怖いと思う時はユウキの命が危なくなった時だけですし、それにユウキは俺が絶対守るんで命の危険は無いんですけどね」


「ほう………面白い」


ヒースクリフはそう呟くと大扉に手をかけた。
そして、大扉を開いた。
大扉が開くとプレイヤー達は中に向かって叫びながら突撃していった。


「「「「「「うおおおおおおおおおお!!!!………?」」」」」」


「どうなってる……?」


中に入ると回りはずっと暗闇だった。
更に、妙な事にボスが見当たらない。
何処かのギルドがボスを倒したのだろうか。
だが、それはないだろう。
攻略組はギルドを多数しかも腕がかなり立つプレイヤーばかりの構成でできている。
攻略組ほど大きいギルドなんてものは聞いたことがない。


「………!」


皆が武器を降ろす中、アスナが突然上の方を向いた。
アスナの目には物体が捉えられていた。
暗くてよく見えないがかなりでかい物体が天井に張り付いていた。
ずっと見ていると微かに動いている。


「皆、上よ!」


ボス部屋にいる全てのプレイヤーが天井に張り付いている物体を"認識"すると部屋が明るくなり始めた。


Skalreeper


ボスの名前はスカルリーパー。
外見はムカデの様な……カマキリの様な姿をしていた。
ボスの姿を見ると血盟騎士団と青龍連合のプレイヤーが二人でスカルリーパーへと向かっていった。


「待て!敵の行動をちゃんと見るんだ!」


「へっ、俺は誇り高き血盟騎士団の団員だっつーの!」


「最近は青龍連合もあんまり活躍できてないからな。ここで俺がこいつのHPを一気に減らしてやるぜ!」


いくらボスの情報が無いとは言え、相手の行動を見ずに自分から突っ込んでいくなんて自殺行為だ。
しかも、突っ込んで行った二人はどちらも盾を持っていない、両手剣だ。
もろにダメージを受けたらHPがどれだけ減るのかもわからないボスだ。
突っ込んでくるプレイヤー二人に対してスカルリーパーは移動を始めた。
そしてスカルリーパーは鎌の様な左手を上げ、横薙ぎにすると同時に二人の姿が消えた。

パリィィイイイイン……

二人が消えたと思ったらユウキの目の前に落下し、結晶体となって消滅した。


「え……」


「一撃じゃねぇかよ……」


「絶望する前にこいつの攻略方法を考えろ!」


「ユウヤ!」


「行くぞキリトッ!」


俺はキリトと一緒にスカルリーパーの方へと向かって行った。
するとスカルリーパーは再び鎌を振り上げた。


「キリト、鎌に気をつけろ!」


「ユウヤ、賭けなんだが鎌を俺達に向かって来ると同時にしゃがんで見てくれ!」


俺はキリトの言葉に疑問を抱いたが言われた通りにした。
スカルリーパーにダッシュで近づきつつ、鎌から目を見離さず、しっかりと見ていた。


「うおおおおおお!」


「来るぞ!」


キリトがそう言うとスカルリーパーは鎌を振り下ろして来た。
俺とキリトはしゃがんだ。
するとスカルリーパーの鎌は頭上を横薙ぎに通過して行った。
ユウキやアスナ、ヒースクリフは俺達の頭上を通過して行った鎌を見てすぐに理解した。
俺とキリトは鎌を回避するとバックステップでユウキ達の所へと戻っていった。


「なるほどな……あいつは横薙ぎにしか鎌を振ってこないってことか」


「ユウヤの言う通りだよ。それでなんとか鎌を回避しつつ、近づいて鎌を封じれれば行けるかもしれない」


「ふむ……ならば左の鎌は私がなんとかしてみよう」


「助かります。俺とキリトは右の鎌を抑える」


「そうだな。アスナとユウキはクラインとエギル達と一緒に鎌を抑えている間に胴体の方にダメージを入れてくれ」


「任せて!」


「わかったわ!」


ヒースクリフが自分のギルドと他のギルドに戦法を伝えると俺の方を向いて頷いた。
俺はヒースクリフを見て頷くと突撃の叫びをあげた。


「行くぞぉぉぉおおおおお!!!!!」


「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」


俺達がスカルリーパーに突っ込んで行くとスカルリーパーの方から俺達に近づいてきた。
だが近づいて来るにしても戦法は対して変わらなかった。
スカルリーパーは近づきながら左の鎌を振り上げていた。
鎌を横薙ぎにしようとするのを確認すると俺とキリトはスライディングをした。
スカルリーパーの鎌は外れたが、すぐに俺達とは反対方向から向かっているヒースクリフに右の鎌を振りかざした。


「…………!」


ヒースクリフは左手に持っている大盾でスカルリーパーの鎌を受けた。
体に当たって一撃のスカルリーパーの攻撃は普通のプレイヤーなら盾で受ければHPが半分前後まで減るだろう。
だが、ヒースクリフの大盾は並のプレイヤーの装備では無い。
この大盾は神聖剣とセットで出現した武器だ。
神聖剣の攻撃力が異常ならばこの大盾は鉄壁の様に異常だ。


「ヒースクリフ団長硬すぎんだろ……」


ヒースクリフのHPはミリ単位でしか減っていなかった。
最強の剣にして最強の盾を持つプレイヤー。
ユウヤと決闘すれば互角か、あるいはそれ以上か。

ヒースクリフは大盾で鎌を受け流すと神聖剣で鎌を弾いた。
その光景を俺達や他のギルドのプレイヤーが見ると伝えられた作戦通りにスカルリーパーに斬りかかっていった。


「こいつ硬く無いか!?」


「まだボク達しか攻撃してないからだよ!」


「ユウヤ、一気に決めるか!?」


「俺とキリトのソードスキルで何処まで減らせれるかだな………!」


「俺の風林火山ギルドが全力でお前らを守ってやるよ!」


「「サンキュー!」」


俺の神聖槍《グングニール》が黄色に輝き始め、ソードスキル《レイジング•ルーラー》を発動し、キリトの《エリュシデータ》と《ダークリパルサー》がどちらも緑色に輝き始め、ソードスキル《スターバースト•ストリーム》を発動させた。

キュィィィイイイイン!!!!

「柔らかそうな胴体を狙うぞ!」


「了解!」


俺とキリトが斬りかかろうとした瞬間、スカルリーパーは体制を立て直し、右の鎌を振り下ろして来た。
だが、俺とキリトは構わず前へ進んでいった。
鎌は確実に俺とキリトを捉え、直撃してしまえばHPが赤ゲージまで行くか、あるいは一撃か。
だがーーー


「てやぁぁああああっ!!」


「はぁぁああああ!!」


「「「「「「どりゃあああああああああああ!!!!!!」」」」」」


ガキィィィイイイイイイイイイイイン!!!


本来当たるはずの鎌は大きく弾かれていった。
ユウキやアスナ、エギルやクライン率いる風林火山メンバーが鎌の直撃を阻止した。
俺達がターゲットを取り、死角からヒースクリフ率いる血盟騎士団や大人数ギルドの青龍連合ギルドなどが胴体を抑えていた為にスカルリーパーは逃げられずにいた。
逃げられずにいるスカルリーパーに対して俺とキリトはお互いのソードスキルを放った。


「「うおおおおおおおお!!!!」」


俺の斬撃、8連撃とキリトの15連撃がスカルリーパーを襲った。

ガキッガキィンガキガキガキガキ!!!

スカルリーパーの骨のせいなのか分からないが弾かれる様な音がしていた。
だが、スカルリーパーのHPバーは確実に減っていった。
ユウヤの神聖槍の攻撃力もあり、スカルリーパーのHPバーが一つ減った。
これを六回繰り返せばスカルリーパーを倒すことが出来るのだが、そう簡単にはさせてくれなかった。


「キシャァァァアアアアアアア!!」


HPが大幅に減少した為なのか、スカルリーパーは両手の鎌で回りのプレイヤーを薙ぎ払おうとした。
突然の行動にプレイヤー達の体はあまり言うことを聞かなかった。


「クソッ!鎌が来るぞ、早く逃げろ!」


「おい、ユウヤ!」


「やべっ!?」


「ユウヤ!?」


「ユウヤ君!」


俺の体にスカルリーパーの鎌が直撃した。
正確には鎌の刃が無い裏側に当たってしまった。
俺の体が宙に浮くと物凄い勢いで壁へと吹っ飛んでいった。
壁に叩きつけられると砂埃の様なエフェクトが起こり、俺は激しいノックバックに襲われた。
幸いにも鎌の刃が無い裏側に当たって吹っ飛んだ為、HPバーは赤に入る手前の黄色ラインで止まっていた。


「っつつつ………」


「大丈夫!?」


ユウキが俺の近くまで来ると倒れている俺を起こしてくれた。
かなりの打撃力だったらしく、まだ目眩の様なものが起きていた。


「ありがとな………っく………」


「無理したら駄目っ!今はアスナ達がボスを抑えてるし、ヒースクリフ団長さん少しずつHPを削っていってるから……」


「そうか……………」


スカルリーパーの方を見ると少しぼやけているがスカルリーパーはもう暴れ回ってはいなく、先程の戦法と同じ様に戦い、キリト達が鎌を弾いて高威力の神聖剣を持つヒースクリフが俺に変わってダメージを確実に入れていた。
スカルリーパーを抑えてるにしても此処に居ては危険だと思い、俺はユウキの肩を借りてスカルリーパーから離れて行った。
歩いて数秒すると目眩の様な物は無くなり、自力で立てるようになった。


「もう大丈夫だよ」


「ほんと……?」


「ほんとほんと。俺達も早く加勢しないといけないな」


そう言いながらユウキの頭をクシャクシャっと撫でるとユウキの手を取り、スカルリーパーの方へと向かった。


「?」


俺がスカルリーパーの方へ向かおうとするとユウキが足を止めた。
どうしたんだろうと思い、ユウキの方を見ると目に涙を浮かべ、怒った顔で俺を見ていた。


「ど……どうした?」


「無理して戦ってる……」


「無理してる?俺が?」


「してる………戦うのが怖いんでしょ………?」


「なわけ無いだろ!今まで散々戦って来たのに今更怖がるこ「手が震えてるよ!!!!!」


「え………?」


ユウキと繋いでる手を見ると確かに震えていた。
ユウキの手が震えているんじゃ無いのかと思ったが間違いなく俺の手が震えていた。


「…………」


「ユウヤはボクを絶対守ってくれる人。そんなユウヤは何が怖いの………?」


冷静になって考えると手が震えている原因が当てはまる理由がある。
絶対にユウキを守り抜くとは言っていたが本当に俺はユウキを守り抜くことができるのか。
情けなく吹き飛ばされ、ユウキに助けて貰った俺がユウキを守るなんてできるのだろうか。
守られていたのはずっと俺の方ではないのだろうか。


「俺は守られてたのかもな」


「…………」


「いつもユウキに助けられて、キリト達にも……クラインやエギルにも助けられてさ、皆やユウキを守るなんて言ってた俺が守られてたんじゃないのかなって思うんだ。このボスとの戦いでまた誰かが俺を助けて、もしかしたらそのせいで誰かが死ぬかもしれないし………」


「………も………」


「もしかしたらユウキが俺のせいで居なくなっちゃうかもしれない………」


「…………それならーーーー」


ユウキが口を開くと握っている俺の手を離し、両手で俺の頬をに手を添えた。
涙目で、だが眼差しは強く、俺はユウキから目を離せれなかった。
俺が前まで守ってると思っていた怯える様な少女は守られるほど弱くは無かった。
弱かったのは俺だ。




「ボクがユウヤを守る。だからボクがユウヤをずっと守れる様にユウヤはボクを絶対守って」




ポタ………ポタ………………

涙が出た。
涙が止まらなかった。


「泣かないで……?」


「ああ………ごめん……な………」


「ボクをずっと守って………約束だよ……?」


「約束するよ……俺はユウキを守る…………」


笑顔でユウキは俺を慰めてくれた。
ユウキの言葉を心に刻み、神聖槍を握りしめた。
俺はユウキの目を見て口を開いた。


「行くか……」


「うん!」


俺とユウキはスカルリーパーを攻撃しているキリト達へと加勢していった。
スカルリーパーのHPバーを見ると一本半になっていた。
完全に攻撃の連鎖にはまっていて動けずにHPを削られていたようだ。


「キリト、スイッチ!」


「待ってたぜ!」


「アスナ、スイッチ!」


「お願いユウキ!」


俺はキリトと、ユウキはアスナとスイッチし、前衛と後衛を入れ替わった。
ヒースクリフが神聖剣ソードスキル《バスターブレイド》を発動すると渾身の一撃がクリティカルで命中し、スカルリーパーのHPはラスト一本となった。
俺とユウキは更に追い打ちをかけた。

キュィィィィイイイイイイイン!!!!


「おらぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」


「てやぁぁぁああああああ!!!!!」


俺は神聖槍の新しく増えたソードスキル《ライト•ロード》をユウキは片手直剣用スキル《ウォーパルストライク》を発動させた。
どちらのソードスキルも一撃に全てをかけた一撃だ。

一つの槍と剣がスカルリーパーへと向かっていった。


「うおおおおおおおお!!!」


「いっけええええええええ!!!」


槍と剣はスカルリーパーの頭へと刺さり、順調にHPを削っていった。
だがーーーー


「クソが!!俺はまだいける!!」


「HPの減少が少なくなってる………!」


刺さりが浅かったのか、順調に減少していたHPがだんだんと止まって来ている。
先程の様にHPの大きな減少のせいでスカルリーパーが暴れ回ろうとしていた。
槍と剣が浅いとは言え、スカルリーパーに刺さったままでユウヤとユウキはすぐに逃げることが出来なかった。
鎌はユウヤとユウキを捉えていた。


「ユウキを………傷つけるんじゃねぇぞ」


俺はそう言ってスカルリーパーを睨みつけた。
睨みながら俺は《グングニール》を握りしめ、更に押し込んだ。
スカルリーパーを睨んだ所で不思議な力が出るわけでも無く、スカルリーパーのHPの減少はとうとう止まってしまった。


「まだ終わってねーだろ!」


「行くよユウキ!」


「キリ……ト?」


「アスナ!」


「刺さらないなら俺達が手伝ってやるよ」


「私達で止めを刺すわよ!」


キリトとアスナはスイッチからの硬直時間が解け、ダッシュで俺達の所へ走って来た。
キリトは俺の持っている《グングニール》、アスナはユウキの持っている《リュクスシュエル》を握り、スカルリーパーの頭へと押し込んでいった。


「おっせかいな奴だな………」


「とか言いながら喜んでんじゃないぞ」


「アスナ〜!ありがとう!」


「ユウキが困ってるなら助けなくちゃね!」


「そんじゃお前ら……ぶち込むぞぉぉぉおおおお!!!」


「「「いっけえええええええええええええ!!!」」」


槍と剣を更に押し込み、HPの減少が止まっていたスカルリーパーのHPがまた減少し始めた。
そしてスカルリーパーのHPはレッドラインに入り、HPがなくなって消滅した。
ボス部屋の中心にCongratulationと言う文字が出現した。


「やっ………た?」


「やった……やったよユウヤ!」


「っくはーーーーー!!!疲れた………」


「キリト君もお疲れ様」


「俺の風林火山ギルドも結構役にたっただろー?」


「店を閉じてまで来たが俺の出る幕じゃ無かったな」


スカルリーパーを倒し終わった大勢のプレイヤー達はヘトヘトになり座っていた。
俺達も精神的に結構疲れていた為、その場で座り込んだ。


「所でよ……何人死んだ………?」


「……………」


クラインがそう言うと回りは静まり返り、殆どのプレイヤーが俯いてしまった。


「11人死んだな………」


「「「「「「………………」」」」」」


死者の多さに流石に俺も頭を抱えそうだった。
死人が出るかもしれないと言う予想はあったのだが、まさかこれ程とは思っていなかったのだ。
回りを見渡すと誰も喋っていなく、クリアしたというのに喜びの感情が出てはいなかった。
俺が溜息をつくと横で座っていたキリトが突然剣を握りしめた。


「どうかしたか?」


「まぁ………もしかしたら…………」


キリトはそう言うと一人だけ立っている男に向かって走り始めた。
ソードスキルを発動することは無く、そのまま《エリュシデータ》をその男、"ヒースクリフ"に向かって斬りかかっていった。
ヒースクリフは驚いた顔をし、キリトの剣をずっと見ていた。
だが、本来貫ける筈の剣が貫く事が出来なかった。


「おい、馬鹿………?」


「剣が通ってない………?」


「どうなってるの……?」


「やっぱりな」


「どうなってるんですかヒースクリフ団長」


キリトはヒースクリフを貫けない事を確認するとバックステップで後ろへと下がった。
キリトの剣がヒースクリフを貫けない事には理由があった。
ヒースクリフの頭上には文字が浮かんでいた


immortal object


セイの時と同じく"破壊不能オブジェクト"とそこには表示されていた。
つまりはヒースクリフはシステムによって保護されている。
その為、キリトの剣はヒースクリフを貫く事が出来なかったのだ。


「この男のHPは黄色ラインから下へは絶対に下回ることはない。システムに管理されているんだ。ずっと思っていた……ゲームマスターの茅場は何処で俺達を監視しているのか……他人のやっているゲームを眺める程つまらないことは無い……そうだろ、茅場晶彦!!!」


「ふむ………」


「待てよ………キリト、何で茅場晶彦だって分かったんだ?」


「破壊不能オブジェクトの表示が出るまで確証は無かったが……前にアスナ、いや俺自身の為にヒースクリフと決闘したっていったよな?」


「ああ……白服になった時か?」


「俺はこの男と決闘をしたんだが……俺のソードスキル《スターバースト•ストリーム》、もとい俺の剣は確実にこの男を捉えていた。だけど俺が剣を振り下ろした瞬間、この男の速さは異常だったんだ」


「やはりか……あの時はつい、君の反応速度に圧倒されてシステムのオーバーアシストを使ってしまったよ」


「「「「「「!?」」」」」」


ヒースクリフがそう言うと回りがどよめき始め、ヒースクリフへと注目が集まった。
その中でもヒースクリフは余裕の様な、残念がっている様な顔をしていた。
一度回りを見渡して俺達の方を向くとヒースクリフは口を開いた。






「確かに私は茅場晶彦……そして第100層で君達を待つ最終ボスでもある」








 
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