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鎮守府にガンダム(擬き)が配備されました。

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第4話 建造・訓練・時々罵声

 
前書き
Q.何が始まるんです?
A.久々の日常回だぁぁあああッ‼︎

というわけで皆さんお久しぶりです。
転職活動に五日間連続徹夜出勤で脳内がマッハな朝帰り中に閃いた話になります。
バーニィ回はもうちっと待ってくれぇ……。 

 
9月5日
日本帝国 鹿島第1024鎮守府

穏やかな海風と、鎮守府中で所構わず鳴き喚く蝉の声が入り混じった朝6時。
ここ鹿島第1024鎮守府の工廠に出向いた俺、神宮司一葉は、ハンカチで額の汗を拭いながら目の前の状況を眺めていた。

「提督、乙型建造システムの起動が完了しました」
「資材の準備も出来たっぽい‼︎」

最初期のパソコンを彷彿させる黒い画面に緑の文字、古めかしいキーボード。
巨大な艦船用ドッグから伸びる夥しいパイプやノズルが接続された、コンテナの様な金属の物体。
そして古めかしいキーボードを高速で操る不知火と、ドッグにポイポイと鉄のインゴットや燃料、砲弾を投げ込む夕立。

「……なぁ、俺達は今から艦娘を建造するんだよな…?」
「はい、そうですが?」
「明らかに可笑しいって、なんだよあれ、砲弾やら燃料やらドッグにぶち込んでるだけじゃねぇかッ‼︎」
「……では建造を始めます」
「スルー⁉︎ スルーすんの⁉︎
何処ぞの蒼の物語に出て来る2丁銃のまな板娘のアサルトスルー並みですけど⁉︎」
「提督はあんまり気にしないほうがいいっぽい」
「なんなんだよ……俺? 俺が可笑しいの? 」

1人蹲って頭を悩ませる。
それを知ってか知らずか、不知火が手にした資料を片手にキーボードを指で叩いた。

「今回は初めての建造と言うことなので、神宮司定晴提督から資材と当施設を借用し、2隻建造します。
1隻目は駆逐艦レシピ、2隻目は軽巡洋艦レシピで建造します」
「あ〜〜、っと……確か建造自体は中で妖精さんがやるからどんな艦種・艦艇が出来るかわからないんだったか?」
「はい、ですがあらかじめ用意する資材数を調整する事で、ある程度艦種を絞る事ができます」

不知火がディスプレイとキーボードの隣に設置されたスロットのような物を弄りだした。
それぞれ4つスロットがあり、鋼材・燃料・砲弾・ボーキサイトと書かれている。
そしてその下には4つのレバーがあり、鋼材や砲弾の絵が描かれている。

「先ずは駆逐艦レシピですが、これは各素材の最低量、30で行います。
次に軽巡洋艦レシピですが、燃料250、弾薬30、鋼材200、ボーキサイト30で建造します」

不知火がレバーをガチャガチャと動かし、スロット内の数値を合わせて赤いボタンを押した。

すると、ドッグと俺達のいるキャットウォークの間に壁がせり上がり、ドッグを完全に隠してしまった。

改めてコンテナの様な物体を見ると、今まで灯っていなかった甲、乙と書かれたデジタル時計に時間が表示されていた。

「この時間は……2隻とも駆逐艦の様ですね」
「時間だけでわかるのか」
「はい、戦艦や正規空母の様な大型艦になると4時間を超えます。
大和型では8時間掛かると聞いています」
「いやいや、それにしたって半日で建造出来るとか早すぎだろ……」

自分の常識がずれているのかこの世界がずれているのかわからないが、この建造システムがとんでもない物である事は分かった。

「今回は初めての建造という事で、高速建造材も頂きましたので、早速使用しましょう」

不知火が青いボタンを押すと、ガントリークレーンが動き始め、いつの間にか足元にいた妖精さんをつまみ上げ、ドッグの真上に吊るしあげた。
そして妖精さんの手には火炎放射器の様な物が……。

「なんか嫌な予感が……」

壁の向こうではおおよそ建造している時に出す様な物ではない音が聞こえてくる。
その言葉に表せない魔窟に妖精さんが……落とされた。


「よ、よ、妖精さーーんッ‼︎」

立ち昇る炎。
嫌に男前な妖精さんが親指を立てながらドッグに落ちていき、立ち昇った炎が天井にまで届かんと燃え上がった。


「完成です」

火の手が収まり、コンテナが鈍い音を上げながら開いていく。

「特型駆逐艦18番艦、綾波型の8番艦、曙よ」
「陽炎型駆逐艦15番艦、野分です」

現れたのはサイドテールの少女と銀髪の少女。
俺は帽子を被りなおして一歩踏み出した。

「えっと……うん、貴艦等の直属の上官となる、神宮司一葉准将だ。
曙、野分、よろしく頼む」
「はい、司令。
司令の直属として、尽力致しますッ‼︎」

手を差し出し、野分と握手をする。
そして曙にも手を差し出した。

「よろしくな、曙」
「……ふん」

が、そっぽ向かれてしまった。

「……あれ?」
「…なによ、このクソ提督」
「え⁉︎」

いきなりのクソ呼ばわりに度肝を抜かれる。

「いや、あの……」
「なに? 気に入らないなら艦隊から外せば? 構わないし」

そう言うと曙は1人で工廠から出て行ってしまった。

「……俺何かしたか?」
「いえ、なにも」
「ぽい」
「えっと……わかりません」

3人娘の声が響く工廠内は酷く寂しかった。


◉◉◉


6時間後
リンドヴルム艦内 PX

「どうだった、艦内旅行は」
「はい、とっても楽しかったです‼︎」

駆逐艦野分の前にレトルトパックの宇宙食が乗ったトレイを置きながら席に着く。
野分はキラキラと目を輝かせながらトレイに乗ったレトルトパックの宇宙食を口に運び、美味しそうにうなづきながら1つ、2つと平らげていった。

「未来にはこんなに美味しいものがあるんですね……感激です!」
「うちの艦隊じゃ人気ないけどなぁ、この宇宙食。
製造元は…アナハイムか、月で作ってんのかこれ」
「月…?
人類は月に移住しているんですか?」
「いや、月どころか木星まで行ってる奴らもいるよ」

壮大な宇宙の話に2人で盛り上がる。
その後少し間を空け、2人で御茶を頂く。

「ああそうだ、しばらくの間……野分、君に秘書艦をやってもらう」
「え⁉︎ わ、私が秘書艦ですか⁉︎」
「この艦隊に慣れてもらう意味でも、君を推薦したい。
その身体にも早く慣れてもらいたいからな」
「は、……は、はいぃ‼︎
駆逐艦野分、よ、よよ喜んでお引き受けいたしましゅッ⁉︎」
「ははは、そう固くなるな。
とにかく、よろしくな」

顔を真っ赤にしてあたふたしている野分を宥めながら落ち着かせる。
今まではまりもやラトロワにさせていたが、これで2人とも自身の仕事に身が入るだろう。
まぁ、まりもに至っては反ば強引に秘書官に立候補していたが……。

「さて、じゃあ訓練でもするか」
「は、訓練でありますか?」
「ああ、丁度三笠さんも居るし、ル級も暇そうだしな」


◉◉◉


1時間後 鎮守府正面海域

「よし…野分、準備はいいな」
《此方第1駆逐隊旗艦、野分。
駆逐隊各艦、配置に着きました》
「うん……三笠さん、始めてください」
「了解、各艦、状況開始ッ‼︎」

今回の訓練は、駆逐隊が戦艦と偶然接触した際の戦闘を想定している。
仮想敵はル級に頼み込んで、渋々承諾してもらった。
正確には土下座した上で大和にも説得してもらった。

接近するル級1隻に対し、対するのは野分率いるエインヘリアル第1駆逐隊。
野分を旗艦とした、不知火、夕立、曙の4隻だ。
俺は離れた場所に停泊した三笠の艦橋から、艦橋内に設置したモニターを眺める。
モニターには上空を飛行中のベースジャバーの映した海上の様子が見える。

《第1駆逐隊、出撃ですッ‼︎ 抜錨ッ‼︎》

野分を先頭にした単縦陣の第1駆逐隊が、前進を開始した。

《12時方向、距離15000ッ‼︎
敵艦発見ッ‼︎ 戦艦1ッ‼︎》
「司令部より第1駆逐隊、敵艦を迎撃せよ」
《了解、全艦、砲雷撃戦用意ッ‼︎》


第1駆逐隊がル級の頭を抑えるように回頭を始める。

「丁字戦か……」
《敵艦、右舷10000、主砲一斉射、始めッ‼︎》

ル級と第1駆逐隊双方の主砲が一斉に光を発した。

「ル級は……野分に対し夾叉か、流石だな。
しかし……夕立…なぁ」
「筋はいい子達です。
特に野分と曙は砲術に関しては、磨けば化けますよ。
不知火は平均的ですが、雷撃の正確さで秀でています。
夕立は荒削りですが、いい腕です。
さらに研磨すれば、もっと活躍する筈ですよ」

三笠の評価に相槌を打ちながら、モニターを眺める。

《提督、夕立被弾したっぽい……》
「駆逐艦夕立、艦首主砲に被弾、大破」

モニター一杯に真っ赤な塗料で染まった夕立の主砲が映し出される。

「夕立は機関を停止して投錨、残りは演習を続行だ」
《旗艦了解、演習を続行します》
「夕立はムラが多いな……その分有望でもあるけど」

モニターでは残った駆逐隊がル級を包囲殲滅しようと散開を始めた。
雷撃を得意とする不知火を挟んで曙、野分が砲撃を加えている。

「んふふ」
「な、ちょ、三笠…さん⁉︎」

不意に三笠が抱きついて来る。

「久々に二人っきりなんだし、もっとお姉さんに甘えて欲しいな〜、って」
「もうそんな歳じゃない事くらいわかるでしょうに‼︎」
「いいじゃない、お姉さんが、な・ん・で・も・してアゲルから♡」
「いやいや不味いから‼︎
ちょ、ズボンに手を突っ込まないでよ‼︎」
「んふふ〜、この固いのなぁ〜に〜?」
「だから、ちょ、まっ……アーーッ‼︎」
《ちょっと無線でなにやってんのよクソ提督ッ‼︎》
《あ、う…ふええ……》

久々にどっと疲れた俺が、自室のベッドで気絶していたのを野分に救ってもらったのは、この数時間後であった。 
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