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異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
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伏魔の時間(2016/05/16 一部修正)

 
前書き
いきなり犯人ネタバレ。(笑)

まぁ、当然と言えば当然の流れでもあるんですが………。

あと、ある意味イッキのせいで起ってしまったこととなっているので、すべてが解決後に感染組から色々と集られそうなのが少し心配。(笑) 

 



【視点:樹】



烏間先生のスマフォに突如掛かって来た非通知電話。その内容はE組の半数に人工ウイルスを感染させたという脅迫だった。

脅迫してきた犯人の要求は1時間以内に烏頭――つまり、俺に非武装で完全絶対防御形態の殺センセーを山頂にある普久間殿上ホテルの最上階まで持って来いというものだった。

しかも、犯人の指示に従って行けば、人工ウイルスの治療薬と殺センセーを交換するが、外部と連絡を取ったり、1時間を少しでも過ぎれば治療薬を爆破するという警告までしてくる始末。

大規模暗殺計画を終えた直後、E組生徒の命を盾に第三者が介入して来るとは、烏間先生も予想していなかったみたいで苛立ちを隠せずにいた。


「で、どうすんの?烏間先生。俺は別に1人で行っても構わねぇけど」
「何を言ってるんですか、イッキ君!非武装を指定して来たということは、玉璽(レガリア)を持って行けないってことなんですよ!危険過ぎます!!」
「そうだよ。相手も単独じゃなくて複数犯の可能性もあるのに」
「それにイッキを指定して来たって所も気になるよね。普通、一番弱そうな女子とかを運搬役に指名するもんじゃないの?」


俺が犯人の要求通り、1人で向かう案を烏間先生に告げると、有希子と矢田、速水の3人に待ったを掛けられた。

いや。これでも俺、試験型玉璽(テストタイプ・レガリア)に頼らないと何もできないって訳じゃないんだけど。一応、生身でも縮地とか二重の極みを使えるし、ゾル家の身体操術で爪をナイフの様に伸ばせもする。

ぶっちゃけ、人間凶器みたいな存在なんだけど。まぁ、基本的にA・Tばっか使って、それ以外のスペックは全く活用してなかったから、忘れられていても仕方がないんだけど。


「確かに速水さんの言う通り、南君を指定して来た理由が分からん。南君、犯人に心当たりはないか?」
「心当たりって言われても覚えが―――あっ!」
「あるの!?」


いくつか思い当たる節を思い出し、思わず声に出すと渚がツッコミを入れてきた。


「関係なさそうだけど、思い当たる節といえばE組に入って1ヶ月も経たない頃、本校舎の生徒に因縁つけられて、その日の夕方にハッキングでその生徒の家族の預金残高をマイナス数値にした上、架空の借金まで作ったことがあったな。けど、それは関係ないだろ?」
「「「「「「「「「「……………」」」」」」」」」」


俺の発言にダレ組を含むE組全員が引いていた。ドン引きでないのは、本校舎生徒夜逃げ事件に俺が関与していると、殆どの奴が予想できていたからだろう。


「……南君、ハッキングは犯罪だぞ?」
「暗殺なんて危険極まりないことやってるクラスなんだ。それに比べればハッキングなんて可愛いもんだろ。それ以外となると、鷹岡か?
あいつの存在自体が俺にとって不愉快極まりなかったんで、あいつの預金残高をマイナス数値にした上、警視庁の犯罪者リストに鷹岡の名前を痴漢と下着泥の常習犯として永久記録しちまったし」
「鷹岡が防衛相をクビになった原因は君か!!?」


おおっ!烏間先生が大声でツッコミを入れる姿なんて初めて見た。


「………しかし、これでハッキリした。犯人は十中八九鷹岡だ」
「何でそう言い切れるんだ、烏間先生?」
「鷹岡がクビになった直後、防衛相からあるものが盗み出された。1つはE組で使用される機密費。もう1つ――いや、4つは防衛相が俺経由で南君――君に製作を依頼した試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)だ」
「「「「「「「「「「ぷ、試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)!!?」」」」」」」」」」


………ああ、そういえば鷹岡をブッ倒した直後と夏休み初日に烏間先生経由で防衛相に試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)全種を渡してたな。

あれは確か、小遣い稼ぎ的感覚で渡したんだっけ?試作型(プロトタイプ)試験型玉璽(テストタイプ・レガリア)正規実用型疑似玉璽(プロダクション・サブレガリア)が全種開発できた時点で不要になってたからな。


「けど、あれってマジで試作型(プロトタイプ)だから、俺の使ってる玉璽(レガリア)の60%程度の性能しかなかった筈。少なくとも悠馬達に渡した疑似玉璽(サブレガリア)の方が30%は性能が上だ」
「だが、いくら性能が落ちようが使用者次第で補えるんじゃないか?」
「………まぁ、使用者の才能次第だけど、その可能性は十二分にあると思う」
「それに鷹岡には人工ウイルスを開発する様な技術は無かった。恐らく、盗み出した機密費でその手のプロを雇ったと考えていい。
奴の要求通り非武装で行った場合、君は少なくとも4人の試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)を身に付けた暗殺・戦闘のプロと戦うことになるだろう。それでも君は生きて帰って来れると断言できるのか?」
「………相手の(バトル)LV次第かな。ってか、烏間先生。先渡ししてた4つの試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)盗まれてるのに、夏休み入った直後に残りの試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)を要求するとか、防衛省は何を考えてるんですか?もしかして、阿呆ですか?」
「それに関しては、済まなかったとしか言い様がない。俺も昨日、情報本部長から聞かされるまで知らされていなかったんだ。暗殺計画実行直前ということもあって黙っていたんだが……」


まぁ、試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)の盗難に関してはどうでもいい。防衛省に渡した以上、壊れようが盗まれようが防衛省の責任だ。

それよりも問題は、相手が(バトル)LV300超えの炎系暴風族(ライダー)だった場合だ。ぶっちゃけ、その速度は本気の縮地を使った俺とほぼ同速。(バトル)LV150超えでも、3歩手前の縮地を使った俺とほぼ同速で脅威と言える。

その上、相手は試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)持ちが最低でも4人。A・Tを使った訓練内容は防衛相にも報告が行ってただろうし、その情報を元に相手側もA・Tを使った訓練は行っていただろう。

烏間先生の現時点での(バトル)LVは150。その(バトル)LVを超えることはないとしても、元々が暗殺・戦闘のプロが訓練したと考えれば、相手側の平均(バトル)LVは最低でも100超えと見積もった方がいい。

流石に試験型玉璽(テストタイプ・レガリア)無しで試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)持ちの総合(バトル)LV400が相手となると、無傷で帰って来られる自信はない。


「イッキ君。君はE組で最強の戦力だ。並の軍人や殺し屋が相手でも生きて帰って来られるだけの実力が十二分にある。ですが、それは生きて帰って来られるというだけで、無傷という訳ではありません。
今では神崎さんを始め、E組には君の身を案じる生徒は大勢いるんです。今回のことの発端が君にあったとしても、君が傷付くことを許容する様な者はこの場に誰1人としていない」
「…………殺センセー。凄くカッコいいこと言ってるけど、その状態じゃ色々と台無しだ」
「にゅやーッ!イッキ君、私は真面目に話してるんです!!茶々を入れないで下さい!!兎に角、モバ律さんに頼んだ下調べも終わった様ですし、元気な人は私の指定した場所に今から移動して下さい。大人しく相手の要求に従うよりいい方法がありますので」
「「「「「「「「「「???」」」」」」」」」」


俺達は殺センセーの言葉に疑問符を浮かべながらも、その指示に従うことにした。そして、烏間先生+αを含む非感染組ほぼ全員でA・Tを使って移動すること数分後。俺達がやって来たのは山頂ホテルへと続く崖がある場所だった。


「あのホテルのコンピュータに侵入して内部図面と警備配置図を手に入れました。この崖を登った先にある通用口には警備が配置されていませんので、侵入が容易です」
「敵の意のままにならない手段はただ1つ。動ける生徒全員でここから侵入し、最上階を奇襲。治療薬を奪い取ることだけです。
こんな崖、A・Tを使えば楽々と登れるでしょう。
君達に与えられた選択肢は2つ。イッキ君を犠牲にして身の安全を確保するか、それとも彼と共に敵陣に乗り込み全てを手にするか。どうするかは君達と指揮官の烏間先生次第です」


殺センセーがそう言い切るや否や、17人の生徒の中から1人が躊躇なくA・Tを使って崖を登り出した。その生徒とは有希子だ。


「殺センセー。私にはイッキ君を犠牲にするなんて選択肢はありません」
「……まぁ、未知のホテルで未知の相手と戦う訓練はしてないから、俺達だけで乗り込むのは無理があるけど――」
「烏間先生の指揮があれば何とかなるよね」
「それ以前に神崎さんだけをイッキと行かせたら、男が廃るってもんでしょ」
「こんなふざけた真似仕出かした奴らに、キッチリ落とし前つけさせたいしな」


その後、有希子に続く様に悠馬、片岡とこの場に来ていた全員がEクラス・ハードルの応用で崖を登り出した。俺1人を行かせれば薬は手に入るって言うのに、本当―――


「このクラスの奴らは馬鹿ばっかだ」
「「「「「「「「「「何でもかんでも背負い込もうとする大馬鹿よりマシだ!」」」」」」」」」」


こうして、烏間先生とビッチ先生を含む19人による隠密潜入奇襲ミッションが開始した。


 
 

 
後書き
名簿の時間の章で新たに加わったA・T道&王一覧。

一応、雷の王候補は決まっているんですが、それ以外の候補が全く決まっていません。

是非このキャラをこの王に据えて欲しいというリクエストがございましたら、コメントにどんどんお書き下さい。(笑)

作者の執筆意欲にも繋がります。(笑) 
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