保留荘の吸血鬼
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吸血鬼、山田と出会う
「…って感じのところですね」
助手席に乗っている極から
これから行く留国と保留荘という建物について
説明された
保留荘は留国にある「アパート」のようなところで
何人かが住人として住んでいるらしい
そいつらは全員、生前に凶悪な犯罪者だったという
「…地獄や天国への往来は出来ないのか?」
「地獄へは空間の裂け目?のようなものがあって
そこから出入りできると聞きました
…本当はダメですが
天国に関しては
まだ行けたという話は聞いてませんね」
「…チッ」
「まあ、目立つことをしなければ
ツアーの一環として
行くこともできますので」
「ツアー?そんなものもやってるのか?」
「はい」
「…随分と想像と違うな」
生前に思い描いていた天界との差に
驚き、呆れる
「もうそろそろだ、
ほら、見えてきたぞ」
運転手の獄の言葉を聞き、道路の先を見る
すると確かに、話に聞いていたような建物がそこにはあった
「はい、これ」
獄から一つの鍵を渡される
鍵には201と書いてある
「今日からその番号の部屋が
君の住む場所だ
それじゃ」
それだけ行って
二人は車で来た道を戻っていった
全体で見ても
エジプトで住んでいた館や、
ジョースター邸よりも狭い
ここを他の住民と分けるとなると
かなり狭い
「仕方ない」
階段を登り、
201号室へと向かう
が、目の前で突如204号室のドアが開き
中からフードを被った少年が出てきた
「…?
誰ですか…?」
こっちを見て不安げな表情を浮かべながら
少年が尋ねる
「……フン」
子供に構っている暇などない
まずは部屋に入って
天国へ行く方法を考えなくては
「ザ・ワールド、時よ止まれ」
少年を壁に押し付け、通り過ぎる
201の前に着いたところで
少年が動き出した
「…?
あれ…?」
[カチャッ]
鍵を開ける音に少年が振り向く
同時に、間抜けな叫び声をあげた
「え、エエエエエエエエエエエエエ!」
こっちに走ってくる
面倒なことになりそうだと思い
素早くドアを開けるが
一歩遅かった
少年が服へとしがみついた
「い、今のどうやったんですか!
いつの間に僕の前から
ここまで…」
「黙れ、このDIOの邪魔をするな」
「DIOさんって言うんですか!
教えてください!今のどうやっ…て…」
[ズキュン…ズキュン…]
少年の首に指を刺し、血を吸い取る
ミイラになった彼は
沈黙したまま、床へと崩れ落ちた
「邪魔だ」
それを蹴飛ばし、部屋の中へと入った
久々の生き血だ
普通の味のはずだが、美味しく感じる
中は予想通り小さな部屋だった
「ここで暮らさなければならないのか…
いや、天国に行けばもっといいところがあるはずだ」
さっきから天国の事について考えている
それもそうだ、
目の前に入り口があったのに
入ることができなかったのだ
それだけ欲求も増幅する
「さて、どうすればいいものか…」
部屋の中心に座り、ゆっくりと静かに考え始める
だが、その時間は外からの叫び声により
すぐに終了してしまった
「キャァァァァァァ!!
山田君!どうしたの!?」
女の声だ
山田というのはさっきのやつの名前か
立ち上がり、玄関へと向かう
久しぶりの女だ
楽しめるか、少し確認してみよう
そう思って、部屋のドアを開けた
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