僕のサーヴァントは魔力が「EX」です。
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二つの再会
遠坂凛。
元は国連組織に所属して将来を有望視されていた天才的な霊子ハッカー。
だが二、三年前から現実世界を牛耳る経済団体「西欧財閥」に敵対する組織に参加したらしく、それ以来彼女の噂は聞かなかった。
僕と遠坂凛はまだ現実世界にいた時にNGO団体でのボランティア活動で何度か顔を会わせたことがあり、彼女はその時の事を覚えていてくれたようだ。
「久しぶりだな。前に会ったのは何時だっけ」
「そうね、確か三年前の日本でのボランティア活動の時だったかしら?」
僕の質問に凛は少し考えてから答えてくれた。あの時のことは僕も覚えているが、彼女はあの後すぐに西欧財閥に敵対する道を選んだということか。
正直、何故彼女が西欧財閥と戦うことを選んだのかは気になるが聞かないことにした。聞いたら教えてくれるかもしれないが、聞けばお互いに嫌な気持ちになることが分かったからだ。
「え? 時行って遠坂と知り合いなのか?」
凛と話していると隣に座っている北斗が聞いてきて、それに凛が答える。
「そうよ。友達、と言う程じゃないけど平和君とは現実世界からの付き合いよ。……それにしても青野君。貴方、相変わらず覚悟が感じられない顔をしているわね」
僅かだが心配するような目で北斗を見ていた凛は、次に挑発するような目を僕に向けてきた。何で北斗と僕の態度がそんなに違うの?
「そして平和君? さっきも言ったけど、こんな初心者を気にかけてあげるなんて随分と余裕ね?」
初心者って北斗のことか? 本人を前にして随分な言い様だな。そういえば凛って、こんな性格だったっけ?
「まあ、平和君だったら一回戦くらい余裕かもね。なんたって『ポイズンコレクター』の異名で知られている凄腕のウィザードなんだから」
『『………!?』』
「ポイズン、コレクター?」
凛の言葉に学食に来ていた学生達、恐らくマスター達が驚く。……ただ一人、隣の北斗だけは理解していないようだが。
ポイズンコレクターというのは僕の異名のようなもので、この名前は悪い意味でとても有名なのだ。
「……おい、凛」
「え? ……あっ! ご、ごめん」
彼女のせいで敵のマスター達の警戒対象にされてしまったことにジト目で抗議すると、凛は自分の失言に気づいたようで気まずそうに謝る。
そうだった。そういえば凛って、変なところで「うっかり」を発動させる奴だった。
でもこんなところで「うっかり」を発動させることはないだろう?
☆
「全く……。凛の奴、やってくれたな」
あの後、学食に居辛くなった僕は大急ぎで激辛麻婆豆腐を完食すると逃げるようにアリーナに移動していた。
まあ、元々食事を終えたらここで戦闘訓練をする予定だったからいいけどさ……。
「それじゃあアヴェンジャー。気を取り直して戦闘訓練を始めようか?」
「うん。それはいいけどさ。あの女が言っていた『ぽいずんこれくたー』って何なの?」
アリーナでは霊体でいる必要がないので実体化したアヴェンジャーが、頷いた後に学食で凛が言った僕の異名について聞いてきた。……本当はこの異名のことは言いたくないんだけどな。
「あー……。ポイズンコレクターって言うのは僕の異名のことで、僕は……」
「やあ……。やっと来たんだね。待っていたよ……」
僕がアヴェンジャーに自分の異名について話そうとしたその時、アリーナの奥から一人の男の声が聞こえてきた。
アリーナの奥からこちらに来たのはレーベン・クラウド。僕の一回戦の対戦相手だった。
「レーベン・クラウド? 何でここに? というか待っていた?」
「ふふふ……。可笑しな事を言うね。私がここに来た理由なんて君と戦いにきたに決まっているだろう? ……来い! ランサー!」
レーベンは僕の言葉に不気味な笑みを浮かべたかと思うと目を見開き大声で叫んだ。その次の瞬間、僕達の目の前で強い光が生まれた。
「なっ!? この光は? いや、それよりさっきランサーって……?」
「う、うん。この気配は間違いなくサーヴァントの……。マスター、気をつけて」
話をしているうちに光が弱まって僕とアヴェンジャーが前を見ると、そこにはレーベンと、その隣にさっきまではいなかった体から光を放つ女性の姿があった。
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