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流星のロックマン STARDUST BEGINS

作者:Arcadia
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精神の奥底
  45 自分と向き合うこと

 
前書き
今回はすぐに更新でき...すみません、実は今回の話はストックです(笑)
前回と前々回の間に書き溜めたものです。

今章に入ってから初めて主人公が登場!そして前章で壮絶な退場を遂げたあの人物も!
正直、バトル要素も無く、サスペンス要素も薄いですが、楽しんでいただけたらいいなぁ...と思います。

是非最後までお付き合い下さい 

 
秋の夜の大雨は傘を忘れた人間の体温を無慈悲に奪う。
人々は家路に急ぎ、人工的で不愉快なノイズを抑制し、ある種の沈黙をもたらす中、彩斗とアイリスは両手いっぱいの荷物と共に帰ってきた。
家の門や庭に仕掛けられている多くの監視カメラやセンサーが2人を捕らえ、ちょうど玄関の前に立ったところでハートレスがドアを開ける。
これは疲れ切っているはずの彩斗への気遣いではなく、スターダストを長時間使い続けて力が残存している彩斗にドアを破壊されたくないという気持ちからの行動だった。

「思ったより遅かったわね」
「雨に降られてて、少し雨宿りしてたんだ。タオルか何かくれないか」
「ほら」

ハートレスは面倒臭そうに彩斗とアイリスにタオルを投げ渡す。
アイリスはコピーロイドが精巧に再現したその亜麻色の髪の毛に滴る雨水を拭き取る。
だが反面、彩斗は若干気味の悪さを覚えていた。

「タオルをくれと言った僕が言うのもアレだけど、言われる前から用意してるなんて君らしくないね。明日は雨どころか雪だね」
「ずぶ濡れで入ってこられて嬉しい家主がいるわけないでしょう?それに用意するように言ったのは私じゃないもの」

「兄さん、アイリスさん…」

「!?メリー…」

上の階からはメリーが見下ろしていた。
彩斗とはタオルを放り投げ、靴を無理やり脱ぐと螺旋階段を駆け上がる。

「良かった!目を覚ましたんだ!」
「えぇ!心配お掛けしてスミマセンでした…でもお陰でこの通りです」

自然とメリーは彩斗の胸に飛び込み、彩斗はそれを受け止める。
互いに僅かとはいえ、血の繋がった唯一の肉親であり、家族だ。
それを見ていたアイリスもハートレスにもその感動と安心は容易に想像でき、心温まる場面だった。
だがハートレスはそれをすぐに流し、アイリスの方に寄って小声で話し掛ける。

「どうだった?シンクロナイザーの様子は?」
「本人は死ぬつもりじゃないし、死ぬことに対しても怖いと口では言ってるけど、反面、言ってることとやってることは全く違う」
「……」
「本人も薄々気づいているけど、表面上は必死に怖かったし、死ぬのだって怖いと必死に装ってるだけ…自分は正常なんだって必死に思い込もうとしてるっていう感じがしたっていうのが、率直なところ」
「痛みに関しては?」
「…まるで感じなかったと」
「悪い冗談だわ。普通、人間は攻撃を受ければ痛かろうと痛くなかろうと自然と身を守る為の行動をとろうとするものよ。あんなロボットみたいな戦い方、できるわけない」

ハートレスとアイリスは彩斗の身体、そして意識の中で恐ろしいことが起こっていると実感した。
先程の公園での会話からアイリスは彩斗が嘘をついているとまでは思わなかったが、少なくとも口で言っているだけ、自分はそう思っていても心の奥深くでは死期を悟り、死んでも構わない、死ぬことなど怖くない、どんなに強大な敵でも恐れることなどないという意識が間違いなく存在していると確信した。
彩斗自身も恐らく自分の言っていることと本音は違うと気づきながらも、そう思い込もうとしていると。
ハートレスは予想よりも恐ろしい事態になっていると実感する。
ポケットから採血用の注射器と糸くずを取り出した。

「それは?」
「ものは試しよ」
「でもサイトくんには気づかれる」
「一応、シンクロ能力者には思考を読まれにくいような思考訓練を受けてるわ」
「…サイトくんがあなたを苦手にしてる理由はそういうことだったの」
「読めない、食えない相手はあの子が最も嫌いなタイプだからね。それにあの子だって、身体だけでなく脳も疲労がたまっているはず」

ハートレスとアイリスは彩斗を追うように2階のリビングルームへ向かう。
彩斗の身体は彩斗が自分で思っている以上に疲れて切っていた。
特に脳に関してはシンクロの影響で常人以上に疲労しやすい。
この状態なら彩斗が無意識のうちは殆ど読み取れないはずだった。
彩斗はメリーとリビングの上に買ってきた弁当や飲み物を並べている。
ハートレスはゆっくりと彩斗の背後にまわる。

「あら?何かついてるわよ?」
「え?」
「待って、取ってあげるわ」

ハートレスは彩斗の首筋に注射器を刺す。
そして彩斗が振り返るタイミングで注射器を隠し、糸くずに持ち変える。

「ただの糸くずね」
「なんだ…にしても随分と今日は親切だね…本当に明日は雪じゃないだろうか」

「……かもしれないわね」

彩斗はハートレスに気味悪そうな表情を見せて、椅子に座った。
ハートレスは彩斗の冗談にうまく相槌を打ちつつも、アイリスと目を合わせた。
予想通りとはいえ、ここまで予想通りだとむしろ気味が悪いのはハートレスとアイリスの方だった。
彩斗は注射器を首筋に刺されて採血されたことに全く気づいていないのだ。
刺された際や針が抜かれた際の痛みを感じていない、それどころか蚊に刺させた程度の感覚なのだろうか。
不思議そうに首筋をポリポリとかいている。
むしろその様子を一瞬だけ見てしまったメリーの方が違和感を感じているようだった。

「お腹空いたろ?食べよう」
「えぇ…もうお腹と背中がくっつきそうです。3日近く何も食べてなくて…」
「じゃあレンジで…」

彩斗がレンジの方を向いたのと同時にメリーは我慢できず、いただきますの挨拶も忘れて弁当にがっついた。
いつもの礼儀正しいメリーからは到底信じられない行動だった。
いきなり冷たいままのナポリタンを獣の啜り上げる。

「ちょっと…まだチンしてないんだけど」
「……!!」

メリーは夢中でまるで気づいていない。
彩斗はたこ焼きとミートドリア、そして自分のカルボナーラをレンジに入れて加熱時間を2分40秒に設定する。
今までメリーがここまで我を忘れているのを見るのは初めてだった。
だが少なくとも2日、飲まず食わずだったことを考えれば当然だった。

「私の分は?」
「君には牛豚づくし弁当。多分、君の嫌いなものは入ってないだろう?」
「気味が悪い…今日に限って随分と聞き分けがいいじゃない」
「聞き分けがいい?違うね。ただ僕は君が思っている以上に利口なだけさ。持ちつ持たれつ、ジョーカープログラムとその弁当で今回のことは手を打とうじゃないか」
「そういう魂胆…ろくな大人にならないわ」

ハートレスはため息混じりにコップに烏龍茶を注いで、彩斗の次に電子レンジを使う。
正直、ハートレスはメリーを救う手助けをする代わりにジョーカープログラムを要求した、つまりそこで等価交換は成立つもりだった。
だが彩斗はメリーの重さをその程度とは考えておらず、ついでにここで縁をきっちりと切りたかったのだろう。
誰から見ても不思議とスッキリした顔で誰から見ても笑顔に近い表情だ。
彩斗は滅多に笑わない。
普段の彩斗を見慣れているハートレスからすれば、違和感だらけだが、本来なら笑いながら友達と遊んでいるのが正常な年頃だ。
メリーのもとに温めた残りの弁当を運んでいく後ろ姿を見ながら、ハートレスは本来の彩斗というものについて考え直していた。

「一応、もう一度聞いておくわ。身体に異常は?」
「うん、強いて言えば、結構疲れてる。あと徐々にだけど残留してる力が抜けてきたみたいだ」
「疲れはあるのね?味は?」
「味?...いつもどおり、コンビニならでは味。塩分が多め」
「……あっそ」

彩斗はカルボナーラを啜りながら味の感想を語った。
確かに先程までの怪力は鳴りを潜め、コンビニでつけられたプラスチックのスプーンとフォークも曲げること無く使えている。
ハートレスは再びアイリスと顔を合わせる。
彩斗は痛覚は麻痺しているようだが、味覚、視覚、疲労感とその他は正常だった。
この手の症状では感覚が大概全ての感覚が麻痺していることが多いが、今のところ確認できたのは痛覚の麻痺のみ。
異変があると言えば、メリー以外の者に対しても笑顔を浮かべ、声のトーンが少し明るいことだろう。
幸福感に満ち足りている、いわゆるテンションが高い状態とでも言えばいいのだろうか。
普段の彩斗をよく知らなければ、変化は感じないだろうが、長い付き合いのハートレスとメリーは違和感を覚えていた。
不気味と言えば不気味だが、心配を掛けないように無理しているとも思えない。
歳相応に近づいた、そんな様子だ。

「そういえばさ」
「どうかしたの、サイトくん?」
「その後のWAXAの動きとかに変化は?」
「…目立った動きはない。あなたが暁シドウに情報面で手助けしたのが、吉と出るか、凶と出るかの答え合わせはまだ出てないわ」
「じゃあ、僕が持ち帰った裏切り者のSWATの手帳型端末は?もう調べたのか?」
「えぇ」
「中身は?」

ハートレスはiPadを取り出し、操作すると彩斗に渡す。

「身分証のID、システムファイル、キャッシュファイル、ログイン履歴、予定表……アダルト動画….」
「ハッ!?」
「え!?見ちゃダメですよ!兄さん!!」
「サイトくん!まだ年齢…」

「嘘だよ」

彩斗はやはり少し変だった。
いつもならこんなジョークは言わない。
大概、皮肉たっぷりか悪趣味なジョークばかりだ。
しかも3人の反応を面白がっている。
だが違和感を覚えていたのは彩斗も同じだった。
不思議と気持ちが高ぶってくる。
家族ができたような幸福感と自分が今思っている以上に疲れているようで、うまく頭が回らない状態で不思議と普段は見れない3人の反応を見ようという悪戯心が働いたのだ。

「…ゴメン。えっと…これは….」
「それが一番のネタでしょうね」
「WAXAニホン支部の全職員のデータ…」
「多分、売るところに売れば最低でも数億ゼニーでしょうね」

彩斗はデータを開く。
そこには大量の名前と性別、部署、生年月日、身長、体重、血液型、顔写真など多くの個人情報が所狭しと並んでいた。
他にも1人一人をクローズアップすると声紋データのサンプルや両手両指の指紋、DNAサンプルなども登録されている。

「WAXAが警察や他の機関を裏で調べているように、警察の方でもWAXAを調べているってわけか」
「所詮、WAXAは本部がアメロッパにあるスパイ機関ですからね。一応、ニホンでは単独で動いているように見えて、公安調査庁第0課、本来なら存在しないセクションに収められている。こっそり覗いてるのも、覗かれてるのも周知の事実ってところでしょう」
「その気になれば、流出させること自体が武器になる。互いにミサイル撃ち合って、道連れにもできるってわけ…ん?」
「どうかした?」

彩斗は画面をなぞる指を止めた。
メリーはその間にも食事を続け、気づけばナポリタンとたこ焼きとミートドリアを全て平らげていた。
そして彩斗のイスの裏に回り込み、その画面を見た。

「誰ですか?リサ・ホープスタウン?見た感じは私と同じくらいの歳の女の子までWAXAにはいるんですね」
「あぁ、人材不足が深刻なのはどの業界も一緒らしいね。もう1人、マヤ・ホープスタウン、双子の妹だ」
「まさか…この娘がタイプ…」
「……フッ」

彩斗は一瞬、ニヤリと渡った。
双子の顔は瓜二つ、証明写真ではアクセサリー類を身に着けていない為、見分けはほぼつかない。
誰が見ても年齢相応で幼い。
だが彩斗が注目しているのは、恐らく警察の側が付け加えた備考欄だった。

氏名:Lisa=Nina=Hopestown
読み:リサ・ホープスタウン
生年月日:22V7年5月5日生
性別:女
年齢:11歳
所属:WAXAニホン支部 諜報部
階級:分析官長 1級プログラマー
職員コード:7123-5988-02R1
採用日時:22X7年5月6日
国籍:クリームランド
現住所:才葉シティ スカイタウン 霧谷区富士野1-1 WAXAニホン支部職員女性寮502号室
緊急連絡先:02X-8A13-8322 音々シティ 港区ドリームランド希望ヶ谷4-32 ホープスタウン教会
身長:145cm
体重:34kg
血液型:B型 RH+
資格:日本語検定准1級 システムアナリスト
備考:WAXAニホン支部の管制室における頭脳の一部を担う分析官である。コンピューター、ネットワーク等において高い技術力を持ち、WAXAとの繋がりのある初等教育機関による通信教育を受けている。
家族は両親が死別、妹に同じくWAXAニホン支部分析官マヤ・ホープスタウンがいる。
かつて警視庁のシステムに侵入し、大量の機密データを流出させたクラッカー・コードネーム『ヘンゼル』である疑いが濃厚であり、他にも大量の不正アクセスを行っている可能性が高い。



氏名:Maya=Sofia=Hopestown
読み:マヤ・ホープスタウン
生年月日:22V7年5月5日生
性別:女
年齢:11歳
所属:WAXAニホン支部 諜報部
階級:分析官長 1級プログラマー
職員コード:7123-5988-02R2
採用日時:22X7年5月6日
国籍:クリームランド
現住所:才葉シティ スカイタウン 霧谷区富士野1-1 WAXAニホン支部職員女性寮503号室
緊急連絡先:02X-8A13-8322 音々シティ 港区ドリームランド希望ヶ谷4-32 双葉・ホープスタウン教会
身長:146cm
体重:33kg
血液型:B型 RH+
資格:日本語検定2級 システムアナリスト
備考:WAXAニホン支部の管制室における頭脳の一部を担う分析官である。コンピューター、ネットワーク等において高い技術力を持ち、WAXAとの繋がりのある初等教育機関による通信教育を受けている。
家族は両親が死別、姉に同じくWAXAニホン支部分析官マヤ・ホープスタウンがいる。
かつて警視庁のシステムに侵入し、大量の機密データを流出させたクラッカー・コードネーム『グレーテル』である疑いが濃厚であり、他にも大量の不正アクセスを行っている可能性が高い。




「『ヘンゼル』と『グレーテル』…まさかこんなところにいるとはね。しかも本当に僕より年下か」
「ヘンゼルとグレーテル?童話ですか?」
「クラッカーの名前だよ。昔、少しだけやり取りしたことがあるんだ。しばらく見なかったから、てっきり捕まったのかと思ってたけど」
「WAXAの分析官として徴用されてたってわけですか。相変わらずWAXAっていうのは、半グレみたいな人ばっかり逃げ込むんですね」
「まぁね。でも中々、可愛い顔してるじゃないか」
「…私とどっちが可愛いですか?」
「…もちろん、メリーだよ。ただし笑顔ならね」

彩斗はムスッとして餅のように膨れていくメリーの柔らかな頬を指で突きながら、微笑んでみせた。
するとメリーは今度は顔を赤らめる。

「もう…反則ですよ…でもアイリスさんの方が…」
「気にし過ぎだよ。そんな人によって好みは違うんだから、自信を持っていい。僕の妹でいいのかってくらいメリーは可愛いよ。もちろんアイリスも」
「…そんな私が…可愛い….」

「あなた…そんなことを誰彼構わず言いふらしてるんじゃないでしょうね?」

メリーとアイリスを褒める彩斗に口に豚肉を含んだハートレスは冷ややかな視線を向けていた。
彩斗は今までの経験から自分は能力も容姿も最低な部類の人間だと思い込んでいる節があった。
それ故に周りの全ての人間に自分を過小評価して褒める悪癖があった。
だがそれは大きな間違いで、彩斗は少女のように美しい顔立ちと高い学力、思考力、運動神経、様々な分野に対する才能を兼ね備えている。
それに気づかずに誰彼構わず褒めちぎることは、思いもしないところで嫌味に思われたり、恨みを買うことに繋がりかねない。

「…そんなことはないけど」
「悪いけどあなたにそんなことを言われたら、勘違いする女の子なんて世にはザラにいるんだから。知らないところで人生を狂わせるかもしれないわ」
「まさか」

「いい?あなたはあなたが思っている程、容姿に恵まれていない人間でもなければ、無能な人間でもないわ。まず自分を知ることね」

「自分を知る…?」
「あなたは人の心を読むことは得意でも、自分にはまるで興味が無い。きっとあなたの魅力に心奪われている人間はメリーとアイリスだけじゃないわ。例えば、私に見舞いに行かせたあの娘、あの娘がただの親切であなたに近づいたとでも思うの?」
「……」
「学校で1人、孤立してほぼ全員から目の敵にされている人間を助ける?自分だって同じく辛い目に合うことは、いくら中学1年生、13歳程度の脳みそだって容易に想像がつくでしょう?」
「ミヤは僕に魅入られていたとでも言うのかい?学校全体から嫌われていた僕に…」
「今までの彼女の行動を聞く限り、否定できる要素は見当たらないんじゃない?あなたとメリーも似たようなものよ」
「……」
「メリーは自分の命が危ぶまれることを承知で囮になってあなたを逃した。そしてあなたは銃火器を携帯した傭兵の巣に蜂の巣になる危険も顧みずにメリーの救出に向かった。彼女も自分がいじめの対象になることを承知であなたの味方に立った」
「違うね。僕に魅力が無いから、どうでもいい人間だから、皆、ストレスの捌け口にサンドバッグにしていたんだろう?」
「嫌われる、疎んじられる、自分から何もアプローチをせずともそんな仕打ちを受ける。その原因の大半はその人間に劣等感を感じることから生まれる。エスカレートすればそれは暴力へと変わり、自分たちの価値を証明し続ける習慣へと移り変わっていく。あなたが苦しむことで安心する人間のクズへと」
「僕の落ち度はどこにあったんだろう…」

彩斗は爪を噛みながら、目を逸らす。
その様子はハートレス、メリー、アイリスの誰の目から見ても、彩斗がかなり動揺していることを確信させた。
いつもの彩斗なら顔色を変えずに流そうとする。
何かしていないと落ち着いていられない程、動揺するのは珍しい。

「あなたに落ち度なんてないわ。勝手にあなたに劣等感を抱いて、勝手に矛先をあなたに向けて落ちていったゴミクズとそんなゴミクズが怖くてあなたに手を差し伸べられなかった腰抜けだらけだったというだけのつまらない話よ。そしてそんなことはあなたが気にする必要もない」
「……」

「結局、何が言いたいかというと、あなたは自分が思っている以上に優れた人間。でもその魅力は一部の人間に忌み嫌われることもあれば、人生を狂わせるくらいに惹きつけてしまう。だから気をつけなさい、あなたの何気ない振る舞いで影響されてしまう人間もいる。誰にでも優しくするのが、常に正しいこととは限らないわ。もっと自分と内面と外面を客観的に見た上で向き合う時間を作ることね」

彩斗は烏龍茶を啜る。
結局、彩斗は自分自身について考えることも無ければ、知ろうとしなかったのだ。
自分自身が人を狂わせる程の魔性を持っており、それを無意識に振りかざしている。
それがミヤだけでなく、メリーやアイリスおも巻き込んでしまうと思うと背筋が凍る。

「まぁ、何にせよ、あなたはもっと自信を持っていいってこと。その上で他人に接すればいい」
「…ホントに珍しいね、君が僕を励ますようなことを言うなんて。本当に雪だね、明日」
「別にあなたがやたらと自虐なのか、本当にそう思ってるのか、謙遜し過ぎるから腹が立っただけよ」

「でも本当にそうですよ!もっと自信を持って下さい!」

メリーは下を向く彩斗を励ます。
彩斗は嬉しい半面、誰より自分が一番、自分のことを知らなかったという事実にため息が出そうだった。
誰よりも自分のことは分かっているつもりだった。
だが本当は心の何処かで自分のことを知るのを避けていたのだ。
自分の素性も何も分からない、考えても仕方ない、ただ分かるのは自分が普通の人間ではない怪物ということだけ。
それがどれほど恐ろしいことか理解できるようになった時から考えるのを止めた。
自分に興味を無くし、それを埋めるように夢中になれるものを探した。
その結果が今の自分だった。

「とりあえず、ありがとうと言っておくよ。でも君は僕が嫌いだろ?どういう風の吹き回しなのか…」
「そうね。でも私はあなたの才能と能力だけはちゃんと評価しているつもりよ。あなたの皮肉の仮面に隠れたその本性もね」

ハートレスはゆっくりと立ち上がる。
彩斗は微妙な気分だった。
本当の自分をちゃんと見ていてくれる反面、全て見透かされているような気がしたからだ。
ハートレスというのはこういう人間だということは理解している。
全世界の食えない人間の代表という言葉が似合うほど食えない上、いつも見透かしたような態度で接してくる冷たい女。
しかしそれは表面上だけでちゃんと人間らしく血が通った人間だということも知っているつもりだった。
ハートレスは風が吹き込み、カーテンが揺れるベランダの方へ向かう。

「…ねえ、久しぶりに聴かせてくれる?」

「冗談だろ?」

ハートレスがカーテンをめくると、開放的なベランダが広がっていた。
ちょうど玄関の天井の部分に当たるのだろう。
星空を眺めるには方角も立地も完璧、ちょうどデンサンシティのデートスポットで有名なデンサンタワーの展望台にも勝るとも劣らない眺めだ。
むしろ閑静なマンション街な分、2人きりの時間を過ごしたいカップルにはウケが良いかもしれない。
しかしちゃんと雨が入ってこないように
そして、そんな雰囲気を演出するようにベヒシュタインのピアノが月明かりに照らされ黒く輝いてた。


「僕に弾けって?なぜ?」
「あなたの演奏を最後に聴いたのはもう3年近く前かしら」
「理由は?」
「言ったでしょう?私はあなたの才能と能力はちゃんと評価してる。私もあなたの魅力の一部に取り憑かれた人間の1人ということよ」
「やめてくれ、さすがに気持ち悪い」
「勘違いしないでよ?あなたの演奏が気に入ってるだけ。別にあなたのことが好きなわけじゃないわ。そこの2人と違ってね」

「「!?ッ…」」

「昔はよく弾いてたでしょう?パソコンで悪い遊びを覚える前は、喧嘩したり、辛かったり、何かある度にやることは読書かピアノ。自分を見つめなおすには時に童心に戻ることも大切でしょう?」
「…そうだね。それにしても、よく覚えてるものだ。僕も忘れてたのに」
「誰もいなくなった後の部屋で誰に教わったのか、心を落ち着かせる為により良い音を鳴らそうと夢中になることで嫌なことを忘れようとしていた。悲しい顔で、酷い時は泣きながら何時間も何時間も。それを初めて見つけた私はこう言った…」

「『ピアノはそんな悲しい顔で弾くものじゃない。弾いている理由がなんであれ、例え悲しくてもそれを隠して弾くのが客とピアノへの礼儀』…だったね」

そう呟くと、一度、アイリスとメリーの方を向いた。
2人もまるでヒーローショーが始まる前の子供のように純粋な目でこちらを見ていた。
どうやら2人も聴いてみたいらしい。
特にメリーに関してはハートレス同様にかつて彩斗の演奏を聴いたことのある人間だ。
その演奏が懐かしくなったのか、疲れた表情ながらもアイリス以上に楽しみにしているような印象だ。
指でテーブルを叩き、スターダストの後遺症が僅かに残っていることを確認する。
彩斗はゆっくりと立ち上がり、何かスッキリした顔でベランダに出るとピアノの前に座った。
そして一度ため息をつき、鍵盤蓋を開く。
その仕草は流れるようにスムーズで何処か美しかった。

「いいよ。弾いてあげる。ただし努力はするけど鍵盤を壊さない保証は無いよ」
「……」
「あと、ハートレスからは演奏料をいくらか取る」
「あのね…演奏の腕には自信を持ってもいいけど、それは自信持ち過ぎ」
「リクエストは?」

「…特に無いわ。あなたがリラックスして自分と向き合えるように、思ったまま弾いてごらんなさい」

「…皆さん、今日はお忙しい中、またお足元の悪い中、来てくれてありがとう。今日は短い時間だけど、楽しんでいってくれると嬉しいな」

彩斗は立ち上がり、軽く演奏会らしく挨拶をすると、軽く会釈した。
アイリスとメリーはベランダの方に座っているイスを向け、それに応えるように拍手を送った。
彩斗はゆっくりと座り、両手を鍵盤の上に乗せた。

「フゥ…」

一度、深呼吸する音が僅かに響く。
それが演奏のスタートを告げた。
指がゆっくりと動き出し、その旋律を奏で始める。
ちょうとベートーヴェントのピアノ・ソナタ第14番『月光』の第1楽章に似ていた。
静かな月夜にふさわしい落ち着いた旋律、だが哀愁感に満ちた世界が広がっていく。
それを聴いているだけで、ハートレスとメリー、更にはネットナビであるアイリスの視界まで変わっていった。
月明かりが幻想的に屈折しながら広がっていく美しい光景に心から怒りや憎しみの負の感情が消えていく。
自分の身体までも果てしなく透明に透き通っていくような感覚に脳の奥が痺れていくのだ。

「ッ…」

まだ演奏が始まって30秒と経っていないというのに、既にアイリスはその旋律とそれを奏でる彩斗の美しさに完全に心奪われていた。
彩斗のその純粋な心が音となってアイリスを包み込み、彩斗の優しさに守られているという感覚で胸が一杯になっていく。
アイリスはその時、ようやくハートレスの先程の言葉を完全に理解した。
確かに彩斗の優しさや美しい容姿に心奪われる人間は多いだろうとは思っていた。
だがこのこんなにすぐ近くでこの魅力に毒され続ければ、彩斗無しでは生きていけないとまで思ってしまう。
本当はガラス細工のように繊細で簡単に崩れてしまいそうで、それでいて凛々しい心で強く生きている彩斗の側にいて守ってあげたいというエゴが生まれる。
ちょうどミヤも同じように思ったのだろう。
長い間、いじめに必死に堪え、自分の心を隠し続ける彩斗の姿を遠目に何度も何度も見ているうちに、その強さと優しさに心奪われていき、気づけば彩斗の側に立っていた。
最初に彩斗からミヤの話を聞いた時から自分と近いものを感じたが、この想像は大き外れていないと確信した。

「…大したものね、全く衰えてない」

ハートレスもその演奏には納得し、いつもなら絶対に見せないような表情を浮かべていた。
いつも無表情ながらも、神経を尖らせて眠りや安らぎという言葉を忘れたようなハートレスがこの時ばかりは深く目を閉じ、安らかな表情になっている。
この変化は普段から顔を合わせている彩斗やメリーですら驚きだろう。
荒んだ心を癒やし、隠されていた本性が姿を現す。
そんな美しい旋律であることは疑いようがなかった。
そろそろ演奏開始から1分、雨雲が流れ、月を覆い隠し、一瞬目の前が真っ暗になる。
その瞬間、今まで溜め込むように続いた切なくも優しい旋律が一気に弾けた。

「!?…」

雨の激しさが増し、激しい旋律に変わった。
ちょうど季節が秋から吹雪の舞う冬へと移り変わった時と同じくらいの変わり様だった。
彩斗の指は凄まじい速度で鍵盤を叩いている。
吹雪の中を全力で走っているような光景が頭に浮かぶ。
だが変わらないのは、切なさが主旋律を形作っていることだ。
それがこの曲の一貫したテーマだった。

「…スゴイ」

次々と打ち込まれていく音のピースはパズルのように1つの形を作っていく。
彩斗を知っている人間ならば、誰でもそれが最終的に何になるのかは想像がついた。
彩斗の心そのものだ。
だがここまで忠実に彩斗の心が現れている曲があるとすれば、それは彩斗が自分で作曲したものだろうということはアイリスも察しがついた。
繊細で美しい曲と彩斗の演奏の技術が相まって、自分でも心が奪われていくのが分かる。
プロのピアニストに勝るとも劣らない演奏だった。
確かに彩斗が自信を持ってハートレスに演奏料を請求するのも分かる。

「Winter Footsteps…ですよ」
「え?」
「昔、スズカさんにファンレターと一緒に送った曲です。新曲で悩んでるってラジオで言ってたのを聞いて」
「…そう…なんだ」

メリーは小声でアイリスに曲のことを教えた。
僅かな情報だったが、少し彩斗の心の中が分かった気がした。
心に閉じ込めていた本音を誰かに言えば、楽になれる。
自分の本音の詰まった曲を誰かに聴いてもらえば、抱えていたものを少しでも吐き出せた気になれたのだろう。
彩斗自身はスズカに聴いてもらえるだけで十分だったはずだが、予想もしないことにそれが世に出てしまい、そしてこれまた予想もしないことに多くの人々からの反響を呼んだ。
だが納得もいった。
ピアノの楽曲にしては少し違和感があるところがあったのは、スズカの手に渡った後のアレンジに彩斗が影響されたからだ。
ギターやベース、ドラムなどパートもピアノで表現しようとしているのだ。
だがそんなことを考えている間にも曲は一番の聴きどころと言うべき、サビの部分に差し掛かった。
スズカの声が聴こえてくるようだった。
疾走感は最高に達し、彩斗を取り囲む景色は次々と変わっていく。
そして休むまもなく、爽快な音楽が流れていき、気づけば約4分半程の演奏は全て終わっていた。

「……」

彩斗は一度、深呼吸をすると鍵盤蓋をゆっくりと閉じ、立ち上がった。

「今日は…これでおしまい。1曲だけの短い間だったけど、楽しめたかな?ご静聴をありがとう」

そう言って一度、深く礼をした。

「サイトくんはスゴイね。本当はこんなに色んな才能に恵まれて。きっといつか、皆、サイトくんの事をちゃんと分かってくれる日が来るよ」
「…だといいな」

彩斗の表情は演奏の前後で大分変わった。
演奏が自分の心を癒やしたのだろう。
だが反面、メリーの様子が僅かにおかしかった。
何か必死に抑えていたものが、溢れ出しそうになっているようだった。

「……」
「メリー?どうかしたの?...ックション!!!」

彩斗はメリーに声をかけようとした瞬間、大きなくしゃみをした。

「サイトくん…さっき雨で濡れたから…」
「全く…ちょっと待ってなさい。演奏料に風邪薬持ってきてあげるわ」
「随分と安いコンサートだったね。メリー?どうしたんだ?」
「いえ…ちょっと…」

メリーは掠れそうなくらい小さな声で何を言っているのか聞き取れなかった。
シンクロを抑えている彩斗にはまるで想像がつかないが、彩斗とアイリスが買い物に出かけている間のメリーの様子を見たハートレスにはすぐに理解できた。

「あと、お風呂に入ってらっしゃい、メリーと一緒に。2人仲良く3日近く風呂に入ってないんだから」
「え…?僕とメリーで?」
「ええ、風邪を移されると面倒だし、時間の短縮にもなるし」
「でも…」

彩斗は戸惑った。
もう何年もメリーとは一緒の風呂に入ったことはないのだ。
自分はいいとしても、メリーは嫌がるだろうと思っていた。

「いいわね?メリー?」
「…はい。行きましょう、兄さん」

メリーはそう言って彩斗の腕を引っ張った。
だがこの時、ようやく彩斗は気づく。
メリーは平気そうに振舞っているが、自分と同じで何か吐き出したいのに溜め込んでいるものがある。
そもそも普段は兄妹であることを意識させないように「サイトさん」とあくまで彩斗のネットナビとして振舞っているのに、先程からは「兄さん」と妹として振舞っている。
これは兄としての彩斗を頼りたい、甘えたい、話を聞いて欲しい時の振舞いだ。
メリーは滅多にこんな顔を見せない。
彩斗は自分の迂闊さを実感した。
自分が抱えているものを吐き出すので精一杯になっていて、気づけなかったのだ。
浴室に連れて行かれる最中、彩斗は自分の未熟さに怒りを覚え、唇を強く噛んだ。




















「おい!っくそ!!手荒に扱いやがって!!」
「マヤちゃん…まだ子供なのよ。丁寧に扱ってあげて!」

「留置所では女だろうと子供と扱いは皆同じだ!入れ!!」

マヤとヨイリーはそう言い放たれ、牢に入れられる。
持ち物は全て没収された。
鉄格子から看守の机の上に置かれているのが見える。
身分証、財布、交通ICカード、ロッカーキーとルームキー、頭につけていたカチューシャとトランサー、支給されていた端末のNexusと私物のAQUOS ZETA、USBフラッシュメモリー。
そして一般の隊員に支給されるREGNO・ソーラーテック ダイバー、定期的な電池交換の他、自動で時間のズレを修正する電波受信機能、20気圧の防水性能、時間の経過を一目で確認できるダイバーズベゼルを搭載していながら価格はお手頃というニホンメーカーの技術力の高さを感じることのできる一品だ。
決して高い=性能がいいというわけではない。
低価格で性能が高いものを世に出せるということの方が高く評価されるべきなのである。
対し、ヨイリーの所持品はトランサー、財布、白衣、ピンセットと導線、研究室へのキー、ハンカチ、iPhone、Cyber-Shot WX、USBフラッシュメモリー2本、SDカード4枚、CITIZEN・エクシード エコドライブ。
さすがに眼鏡までは没収されなかったのが、せめてもの救いだった。
だが不思議なことにもう1つトレーが用意されており、そこにも没収品が並んでいる。
見渡す限り、他の牢には誰もいなかった。
マヤは看守の方を睨みつけながら、中指を立てて舌を出した。

「ったく、これからどうするか…」
「シドウちゃんがうまくやってくれることを祈るしかないわ」
「残念ながらそう言ってもいられないね。何とか抜けだして、木場の悪事を暴露してやるんだ。姉ちゃんと笹塚だけじゃさすがに頭数的に少な過ぎる」

マヤは鉄格子に一発蹴りを入れた。
当然ながら傷ひとつつかない。

「…だったら、チャンスかも」
「え?」
「確か、この留置所の真上が木場課長のオフィスだったはず」

「ハァ!?この留置所の上の階にオフィスだと!?確か上は使われてない談話膣とその上は屋上だろ?」
「談話室を改装したそうよ。ちなみに課長の部屋は情報は転送できて、こちらの動きも監視できるけど、ローカルネット経由では侵入できない特殊なクローズドネットワーク。もし侵入するなら、課長室にある無線LANから直接アクセスするしかないわ」
「なるほど。留置所がある意味、壁になって電波を拾えないわけか。それにこの階でパソコン開いて何かやってたらさすがに職員でも怪しまれる。でも真下のここなら電波を拾える…」

マヤは頷きながら、一旦その場に座る。
だが次の瞬間、奥の方から声が聞こえてきた。

「…うっ…うぅぅぅ…」

「!?えっ、なに!?」

薄暗い牢獄の奥の方にもう1人、誰かがいるのだ。
マヤは立ち上がり、目を凝らす。
だが人影は確認できない。
だとすれば可能性は1つ、床に倒れているのだ。

「おい、アンタ!?」
「酷い怪我だわ…待って、今止血するから」
「アンタ、確か…そうだ、木場に無理やり逮捕された…」

「うぅ…クッ…」

もう1人の囚人、それは木場に罪を着せられて逮捕された少年だった。
無実でありながら、無理に自白させようと相当な暴力を伴う取り調べという拷問を受けたらしい。
全身がアザだらけで所々から出血している。
だがその顔だけはいくら腫れていても見分けがついた。
ロックマンエグゼのオペレーター、光熱斗に他ならなかった。




 
 

 
後書き
彩斗の趣味と特技が少し掘り下げられました。
前から作曲したり、機械いじりだったり、読書だったり、趣味はいくつか話の中でポロッと出てきましたが、今回ようやくその断片が披露されました。
そして前章で無罪の罪で捕まった熱斗もラストで僅かに登場しました。

生き別れた兄が妹と風呂に入る羨ましい展開の中、殴られ蹴られ、年下の女の子と一緒なのは同じでもおばあちゃんもセットで牢屋という大分酷い扱いを受けています(笑)

そんな羨ましくも悩み多きお兄ちゃんとお人好しが高じて目をつけられて捕まちゃった弟の今後にご期待ください。

彩斗の変化が意味するところなど謎が増えつつも、自分と向き合って前に進んだり、話が複雑になってきています。
大分昔の話の伏線が突然回収されたりするので、読み返すのも大変、という人はお気軽に質問して下さい(笑)

登場人物が多く、話も複雑という物語の都合上、色んな人が移り変わりながら進みます。
そのため今後はより主人公が登場しない回が多くなったりすることもあると思いますが、気長に読んでいただけると幸いです。

感想、意見、質問等はお気軽に!

※7月5日、感想にてモーツァルトとベートーヴェンに誤記があると指摘されたので修正しました、申し訳ございません。
ご指摘いただいた方、ありがとうございました。
 
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