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真田十勇士

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巻ノ二 穴山小助その八

「そうしたことは」
「お父上や兄上からは」
「よく褒めて頂きますが、母上にも」
「それがですか」
「どうにも気恥ずかしく」
「そうしたものですか」
「はい、ですから小助にも」
 穴山を見つつ雲井に語る。
「このことは止めてもらいたいのです」
「では普通に」
「うむ、その様に頼むぞ」
「さすれば」
「では行こうぞ」
 このことを話してだ、そしてだった。
 幸村は穴山と雲井と共にその山奥の賊達の隠れ家に向かった、案内役をする三人の賊達は幸村にあらためて言った。
「この山は深くです」
「そして険しいので」
「足元にはお気をつけ下さい」
「その様じゃな、しかし」 
 幸村はその三人に答えた。
「これ位の山ならば拙者は大丈夫」
「上田の辺りはですか」
「こうした山が多いのですか」
「だからでござるか」
「うむ、それに修行では飛騨に行ったこともある」
 幸村はこのことも言った、彼のこれまでの修行のことも。
「そこではここよりも遥かに険しい山もあったからのう」
「そうした山と比べればですか」
「そうした山なら」
「大丈夫でござるか」
「うむ」
 その通りだとだ、幸村は三人にまた答えた。
「何ともない、油断はせぬがな」
「そのお言葉を聞いて安心しました」
「では我等もです」
「我等の道を案内させて頂きます」
「頼むぞ、足元の険しさだけでなく」
 幸村は今度は自ら言った。
「蝮にも注意せねばな」
「はい、それですな」
「実はこの山は結構蝮が多いです」
「熊や猪もおります」
 そうした危うい獣もというのだ。
「狼は実は大人しいのですか」
「凶暴な山犬も多く」
「そういったものにもお気をつけ下さい」
「ではそうした獣が出れば」 
 穴山は三人の言葉を聞いて言った。
「わしが幸村様をお護りしよう」
「その鉄砲でか」
「如何にも」
 鉄砲を手にしてだ、穴山は幸村にも応えた。
「熊も猪もお任せ下さい」
「では頼めるか」
「これまで多くの山を越えてきましたが獣にも賊にも遅れを取ったことはありませぬ」
 穴山は幸村に不敵な笑みで答えた。
「ですから」
「熊や猪にもか」
「山犬もどれだけ数がいようとも」 
 大丈夫だというのだ。
「ですからご安心下さい」
「それは何より」
「実は近頃我等も山犬に困っていまして」
「熊にも」
「賊も獣にはやられるか」
 幸村は三人の言葉を聞いて述べた。
「そうなるのか」
「刀や槍、弓矢で己を守ることは出来ますが」
「全て倒すまではです」
「出来ておりませぬ」
「左様か」
「はい、近頃特に一匹とてつもなくでかい熊が来まして」
「お頭ならば倒せると思いますが」
「それでお頭もそろそろ出ようとされていますが」
 しかしというのだ。 
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