魔法科高校~黒衣の人間主神~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
九校戦編〈下〉
九校戦五日目(5)×名無しの試合風景と今までの活躍ぶりを語る
『さて、いよいよ最終戦を始めたいと思います。先程のが一回戦最終戦ではありましたが、ここで蒼い翼特別推薦枠を持つ名無し様の試合をここで行いたいと思います』
「間に合ってよかった、やっと本領発揮ですね名無し様は」
「試合お疲れ様でした深雪さん。それより、試合ステージには無傷の氷柱と破壊された氷柱があるけど?」
ステージからモニター室に戻ってきた深雪だったが、さっきまでいた一真の姿はない。代わりにいた名無しが、氷柱が無くなっている敵陣へと足を踏み入れる。そんで俺はエレメンツの一つである風で、空を飛びながら空間にしまっていた氷柱を作りだす型を取り出した。空中で型に水を流し込んでから、絶対零度の冷たさで凍らせたら氷柱の完成。それを十二本ではなく倍の数を作り出していく名無しに対して、司会進行役の桜花から説明があった。
『今回のハンデは自陣の氷柱は十二本ではありますが、敵陣の氷柱は倍の二十四本を名無し様に破壊してもらおうという事と、試合開始後の一分間を名無し様は防ぐ魔法のみを使う事となります』
「という事は、ハンデは倍の数である氷柱と一分間防御に徹するという事か。普通ならキツイハンデではあるが、名無しにとっては余裕なのだな」
「そうね、いくら深雪さんでも倍の数を相手では出来ないもんね『それは違うと言っておきます』え?深雪さんのは、あれが本気じゃないの?」
「私が本気を出すと、このステージごと絶対零度と灼熱の空間にしてしまいますから。結構抑えているのですよ?」
深雪がそう言うと、五十里や花音はマジ?みたいな顔をしていたが、真顔でそう言ったのでホントだと悟った会長だった。その間に、空中では型を何本か浮かしながら氷柱を作っていたが、粗悪な水ではなくちゃんとした飲み水だ。それを見ていたエリカ達はいよいよ名無し=一真の出番を、とても楽しみにしていた諸君。
「今名無しが浮いてたり、氷柱を型で作っているのって魔法なの?ミキ」
「僕の名前は幹比古だ。あれは魔法じゃなくて、いつも使っているエレメンツだと思うよ。水を型に入れた後、絶対零度にさせる氷にさせているようだしね」
「ま、ああいう芸当ができるのは名無しと一真だけだぜ」
「そうですね。エレメンツは元々『地』『水』『火』『風』『光』なども含まれてますから、きっと風で空中を飛びながら氷柱を作っているんだと思います。現代魔法でも古式魔法でもないエレメンツを使える人は限られますからね」
「それに名無しはデバイスを使ってない」
「私から見たら名無しさんの周辺には精霊が活発に動いています」
もう分かると思うが上からエリカ、幹比古、レオ、ほのか、雫、美月の順番だ。そして準備が整った所で、ステージに上がる名無しだったが、今まで着ていた服ではなかった。すると名無しの相手をするのは、最近IS部隊で活躍しかしていない舞だった。
服装は蒼い翼ブランドであり、最新の流行になる服を着ていたのだった。名無し側も、今までは黒の戦闘服だったが今は同じく蒼い翼ブランドで流行中である男性用の服装となっていた。ここでは、選手に合った気合が入る服装でファッションショーみたいな感じなので、名無しと舞が着ている服装は現在夏に発表されたばかりの服装だった。
『おおっと!名無し選手と舞選手が着ている服装は、今年夏に発表された最新のモノだぁ!』
「ここは試合でもあるが、半分はファッションショーみたいなもんだ。なので、俺達流の服装は自動的に夏発表された服装となった」
「相手は普段ならCBのIS部隊にいる方ですが、デバイスもIS用の武装を使うらしいですね」
「え?それはそれでいいのかしら」
「相手が名無しだから、それはそれでいいんじゃないのか真由美」
名無しは仁王立ちをして、腕を組んでいた。舞は量子変換されたIS用の武装を取り出した事で、フィールドの両サイドに立つポールに赤い光が灯った。名無しは目を瞑ったままだったが、黄色から青色に変わった瞬間にIS用GNビームライフルで乱れ撃ちを開始したのだった。無論名無し側は、ハンデとして一分間防御をしているだけとなっている。撃つのをやめた舞だったが、名無し側の氷柱十二本は破壊や木端微塵になる事なく立っていた氷柱。
『名無し選手の防御が堅いのか、舞選手の攻撃は一切効いていない模様です。残り時間あと三十秒となりました!』
「おいおい、名無しは仁王立ちしたまま何にもしてないように見えるが何かしているのか?」
「僕にもさっぱり分からないよ、でも精霊が守護しているようには見えているようだね」
「どうやらそのようですが、精霊は吉田君が使うような色付けはされていません。まるで透明な感じかと」
名無しは攻撃を受ける氷柱には、鋼よりも硬いようにしてあるので見た目は氷だが中身は鋼の柱だと観客やモニター室で見えている。そんで残りカウント10となったので、司会進行役の桜花はカウントを0にした瞬間に目を見開いてから手を横凪に振った。そしたら、さっきの深雪のようなフィールドとなりこちらは極寒であちらは灼熱なフィールドになるが、少しだけ違うのは絶対零度と灼熱がまるで渦を巻いているように見えた。
『名無し選手が使ったのは、先程織斑選手が使った「氷炎地獄」とは少し違うようです!』
「そう。俺が使うのは、氷炎地獄の発展型である氷炎竜巻だ。フリージングフレイムストームと名付けようか、さてとそろそろ終わらせるとしようか!」
氷と炎の竜巻が止むと同時に持っていたライフル型のデバイスを使って、二十四本あった氷柱を滅で最初から無かった事にしたのだった。こちらは無傷に終わったが、相手選手を務めた舞は、流石隊長ですと言っていたようだ。
『決まったあ!名無し選手が放ったフリージングフレイムストームから、ライフル型デバイスで一瞬にして氷柱が無くなりました。この試合は名無し選手の勝利となります!』
桜花がそう言った後、観客席は大フィーバーをしていた。ライセンスを持つ魔法を深雪と同じように放った後、滅を使って無くなったのだからな。今日の試合は全て終わった事で、名無し選手はステージから降りてから深雪らがいるモニター室に行った。モニター室に戻った際、名無し選手から一真になったが服装がさっきと同じだったので元の服装に戻した。
選手数三百六十名、技術スタッフ七十二名。作戦スタッフを連れて来ない学校もあるものの、選手団は九校で合計四百五十名を超えている。パーティーまたは宴会ならばこの人数でも賄い可能だが、大会期間中毎日宴会をする程ではない。朝食はバイキングで早い者から順に済ませていく形式、昼食は仕出弁当を各学校の天幕や作業車あるいは部屋に持ち帰って食べるのが基本、夕食は三つの食堂を学校別に各一時間三交代で利用する決まりとなっている。
が、第一高校のみは朝食も昼食も夕食も第一高校専用部屋で食べている。これには蒼い翼本社社長が用意したと言っていたので、他校がいたら強制的に摘まみ出されてしまうのが鉄則となっているのでゆっくり食べられる。毎回そうなのだが夕食時間は、その日の戦績に喜びと悔しさを分かち合う時間でもあった。そんで今晩は特に第一高校の食卓は、見事に明暗と分かれていた。暗い方は一年生男子選手が集まった一角となり、明は一年生女子選手が集まった一角となっていた。女子選手集団の中には、逆紅一点バージョンとした俺の姿があった。つまり女子の集団に男である俺を中心となって喋っていた。
「凄かったわよねぇ、深雪のアレ」
「『インフェルノ』って言うんでしょ?先輩達、ビックリしてた。A級魔法師でも中々成功しないのにって」
「エイミィも結構決まってたよ。元々使うデバイスを見せてもらったけど、今回は見た事ないショットガン形態のデバイスだったよね」
「乗馬服にショットガンでのガンアクションが格好良かったよね」
「雫もカッコ良かった!振袖素敵だったし、相手に手も足も出させずに追い詰めていく戦い振り。クールだったよ~」
新人戦女子クラウド・ボールは準優勝と入賞一人で一言で言うなら、まあまあな成績だった。入賞は六位以上な訳だが、新人戦女子ピラーズ・ブレイクで出場選手三回戦進出という、スピード・シューティングに続いての好成績に女子選手はお祭り気分に浸っていた。ピラーズ・ブレイクのトーナメント工程は、出場二十四選手+名無し選手となっていて、一回戦十二試合、二回戦六試合。三回戦に三人が進出するという事は、上位六名+名無しの半分を第一高校で占めているという事だ。
三回戦の勝者三名+名無しで競う決勝リーグを同一校の選手のみで独占という、まさしく快挙の可能性も見えているだけにとても浮かれていた。決勝から名無しは女子リーグから男子リーグに出るので問題ないが、これには上級生も仕方が無いと言いたげな表情で笑いながら彼女達がはしゃぐ姿を見守っている。まあ快挙になったお陰の半分は、担当した子のエンジニアとなった俺なんだけどね。
「織斑君、雫のあれって『共振破壊』のバリエーションだよね?それとも違う術式なの?雫の様子だと違うようだけど」
話し掛けてきたのは俺が担当してない一年女子選手。顔と名前は知っていたし、九校戦が始まる前にホテルで温泉が入りたいがためにスタッフにお願いされてもダメだったが、俺が言ったらとてもはしゃいでいたので記憶にはある。親しい相手ではないが、温泉騒ぎで一年女子貸し切りとなったのか最近女子から挨拶やちょっとした事で話し掛けて来るので、俺はすっかり有名人となってしまった。
「あー、あれね。見た目は『共振破壊』のバリエーションに見えるけど、全然違うんだよね。雫が使っていたデバイスもそうだけど、エイミィのショットガン形態のデバイスが俺オリジナルデバイスなのさ。詳細は省くけど、デバイスの機能と魔法師の力で百%の力が出せるようにしている」
「やっぱりそうなんですね!一見見るとエイミィのも特化型に見えたけど、本人に聞いても織斑君じゃないと分からないって言うよ~」
「起動式や術式も俺が考えたし、雫がスピード・シューティングに使ったデバイスは照準補佐が付いた小銃形態の汎用型で、エイミィがピラーズ・ブレイクで使ったデバイスは、色々な補佐機能が付いたショットガン形態の汎用型さ」
汎用型だと言うと他の女子選手が反発したので、俺は実際に使ったデバイスを蒼太や沙紀に持ってこさせた。そして実際に持ってみると特化型と汎用型との違いを感触だけで、理解したので俺の言う事は本当だった事が証明できた。
「やっぱ織斑君を指名すれば良かったかも~、雫が使った術式も織斑君オリジナルだったんでしょ?」
「インフェルノをプログラム出来たのも織斑君だからですよね」
「ほのかの眩惑作戦も織斑君が考えたって聞いてるよ」
九校戦発足時には、俺はまだ蒼い翼特別推薦枠を取得していなかったので式後に俺指名の倍率が上がったと聞いていた。だけど今回担当した子は六名で、全員が俺の技術を見たから決定した事だ。一つ一つ返答する暇もなく、次々と質問が飛んでくるが一つずつ丁寧に答えていった。
「いいなぁ・・・・あたしも織斑君に担当してもらえれば優勝出来たかも」
だが流石にその発言は少々問題発言となりそうなので、深雪にアイコンタクトでさっと動いた。
「菜々美、それはちょっと問題発言よ。お兄様に指名権があったのは事実だけど、今更そう言うと菜々美が担当してくれた人に悪いわよ」
柔らかく窘められて、女子生徒は自分のセリフに担当エンジニアに対する不満の言葉だった事に気付いた。あわわわ、と態度だけでなく口にも出して慌てて立ち上がり、上級生の中にいる担当エンジニアの姿を探した。本人は笑いながら怒ってないから気にしないでと言っているような感じで、手を振っていたのを見てホッとした表情を浮かべて、ピョコンと大きく頭を下げてから席に戻ってきた。
「あーっ、焦った」
「ナナ、自分の未熟をCADの所為にしちゃダメだよ」
「えへへ・・・・反省」
まるで拠点D×Dにいる雛里みたいな感じで慌てていたので、少し懐かしいと思ったのだった。あわわ軍師と呼ばれていたし、今頃どうしているかな?と思っていたら女子生徒のお喋りはボリュームは下がったが内緒話には見えない程のボリュームだ。
「でも一真さんのお陰で、いつも以上に力が出せたのは間違いないし」
「それに関しては私も同じだよ~。一真君が技術スタッフになったお陰で、他では発表されてない技術で作られたデバイスを使用したからね~」
「・・・・私も同意見に一票」
「ええー!それってつまり他ではまだ発表されてない技術の結晶であるデバイスを使ったって事!いいなー」
スピード・シューティングでは、俺オリジナルハンドメイドのデバイスを使えた体験が出来たのか、他の女子選手達は大いに盛り上がった。他のエンジニアには悪いが、これ以上フィーバーさせるのはまずいと思ったが既に遅しとなっていた。深雪も苦笑いしながら、これに関してのフォローは出来ないと言ったので俺も諦め顔をして女子の輪に入っていた。
「CADの調整って、ある意味自分の内側を曝け出す訳じゃない?それが男の子のエンジニア何てって最初は思っていたけど、一真君の技術を見た私やスバルに和美は一真君に指名したんだよね~。一真君の技術なら、自分が使ったCADや一真君のオリジナルCADを使えるから担当してホントに良かったよ!」
「エイミィ、少し落ち着けって。まあ確かに指名する権利はあったが、まさか俺の技術を見た選手は一斉に指名した事で倍率が上がったと言っていた」
「確かにそうですが、お兄様が担当となり未発表の技術で勝利したのは練習の賜物よエイミィ。それにお兄様の技術については、箝口令だからね?」
深雪が最後に言った箝口令というキーワードで、一瞬シーンとなるが俺の技術は他では教えられないからだと悟った女子達だった。エイミィの無邪気な笑みは、とてもいい笑顔だがこれを聞いた男子達のテンションは駄々下がりだった。そんで苦笑で済まされなかったのか、一人の男子生徒が出て行ったが森崎と追い掛ける男子二人。恐らく二科生がこれ以上結果を残したのを聞きたくないのか、森崎と二人の男子らはモノリスコードで絶対に優勝してやると無人偵察機で聞いた。
同時刻に横浜中華街にて、満漢全席とまではいかないが、高校生の食卓より遥かに高価な食材が並ぶ中華料理フルコースのテーブルを、陰鬱で苛立たしげな表情が取り囲んでいた。赤と金を主調とした豪華な色彩の内装が男達の顔色の悪さを引き立たせているようですらあった。それを聞いていた俺は、静かに通信機を片手に置いて聞いていた。
「・・・・新人戦は第三高校が有利ではなかったのか?」
彼らの会話は英語で行われていたが、俺が放った無人小型偵察機は英語だろうと自動的に日本語に修正されるようになっていた。
「せっかく渡辺選手を棄権へ追い込んだのに、このままでは結局、第一高校が優勝してしまうではないか」
人種的には明らかな東ユーラシア人混血種の特徴を備えていた。なので聞いていた俺は、こいつらの会話が無頭竜だと分かったので録画を開始した。
「本命が勝利したのでは、我々胴元が一人負けだぞ」
「今回のカジノは特に大口の客を集めたからな。支払い配当は、我々にとっても安くはない。今期のビジネスに大きな穴を開ける事になるだろう。そうなれば・・・・」
男達が深刻な表情で顔を見合わせる。
「・・・・ここにいる全員が、本部の粛清対象になる。損失額によっては、ボスが直々に手を下す事もあり得るぞ」
男の一人が、空中でうねり渦を巻く竜の胴体が金糸で刺繍された掛け軸を見上げて、声をひそめ呟く。重い沈黙が、男達の頭上から襲い掛かった。
「それより第一高校にいる名無しとか言う選手を何とかするのが先決だ、何者なのだ?名無しとかいうふざけた選手の正体を探った方がいいのでは」
「ま、死ぬだけならまだいいが・・・・。とりあえずこのまま静観しようではないか」
そう言ってから、無言となりそれは恐怖によって震えていたのだった。これ以上話さない様子だったので、記憶媒体としてデータに保存してから風間少佐がいる所に向かった。そんで場所までは言わないが、このデータには無頭竜の会話データが入っていると言ってから渡してから互いに敬礼した。
ページ上へ戻る