FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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リサーナ
アースランド、マグノリア郊外にて・・・シリルside
「んが!!」
「きゃっ!!」
「ぐお!!」
「ひー!!」
「うわっ!!」
俺たちはアニマから地面に見事に落下する。それはもう、一番下にいる人大丈夫?ってレベルでみんな同じところに落ちた。
「帰ってきたぞー!!」
ナツさんが両手を上げて叫ぶ。やった!!帰って来れたんだ!!
俺たちは帰って来て安心する。そこからマグノリアを一望できるところまで移動して街がどうなっているかを確認する。
「元通りだ!!」
「マグノリアの街も!!」
「やったー!!」
「待て。喜ぶのはまだ早い。人々の無事を確認してから・・・」
「大丈夫だよ!!」
エルザさんの言葉を遮るように、俺たちの頭の上から声がする。俺たちはその声の方を見上げる。
「一足先にアースランドに着いたからね!」
「色々飛び回ってきたんだ!」
「ギルドも街の人たちもみんな無事だったよ」
「みんな魔水晶にされてたことすら知らないみたい」
「アースランドってすげぇな!魔力に満ちてる!!」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
俺たちはその声の主たちを見て唖然とする。だって・・・エクシードたちがいるんだもん。
「どういうことよ・・・なんで・・・なんでエクシードがアースランドに!?」
シャルルが大声でそう言う。
そうか、体内に魔力を持っている俺たちもアースランドに強制的に返されたんだから、同じようにエクシードもエドラスからアースランドに勝手に流されたわけか。なるほど・・・
すると、それを見たシャルルは・・・
「冗談じゃないわよ!こいつらは危険!!エドラスに返すべきよ!!」
シャルルはエクシードたちを指さしてそう言う。
それを聞いてエクシードたちはしょんぼりしていた。
「まぁまぁ」
「シャルル落ち着いて~」
ハッピーとセシリーがそんなシャルルをなだめる。
「別にいいんじゃないの?」
「エクスタリアも無くなっちゃったんだよ、許してあげようよ」
「イヤよ」
俺とウェンディがそう言うけど、シャルルは即拒否する。強情だな。
「石を投げつけたのは謝るよ・・・」
「ごめんなさい・・・」
「でも俺たち、帰る場所がないんだ・・・」
「これから改心するよ・・・」
「もう許して・・・」
エクシードたちはみんなシャルルとウェンディに頭を下げる。
「そんなことはどうでもいいの!!あんたたちは私に、滅竜魔導士を抹殺する“使命”を与えて、アースランドに送り込んだ!!」
「そうさ!!女王はオイラたちの卵を奪った!!忘れたとは言わせねぇ!!」
「あ、おじさん!」
「おじさんたちも来てたんだ~」
シャルルの言葉にエクシードたちの後ろの方からも賛同する声が聞こえる。セシリーたちの知り合いか?
「けどよぉ・・・帰れと言われてもねぇ」
エクシードの一人がそう言う。確かに、帰り方なんてあるのかな?
「まだきちんと説明してませんでしたな」
「これは6年前の話になります」
すると、二人の老いたエクシードが話を始める。
「シャゴットには未来が見える力があるのは、もうお話ししましたよね?」
そういえばそんなこと言ってたような・・・あの場にいなかったナツさんたちは知らないだろうけど。
「ある日、シャゴットは地に堕ちるエクスタリアを見たのです。今思えば、エドラスの魔力枯渇による自然落下だったのじゃが・・・
当時は原因を人間の仕業と思っていた。人間と戦争しても勝てないことは分かっておった。
ワシらは会議の末、100人の子供をエドラスから逃がす計画を立てたのです」
「逃がすだと!?」
眼鏡をかけた老いたエクシードの言葉に驚く白いエクシード。
「その計画は、エクスタリアの民にも内密に行われました・・・表向きは異世界の怪物、滅竜魔導士を倒すための作戦だということにしました。
もちろん、滅竜魔導士に恨みがあった訳ではありません」
「わかってます。そういう設定が必要だったってことですよね」
長老の言葉に、ウェンディがそう返す。
「それに、本当のことを言ったら、きっとパニックになっていたと思うわ」
「だな」
ルーシィさんとグレイさんも納得する。
「人間のアニマを借り、私たちの作戦は成功しました。しかし・・・たった一つだけ計算外のことが起きたのです。それはシャルル、あなたの力」
「!?」
「あなたには、私と同じような“予言”の力があったのです」
「え?」
シャゴットの言葉にシャルルは驚く。
「しかし、それは無意識に発動しているようで、あなたの記憶を混乱させたのです。避難させたエクシードのうち・・・あなた一人だけが。
おそらく、エドラスの断片的な未来をよげんしてしまった。そして、それを“使命”だと勘違いしてしまったのです」
なるほどなぁ・・・だからシャルルの勘ってけっこう当たるのかな?無意識に未来を予言してるから。
「そんな・・・」
「じゃあオイラたちは・・・」
「もともとそんな使命はなかったのですよ。本当に不運に不運が重なり、あなたは自分の“ありもしない使命”を作り出してしまった」
それを聞いて、シャルルは呆然と立ち尽くす。もしかして、城の坑道のことも予言なのかな?いや、そうとしか考えられないか。
「ぼきゅたちは君が自分の力を知らないのをいいことに、さもぼきゅたちが操ってるように言ってみたんだ・・・ゴメンね・・・」
「全て女王様の威厳を演出するための猿芝居・・・本当に申し訳ない」
そういって謝るのはナディと・・・一夜さん!?・・・のネコ?
「たくさんの不運と民や人間に対する虚勢が、あなたを苦しめてしまった・・・
いいえ、6年前、卵を取り上げたすべての家族を不幸にしてしまった」
シャゴットの言葉に、エクシードたちはざわめき出す。
「だから私はあなたに剣を渡したのです。悪いのはエクシードすべてじゃない。私一人です」
シャゴットは申し訳なさそうに言うけど・・・それって違うよな?
「ノォォォォ!!メェェェェェン!!」
「それは違いますよ!!女王様!!」
「女王様の行動は全部、私たちのことを思ってのこと!!」
「俺たちだって自分たちの存在を過信してた訳だし・・・」
「せっかくアースランドに来たんだからさ!!」
「6年前に避難させた子供たちを探しましょう!!」
エクシードたちはそういって空に舞い上がる。
「おお!!僕たちにも新しい目標ができたぞ!!」
「今度は人間と仲良くしよう!!」
「新しい始まりなんだー!!」
「切り替え早っ!!」
「ははっ、前向きな奴等だな」
笑顔で言うエクシードたちを見て、俺とナツさんは思ったことを言う。
「みんな・・・」
それを聞いたシャゴットは肩の荷が降りたのか、涙をうっすらと浮かべている。
「いいわ。認めてあげる」
「シャルル・・・」
シャゴットはシャルルに認めてもらえ、笑顔を見せる。
「でも、なんで私にあんたと同じ力があるわけ?」
「ど・・・どうしてかしらね・・・」
「ゴホッゴホッ」
「えーと・・・その・・・」
「いい天気じゃのぉ・・・」
「お腹すいたのぉ・・・」
「なんか怪しいわね」
シャルルの質問にシャゴットや長老たちは目を反らす。
いや・・・どう考えても遺伝だろ?シャルルって意外と鈍いんだな。
「ねぇおじさん」
「あ?」
その間に、ハッピーはさっき女王に文句を言っていた白いエクシードのところへ行っている。
「女王様とシャルルってなんか似てない?」
「そうかい?」
二人はそういって右手を上げる・・・ん?
「あい!ホラ・・・動きとか」
「動きだぁ?」
またも同じポーズをする二人・・・
「ホラ!あの辺とか」
「かー!!どの辺だよ!!」
「クスクス」
そんな二人の様子を見て、白いエクシードと一緒にいた青いエクシードが手を口に当てて笑っている。
あの二人・・・ハッピーの両親か!?ハッピー!!気づけ!!シャルルのことはもういいから!!
「いいな~、家族・・・」
「な~に?家族が恋しいの~?子猫ちゃん」
「あ?さっきのおばさん~!!」
「お姉さんです~!!」
羨ましいそうにハッピーとシャルルを見ているセシリーに、エクスタリアでウェンディを持ってくれた茶色のエクシードが抱きついてる。
セシリー・・・お前も気づけ・・・それがお前のお母さんだから!!
「なんでこんなにこっちのエクシードは鈍感なんだ?」
「まぁ、いいんじゃない?今は近くにいれるだけで・・・」
俺とウェンディがそう話すと、ウェンディは少し羨ましそうな顔をする。確かに・・・俺も羨ましい気がするけどな。
「とりあえず、無事に終わってよかったな」
「はい!」
「オイ!!うつってんぞナツ」
「あんたもね」
ナツさんとグレイさんはナディが腕を振っているのがうつったみたいだ・・・なんでナディはあんなに手をずっと振ってるんだ?
「それにしても、何と美しい・・・う~ん、いい香りだ」
「こ・・・こいつは・・・」
エルザさんは一夜さんネコに匂いを嗅がれて青ざめていた。エルザさんって一夜さんのこと苦手らしいからね。それが出ちゃったのかな?
「私たちはとりあえず、この近くに住もうと思います」
「いつでも会えますね」
「何嬉しそうにしてんのよ」
笑顔のウェンディにシャルルがそう言う。いや、ウェンディ的には二人に近くにいてほしいからだよ。
「そう・・・」
シャゴットはそんなシャルルをぎゅっと抱き締める。
「いつでも会えるわ。シャルル」
「ちょ・・・」
シャルルはシャゴットに抱き締められ、表情を緩める。それが親の温もりだよ、シャルル。
「いつでも遊びにいらっしゃい、ハッピー」
「あい」
「かー!!来なくていいわ来なくてー!!」
「オイラ、おじさんとおばさんの匂いが好きなんだ。なんでだろ?」
ハッピーにそう言われた二人は、目に涙を溜めて震えている。よっぽど嬉しかったんですね。
「かー!!匂いをかぐなんて100年早ぇんだよ!!」
「ひーー!!」
ハッピーは白いエクシードに追いかけられる。ハッピーのお父さんは、素直になれない人なんだな。まぁ、そう言うのもいいとは思うけどね。
「あんたもいつでも遊びに来ていいよ~」
「本当~?じゃあおやついっぱい用意しててね~」
「うん!いっぱい用意して待ってるから~」
セシリーとお母さんもいつのまにか仲良くなっていた。でも、セシリーがあのエクシードを親と気づくのはいつになるのだろうか・・・
「みなさん!本当にありがとう!!」
「また会いましょう!!」
「元気でねー!!」
「じゃあね~」
「おーうまたなー!」
「またね~」
「とりあえずバイバ~イ」
「いつでも遊びに来てねー!!」
俺たちはエクシードと別れを告げて、エクシードたちは飛んでいってしまう。彼らが見えなくなるまで、俺たちは手を振り続けた。
「おーし!俺たちもギルドに戻ろうぜ」
「みんなにどうやって報告しよう?」
「いや・・・みんな気づいてねぇんだろ?今回のこと」
「しかし、ミストガンのことだけは、黙っておけんぞ」
「ありのまま話せばいいんじゃないですかね?」
「みんな・・・手・・・」
俺たちはナディみたいにずっと手を振っていることをウェンディに突っ込まれる。いや、なんか楽しいんだって!ウェンディもやってみなよ!!
「ちょ・・・ちょっと待て!!」
「どうしたガジル!!お前もマネしてぇのか?」
「楽しいですよ!」
「ガジルさんもやりましょう!!」
「それに価値があるならな!!」
ガジルさんに怒られた・・・価値なんかよりも楽しさ重視でいいじゃないですかね?
「リリーはどこだ!?パンサーリリーの姿がどこにもねぇ!!」
そういえば・・・見てないような・・・
「俺ならここにいる」
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
俺たちはリリーの声がした方を見る。そこには確かにリリーがいた・・・ハッピーたちサイズの。
「「「「「「「「「「ちっちゃ!!」」」」」」」」」」
俺たちは全員が思わず突っ込む。あまりにも縮みすぎじゃない!?
「ずいぶんかわいくなったね・・・(汗)」
「どうやら、アースランドと俺の体格は合わなかったらしいな」
「あんた・・・体なんともないの?」
「今のところはな」
「こ・・・声はそのままなんだ~・・・くくっ」
セシリーは縮んだリリーを見てお腹を抱えている。めっちゃリリーが睨んでるぞ~。
「俺は王子が世話になったギルドに入りてぇ。約束通り、入れてくれるんだろうな、ガジル」
ガジルさんはエルザさんに視線を送ると、エルザさんは黙ってうなずく。ガジルさんはそれを見て笑い、リリーに抱きつく。
「もちろんだぜ!!相棒!!」
「うわ、泣いた!!」
ガジルさんはルーシィさんの言う通り号泣している。そんなに俺たちのことが羨ましかったんですね・・・
「で・・・それとは別に、怪しい奴を捕まえたんだ」
「おお!さっそく手柄か!!さすが俺のネコ!!」
リリーはそういって手に持っている縄を引っ張る。
「来い!」
「ちょ・・・私・・・別に・・・怪しくなんか・・・きゃっ!」
リリーがそうやって縄を引っ張ると、現れた女の人に俺たちの思考が一瞬停止する・・・
「ちょっと・・・私も妖精の尻尾の一員なんだけど・・・」
「・・・リサーナ・・・」
ナツさんは振り絞るようにその女の人の名前を言う。
「何なのこのネコ!!てか、エクシード!?」
「パンサーリリーだ」
「何だてめぇ!!俺のネコにけちつけようってのか!?あ!?」
ガジルさんがリサーナさんを睨む。なんかどこかのチンピラみたいになってますけど・・・
「そんな・・・まさか・・・」
「リサーナ!?」
「なんで・・・?」
「まさか~・・・」
「エドラスのリサーナが・・・」
「こっちに来ちゃったわけ~!?」
「どうしよう!?」
「え?なんでそんなことに!?」
アニマを通じてこっちの世界に飛ばされたのは、体内に魔力のある俺たちだけのはずなのに・・・なんでエドラスのリサーナさんが?
「!」
すると、リサーナさんはナツさんの方を見て、
「ナツゥ!!」
「どわー!!」
抱きつくように飛び付いた。二人はそのまま地面に倒れる。
「また・・・会えた・・・本物のナツに・・・」
そう言うリサーナさんの目から、ナツさんの顔に涙が落ちる。
「ハッピー!!私よ!!リサーナよ!!」
今度はハッピーにリサーナさんが、抱きつく・・・なんだこれ?
「エルザとグレイも久しぶりだね!!うわぁ、懐かしいなぁ!
その子ちは新しいギルドのメンバーかしら?もしかしてルーシィと・・・小さいウェンディとシリル?」
「ちょっと待て・・・お前・・・まさか・・・アースランドのリサーナ!?」
「・・・うん!」
グレイさんの言葉にリサーナさんがうなずく。え?
「!!」
「な・・・」
「うそぉ!?」
「えええーっ!?」
「はいー!?」
「生き返ったのかー!!」
「うわーい!!」
ナツさんとハッピーは大喜びでリサーナさんに抱きつこうとする。しかし、それをエルザさんがつかんで止める。
「ま・・・待て!!お前は2年前に死んだハズだ・・・生き返るなど・・・ありえん」
確かにそうだよね・・・じゃあなんでリサーナさんがここに?
「私・・・死んでなんかなかったの・・・」
リサーナさんはそういって俺たちに説明してくれた。
2年前、当時からアースランドには小さなアニマがたくさんあったらしく、ミラさん、エルフマンさんと一緒に仕事にいったリサーナさんは、気を失った際にそのアニマに吸い込まれたらしい。
エドラスで目の覚めたリサーナさんは、向こうの妖精の尻尾を見つけて、そこに入ると、みんながリサーナさんをエドラスのリサーナさんだと勘違いしていたらしい。
エドラスのミラさんとエルフマンさんがリサーナさんが生きてたことで大喜びしてしまい、リサーナさんは本当のことが言えずに、2年間、エドラスのリサーナとして暮らしていたらしい。
そして先日、ナツさんや俺たちがリサーナさんの前に現れた。しかし、リサーナさんはエドラスのミラさんとエルフマンさんを悲しませたくなかったため、本当のことが言えなかった。
しかし、アニマが逆展開されたことにより、体内に魔力を持つリサーナさんも当然吸い込まれ、アースランドに帰ってきたらしい。
「というわけなの・・・」
「んじゃ、行くぞ、リサーナ」
「え?」
ナツさんはリサーナさんの手をつかむ。
「ナツ?どこに?」
「こっちのミラとエルフマンのところだ!!二人を悲しませるなって、向こうの二人に言われたんだろ?」
「・・・うん!」
二人はそういって走りだし、俺たちもあとを追う。
カルディア大聖堂にて・・・
ミラさんとエルフマンさんは、リサーナさんのお墓の前にいた。
「姉ちゃん・・・そろそろ行こう」
「もう少し・・・」
二人はお墓の前に無言でいる。そこに、
「ミラ姉~!!エルフ兄ちゃーん!!」
「「!!」」
二人はリサーナさんの声が聞こえ、後ろを振り返る。そこには、リサーナさんがいて、エルフマンさんは驚きのあまり傘を落とす。
リサーナさんは笑顔で、涙を流しながら二人に走っていく。
俺たちはそれを静かに見守る。
「ウソ・・・リサーナ・・・」
二人は信じられないといった表情で、涙を流す。リサーナさんは、ミラさんに抱きつく。
「ただいま」
リサーナさんはそう言い、エルフマンさんは二人を包み込むように抱き締める。
「おかえりなさい」
俺たちはその光景を見て、思わず涙を流した。
後書き
いかがだったでしょうか。
いよいよエドラス編も残すところ一話となりました。
次回もよろしくお願いします。
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