インフィニット・ストラトスGM〜天空を駆ける銀狼〜
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初めてのケンカ
「なんで……、なんで最近こういう扱いなんですか。私……」
「優里があんなにデレデレするからだよ」
私は身体中を摩りながら、隣でまだプス〜としているシャルに視線を向ける。あの禍々しい黒いオーラは無くなったが、まだ怒っているらしく目を合わせてくれない。
「デレデレって……私がののさん相手にするわけないじゃないですか」
「してたよ。僕には見せない顔してた」
「見せない顔って……何をそんなに怒ってるんですか?私が好きなのはシャルただ一人ですよ?これでも一筋なんですから……信じられませんか?」
「うん、信じられない」
「………」
お怒りモード全開のシャルにタジタジな私。顔も微笑で固まる。これは下手な事は言わない方がいいかもしれない。シャルロットさんは何故か相当怒っていらっしゃる。
(はぁ〜、これは泊めてもらえる所。探した方がいいですね……)
「あっ!そこにいっらっしゃるのは那珂様ありませんの〜。探してましたの〜、何処に行ってましたの?次の授業、アリーナにて射撃の実践だそうですよ。早く着替えないと、織斑先生に怒られてしまいますわよ。ワタクシと一緒に行きましょう?ねぇ、那珂様」
「そのっ、ののさんの気持ちは嬉しいですが。私はシャルとーー」
「良かったね。優里、ののさんが迎えに来てくれて。僕、更衣室こっちだから。もう行くね」
「あっ、シャル。待っ………行きましょうか?ののさん」
スタスタ歩いていくシャルの背中に手を伸ばして肩を落とす私にののさんは微妙な顔をする。
☃☃☃
「では、射撃の訓練を行う。そこの織斑と那珂も心して訓練すること。お前達は近接型だが、こういう事も経験しておく必要がある。分かったか?」
そう言って、私と一夏を見る織斑先生。私と一夏は目を合わせると同時に手を上げる。
「なんだ?織斑、那珂」
「その、織斑先生。私、銃を持ってませんし。出し方も分かりません」
「俺も優里と同じです」
「……………」
頭を抱える織斑先生と顔を見合わせる私と一夏。
「那珂はともかく、貴様もか。この馬鹿者共がっ!!」
バシン、バシンと頭を出席簿で叩かれる私と一夏。同時に頭を抑えて、蹲ると頭上から鬼の声が聞こえた。
「銃は学校のを使用する。お前らはそうだな……織斑はデュノアに一から十まで教えてもらえ。那珂はわたしも機体を理解してないからな。同じ所の機体で言うと志真埜か……まぁ、この際仕方ないだろう。那珂は志真埜に教えてもらえ。分かったらなら、返事して。さっさと行け」
「「はい」」
☃☃☃
「ののさん、お願いします。で、どうすればいいんですか?」
私とののさんは互いにISを展開していた。そして、互いの機能を交互に見ていた。
「那珂様の機体とワタクシの機体って本当違うんですのね。ワタクシもお手上げですの」
「そうですか……」
落胆する私を見て、何故か顔をキラキラ輝かせるののさん。それのキラキラオーラに嫌な汗をかく私。
「でも、那珂様がこんなにもワタクシを必要としてくださるなんて嫁冥利につきますわね」
「…………」
ののさんを無視して近くにあった銃を持って、的めがけて射撃訓練を行う。
(くそっ、外れた。もう……二センチ下か?)
「も〜。那珂様のいけず〜」
「………」
ツッコミを入れたら、負けと知ってるので知らん顔をする。向けていた視線を的へ固定して、銃を構える。
「那珂様は放置プレイがお好きと……。ちゃんとメモを取りましたわ、これであの優男から那珂様をーー」
「ちょっ。何を書いてるんですか!?貴女は!!」
振り替えた私が見たのはISを操縦しながらも器用に手帳に何かをスラスラっと書いているののさんの姿だった。私はののさんに近づき、そのメモを奪う。するとそこには見るに堪えない私との関係をランクアップさせるための作戦がびっしり書かれていた。それを黙って、ののさんに渡すとののさんは恥ずかしそうに身をよじりながら爆弾を投下する。
「その……那珂様……?」
「なんですか?」
「その……那珂様はワタクシと契りを交わす時もそんなプレイがお好みですの?」
「ぶぅ!?」
「いえ、ワタクシ自身。ドMですし、ドSな那珂様とは相性がいいと思いますの。でも、たまには構ってくださいね?ワタクシ、寂しがり屋なので」
「貴女という人は何を口走ってるですか!?もうっ!!……ツッコミを入れるのも疲れてきました……」
「そういうスネてる那珂様〜大好きですの〜」
そう言って抱きついてくるののさん。
「はいはい。ありがとうございます、さっさと射撃訓練しましょう。ののさん……よく見たら、私達だけじゃないですか。ちゃんとしてないの」
「もしかして、那珂様。ワタクシの告白が恥ずかしかったんですのね。それで話をずらして……もう、那珂様の照れ屋さん♪可愛いですの〜」
「はぁ………」
頬をグリグリされながら、射撃訓練をしたが当たらないものですね。やっぱり。
(あぁ〜っ。あんなに近づいて、何さ 優里も楽しそうにしちゃって)
「で、シャルル。ここは……シャルル?」
「あっ、ごめん。一夏、ここはね。こうするだよ」
「おぉ、すごいな」
一夏に教えながら、チラチラと優里の方に視線が向く。
「優里も変わったよな」
「え?」
一夏も訓練を止めて、優里の方を向く。
「俺と別れて、あんな仲良い友達が出来ていたんだな。あいつ、たまに強がりだったから心配だったんだ。本当、良かった」
「優里と一夏って幼馴染なんだよね?」
「うーん、幼馴染っていうか?家族に近いかな?」
「………家族…」
一夏は射撃訓練を開始するが僕はどうにも身が入らない。
☃☃☃
「シャル……ごめんなさい。これでいいでしょうか?」
「優里?何、ブツブツ言ってるの?」
「キャア!!ってシャル?」
「うん」
私はシャルの前に立つ。頭を下げる。
「シャル、ごめんなさいっ」
「……」
「その……やっぱりダメですか?私、シャルと仲直りしたくて」
「ぷっ、ふふふ。優里、大丈夫だよ。僕、もう怒ってないから」
「本当ですか?」
「本当、本当」
顔を上げるとシャルが優しい表情に戻っていた。そればかりか、私を抱きしめておでこにキスをしてくれる。たちまち、頬を染める私を見て、笑うシャルは幸せそうでこちらも嬉しくなる。
(あぁ、時間なんて止まってしまえばいいのに。……ふっ。馬鹿ですね、そんなこと出来ないって知ってるのに。それに私は運命に任せるって決めたじゃないですか。だから……)
シャルにお返しと抱きついて、長めのキスをする。
(今はこの大切な人と過ごせるこの時間を大切にしよう)
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