インフィニット・ストラトスGM〜天空を駆ける銀狼〜
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イジメですよね?これ
「えっ……と……。これはどういう……冗談なんでしょうか……?織斑先生……」
私は苦笑い&ロボット動きで一縷の希望を持って織斑先生を見るがそこに立っていたのは優しい優しい千冬お姉ちゃんでは無く、鬼の織斑先生でした。
「那珂?私が今まで冗談を言ったことがあったか?」
少し低い声にブルブル震えながら、速攻首が壊れるほど横に振る。
「無いです」
「だろ?」
何故か嬉しそうな織斑先生。私には鬼にしか見えません……。
私は自分の置かれている状況を整理するために一連の行動を振り返っていた。
今日はいつもより早く授業が終わったのでアリーナで身体を温めようと思って、ここに来たはず。その前に一緒に訓練してくれそうな人達を探したが見つからず、仕方なくアリーナで一人孤独に訓練をしていたーーその時に入り口の方からの大勢の人が押し寄せる足音が聞こえて、振り返って見れば 顔見知りの集団がこれまた何故か顔を赤くして織斑先生に続いて並んだというわけだ。そして、今は私を説得している最中と………。………………。本当、何してんだ この人達……。
よく聞いたら、囁くというか呟き声が聞こえるし……。
「一夏と……一夏と………ふふふふふ」
「こっこれはそう。リベンジよ、リベンジ。別にやましいことなんて無いんだから」
「一夏さんとあんなことやこんなこと。ホホホホホ、これは勝ちませんと」
「嫁たちとあんなことやこんなこと出来るのか。フフフフ……」
一人は一人ブツブツと最後に気持ち悪い笑みを浮かべてるし、もう一人は現実逃避してるし。他の二人は……見なかったことにしよう……。二人の考えているあんなこととこんなことを考えたくもない……。
でも、この四人の反応で何と無く千冬お姉ちゃんがこの集団に何を吹き込んだのか分かった。しかし……。私はその怪しい四人の横に二人して大人しくしている一夏とシャルを見る。
この二人がなんで、千冬お姉ちゃんに従うのか分からないんですが……。
☃☃☃
アリーナ乱入まで数分前。
(那珂のISは束が作ったものじゃないと言っていたな……。得体の知れないISか……、束が関わってないから奴を問い詰めるわけにはいかないし……。これは一旦、性能を確認しておいた方がいいのではないか?それに那珂が使うあの……【清風明月】……とか、言ったか?あの技も気になるし……この二つを都合良く確認できる方法は無いか?)
「シャルル。今日も付き合ってくれよ」
「うん。いいよ」
「待ちなさいよね!今日はあたしとでしょう!?」
「いや。私とだ!」
「いえ。わたくしと!」
「嫁と練習か、いいな」
「………」
またいつものように馬鹿騒ぎして前を通りすぎる集団。その集団を見て、ピンと思いつく。
「貴様ら、暇なら私に付き合え」
☃☃☃
『優里を倒したら、好きな人を一日好きに出来る券!?』
織斑先生の話に皆が食いつく。皆が先ばっていて、興奮が冷めないらしい。
『あぁ、貴様らもいい練習相手になるだろう?悪い話では無いと思うが?どうだ?』
『そうですね。私は参加します』
そう言って、ニヤニヤと頬を緩めるのは箒。目は虚ろで完璧に妄想に飛んでるみたいだった。
『あっ、あたしも参加します』
『わたくしも参加いたしますわ』
『嫁を倒すのは気が引けるが教官の命令とあらば仕方ないだろう』
そして、ニヤニヤし出す三人。なんか、軽くホラーだよね。
『シャルルはどうする?』
『僕は……』
シャルルin心の中
(一夏に問われて一瞬考えるが“好きな人を一日好きに出来る券”という響きがあまりにも魅力的で思わず織斑先生側につきそうになる。
ダメだよね。だって、優里が可哀想だし それにそんなことしなくても優里は前、僕の買い物に付き合ってくれた。だから、こんなことする必要が無いよね。うん、そうだよ。頑張るんだ!シャルル。私欲に負けちゃダメ!!)
一夏in心の中
(“好きな人を一日好きに出来る券”かぁ〜。
俺はぼんやりと考える。そういえば、今頃優里と遊んでないよな……。
優里の……私服………。前に遠目に見たが凄く似合っていた。フリがついた白いシャツと淡いピンクのカーディガンの組み合わせが小柄な優里によくに似合っていて……あの時、隣にいたのはシャルルだったけど もし俺がその隣で……そして何気無く手を繋げたら……。……………。)
『一夏?顔赤いけど大丈夫?』
『あっあぁ。大丈夫だぞ』
『そう?なら、いいけど』
(ヤバッ‼︎優里の私服ヤバイ‼︎見たい‼︎しかし、親友を裏切るわけには……)
♦︎
「あの……。一夏とシャルがそこに居るのが私には全く理解出来ないんですが……」
「その……」
「えっと……」
「「この方が面白いかなって……」」
一夏とシャルは互い気まずそうに私から視線を逸らすと完璧にシンクロした回答が帰ってきた。
「そんな理由で千冬お姉ちゃんの遊びに付き合わないで下さい!!」
バシンッ!!
「誰か遊びだと?那珂?良かったら、私一人でお前の相手をしてやろうか?」
「いえ……結構です……」
頭を抑えて涙目で睨まれた二人は心の中で同時に呟いた。
((私欲には勝てなかった……))と。
☃☃☃
「では、ルールを説明するぞ。那珂は決められた時間に撃墜されずに逃げ切れられたら勝ち。那珂以外は制限時間までに那珂を撃墜。以上‼︎」
私は織斑先生の声を聞きながら、内心文句ダラダラだった。
(以上って。こんな数……どうやって倒せって言うんですか……。箒はいつの間にか専用機持ってますし……。もう素直に倒された方がいいんじゃあ……)
「開始!!」
沢山の私欲が入り混じった勝負が今、風を切った。
☃☃☃
「優里さん、スキありですわ!!」
「もう!当たらないくせに無駄に数が多いなんて……なんとセシリアらしい技なんでしょう……ッ」
私はセシリアの【ブルー・ティアーズ】から変幻自在のビームから逃げていた。
(あの。自立機動兵器、なんであんなに無駄に数が多いだろう……。あと、二機少なかったら セシリアなんてあっという間なのに……)
「ゆ〜う〜り〜さ〜ん〜〜?ホホホホホホ、さっきの呟きはわたくしの空耳ですわよね?当たらないくせにとか無駄に数が多いとか失礼な言葉が聞こえた気がするんですが……」
「いえ。空耳では無いですよ?セシリアの耳は正常です」
「ッ!!戸惑うどころが即答って。わたくしの狼藉を認めますの……ホホホホホホ……」
セシリアが血管でひだいに怒りマークを少なくても三つ作っている。その表情に一夏じゃないが、ビクッとなる。しかし、自分から私に飛び込んでくれるんだ。このチャンスは物にしなくちゃ……!と顔を引き締めるが、そう簡単行くわけもなく……。
「こらっ!セシリア‼︎何、連携乱してるのよ‼︎」
「そうだぞ!セシリアは真ん中だ!」
「セシリア、優里は一人で勝てる相手じゃない。ここは力を合わせないと」
「そうだよ、セシリア。優里の言葉に騙されちゃダメ」
「嫁はあぁ見えて、腹黒だからな」
「……皆さん。わたくしとしたことが……。目の前の怒りに身を任せてましたわ……」
セシリアが元の場所に戻ると私の方を見る。私は心で舌打ちをする。
(チィ!あの連携をどうにか出来ると思ったのに……。そう上手く行くわけないか……)
【鬼切】を構えるとまた箒、一夏の攻めに堪える。何故、避けないのか……それは避ければ中継組“セシリア&鈴音”が絶妙なタイミングで追撃をしてくるからだ。だからと言って、その真ん中組を先に潰そうとしたら後衛組“ラウラ&シャル”に射撃される。この勝負が始まって、この繰り返しで正直こっちもイラついている。だからといって、それを表面に出すことはしないけど……。
「………」
「クソッ!やっぱ、当たらないな……」
「焦るな、時間はまだある」
箒の【雨月】と【空裂】を【鬼切】で攻撃を防ぐと横から一夏の【雪片弐型】が切ってくる。それを箒の剣を上に弾いて、後ろに飛びのける。一夏はそれを見て、悔やみ。箒は一夏の肩を撫でて、慰める。
(………ふーん……)
「………」
「こっちに背を向けるなんて、あたし達のこと忘れてるのかしら」
「なら、好都合ですわね」
【双天牙月】が斜め後ろから飛んでくる。それを振り向き様に【鬼切】で弾き飛ばして、【ブルー・ティアーズ】が変幻自在にビームを撃ってくる。それを【行雲流水】でフラフラと避ける。
「ッ!チョロチョロと……」
「仕方ありませんわね……ここは後ろのお二人に任せましょう」
鈴音とセシリアが二人して、退却。
(………………)
「次は僕達だね!行くよ!ラウラ!」
「嫁を倒すのは、私達だからな!」
ビゥーン。ドンッと飛んでくるビームと弾丸。
私を中心に適度な距離を取って、クルクル回りながら撃ってくる。弾丸は鬼切で切りながら除けていく。ビームには少し当たったが、かすり傷適度なので気にしない。
「チィ!弾切れだ!」
「僕も。箒、一夏お願い」
後ろに下がるラウラとシャルに続き、前に出る箒と一夏。
(そう。私をこんなくだらない戦いに巻き込んどいて。自分達はキャキャフフと…………あ。ははははははは…………。う・ざ・け・なッ!!!!!)
極限の怒りから笑いがこみ上げてくる私。
「あっはははははははは」
「…………えっと、優里?」
「壊れたのか?」
私がお腹を抱えて笑うと目に溜まった涙を拭き、前を見つめる。
そこにはポカーンとしている六人。
「…………いえ。すいません、なんか皆さん一生懸命なのに私随分 手を抜いてたな……と思いまして……。で、こんなことにも気づかなかった私がバカだな……と思って、笑いが出たんです。すいません、突然笑ってしまって」
ぺこりと頭を下げると【鬼切】を構える。周囲を見渡して、丸いものを見つめる。
「安心して下さい……。私もやっと本気に慣れそうですから……。本当すいません、随分時間をかけてしまったみたいで……」
(……【清風明月】)
私を光が包み込む。その中、ISスーツが破け 侍のような格好になって行く私。その傍らにはいつの間にか白銀の狼が居て。手に握っている剣で光を切る。その剣を六人に向ける。
「さぁ、何処からでもかかってきてください!皆、捻り潰してやりますよ」
銀狼と走りながら、銀狼に話しかける。
(銀狼は後ろの二人中心に攻撃、私は前の二人を攻撃して行きます)
『了解……。だが、大丈夫か?疲れてるように見えるが……』
(なんですか。また、心配ですか?)
『そんな邪険そうに扱うなよ、老母心だ。まぁ、前のようになるなよ』
(………)
「分かってますよ……」
六人に近づき、私は右から銀狼は左から攻める。
☃☃☃
(これは……)
「ッ!やりますね‼︎鈴音さん」
「鈴でいいわよ」
キン!キン!と鉄と鉄がぶつかる音がする。
「!?」
なんとか盾でガードしたけど、あと数秒後だったら……僕もあの二人みたいに撃墜されてたかも……。
「なんでですの……!いつもいつもわたくしばかり……」
「力が及ばなかったようだ……」
地面に座り、ISを解除するセシリアとラウラ。二人と背中を丸め、トボトボと織斑先生の所へ向かう。
(残るのは……)
「やぁああ!!!」
「ッ」
鈴はなんとか優里の攻撃を防いでいるようだけど、そんなに優里に集中してると後ろから。
(ほら……)
ガブ。腕を噛まれて、横の壁に投げられる鈴。その鈴に加速した優里がトドメを刺す。
「……これで。三人目と……。次は誰ですか?」
☃☃☃
私ははぁ……、はぁ……と荒く息をしながら 攻める手をやめないが銀狼に話しかける。このまま、続けてもこっちが不利になるだけだ。不本意だが、アレを……使うしか……。
『優里大丈夫か?』
(大丈夫じゃない……です……)
『ふん。お前がワタシに素直に限界を伝えるとは、余裕がないみたいだな……』
(………えぇ………。あの、銀狼……)
『どうした?』
(アレを使いたいんですが、協力してくれますか?)
『アレ?お前、アレを使うくらいなら死んだ方がマシって言ってなかったか?』
(確かに言いましたが、この際そんな事言ってられません)
『なら、相手は?あの黒髪の坊主か?まさか、あのポニーテールの子を狙うわけじゃないだろ?』
私は目線で伝える。しかし、銀狼は不満なそうで。
『……?一番、ここから距離が近いのはあの二人だぞ?何故、わざわざ遠い方に』
(彼の方がいいんですよ。私の正体を知ってますし、後で説明したら許してくれそうですし)
『ワタシは彼の方が後後怖いと思うのだが、まぁ主がすると言うのだ。それに付き合うまで』
(じゃあ、一。二。三で)
「GO!!」
☃☃☃
「ほらほら。まだまだ行きますよ。箒!!」
「クソ。私はお前が幼い頃から嫌いだったんだ」
「そうですか?なら、私と同じですね?」
お互いニヤリと笑う。二刀流対二天一流、箒はじわじわと攻めるに関して私は速さにものを言わすものではっきりいって互角だった。私は体力が落ちてるので箒の方が実を言うと強い。チラッと銀狼の方を見ると約束通り、誘導してくれたみたいで私もそろそろ切り上げてあっちに行かなくては。
「よっ」
重なった剣を箒の方へ押し返すと後ろに飛びのける。そのまま、後ろを振り返るとある場所に向かう。後ろから箒の声が聞こえるが気にしない。はっきり言ってそれどころでは無いのだから。
「こら。優里〜、貴様逃げるのか!」
「逃げません。一旦、身を引くだけです」
☃☃☃
(なんで、あの狼。僕ばかり狙うんだろう……)
白銀の狼と一定の距離を保ちながら、僕は射撃と防御を繰り返していた。一夏もフォローをしてくれるが一夏には目もくれない。それどころか僕にも威嚇攻撃だけで一向に直接攻撃を仕掛けてこない。
(奇妙な攻撃……。僕、羊になったみたい……)
まるで僕はある場所へ誘導してるみたい…って、考えすぎかな?
「シャル」
ビクッ。
聞き慣れた声にビックリして、後ろを振り返ると目の前に大きな蒼い瞳があった。見つめる全てのものを吸い込むみたいに魅力的に輝く瞳はまるで宇宙のようで思わず息を飲む。そんな中、薄い桜色の小さい唇がゆっくり動く。
「シャル……」
(なんで、瞳も声も潤んでるの……)
「なっ、何?」
「今からいう言葉を一緒に言ってくれませんか?」
「えっ。でも今」
「いいから」
そう言いながら、何故か慣れた手つきで僕の首の後ろに手を回す優里。肩に軽く乗っかってるのは優里ので……。僕、どんな状況なの!?軽くパニックになりながら、優里に続いて言う。
「【山紫水明】……」
「……山紫水明……。えっと……これでいい……?」
「はい。ありがとうございます」
「うん。ねぇ、優里……。僕、何がなんだが分からないんだけど……」
「いいんですよ。今から分かりますから……んっ」
「分かるって……ん…」
言葉の途中で塞がれてしまったーー唇で。
「ん……」
「!?!?!?!?」
(えぇ〜。何何何何何何何。何が起こってるの!?)
半分パニックに入っていたと言っても、完全になると自分でも何してるか分からないものだ。目をパチパチしてみるが、状況が変わるわけがなく目の前は整った顔が目を瞑っているだけ。
「………ん」
「………」
優里は閉じていた瞳を開けるとニコッと笑う。
「シャルのおかげで元気が出ました。まだまだ、戦えます。ありがとうございます」
「…………」
「シャル?」
「ゆっ、ゆうっ、優里っ。きっ、きっ、キスっ」
驚きのあまりロレツが回らない。何度も何度、かみながら僕は優里を見た。すると、優里は頬を赤らめて自分の唇をなぞると
「シャルの……唇……柔らかったですぅ……」
何故かぶりっ子口調で呟いた。まぁ、僕には効果覿面だったけど……。
☃☃☃
「…………」
俺は目の前で繰り広げられている状況を飲み込めない。
(優里が………シャルルと………)
手に持った雪片弍型がずり落ちる。膝から下が力を失って、ゆっくりと地面に崩れ落ちるとボゥ〜と空中の一箇所を見つめる。そこではまだ現実逃避したい事が行われていた。
一夏、戦意喪失。
後書き
というわけでおしまいです。
ちょっと補足。
【山紫水明】・・・効果は回復。キスした相手から力を分けてもらうことが出来る。主に【清風明月】使用中に使用することが多い。注意点は他の四つと違い、相手にも言ってもらう必要があること。
以上。補足終わりです。
次はいよいよ、この戦いにも決着がつきます。
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