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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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俺たちはここに立っている

ドロマ・アニムと戦っているシリルたちは・・・シリルside

『アースランドの魔導士!尽きることのない永遠の魔力を体に宿す者たち! その中でもこやつらの・・・ドラゴンの魔導士のこのデタラメな魔力!!よこせ!その魔力を!!世界はこやつらを欲しておる!フハハハハハ!!地に堕ちよ!!ドラゴン!!』

俺たちはドロマ・アニム黒天の強大すぎる力の前に、全員が倒れている。

『絶対的な魔導兵器、ドロマ・アニムがあるかぎり、我が軍は不滅なり!!』
「うう・・・」
「ぐっ・・・」
「ぬぅぅ・・・」
「くっ・・・」

俺たちはなんとか体を起こそうとするが・・・うまく力が入らない・・・

『まだ起きるか!!大したものだ・・・その魔力!!素晴らしい!!我が物になれ!ドラゴンの魔導士!!』

ドロマ・アニムが剣を振るうと、俺たちの下から紫の光とともに、地面が爆発を起こす。

「「「ぐあああっ!!」」」
「きゃあああ!!」

俺たちの体は宙を舞い、地面に叩きつけられる。ヤバイ・・・力が入らない・・・

『もっと魔力を集めよ!空よ!大地よ!ドロマ・アニムに魔力を集めよ!!』

ファウストの声と共に、ドロマ・アニム黒天に大気中の魔力が集まってくる。

『おおっ!!感じるぞ。 この世界の魔力が尽きようとしておるのを。だからこそ・・・こやつらを我が手に!!』

俺たちは体を起こすけど・・・何か策はないのか?

火竜(サラマンダー)、ブレスだ!!」
「!?」

するとガジルさんがナツさんにそう言う。

「ガキ!小娘!お前らもだ!!」
「四人同時に!?」
「それって大丈夫なんですか!?」

俺とウェンディはその提案に驚く。四人の・・・しかもバラバラの属性の魔力が合わさると、どうなるんだ?

「何が起こるかわからねぇから、控えて起きたかったが・・・やるしかねぇ!!」
「わかりました!!」
「オッケーです!!」
「おーし!!」

俺たちは立ち上がって口に魔力を溜める。

「火竜の・・・」
「鉄竜の・・・」
「天竜の・・・」
「水竜の・・・」
『ほう?まだ魔力が上昇するか?』

ファウストは余裕綽々な口調で言うが・・・これならその余裕を打ち破れる!!

「「「「咆哮!!」」」」
『!?』

俺たち四人の同時の咆哮がドロマ・アニム黒天目掛けて放たれ、大爆発を巻き起こす。どうだ!?

「やったか?」

ガジルさんはそう呟き、俺たも勝利を確信する。が!

『フハハハハハ!!』
「「「「!?」」」」

突然聞こえたファウストの笑い声に俺たち全員は驚き声の聞こえた方を見る。

「上だ!!」

ドロマ・アニム黒天は空高くジャンプしていた。

「相当上まで飛んでますよ!!」
「あんなに跳躍力があったのか!?」
「そんな・・・四人同時の咆哮が当たらない・・・」
「もう一度だ!!」
『させんよ!!』

俺たちがもう一度咆哮をしようとしたが、それよりも早くドロマ・アニムが攻撃してくる。

『竜騎拡散砲!!』

ドロマ・アニム黒天から俺たちに大量の魔法弾が振ってくる。

「ぐああああああ!!」
「きゃあああああ!!」
「うわあああああ!!」
「くっ!!」
『ハハハハハ!!』

俺たちが魔法弾に叩きのめされるのを見てファウストは高笑いする。
ドロマ・アニム黒天は俺たちの前に着地する。

『世界のため!このエドラスのため!ワシと貴様らの違いはそこよ!世界のことなど知らぬと言ったな?この世界で生きる者に必要なのは、ギルドなどではない!!永遠の魔力だ!!民が必要としているだ、貴様とワシでは、背負うものの大きさが違いすぎるわ』

世界だと?お前ごときがそんな大した物を背負ってるわけないだろ?

「くっ・・・」
「かはっ・・・」
「まずい・・・もう・・・魔力が・・・」
『尽きたようだな』

俺たちは魔力がもうほとんど・・・いや・・・全然残ってない・・・だけど、

『いくら無限の魔導士といえど、一度尽きた魔力はしばらくは回復せんだろ?大人しく、我が世界の魔力となれ!態度次第では、それなりの待遇を考えてやっても良いぞ?』
「・・・ざっけんなよ・・・」
『ん?』

俺はフラフラと立ち上がる。

「俺たちは・・・絶対に諦めねぇ!!」
「そうだ!!まだ終わってねぇ!!」

俺のとなりでナツさんも立ち上がる。

「かかってこいやこのやろう!!」
「俺たちはここに立っているぞー!!」

ナツさんと俺は空に向かって叫ぶ。絶対に、何があったって諦めたりしない!!

『ええい!!どこまでも強情な小僧どもじゃ!!』

ドロマ・アニム黒天は俺たちを踏み潰そうとしてくる。だったら・・・

「水竜の・・・咆哮!!」
『何!?』

俺はできるかわからなかったが、一か八かの咆哮でドロマ・アニム黒天を押し退ける。

「シリル!!」
「大丈夫なの!?」
「バカやろう・・・魔力もねぇのに無茶しやがって・・・」

ガジルさんの言う通り・・・さすがにむちゃくちゃすぎたか・・・もうなんも出ねぇよ・・・

『おのれぇ!!』

ドロマ・アニム黒天は剣を俺に振りかざす。やべぇ・・・動けねぇ・・・

「火竜の咆哮!!」
『ぬおおおおっ!!』

それをナツさんが炎のブレスで吹き飛ばす。

「なんだ・・・簡単じゃねぇか・・・」
「ナツさん?」

ナツさんは肩で大きく息をしながらニヤリと笑う。

「明日の分をひねり出してやればいい!!滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なめんじゃねぇぞ!!」

ナツさんはそういってドロマ・アニム黒天を見据える。
そうか・・・明日の分・・・俺だってひねり出してやる!!

「行くぞ!!シリル!!」
「はい!!」

俺とナツさんはドロマ・アニム黒天に突進する。

『身分をわきまえよ!!クソどもが!!』
「「うわあ!!」」

俺たちに向かってドロマ・アニムがレーザーを撃ち、俺とナツさんは打ち落とされる。

『ワシを誰だと思ってるかー!!』

すると、ドロマ・アニム黒天に空から近づく者がいる。

『ん?なんだ!?』
「力を合わせる必要なんかねぇ!!力は、願いは、繋げればいい!!」

ガジルさんはドロマ・アニム黒天の足に鉄竜棍を差し込む。

『足を・・・』
「ロックした!これで空中には逃げられねぇ!!」
『おのれぇ!!』

ドロマ・アニム黒天はガジルさんを振り払おうと右手の大剣を振り上げる。

「させない!!水竜の拘束(ウォーターロック)!!」
『何!?』

俺はドロマ・アニム黒天の腕を水で拘束する。足と腕の両方を封じた!!これで絶対動けない!!

「いけぇ!!火竜(サラマンダー)!!お前しかいねぇ!!お前がやれぇ!!」
「ナツさん!! お願いします!!」

ガジルさんと俺はナツさんに向かって叫ぶ。

「ウェンディ!!俺に向かって咆哮だ!!」
「え?」
「立ち上がれぇ!!」
「はい!!」

ウェンディはナツさんに言われて立ち上がる。

『小癪な!!離れんか!!』
「離すかよクズやろう!!」
「お前はそのまま大人しくしてろ!!」

暴れるドロマ・アニム黒天を俺とガジルさんは懸命に押さえる。
ウェンディは集中して、明日の分の魔力をひねり出す。

「天竜のぉぉ、咆哮ぅぅ!!」

ウェンディの咆哮はナツさんに向かって放たれ、ナツさんは咆哮の中で回転を始める。
そうか!ナツさんはウェンディの咆哮の回転を利用して・・・

『なっ!?』
「あああああああああああ!!」
「ぬおおおおおおおおおお!!」
「うおおおおおおおおおお!!」
「はああああああああああ!!」
『これは・・・幻想(ファンタジー)か・・・』

ナツさんは全身に炎を纏い、ドロマ・アニム黒天に突っ込む。

「火竜の、劍角!!」

ナツさんはドロマ・アニム黒天の胴体を貫いた。
その光景は、足にしがみつく鋼鉄のドラゴン、右腕を押さえる青いドラゴン、遠くで援護をする白いドラゴン、そして、ドロマ・アニム黒天の体を貫く赤いドラゴンのようだった。

「ふっ・・・」
「ああ・・・」
「おお・・・」

俺たちはドロマ・アニム黒天を倒したことに安堵して、表情を緩める。

「ぬあああああああ!!」

ファウストはナツさんに体を捕まれドロマ・アニム黒天から引きずり出され、ナツさんはファウストを途中で放り投げ、二人は地面に激しく落下する。
そして、胴体を貫かれたドロマ・アニム黒天は、膝をつき、大爆発を起こす。

(ワシは・・・ワシはこんなものを欲しがっていたのか・・・)

ファウストは俺たちの方を見て恐怖を感じているようだ。
その目はまるで、絶対的な力を持つドラゴンに睨まれ、絶望と恐怖に怯えるようであった。

「た・・・助けてくれ・・・」

ファウストはそう掠れた声で言い、そのまま倒れて意識を失った。

「へへっ」
「ギヒッ」
「はぁっ」
「ははっ」

俺たちはそれを見てそれぞれ笑みをこぼす。

「かーっはっはっはー!!王様やっつけたぞー!!こーゆーよ何てゆーんだっけ?あっ、チェックメイトか!!」
「ナツさん、それを言うなら王手です」
「二人とも・・・それは王様をやっつける前の宣言ですよ」
「ギヒッ。バカが」

俺たちはドロマ・アニムを倒したことにより、全員が安心して喜んでいた。
すると突然、足場が大きく揺れ始める。

「な・・・なんだ?」
「地震ですかね?」
「ま・・・まさか敵の増援!?冗談じゃねぇぞ・・・さすがに、魔力が空っぽだぜ)

俺とナツさん、ガジルさんがその揺れにビビっていると、

「ち・・・違います・・・アレ・・・」
「「「?」」」

ウェンディが空を見上げて震えているのに気づき、俺たちもそちらを見上げる。
そこでは、エドラス特有の浮遊島が全て地上に落ちてきている光景だった。

「浮いてる島が・・・落ちてきた・・・」

落ちてきた浮遊島は、次々と地面にぶつかっていった。



















第三者side

シリルたちのところで起きた異変は、他の至るところでも見ることができた。

「な・・・何これ・・・」
「「オイオイ!どうなってやがる!!」」
「ひいい!!天変地異だー!!」
「「「「「うわああああああ!!」」」」」

ルーシィたち、エドラスの妖精の尻尾(フェアリーテイル)と王国軍が戦っている場所でも、浮遊島の落下に全員が驚いている。

「な・・・まさか・・・あれをやる気か!?」
「ちょっと!?シリル!!」

そんな中、いち早く何が原因かわかったエドシリルはある場所へと駆けていった。

















「エドラスの浮遊島はこの世界の魔力で浮いています」

シャゴットは幼いエクシードたちを抱えながら呟く。

「それが落下を始めるということは・・・つまり・・・この世界から魔力が消えているのです」

シャゴットの言う通り、エドラス国全ての大地から、空に向かって魔力が流れ出ていた。




















なぜ魔力が空に流れ出ているのか・・・それは、エドラス城でジェラールがアニマを逆展開したためだった。

「王子・・・」
「これでよいのだ。魔力があるから人は争う。だから魔力をこの世界から消滅させる。
逆展開させたアニマを通り、この世界の魔力はアースランドへと流れる。魔力の豊かなアースランドでは、この魔力はすぐに気化し、自然の一部となるのだ」

リリーとジェラールは、逆展開させたアニマを見つめる。

「新たな世界のため、エドラスは一度滅ぶのだ」

ジェラールはその後にやるべきことを、頭の中で考えていた。



















次々と浮遊島が落下していく中、さらなる異変が起きていた。それは・・・

「うわぁ・・・!!急に魔法(ぶき)が使えなくなった!」
「どうなってんだこれはーー!!」
「こっちもだ!」
「わー!!どうしよう!!」
魔法(ぶき)が壊れた!!」

王国軍とエドラスの妖精の尻尾(フェアリーテイル)のもっている魔法(ぶき)が使えなくなってしまった。
そして、その魔法(ぶき)からも空に向かって魔力が流れている。

「何が起きてるの?」

ルーシィは事態が飲み込めず、ただ呆然と立ち尽くす。

魔法(ぶき)が・・・俺の魔法(ぶき)が・・・」
「落ち着けよ!!」

エドグレイが魔法(ぶき)が使えなくなったことに動揺するのをグレイが落ち着かせようとする。だが・・・その場にいる全員、冷静さを取り戻すことができない。

「終わるんだ・・・世界が終わるんだよう」
「シャルル・・・」
「・・・」
「何が起きてるの~・・・?」

ココ、ハッピー、シャルル、セシリーは魔力の流れていく空を見上げていた。

ガシャ、ゴトッ、ガシャン

「退却だー!!」
魔法(ぶき)が使えねぇんじゃ戦えねぇ!!」

王国軍は使えなくなった魔法(ぶき)を置いてその場から逃げていく。

「王国軍が・・・」
「逃げやがった。オイ!!やったぞオメーら!!」

グレイがエドラスの妖精の尻尾(フェアリーテイル)の方を喜びながら振り返ると、そこには頭を抱えたエドグレイたちがいた。

「ひいい!!」
「魔力が無くなる・・・」
「この世界から魔力が消えるのですわ」
「どうしよう・・・どうしよう・・・」
「だぁーーー!!!」
「みんな!!落ち着いて!!大丈夫だから!!」

ルーシィはみんなを落ち着かせようとするが、エドルーシィが物凄い剣幕で走ってくる。

「大丈夫なもんか!!この世界から魔力が消えちまうんだぞ!!全部!!魔導士ギルドはどうなっちまうんだよ!!」
「終わった・・・戦いには勝ったけど・・・僕たちは世界に負けたんだ・・・」
「ジュビアたちが一番恐れていたこと・・・魔力の枯渇・・・」
「うわー!!魔法が無くなる!!魔力が消えていくー!!」
「もうダメだー!!」
「助けてー!!」
「俺たちはどうすれば・・・」
「世界の終わりだー!!」
「エドラスの最後だようー!!」
「ああう・・・」
「ちょっとみんな・・・」
「落ち着いてよ~・・・」

エドラスの妖精の尻尾(フェアリーテイル)メンバーは、皆混乱し、絶望感に苛まれていた。










王都でも、この混乱に人々は絶望していた。

「お父さん・・・浮遊島が全部落ちちゃうよ」
「もう・・・終わるんだ」
「うわー!!」
「きゃー!!」

人々は皆叫び、逃げ惑う。

「大地から空へと魔力が流れ出ておる・・・」
「おばあちゃん・・・」
(エクシード)に逆らった我々への罰なのか・・・」

一人の老婆と少女が空に消えいく魔力を眺めている。
そして・・・街の至るところで魔水晶(ラクリマ)が動かなくなっていき、皆大混乱に陥っていた。








シリルside

「これは魔力ですよ!!」
「魔力!?」
「やばいんだろ?魔力がなくなっちまったら・・・」
「現に・・・浮遊島が落ちてきてますからねぇ・・・」

もし落ちてきた浮遊島が人に当たったりしたら、ヤバイんじゃないか!?

「城下町に戻りましょ!!」
「とうするつもりだ?」
「街の人たちが心配なんです!私たちにも、何かできることがあるかもしれません!!」
「ああ。こっちの俺なら、何か分かるかも知れねぇ」
「こっちの俺なら、きっと何かやれることを考えているはずです!!」

俺たちはウェンディの提案に乗り、エドラス王都へと駆け出した。一体・・・なんでこんなことになってるんだ?













エドラス城にて・・・第三者side

「まさか本当にやってしまうとは・・・しかし・・・」
「わかっている」

ジェラールはリリーに背を向けたまま話を続ける。

「国民は皆混乱している。変化する世界に素早く順応できる人間はそういない」

リリーはただ黙ってジェラールの方を見ている。

「だからこそ、新しい指導者が必要となる。新しい世界の新しい王。不安に怯える民をまとめ、皆を幸せに導く新たな王が」
「なるほど。それを王子が・・・」
「いや・・・私ではない」

リリーの言葉をジェラールは即座に否定する。

「この世界と共に歩んで来なかった私には無理だ。そして、その権利もない」

ジェラールはリリーに向き直る。

「混乱した群衆をまとめるためには、悪役と英雄が必要なのだ」
「悪役と英雄?」

ジェラールは静かにうなずき、話を続ける。

「この世界を混乱に陥れた悪を晒し、処刑する者こそ英雄となり、その英雄は、民を一つにまとめ、王となる」

リリーはジェラールの案を聞いて額に汗を浮かべる。

「そ・・・その悪と英雄とは誰なんです?」
「もう気づいているだろう?」

ジェラールはそういい、リリーに言った。

「エドラス王に反旗を翻し、世界の魔力を奪った私こそが“悪”。
種族間の誤解と偏見を調和できる君こそ“英雄”にふさわしい。
世界を滅ぼした私を君が処刑するんだ。
そして、君がこの世界の王となれ」

ジェラールは初めからそう考えていた。アニマを逆展開すると決めていたその時から。

「混乱している民の前で、この混乱を引き起こした私を処刑するのだ。王国軍の一人として・・・エクシードの一人として。
混乱を鎮め、皆を導け。魔法のない世界・・・新たな世界の王となるのだ」

リリーはジェラールに言われ、一瞬固まってしまうが・・・

「あなたは本気で、そんな戯言を言っておられんのかぁ!!王子!!」

ジェラールの作戦に納得できず、思わず叫ぶ。
そして、それを影から一人のエクシードが見つめていた。








 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
次回もよろしくお願いします。 
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