革命家の死
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3部分:第三章
第三章
すぐにだ。部下達にこう言ったのである。
「林彪同志は生きている」
「ですがもう既にです」
「乗っている機体が墜落しています」
「それでは最早」
「何と言っても」
「しかもです」
部下達は口々にだ。林彪の死や林彪自身に話していく。
「党内の抗争があったことは間違いありません」
「林彪氏は毛主席の国家主席の座を狙っていました」
「そして毛主席も彼の野心に疑念を抱いておられましたし」
「四人や周首相との間にも権力闘争がありました」
「そういったことも全て事実です」
「否定できませんが」
「いや、なかったのだ」
部下達のその言葉をだ。秋生はだ。
断固とした感じで否定してだ。そして言ったのである。
「中国共産党、そして中華人民共和国は毛主席の下一つになっているな」
「そのうえで理想に向かって邁進している」
「新しい素晴らしい国家だというのですか」
「そうなのだ。この国はそうなのだ」
彼は言う。そしてだった。
ここでは忌々しげな顔になりだ。こうも言ったのだった。
「ソ連とは違うのだからな。この国は」
「あのスターリンのソ連とはですか」
「全く違うと仰るのですか」
「そうだ、違うのだ」
ひいてはだった。
部下達にだ。こうも問うたのだった。
「では君達は社内でソ連派に遅れを取っていいのか」
「ソ連派に」
「彼等にですか」
「北朝鮮派やベトナム派にもだ」
社内のだ。彼等のことも話に出したのだった。
「彼等に遅れを取っていいのか。出世にも響くぞ」
「いえ、それはです」
「何といいますか。私もその」
「私もです」
「やはり」
口ごもりながらもだ。彼等はだ。
それぞれのことを考えてだ。こう秋生に答えたのだった。
「家族もいますし、その」
「親も喜びますから」
「この新聞社に入られたことだけでも素晴らしいですが」
「やはり」
「そうだな。それならだ」
秋生は彼等が頷いたのを見てだ。そのうえでだった。
あらためてだ。こう彼等に言ったのである。
「全ては日中友好の為だ」
「その為にですか」
「ここは」
「林彪同志は生きている」
彼は言った。
「そしてだ。党内の抗争も毛主席暗殺計画もなかった」
「全ては何もなかった」
「林彪氏は健在ですか」
「今も尚」
「そうだ。ではその事実をだ」
事実ということにした。そのうえでだった。
秋生はだ。部下達にまた言った。
「これから書こう」
「そして日本に送りますか」
「本社に」
「そうだ、そうする」
こう言ってなのだった。秋生と部下達は記事を書いたのだった。林彪は生きているとだ。
だが他の新聞では林彪の死を報道していたりもしていた。それを見てだ。
日本にいる者達はだ。首を傾げさせたのだった。
「林彪は死んだんじゃないのか?」
「しかしこの新聞じゃ生きてるって言ってるぞ」
「新聞は嘘吐かないだろ」
「嘘を書くなんて有り得ないだろ」
多くの者がそう信じていた時代だった。まだ。
だからだ。彼等はこの二つの報道に首を捻った。しかしだ。
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