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異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
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転校生の時間・2時間目(2016/05/16 一部修正)

 
前書き
シロがイッキにバカにされます。(笑) 

 



【視点:樹】



カルマ達もA・Tを始めて4日が経った。まだ梅雨明けしていないということもあって4日前から雨日が続きだ。そして、湿気のせいで先生の身体は今日も今日とでふやけて膨張している。


「殺センセー。梅雨だから仕方ねぇのかもしんねぇけど、相変わらずふやけてるな」
「イッキ君。申し訳ありませんが、これも先生の体質ですから。せめて除湿機があれば、いくらかマシなのですが……」
「イッキ、A・T作れるくらいだから除湿機位作れるんじゃないの?」
「カルマ。悪いが俺の工作技術は基本的にA・T関係限定だ。まぁ、一度分解して構造さえ分かれば作れんことも無いけど。ってか、作るより買って来た方が早いだろ。今度、除湿機の2~3台買って来るわ」


俺自身、雨は嫌いじゃないが湿気は鬱陶しいと感じているからな。焼け石に水でも環境が改善されるなら、いくらでも金を出す。

ってか、俺と有希子が快適に過ごせる環境になるなら、いくらでも資金を投じる心算だ。……と、そんなことを考えている内に朝のSHRが始まりそうだ。


「では、改めてみなさん。おはようございます」
「「「「「「「「「「おはよーございまーす」」」」」」」」」」
「皆さん。既に烏間先生から聞いていると思いますが、今日から新しい転校生が来ます」
「ああ。第二の転校生暗殺者ね」
「え?第三じゃないの?第一はイッキ君で、第二が律―――」
「いやいや。渚、俺は転校生暗殺者じゃなくて、異世界系暗殺者だ。もしかして、俺が異世界人っていうこと忘れてんのか?」
「「「「「「「「「「あぁ~。そういえば、そうだった」」」」」」」」」」
「全員忘れてたのかよ!……まぁ、そんだけ俺がこの世界に馴染んだってことか。そう考えたら悪くないかもしんねぇ」
「世界、というよりクラスに馴染んだのだと思いますが、どちらにせよイッキ君が馴染んでくれたのであれば、先生も嬉しいです。……さて、少し話が横に逸れてしまいましたね。
先程も言いましたが、今日から転校生が来ます。皆さんにとっては新しい暗殺仲間です。恐らく、イッキ君や律さんの様な即戦力に成り得る子でしょう。
尤も先生自身、イッキ君の時に打撃を当てられた上、律さんの時には痛い目も見ました。今回は油断も慢心もありませんよ」


殺センセーはそういうと、早着替えで某英雄王のコスプレをしていた。


「いや、殺センセー。その某慢心王のコスでそんなこと言われても説得力ねぇよ。ってか、その金ぴか鎧をどうやって用意した?もしかして自作?」
「はい、自作です。といっても、似せて作った普通の甲冑に金鍍金加工を施したレプリカですが。……カッコいいでしょ?」
「装備してるのが殺センセーじゃなくて烏間先生ならカッコよかったと思うけど、殺センセーが装備したら色々と台無しだわ」
「にゅやッ!?」
「せめて大英雄のコスなら体の大きさ的にも似合っていたのに……」
「にゅ、にゅやーーーッ!!イッキ君!それは腰蓑だけの半裸でコスプレとは言えませんよ!!そんな恥ずかしい恰好、先生にはできません!!」
「え!?生徒の前で平然とグラビア読むのに、羞恥心とかあったのか!!?……すんません、そっちの方が驚きでした」
「イッキ君。このままじゃ話が進まないから、そろそろ殺センセー弄りは止めようよ」


俺がいつも通り殺センセー弄りをしていると、渚が止めに入って来た。まぁ、渚の言う通りではあるな。このままじゃ話が進まない。


「そうだな。んじゃ、殺センセー弄りから転校生の話に話題を変更しようか。律、同じ対殺センセー転校生として何か情報持ってないのか?」
「そうですね。私が保有している情報は少しだけですがあります。私が遠距離射撃を担当、彼が近距離攻撃を担当し、同時投入による連携暗殺が初期命令でした」
「彼ってことは、転校生は男な訳だ。しかも、得意分野が近距離攻撃か」
「正確には近中距離戦を得意としているという情報です、イッキさん。ですが、その初期命令も2つの理由からキャンセルされました。
1つは彼の調整に予定以上の時間が掛かってしまったせいです。もう1つは私が暗殺者として彼より劣っていたからです」
「……律。調整ってことは、転校生は人間じゃないのか?それとも薬物による肉体強化が施された強化人間の類か?」
「彼は人間なので、後者に属すると思います。そして、私が彼より先に送り込まれたのは、私の性能が彼のサポートを務めるには力不足と判断されたからです」


………強化人間とはいえ、玉璽(レガリア)は疎かA・Tすら持たない人間が軍事技術の集大成とも言える律を凌駕する。俄かには信じられない。

俺の様に神の恩恵で人間の領域を超えた身体スペックを持っているならまだしも、人間の薬学・科学技術でそれを再現できるとは到底思えない。

2人目の転校生暗殺者、一体どんな化け物だ?俺がそんなことを考えていると教室の扉が開き、白い頭巾と和服を着た男と思しき奴が教室に入って来た。

そして、その男は腕をし腰上げたかと思えば、鳩を出す手品をやって見せた。何者だ、こいつ?取り敢えず、胡散臭い奴ということは分かるが……。


「驚かせて済まないね。私は今日転校して来る子の保護者。全身真っ白だから、シロとでも呼んでくれ」
「保護者?何で転校生じゃなくて保護者が教室に入って来てんだ?もしかして、今流行りの怪物親って奴?えっと、ポチ?」
「ハハハ。初対面でモンペ扱いされるとは思ってもみなかったよ。あと、私はポチではなくシロだよ」
「どっちも大して変わんねぇだろ?シロも犬の名前に使われるし」
「………まぁ、好きに呼んでくれたまえ」
「あと、殺センセーはビビり過ぎだろ!奥の手の液状化まで使ってんじゃねぇよ!!」
「いや、律さんがおっかない話をするから……。みっともない姿を見せてしまいましたね。はじめまして、ポチさん。ところで肝心の転校生はどちらに?」
「はじめまして、殺センセー。ちょっと性格とかが特殊な子でしてね。もうすぐ来ますよ。あと、私はポチではなくシロです」
「にゅやッ!?これはすみません」
「いえいえ、お気になさらず。こちら、つまらないものですが贈り物です」


俺達の前で殺センセーとポチは引っ越しの挨拶のような遣り取りをしていた。そして、ポチは一度口を閉じて教室を一通り見渡すと、再度口を開いた。


「皆、いい子そうですな。これならあの子も馴染めそうだ。ところであの子の席は何処になるんですか?殺センセー」
「うちのクラスは男子の数が多いということもあって、大変申し訳ありませんが女子の列に並んで頂くことになりそうです。今空いている席は最後尾の2つになりますので、そのどちらかと考えています」
「ふむ。……殺センセー。大変申し訳ないんですが、うちの子の席は自律思考固定砲台さんの隣にして頂けないでしょうか?」
「律さんの隣、ですか?」
「ええ。元々、あの子は彼女とコンビを組む予定でしたので」
「いや、しかしそれは―――」
「殺センセー。俺なら別に構わねぇよ。カルマと寺坂の間の席にでも移動するわ」
「イッキ君。そうですか?すみませんね」


殺センセーとポチの会話が聞こえていた俺は、自分から席の移動を進言した。まぁ、有希子のいる列に移動できたら、俺としても悪い話じゃないし。


「いや~、本当に申し訳ない。あの子は人見知りでもありますから助かります。では、紹介しましょう。おーい、イトナ!入っておいで!!」


俺が席の移動を終えると、ポチが転校生の名前を呼んだ。イトナって名前なのか?珍しい名前だな。俺がそんなことを考えていると、転校生が教室後方の壁を突き破って入って来た。ってか―――


((((((((((ドアから入れ!!!))))))))))


この時、クラス全員の考えていることが一致した様な気がする。まぁ、俺もこの教室への現れ方が特殊だったから、人のことは言えないかもしれないけど。


「俺はこの教室の壁に勝った。俺の方が強いことが証明された。……それだけでいい。……それだけで」


……何、こいつ。薬の使い過ぎで頭がイっちゃてんの?目も何か無駄に血走ってるし。……取り敢えず、これが俺達E組と堀部糸成(イトナ)の初接触となった。


 
 

 
後書き
イッキの中でのシロの呼称がポチで確定されました。以降、一部のE組生徒からシロはポチと呼ばれることになるでしょう。
(シロにとって中学生に犬扱いされることほど屈辱なことはないでしょうね(笑))




追記

次話更新は2~3日後、もしくは最長で来週月曜になるかもしれません。 
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