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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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終焉の竜鎖砲

「まったく・・・グレイとナツはどこにいるのだ?」

俺は今、アースランドのグレイとナツを探しているのだが・・・どこにいるかさっぱりだ。まったく・・・間違っても鍵は壊さないでくれよ。
俺が祈りながら走っていると、前方にグレイとナツ、そして倒れているシュガーボーイを見つける。

「グレイ!ナツ!」
「!お前は・・・」
「エドラスのシリル!?俺たちのシリルはどうした!?」

俺を見たナツとグレイが動揺する。そりゃそうだろうな。俺にさっき攻撃されたんだから・・・

「安心してくれ。アースランドの俺はエクスタリアに向かった」
「何で!?」
「エクシードに危険を知らせるためと、アースウェンディを助けるためだな」

俺が説明すると、二人は顔を見合わせる。そして、ナツが俺を睨みながら言う。

「お前は何しにきた?」
「お前たちの仲間を助けるために・・・だ。アースシリルのおかげで、俺はようやく目覚めることができたのだよ」
「どういうことだ?」
「あ!!」

グレイが質問しようとして、ナツが何かを思い出す。

「そういやぁ、エドラスのシリルは洗脳されてたんだっけか?」
「ルーシィからでも聞いたのか?」
「おう!」

ナツはうなずく。こいつ、忘れてただけか・・・

「アースシリルのおかげで、洗脳が解けたんだ。だから、俺はお前たちの力になりたい」
「そりゃあ助かる。ちょうど、竜鎖砲の部屋に入る方法を考えていたんだ。何かいい案はねぇか?」

竜鎖砲の部屋か・・・確か対魔専用魔水晶(ウィザードキャンセラー)を扉にしている部屋だったなぁ・・・となると、魔法で突き破るのは無理だな。

「突き破ればいいんだよ!!」
「だからそうはいかねぇんだって」

グレイとナツはなんか言い合ってるけど・・・今はそれどころじゃないのではないのか?

「一番手っ取り早いのは、お前たちを捕まえたフリをして中に入ることだな」
「捕まえたフリ?」
「ああ。運良く、俺の洗脳が解けたことは、まだ王国軍には伝わってない。俺がお前らを捕まえたフリをして、一緒に中に入ってしまえば、あとはお前たちの魔法で王国軍を凪ぎ払って竜鎖砲を魔水晶(ラクリマ)にぶつければいい」
「なるほど!!」
「ところで・・・グレイが手に持ってるのって、なんだ?」

俺は最初から気になっていたことを聞く。アースグレイの持ってる物は、氷でできた鍵のように見える・・・もしかして・・・

「お前・・・竜鎖砲の鍵壊したのか?」
「ああ」
「即答かよ!!」

一番危惧していたことが起きてしまったな・・・てかどうやって壊したんだ?あの鍵もなかなか丈夫だったはずだが・・・

「心配するな。俺は氷の造形魔導士だからな。この鍵もしっかり使えるぜ」
「ならいい」

ひとまずその氷の鍵も使えるのなら問題あるまい。さて・・・

「それじゃあ、適当に縄で縛るから、捕まったフリをしてくれよ」
「おう!」
「中に入ったら暴れていいんだろ?」
「竜鎖砲を壊さない程度にならな。ん?」

俺がナツとグレイを縛ろうとしていると、足音が聞こえてくる。誰だ?

「その作戦・・・私にも手伝わせてくれ」

そういって現れたのは・・・エルちゃん!?

「エルザ!!」
「待て!お前まさか・・・エドラスの・・・」

グレイが驚いたのを見て、エルちゃんはニヤリと笑う。

「俺たちのエルザが・・・負けたのか!?」

ナツは動揺してエルちゃんから後ずさる。こいつ・・・

「エルちゃん・・・じゃないよな?」
「お前は・・・まさかエドラスのシリルか?」

エルちゃんは俺の顔を覗き込む。やっぱり・・・

「ナツ、グレイ、安心しろ。アースランドのエルちゃんだよ」
「「何!?」」

二人は揃って驚く。まさか・・・気づいてなかったのか?仲間じゃなかったのか?

「なぜエドラスのシリルが?私たちのシリルはどうした?」
「アースシリルはエクスタリアに行ったよ。俺は、アースシリルのおかげで洗脳が解けたんだ」
「なるほど。それで私たちを手伝ってくれるのか」

アースエルちゃんは納得したようにうなずく。
こっちのエルちゃんに勝つということは、アースランドのエルちゃんもかなりの実力者のようだな。それに、エドラスの方と見分けがつかない。

「よし!ならば俺とエルちゃんでお前たちを捕まえたことにする。それで中に入るぞ」
「「「おう!!」」」

俺とエルちゃんは、ナツとグレイを軽く縛り、竜鎖砲の部屋へと向かった。














一方、エクスタリアに向かったシリルたちは・・・シリルside

「シリル~!!見えてきたよ~!!」
「あれが・・・」

セシリーにつかんでもらってエクスタリアに向かい、しばらく飛んでいったけど・・・ようやくエクスタリアが見えてきた。本当に空に浮いてるんだな。
おっと、関心してる場合じゃなかった。早くウェンディとシャルルのところに行かないと。













竜鎖砲の部屋の前にて・・・エドシリルside

ズルズルズルズル

「ご無事でしたか!ナイトウォーカー隊長!ブランド隊長!」
「ど・・・どこが無事なもんか!?どうしたんです?そのケガ!!」

部屋の前で護衛している兵隊たちが、俺とエルちゃんを心配して駆け寄ってくる。よし、エルちゃんが偽物だと気づいてないようだな

「心配しなくていい」
「大したことはない」

俺とエルちゃんが部屋の前まで来ると、兵隊たちはナツたちを見る。

「そ・・・その者たちは?」
「案ずるな」
「竜鎖砲の鍵だ」
「か・・・鍵!?」

エルちゃんの言葉に兵隊はグレイとナツを交互に見る。まぁ、鍵には見えないからな。

「そんなことはどうでもよいのだよ。王は中にいるのか?」
「は・・・どうぞ」

兵隊は扉の端により、俺たちが通れるように道を開ける。そして、扉は次第に開いていく。

「全ての準備は整った」
「永遠の魔力は目の前に」

俺とエルちゃんはそういって部屋の中に入る。ここまでは完璧だ・・・
俺たちが部屋に入ると、エドラス王、ファウストと、たくさんの兵隊たちがいる。やはり、警備は万全か・・・

「余計なことは言うなよ」コソッ
「ああ」コソッ

俺はエルちゃんが変なことを言わないように釘を差す。俺たちが部屋に入ってくるのを、王はじっと見ている。

「シリル。エルザ。鍵を持ってきたというのは誠か?」
「うむ。本物は破壊されたようだが、安心してくれ」
「何?」

王は俺の言葉に首をかしげる。俺は引っ張ってきたグレイを前に投げる。

「こいつが鍵を作れるようだ」
「くそっ・・・」

グレイは悔しそうにこっちを睨む。うまいな、こいつの演技。

「こやつは?」
「アースランドの魔導士で、氷の造形が得意なようだよ」
滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の仲間ですよ」

俺とエルちゃんが王に向かって言う。

「まさか・・・広場の魔水晶(ラクリマ)が消えたのと関係が?」
「その通りです」
「アースランドの俺が、こいつを魔水晶(ラクリマ)から人の姿に戻したようだよ」
「アースランドのお前が?そいつはどうした?」
「ご安心を。この手で仕留めましたので」

アースシリルをこの場から遠ざけておいて正解だったかもな。これで王は俺を疑うことはせんだろ。

「まぁよい。さっさと竜鎖砲を作動させろ!」
「「はっ!」」

俺はグレイの縄をほどき、エルちゃんはナツを抱えて剣を首に当てる。

「ほら、立ちな」
「妙な真似はするなよ」
「くっ!」
「竜鎖砲を起動させるんだ」
「こっちだ」

俺はグレイの前に立ち、鍵穴の前まで案内する。

「鍵を作れ」
「ちっ!仕方ねぇか」

グレイは両手を合わさると、そこから氷の鍵が現れる。アースシリルもそうだったが、道具なしで魔法が使えるとはな・・・
グレイは作った鍵を持って鍵穴の前まで来る。鍵穴にグレイは氷の鍵を入れ、ゆっくりと回す。
チャンスは一回だけ、すばやく起動を修正するぞ。
鍵がはまった竜鎖砲は、光輝き始める。これは準備段階・・・起動を変えないと・・・
そこまできて俺は気づいた・・・竜鎖砲の起動を変えるのはどうやるんだ!?バイロがやる予定だったから、全然話を聞いてなかった!!

「おいシリル!!どこで照準を変えるんだ!!」コソッ
「わかんねぇ!!全然話聞いてなかった!!」コソッ

俺とグレイは辺りを見回す。どれだ!どれで照準を変えるんだ!!

「発射用意!!」

王が両手を広げて叫ぶ。まずいぞ!!もっち話をちゃんと聞いておくべきだった!!

「ナツ!!」
「おう!!」

すると見かねたエルちゃんがナツの背中を押す。ナツは両手に炎を纏う。

「なんだ!?」
「火竜の・・・翼撃!!」
「「「「「「「「「「うわああああああ!!」」」」」」」」」」

ナツの不意打ちによって王国軍は壁に叩きつけられる。

「これは一体・・・どうなっておる!?」

王がナツを見て驚いていると、その隙にエルちゃんが王の後ろを取る。

「発射中止だ!!」
「エルザ!!貴様!!」

エルちゃんが王に刀を突きつけたことで、兵隊たちはざわめき出す。俺とグレイはほっと一息つく。

「何の真似だエルザ!!」

王がエルちゃんを睨むと、エルちゃんが光出す。光が止んだと思ったら、今度は鎧に身を包んだエルちゃんが現れる。

「私はエルザ・スカーレット。アースランドのエルザだ!」

王は予想外のことに驚きの表情を見せる。

「悪ぃ、危なかった」
「ナイスエルちゃん。助かったよ」
「かっかっかっ!!これぞ作戦D!!騙し討ち(DAMASHIUCHI)のDだ!!」

俺とグレイは二人に手を上げて感謝を示す。ところでナツ・・・作戦のネーミングセンスが無さすぎるぞ!!

「シリル!!まさか貴様もアースランドの・・・」
「いや、俺は正真正銘のシリル・ブランドだよ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)のな!!」
「洗脳が・・・解けたのか・・・」

悔しそうに顔を歪める王。残念だったな。

「照準を魔水晶(ラクリマ)に合わせろ」
「言うことを聞くな!!今すぐ撃て!!」
「お前ら!!王の命が惜しけりゃ俺たちの指示に従え!!」

王国軍は王を人質に取られたせいで動くに動けないようだ。仲間のためなら何でもする。こいつらもなかなか面白い奴だな。

「早くしないか」

エルちゃんが王に向ける剣をさらに首元に近づける。王国軍は皆王の命を最優先とし、魔水晶(ラクリマ)の照準を変える。

「照準変更!!巨大魔水晶(ラクリマ)に変更だっ!!」
「バカモノが!!永遠の魔力をふいにする気かーー!!」

竜鎖砲が魔水晶(ラクリマ)に向かって発射されようとしたとき、エルちゃんの上から一人の女が降りてくる。

「スカーレットォォォ!!」
「なっ!!」
「ナイトウォーカー!!」

こっちのエルちゃんの攻撃で、王の拘束が解かれてしまう。

「陛下の拘束が解けた!!」
「今だ!!照準を戻せ!!」
「まずい!!」
「くそっ!!」

俺たちがもう一度照準を変えようと突っ込むが、兵が多くて近づけねぇ!!

「撃てーぃ!!」

王の指示によって、竜鎖砲が発射されてしまった!!放たれた竜鎖砲は、巨大魔水晶(ラクリマ)へと繋がれる。

「接続完了!!」
「エクスタリアにぶつけろー!!」
「やめろー!!」

ナツが叫ぶが時すでに遅し!繋がれてしまったらもうどうしようもないぞ!!

ドカァン

「!!」

突然部屋の壁が破壊され、俺たちはそちらを見る。そこにいるのは・・・レギオン!!

「みんな!!乗って!!」
「ルーシィ!?」
「なんでルーシィがレギオンを!?」
「私のレギオンだよ!シリル!!」

ひょっこりと顔を出したのはココ!!あいつのレギオンなのか!!もしかしたら・・・レギオンなら止めれるのかも!!

俺たちは急いでそのレギオンに乗る。

「こいつで止められんのか!?」
「わかんない!!でもいかなきゃ!!」

俺たちを乗せたレギオンは、巨大魔水晶(ラクリマ)へと向かっていく。こいつを止めねぇと・・・ドロマ・アニムが出てくる前に!!
















エクスタリアに到着したシリルは・・・シリルside

エクスタリアに到着して、俺が最初に見た光景に愕然とした。たくさんのエクシードが石を投げていて、その投げられた場所にいるのは・・・ウェンディとシャルル!!

「ウェンディ!!」
「シャルル~!!」

俺とセシリーがエクシードの群れを掻き分けて前に進んでいく。俺はウェンディとシャルルに投げられた石をはたき落とす。何個かはたき切れなくて俺に当たったけど・・・

「シリル!」
「セシリー!」

ウェンディとシャルルは俺とセシリーがやって来たことに気づく。二人とも、石をぶつけられてボロボロだ。

「なんだ!?」
「また人間と堕天がこのエクスタリアに!!」
「出ていけー!!」
「待て!!」

俺が右手を出してストップをかけると、エクシードたちは動きを止める。さすが天使、話は聞いてくれるようだね。

「さっきウェンディ・・・この子たちが言ったと思うけど、このエクスタリアに危険が迫ってる。たぶん大丈夫だと思うけど・・・万が一ということがあるからな。すぐに避難してほしい」
「黙れ人間!!」
「俺たちはエクシードなんだ!」
「女王様がそんなもの魔法でなんとかしてくれる!!」

俺が説明してもエクシードたちはまったく信じる様子がない。エドシリルの言った通りだな。

「・・・近衛師団が魔水晶(ラクリマ)にされたってのは聞いたか?」
「そんなのウソに決まってる!!」
「そうだ!!我らが近衛師団が、人間に負けるはずないんだ!!」
「本当なの!!本当にみんな魔水晶(ラクリマ)に――――」

ウェンディがエクシードたちに信じてもらおうと叫ぶ。だけど、俺はそれを止める。

「今はっきりわかった・・・お前たちは天使でも神でもない」
「何!?」
「何を言う!!俺たちはエクシードだ!!」
「人間より偉いんだぞ!!」

俺の言葉にエクシードは怒りを露にする。確かに人間より偉いかも知れない・・・だけど・・・

「お前たちは同じエクシードである近衛師団のことを心配もしないのか?」
「そりゃそうさ!!」
「ニチヤ様たちが、人間に負けるわけない!!」
「そう信じるのを結構。だけど・・・お前たちは最低だ。だって・・・」

俺はエクシードたちを指さす。

「同じエクシードである仲間の心配をまったくしないんだからな!!」
「「「「「!!」」」」」
「俺が仮に天使(おまえたち)だったら、仲間が魔水晶(ラクリマ)にされたと聞いたら、信じないことよりも先に心配をするね。それだけ俺は仲間が好きだからな。だけど・・・お前らは心配などまったくしないで、【ウソ】【偉い】の一点張りだ。そんなの天使じゃねぇ!!悪魔だよ!!お前ら!!」

俺の言葉にエクシードたちは顔を見合わせる。少しでも心に響いてくれたらいいんだが・・・

ドドーン

「なんだ!!」
「うわっ!!」
「きゃっ!!」
「何!?」

突然エクスタリアに震動が走る。まさか・・・失敗したのか!?
この震動でエクシードたちは慌て始める。完全に遅かった・・・もうエクシードたちを逃がすことはできないぞ!!

魔水晶(ラクリマ)がぶつかった・・・」
「まだよ!島の端で止まってるみたい!!」
「うわあああ!!どうしよう~!!」
「まずいなぁ・・・」

俺たちはそれぞれ魔水晶(ラクリマ)がぶつかった方を見ながら言う。

「ごめんねシャルル・・・こんなはずじゃ・・・」
「何言ってんの!!まだ諦めちゃダメ!!」
「そうだよ。何か手段があるはずだ!!」
「・・・うん」

ウェンディはうつむいたまま返事をする。シャルルは魔水晶(ラクリマ)がぶつかった方を見ているエクシードに駆け寄る。

「みんな!!聞いて!!」
「まだいたのか!堕天め!!」

一人のエクシードがシャルルに石を投げつける。しかし・・・

ガンッ

「ぼきゅん!」

黒いひょろ長い顔のエクシードがシャルルをかばい、その頭に石が当たる。

「ナディ様?」
「シャルル!!」
「おい!大丈夫か!!」
「シャルル~!!」

ウェンディとセシリーはシャルルに駆け寄り、俺はシャルルを庇ったナディと呼ばれたエクシードに駆け寄る。

「石は・・・投げたら・・・危ないよ」

ナディがシャルルを守ったことに、エクシードたちは困惑している。

「この人たちはぼきゅたちに危険を知らせてくれたんだよ。でも・・・誰も聞かなかったから、こんなことになっちゃったんだ」

ナディはみんなに手を振りながら言う。なぜ手をあんなに振ってるんだ?

「何を言ってるんですか!?」
「こんなの、女王様の魔法があれば全然へっちゃら!!」
「さぁ・・・早く女王様ー!!」

エクシードたちは騒ぎ出す・・・俺の言葉は全然響いてなかったか・・・ま、いいけど。

「えーと・・・その・・・」
「もういいのです。ナディ」

ナディの後ろから声が聞こえて、全員がそちらを見る。そこには、なんと説明すればいいのか・・・とにかくすごい服を着ているエクシードがいて、周りには四人の老いたエクシードが付いている。

「女王様!!」
「女王様だ!!」

そのエクシードは、どうやらエクスタリアの女王らしく、エクシードたちは一斉に頭を下げる。確かに・・・なんか女王様っぽい雰囲気出てる気がする。

「あの人が、女王・・・」
「そうみたいだね・・・」

ウェンディと俺は女王を見て呟く。女王は一度、シャルルの顔を見たあと、ゆっくりと目を閉じてから話始める。

「みなさん・・・どうかお顔を上げてください。そして、落ち着いて私の言葉を聞いてください」

女王がそう言うと、数人のエクシードが何か話しているけど、他のエクシードに注意されて静かになる。静かになってから、女王は話始める。

「エクスタリアは滅亡の危機に瀕しています。これはもはやあらがえぬ運命・・・なので私は、一つの決断をすることにしました」
「人間を全滅されるんですね!!」
「オイ!黙って聞け!!」

エクシードたちがザワザワとしていると、女王は突然身に纏っていた服を脱ぎ始める。

「え!!?」
「な・・・何を女王様・・・」
「真実を話しておかなければならないという決断です」

次々と身に付けているものを脱ぎ捨てる女王。女王の後ろのエクシードたちは、額に汗を浮かべるものや視線を反らしているものなど、さまざまな者がいる。

「私はただのエクシード。女王でも、ましてや神でもありません。皆さんと同じ、エクシードなのです」

そう言って翼を広げる女王を見て、俺たちは息を飲む・・・翼が・・・片方しかない・・・

「私には、人間と戦う力などないのです。見ての通り、私は片翼です。エクシードにとって翼、エーラは魔力の象徴。二つ揃ってこそ、真の魔力を発揮できる。私の魔力は、とても弱いのです」
「「「「!?」」」」

俺たちはそれを聞いて驚く。いや・・・エクシードたちも全員が驚いているのだろう・・・だって、強大な力を持つと思っていた女王が、実はそこまで強い魔力を持ってないと言われたら・・・

「隠してて本当に申し訳ありません。シリルさんにウェンディさん、それにシャルルさんとセシリーさんと言いましたね。あなたたちにもごめんなさい。全部私のせいです。どうか、ここにいるみなさんを恨まないでください」
「いや、別に大丈夫です」

俺は別に何もされてないから謝る必要はないですよ。

「どういうことですか?」

ウェンディは女王の言葉に疑問を持ったらしく質問する。

「いえ、“女王”というものを作り出した、我ら長老にこそ責任がありますじゃ。
私たちはとても弱い種族ですじゃ。大昔・・・人間たちにひどいこともたくさんされてきました。だから、自分たちを守るために、私たちは力があると人間に思い込ませたのですじゃ」
「そしてエクシード全体が自信を取り戻せるよう、エクスタリアの皆に対しても神の力を信じさせました」
「神の力といっても、その全部がワシら事情を知ってるエクシードのハッタリじゃ」

女王は長老たちが話している際に(エーラ)を消す。神の力がハッタリ?どういうことだ?

「初めは信じなかった人間も、やがて神の力に恐れを抱くようになった。例えば、殺す人間を決める『人間管理』。本当は全部後付けです。私たちが殺す人間を決めている訳ではないし、そんな力も当然ありません」

だったら・・・なんでみんなはそれをエクシードたちがやったと信じてるんだ?

「ただ一つ、シャゴットには少しだけ未来を見る力があります。人の【死】が見えるんです。それをあたかも女王の決定により殺していると思わせたのです」

未来を見る力・・・か。それはそれですごいものなような気もするが・・・人間に攻撃されている今は意味がないってことか。

「そんなのウソだー!!」
「女王様は神なんだー!!」
「シャゴット様!!早く人間どもやっつけてー!!」

エクシードたちはみんな女王様の言ったことが信じられず、みんな涙を流し叫んだり、泣き崩れたりする。女王はそれを聞き、ただ辛そうに目を閉じている。

「詭弁だわ!!」

そんな中、シャルルが女王に向かって叫ぶ。

「シャルル?」
「あんたに力があろうがなかろうが、私の仲間を殺すように命令した!!それだけは事実!!」
「シャゴットはそんな命令はしておらん!!きっと女王の存在を利用した人間「違う!!」」

慌てながら答える長老の話をシャルルは遮る。

「私に変な記憶を植え付け、私の心を操り、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)抹殺を命じたでしょ!?生まれる前から!!」
滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)抹殺・・・?」

俺は初めて聞いた事実に驚き、ウェンディとセシリーを見る。二人は、悲しそうに視線を反らす。

「それは・・・」
「ちち・・・違うんだ!!これには話せば長くて深~い事情が・・・」
「どんな事情があっても、これだけは許せない!!」
「シャルル!!今はその話はよそうよ」
「だな。今はそういう話をするために来たんじゃないんだ」
「シャルル~。落ち着いてよ~!!」
「でも・・・」

俺たちがシャルルを止めようとすると、女王が剣を抜き、それをシャルルの前に投げる。

「シャルルさんの言い分はごもっともです。あなたには何の罪もない。なのに、一番辛い思いをさせてしまった」

女王はそう言って片膝をつき、頭を下げる。

「じょ・・・女王・・・」
「私の罪は、あなたの手で裁いてください。人間もエクシードも、両方愛せるあなたにこそその権利があります」
「シャルル?」

ウェンディがシャルルを見ながら呟くように言う。

「女王様~!!」
「うわ~ん!!」

それを見て泣き叫ぶエクシードたち。シャルルは、自分の前に投げられた剣を拾う。

「さぁ!皆さんはここを離れて!!私は滅びゆくエクスタリアと、運命を共にします!」

剣を拾い上げたシャルルは女王に近づいていく。

「シャルル!!やめなさい!!」
「シャルル~!!」
「いい。ウェンディ、セシリー」
「シリル?」

シャルルを止めようとするウェンディとセシリーを俺は制する。俺はシャルルを信じてる。何も言う必要はない。もし・・・もしシャルルが女王を殺すなら・・・それだけ女王のやったことをシャルルは許せないってことなんだ・・・だったら、俺はそれを見届けてやる!


「離れたくないよ~・・・」
「僕も・・・ここにいる!!」
「もう俺たちの歴史は終わるんだ・・・」
「だから女王様は全てお話に・・・」
「でも私!女王様と一緒にいたいです!!」
「俺もここに!!」
「ダメよみんな!!この国は、滅びる運命なの!!」

シャルルは女王の前まで来て、その剣を振り上げる。

「「シャルル!!」」

ウェンディとセシリーが叫ぶ。シャルルはそのまま剣を振り下ろす。

ザクッ

シャルルの振り下ろした剣は、女王の目の前の地面に突き刺さる。

「勝手に・・・勝手に諦めてんじゃないわよ!!」

シャルルは地面に剣を差したまま叫ぶ。

「自分たちの国でしょ!?神や女王がいなきゃ、何もできないの!?今までウソをついてでも、必死に生きて来たんじゃない!!なんで簡単に諦めちゃうの!!弱くたっていいわよ。みんなで力を合わせれば、なんだってできる!!」

シャルルの言葉に、シャゴットは目を見開く。

「この国は滅びない・・・私の故郷だもん!!なくなったりしないんだから!!」

シャルルは涙を流して叫び、(エーラ)を背中から出す。

「私は諦めない!絶対止めてやる!!」
「シャルルー!!」

シャルルは魔水晶(ラクリマ)がぶつかった方角に向かって飛んでいく。俺たちはその姿を見送る。見送るエクシードたちはみんな泣いていた。諦めかけた涙とシャルルの言葉に感銘を受けた涙が・・・

バサッ

「ぼきゅも行ってくるよ。だって、この国が大好きだから!!」

ナディもそう言い残してシャルルと同じ方角に飛んでいく。シャルル・・・それがお前の答えなんだな?

「だったら・・・俺たちも行くぞ!!ウェンディ!!セシリー!!」
「うん!!」
「僕だって!!絶対に自分の故郷を守ってみせるよ~!!」

セシリーはそう言って俺の背中を掴む。問題は、ウェンディをどうするか・・・さすがにセシリー一人じゃ・・・

「じゃ、私がこの女の子を持つよ~」

すると、ウェンディのことを茶色のエクシードが持ち上げる。もしかして・・・この人・・・

「あぁ!!さっき僕たちを助けてくれた~!!」
「うん!!私もエクスタリアが大好きだから、一緒に止めにいくよ~!!」

しゃべり方も見た目もセシリーにそっくりだ。これ絶対セシリーのお母さんだわ。

「行こう!!魔水晶(ラクリマ)を止めに!!」
「「「うん!!」」」

ウェンディの言葉に俺たちはうなずき、魔水晶(ラクリマ)へと向かう。すると、俺たちの後ろからたくさんの羽の音が聞こえる。

「俺たちだって・・・」
「絶対にエクスタリアを守るんだ!!」
「みんなで力を合わせれば!!」
「なんだってできるんだから!!」

エクシードたちは涙を拭いながら俺たちに付いてくる。
エクシード全員の思いが一つになった・・・俺たちは・・・絶対に魔水晶(ラクリマ)を止めてやる!!







 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
エドシリルがエルちゃんエルちゃん言い過ぎて書いてる最中にどっちのエルちゃんだかわからなくなったりしました(笑)
次回はついにミストガン登場です。
次回もよろしくお願いします。  
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