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妄想全開男子

作者:abcdes
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休日〜「妹」


『お兄ちゃん一緒にコンビニいこ!アイス買ってくれるんだよね』

「しょうがねえな。亜美がこれからもいい子でいるならいくらでも買ってやるよ。2番っと」

『本当?わーい!じゃあ亜美1人で二個食べちゃおっと』

「こらこら。さっきいい子にするって言ったよな?そんな悪い子には買ってやらないぞ?1番っと」

『ヘヘーん。実はもうアイス持ってるんだ!さっきこっそりお兄ちゃんに内緒で買ってきたんだ!サプライズだよ!お兄ちゃんこそそんなこと言うなら食べさせてあげないぞ』

「えっ!いつの間に!?お兄ちゃん驚いたよ。いじわるしないで頂戴よ。1番っと」

『しょうがないなー。じゃあ何が食べたい?お兄ちゃんの口から亜美にお願いして』

そりゃもちろん決まっている。この選択技ならあれしかない!

「お兄ちゃんアイス食べたぁぁぁあい!ブヘッ!いたっ‥冷たっ!」
「早く起きろこの馬鹿兄が!!あさまでなにやってんだきめーんだよ」

俺はテレビ画面から目を離し、頬に当てられた冷たい物体の正体を確かめた。
ん?これは氷?俺が懇願したら本当にアイスが出てきた!

「二次元が時空を超えてリアルで起こった!!亜美たんと現実で会える日はそう遠くはなっ!ひでぶっ!」

俺の頬に再び痛みが走る。
痛みを与えた元凶は、俺の部屋の扉の前に仁王立ちして立っていた。

「なにが亜美たんじゃ!いい加減二次元から目を覚ませブス!朝ごはんリビングに置いてあるから勝手に食べて」

用件だけを俺に伝え、俺の部屋から汚らわしいものを触った時の様に足に消臭剤を吹き付けた。そして彼女は一回のリビングに向かっていった。

俺は「妹ガチ萌えメロディーランド」のゲームをセーブし、テレビを消し、枕元の時計を確認した。

深夜7時‥‥。ってことは朝7時か。
また完徹してしまったぁぁぁあ!!遅刻だ遅刻だ遅刻だ遅刻だ!遅刻‥いや待てよ?今日土曜日じゃねえか。なんだ学校休みか安心した‥‥‥。
安心できるか!!じゃあなんで俺の至福の時間邪魔されなきゃいけなかったんだ!?しかも実の兄に向かって氷投げたり、顔面にキック入れたりしてきやがって!!意味がわからん!!説得しに行ってやる!!

俺はタタタタっと階段を降りた。
リビングでは制服姿の妹ーーー亜美がゆったりと朝食をしていた。

「おい亜美!俺今日休みだぞ!?なんで起こしたんだ!!ふざけんな」
「お母さんが朝ごはん間違って馬鹿兄の分も作っちゃったから起こして来いって言われたの!気安く話しかけないで口臭いんだから」

相変わらず俺のことゴミ程度にしか思ってねえな。
俺は都立の高校に通っていて土曜日は休日だが、亜美は私立の中学に通学しており、土曜日も学校があるみたいだ。お疲れ様です。
それにしても母さんの姿が見当たらないな。もう仕事行ったのか?
くそ!すでにこの場は亜美に支配されてしまってんのか。うぜーまじうぜー!「妹ラン」のヒロインの様に可愛くも素直でもないくせに偉そう口叩くな!
同じ「亜美」でもこうも違うのか!
二次元と三次元は!!
でも俺はそんな亜美を極度に嫌ったりはしない。
本当は亜美はツンデレなのだ。

「パン食べるスピード遅すぎんのよキモ」

今はまだツンツンしてるけど、デレさせたら大したもんやぞ!

「ポロポロパンカス落とすな」

うちの亜美は顔は普通だけど、声は天使の様に可愛い。俺が妹系のゲームにはまったのは亜美が原因だ。
勿論、「妹ラン」のヒロインが亜美って名前は偶然で意識したわけじゃない。

「ごちそうさま。キモ兄さら洗っといて」

くっ、こいつ本当に兄を雑用係と認識してんな?でも我慢だ。亜美のデレがくるまで。

「家引きこもってんだからガス消しとけよ。どーせ使わねえだろ」

こい!

「うっわ馬鹿兄の靴くさ死ねよまじ」

デレろ!

シュコーッ

「まだ臭兄の靴臭い。消臭剤に打ち勝つくささってなんなの?」

いけ!

「帰ったら靴捨ててやろ。じゃあ、お兄ちゃん行ってきます!」

きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
お兄ちゃんだって!行ってきますだって!ウォォォォオ!!あの声で言われちゃたまんねえな!
ちゃんとボイスレコーダーに録音もできたし、後で永遠とループさせ聞いてやろう。

「よし。ひとまず皿洗うか」

俺は2人分の皿洗いを行うことにした。

亜美は挨拶の時だけ礼儀が正しいから、俺はそれをデレタイムと呼んでいる。
いつも俺のことは「馬鹿兄」「キモ兄」「臭兄」など卑下してくるが、デレタイムの時は必ず「お兄ちゃん」と呼んでくれる。
なぜかはわからないけど、きっと毎日言ってる言葉で反射的に出てしまうのだろう。
それがツンデレの定義に当てはまるものなのか微妙なのだが。

「お兄ちゃん行ってきますお兄ちゃん行ってきますお兄ちゃん行ってきますお兄ちゃん行ってきますお兄ちゃん行ってきますーーー」

永遠とループされる亜美の先ほどの声に癒されながら、皿洗いを終え自分の部屋に戻り「妹ラン」の続きを始めることにした。

「お兄ちゃん行ってきますお兄ちゃん行ってきますお兄ちゃん行ってきますお兄ちゃん行ってきますお兄ちゃん行ってきますーーー」

俺は休日だけのこの密かな癒しをひとり静かな部屋で楽しむ。
俺は亜美の声のせいで人生を狂わされたと言っても過言ではない。

今日も俺は日々の疲れを「妹ラン」でとっている。



「俺‥‥後少ししたら犯罪とかしちゃいそうだわ」
 
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