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真田十勇士

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巻ノ一 戦乱の中でその三

「この家は大変な状況じゃ」
「ですな、武田家が滅んだ時以上に」
「さらにですな」
「危うい中にありますな」
「一体どうすればよいのか」
「まず羽柴家につく」
 ここでだ、昌幸はこれからの家の動きの第一を言った。
「秀吉殿にな」
「その次の天下人になられる」
「その方にですか」
「つかれますか」
「そうじゃ、おそらく上杉家は羽柴家につく」
 昌幸はこの読みも言った。
「だから我等が羽柴家につけばな」
「味方同士となり」
「助力も頼める」
「少なくとも攻め入られることはなくなる」
「そういうことですな」
「そうじゃ、だからここは羽柴殿についてな」
 そうしてというのだ。
「後ろを確かにし天下人の力も受けてな」
「家を守る」
「そうされますか」
「そうじゃ、これでかなり違う」
 羽柴家の加護、例え離れていてもその威光を受けかつ上杉家から攻められる心配をなくす。この二つでというのだ。
「後は北条、徳川と対する」
「父上、それでなのですが」
 ここでだ、若々しく澄んだ目の若者が昌幸に言ってきた。顔立ちは昌幸に似ているがより清々しい感じがする。
「その徳川、北条ですが」
「何じゃ、源三郎」
 昌幸はその嫡子真田信之を幼名で呼びつつ問うた。
「言いたいことがあるなら言ってみよ」
「おそらく。徳川と北条は最初はいがみ合いますが」
「やがてじゃな」
「話しそして」
「国を分け合うことになるというのじゃな」
「そうなるかと。そしてここに来るのは」
 徳川と北条、どちらかというと。
「徳川かと」
「何故そう言える」
「はい、北条家は元より上野を狙っていました」
 かつて武田家の領地でありこの前まで織田家の滝川一益が入っていた国だ。
「その上野を手に入れる絶好の好機です」
「織田家を退けたしのう」
 本能寺の変で揺れる織田家を攻めてだ、その滝川一益を破り追いやったのだ。それで上野はというのだ。
「上野は北条家のものじゃな」
「それに対して徳川家は」
「甲斐、信濃が近いな」
「その領地に」
「だからか」
「はい、甲斐は北条の本拠相模と近くどちらのものとするか揉めるかも知れませぬが」
「信濃はじゃな」
 まさにだ、真田家がいるこの国だ。
「そしてこの上田も」
「徳川のものとなるかと」
「ではここに来るのはか」
「はい、徳川家です」
 この家が攻めてくるだろうというのだ。
「そうなるかと」
「そうじゃ、敵は徳川じゃ」
 まさにそうだとだ、昌幸は言い切った。
「あの家とじゃ」
「戦になりますな」
「徳川は強い」
 昌幸は強い声でだ、その徳川家について言った。
「主の家康殿も相当な御仁じゃが」
「その下にいる家臣の方々も」
「四天王、そしてその四天王を含めた十六の家臣」
「名付けて十六神将ですな」
「人が多い、どの御仁も武辺者じゃ」
 それが徳川の主と将達だというのだ。 
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