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真田十勇士

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巻ノ一 戦乱の中でその一

                       真田十勇士
                    巻ノ一  戦乱の中で
 甲斐の名門武田家は織田家、徳川家との戦である長篠の合戦に敗れその力を大きく落とした、そしてそれから九年後遂に織田家によって滅ぼされた。
 これにより武田家の家臣だった者達はそれぞれの道を歩むことになった、主家に殉じて滅んだ家、織田家についた家、徳川家についた家。
 そこはそれぞれだった、そして信州上田の真田家は織田家につくことにした。これは織田家が天下を統一すると見てのことだ。
 かつての仇敵である織田家につく、これには覚悟が必要だった。世間から二君に仕えるのかという侮蔑と嘲笑を受け織田家からは怪しまれ何時切り捨てられるか捨て駒にされるかわからない。しかも織田信長が真田家を信じ受け入れるかどうか。
 だが真田家の主真田昌幸は言った。
「これしかないのじゃ」
「当家が生き残るには」
「織田家につくしかありませぬか」
「そしてそのうえで」
「織田家の家臣になるしか」
「そうじゃ、若しもじゃ」
 ここでだ、昌幸はその鋭い光を放つ口髭を生やした顔を険しくさせて言った。
「織田家が攻めてくるというのなら」
「その時は、ですな」
「この城で」
「いや、わしが行き首を差し出す」
 昌幸は自らこう言った。
「そうしてことを済ませて家を残す」
「と、殿がですか」
「御自ら行かれ」
「そして、ですか」
「ご自身が」
「織田家もわしの首なら文句はあるまい」
 それを差し出せばというのだ。
「主のわしの首を貰えればな」
「真田家自体はですか」
「残してもらえると」
「そう見ておられますか」
「如何に織田家といえど」
「そうじゃ、まずは家を守ることじゃ」 
 これが第一だというのだ。
「その為にはな」
「殿がお首をですか」
「差し出されますか」
「そうする」
 昌幸は家臣達に強く言ってだ、織田家に覚悟を決めて使者を送った。その織田家の返事は仕えることを許すというものだった。
 かくして真田家は一旦安泰となった、だが。
 すぐにだ、昌幸にとっても誰にとっても思わぬ事態が起こった。
 その織田信長が本能寺で討たれたのだ、所謂本能寺の変が起こったのだ。
 これにより真田家は再び主君を失った、昌幸はここでまた家臣達に言った。
「ならば仕方ない」
「と、いいますと」
「どうされますか」
「天下はどうなるかわからなくなりました」
「織田家により天下は統一されようとしていましたが」
「その織田家、織田信長公が討たれました」
「討った明智殿は羽柴殿に討たれたとのことですが」
 天下はめまぐるしく動いていた、織田信長は倒れそして明智光秀もだった。
 次の天下人は誰か、そして天下はどうなるのか。最早誰にもわからなかった。
 しかしだ、昌幸は家臣達に腕を組んで答えた。
「次は羽柴殿じゃな」
「明智殿を討ったですか」
「あの方ですか」
「主君の仇を討ったという功績を挙げた、しかも頭が回り人たらしで動きも早い」
「だからですか」
「あの方が、ですか」
「次の天下人ですか」
 家臣達は昌幸に対して問うた。 
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