FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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エクスタリア
――――――
「ねぇシャルル~!この服なんかいいんじゃない~?」
「ふん!」
服を片手にシャルルにセシリーが話しかける。しかし、シャルルはそれにそっぽを向いてしまう。
「シャルル!そんな態度じゃダメでしょ?」
「いいじゃない。別に」
ウェンディに注意されたシャルルはそういって、化猫の宿のギルドから、外に飛び出してしまう。
「待ってよシャルル~!!」
「あ!!セシリー!!」
「あ~あ・・・ 行っちゃったな・・・」
ギルドを飛び出したシャルルのあとを、セシリーが追いかけていく。ウェンディはセシリーを呼び止めようとしたが、セシリーはそれに気づかず行ってしまう。
シリルはそれを見て、ため息まじりにそう言った。
「行っちゃったな・・・じゃないよ!!早く二人を追いかけないと!!」
「確かにな・・・まったく、なんであんなに仲が悪いんだか・・・」
ウェンディとシリルは二人のあとを追いかけようと席を立つ。しかし、
「待ちなさい、シリル、ウェンディ」
「「マスター」」
シリルとウェンディは後ろからやって来た、化猫の猫マスター、ローバウルに止められてしまう。
「なんでダメなんですかマスター!!」
「あの二人が仲悪いのは知ってるでしょ!?」
「なぶら・・・」
ローバウルはコップに酒を注ぎ、そのコップの酒を無視して瓶から直接お酒を飲む。
シリルとウェンディはそれどころではないので突っ込むことはしない。
「大丈夫じゃ、セシリーに任せておけ」
「任せられれば追いかけようとはしないんですよ!!」
ローバウルの言葉にシリルがそう返し、ウェンディはシリルの言葉にうなずく。
「あの二人・・・生まれてから三ヶ月もたったのに、全然シャルルがセシリーと話そうとしないんですよ!?」
「もうあの二人はダメですよ!俺たちがなんとかしないと――――」
「バカタレがーーー!!!」
「「ビクッ!!」」
ローバウルにそういわれ、ウェンディとシリルは固まる。
ローバウルは酒を口に含み、それをこぼしながら話す。
「安心せぃ。あの二人はきっと大丈夫じゃ。すぐに仲良くなって帰ってくるわい」
「「・・・だといいんですけど・・・」」
二人は怒鳴られたのにビビったのか、しぶしぶ席に着き、二人が帰ってくるのを待った。
「シャルル~!!待ってよ~!!」
「ついてこないで」
シャルルはあとをついてくるセシリーに向かってそう言う。しかし、セシリーはあくまでもついてくる。
「なんで~?」
「なんでもよ」
「理由ないならいいじゃん~」
「・・・好きにすればいいじゃない・・・」
相手をするのがめんどくさくなってきたシャルルはそう言う。それを聞いたセシリーは笑顔になり、シャルルの隣を歩き出す。
「隣に立たないで」
「なんで~?」
「あんたが嫌いだからよ」
「僕はシャルルが好きだよ~?」
シャルルは立ち止まり、セシリーを指さす。
「私はあんたが嫌いなの!!私の隣に立たないで!!」
シャルルはそう言うと再び歩き出す。セシリーはシャルルにそう言われ、とぼとぼとシャルルの後ろをついていく。
しばらく歩くと、二人は河原に着き、シャルルがそこに腰を下ろすと、セシリーもその隣に腰を下ろす。
「隣に来ないでって言ったでしょ」
「僕も川を見たいだけなの~」
「・・・そ・・・」
二人はしばらく、何も言わない。互いに黙ったまま、時間が流れていく。
「「・・・・・」」
しばらくすると、その状態を片方が破る。先に話し始めたのは・・・シャルル。
「あんた・・・なんで私につきまとうのよ」
「? さっきも言ったでしょ~?シャルルが好きだからだよ~」
「なんで好きなのよ」
「う~ん・・・」
シャルルに質問され、セシリーは顎に手を当て考え始める。
「わかんない~」
「何よそれ・・・」
セシリーの答えにシャルルは思わずあきれてしまう。
「じゃあさ~、シャルルはなんで僕が嫌いなの~?」
今度はセシリーが質問する。するとシャルルの顔が曇る。
「・・・たが・・・」
「ん~?」
「あんたがいつも楽しそうだからよ!」
「え!?」
シャルルの言った理由に、セシリーは耳を疑う。
「なんで楽しそうだとダメなの~?」
「・・・あんたは、私と同じ使命を受けているはずなのに・・・私は苦しいのに・・・なんで同じはずのあんたはそんなに毎日楽しそうなのよ・・・」
シャルルは涙を噛み締めながら言う。セシリーはシャルルにそう言われ、?マークを頭いっぱいに付ける。
「なんでって・・・そんなの簡単だよ~!」
「え?」
セシリーは立ち上がってそう言い、シャルルはそんなセシリーを見上げる。
「僕はシャルルも、シリルも、ウェンディも好きだからだよ~!!」
まったく迷いのない声でそう言われ、シャルルは唖然とする。
「なんで好きだと楽しいのよ?」
「好きな人と一緒だと毎日楽しいでしょ~?それに!!」
セシリーはシャルルを指さす。
「好きな人が辛い顔をしてると、相手も辛いからだよ~」
「・・・え・・・」
シャルルは一瞬、意味がわからなくなる。
「僕は三人が好きなの~。たぶんシリルもウェンディも僕たちのこと好きだと思うよ~!シャルルは僕のこと嫌いみたいだけど・・・」
しょぼんとするセシリー。だが、すぐに顔をあげる。
「僕はシャルルが辛い顔してると・・・辛いの~・・・きっとシリルたちも、僕たちが辛そうな顔をしてたら、辛いと思う~。だから僕はいつだって、どんなときでも笑ってるの~!!」
セシリーはそういってシャルルに笑いかける。シャルルはそれを見て、ただ唖然としている。
「だから~、シャルルも一緒に笑ってた方が――――」
ズルッ
「「あ!?」」
するとしゃべっていたセシリーが足を滑らせて、川へと落ちてしまう。
「うぅ・・・冷たい・・・」
セシリーは川の中でしりもちをついた状態になっている。するとそんなセシリーに、川の魚がたくさん向かってくる。
「うわぁ!!魚がー!!」
セシリーは川の中で魚から逃げ出す。猫が魚から逃げると言う通常とは逆の現象にシャルルは・・・
「・・・ぷっ・・・」
「?」
セシリーは魚の群れから逃げ切って、川から上がると、シャルルがふるふると震えている。
「うふふふふ・・・あはははは!!」
シャルルはお腹を抱えて笑い出す。セシリーはそれを見て、一瞬ポカーンとしてしまうが、すぐに笑顔になる。
「シャルル~、やっと笑ってくれた~!!」
「う・・・うるさいわね!!」
シャルルは顔を赤くしてそう言うと、セシリーに手を差し出す。
「ほら、風邪引いちゃうから帰りましょ」
「うん!ありがと~!!」
セシリーはシャルルの手をつかみ、二人はそのまま手を繋いでギルドへと帰っていく。
その日の夜、ギルドに帰ってきた二人が仲良く話しながら、笑顔で帰ってきたのを見てシリルとウェンディは驚き、ローバウルは静かにうなずいていた。
――――
「あれ?ここは?」
ハッピーが目を覚ますと、そこはどこだかよくわからないが、見た感じ寝室だということはわかった。
ハッピーは隣で眠っているシャルルとセシリーに気がつく。
「シャルル!セシリー!起きて!」
「ん・・・」
「うぅ・・・」
シャルルとセシリーはハッピーに声をかけられ、その場で体を起こす。
「オスネコ・・・」
「ハッピー・・・」
三人は部屋をキョロキョロと見回す。
「私たち・・・どうなったの?」
「オイラたち眠らされて・・・それで・・・」
「ここどこだろう・・・?」
「・・・」
シャルルはうつむいて、暗い顔をしている。
「シャルル?」
「私の情報が罠だった・・・」
「違うよ!!オイラたちはたまたま見つかったんだ!!」
「うん!!偶然あんなところにいた王国軍に捕まった!!ただそれだけだよ!!」
ハッピーとセシリーはシャルルを元気付けようとする。しかし、シャルルの表情は暗いままだった・・・
「誓ったのに・・・私はウェンディを守るって、誓ったのに・・・」
「シャルル・・・」
シャルルは悔しそうにうつむき、セシリーはそんなシャルルを心配そうに見つめる。
ガチャ
すると、突然ハッピーたちのいる部屋のドアが開き、中に誰かが入ってくる。
「お前たちがアースランドで任務を完遂した者たちか。うむ、いい香りだ」
その猫は三人の似てる人にそっくりだった。
「青い天馬の!?」
「一夜!?・・・ていうか猫?」
その猫は連合軍で共に戦った、青い天馬の一夜にそっくりだった。
「何を驚く?同じエクシードではないか」
「ニチヤさん」
すると今度は、ニチヤの後ろから黒いひょろ長い顔の猫が現れる。
「彼らは初めてエドラスに来たんですよ。きっとエクシードを見たのも初めてなんでしょう」
「おお!そうであったか」
黒い猫はなぜか部屋に入ってきてからずっと、手を上下に振っている。ニチヤは黒猫の説明に納得すると、突然ポーズを決める。
「私は、エクスタリアの近衛師団を率いる務めるニチヤだ」
「ぼきゅはナディ。エクスタリアの、国務大臣ですよ。任務お疲れさま」
「「任務?」」
ハッピーとセシリーはナディが言ったことがわからず聞き返し、シャルルは辛そうに黙っている。
「さっそくであるが、女王様がお待ちである。ついてまいれ」
「女王様だって!?」
ニチヤは三人にそう言うと、ニチヤとナディは部屋の外に出ていく。
ハッピーはシャルルの方を見る。
「シャルル・・・セシリー・・・オイラに任せて。ここはひとまず、様子を見るんだ」
「ハッピー頼りになる~・・・」
ハッピーがシャルルとセシリーにそう言うと、セシリーは笑顔で返すが、シャルルはなおも暗い顔をしている。
「オイラが絶対守るからね!」
ハッピーは体の前で手を握りしめてそう言う。
三人はそのまま、ゆっくりとニチヤたちに付いていった。
部屋から出ると、そこにはドアの両側を挟むように、立っているものがいた。
「ご苦労」
「「ニャン!」」
「また猫だ」
「本当~」
三人は前の二人についていく。
「それではこちらへ」
ナディが手を振りながらそう言う。
「一体何がどうなって・・・」
「ハッピー、あそこ・・・」
セシリーが指をさした方をハッピーが見る。そこからは光が入ってきてた。ニチヤたちはそちらに向かって歩いていく。
三人がその扉から外に出ると、そこにはたくさんの猫がいた。
ハッピーとセシリーはそれを見て驚き、シャルルは相も変わらずうつむいたままである。
三人は、ニチヤたちの先導の元歩いていくと・・・どこもかしこも猫ばかり。
お店を営業してるのも猫、おしゃべりしているのも猫、勉強しているのも猫・・・そこはまるで、
「猫の国だ」
「猫しかいないみたい~」
ハッピーとセシリーがそう言う。すると周りの猫たちが三人をじっと見ている。
「お?あれが噂の・・・」
「アースランドの任務を完遂した・・・」
「すげぇ!よ!ヒーロー!!」
「見ろよ、あの白い娘、すげー美人!」
「茶色の娘もかわいいなぁ」
猫たちはハッピーたちを見て口々にそう言う。それはまるで英雄を見る民のような感じだった。
「猫ばっかりだ」
「ぼきゅたちは猫じゃない。エクシードさぁ!」
「エクシード?」
ナディの言ったことにセシリーが質問する。
「人間の上にたち、人間を導く、エクシードだよ?」
「エクシード・・・」
「人間の上に立つ~?」
「そう、そしてここはエクシードの王国、エクスタリア!!」
ハッピーたちはナディの説明を、ただただ聞くことしか出来なかった・・・
一方、そのころシリルとガジルは・・・シリルside
今俺とガジルさんは魔水晶を一望できる建物の上に立っている。それにしても人が多いなぁ・・・
「ガジルさん、どうします?」
「正面から突っ込むと、見物人を巻き込んじまうなぁ・・・」
ガジルさんも何も思い付かないみたいだ・・・どうしよう。ナツさんじゃないけど・・・ここは殴るしかないのかな?
「ん?」
「?」
するとガジルさんが何かに気づく。俺もそちらを見ると、人混みの中にいる、スーツを着て、帽子を被っている人がこちらに視線を送っている。あれ誰だ?
「やっぱり・・・あいつに頼るしかねぇか・・・」
ガジルさんはその人を見て小さくそう呟く。ガジルさんの知り合いか?
しばらくそのまま、俺たちは様子を伺っていると、王国軍が太鼓を鳴らして行進してくる。まさか・・・魔力抽出を始める気か!?こうなったら・・・
「待て!」
俺は飛び出そうとしたらガジルさんに手を捕まれる。
「ガジルさん!!なんで止めるんですか!?」
「今行くと見物人を巻き込むからだ!」
「そんなのいいじゃないですか!?仲間の命が――――」
「それじゃあ、あいつらと一緒だ」
ガジルさんは顎を王国軍に向ける。そうか・・・自分たちのことしか考えてないなんて・・・あいつらと一緒か・・・
「すみません・・・」
「わかってくれりゃあいい。しかし・・・どうする・・・ん?」
俺が少し落ち込んでると、ガジルさんがまた何かに気づく。その視線の先には、またあのスーツの人がいて、今度はこちらに背を向けて、何かを指さしている。俺とガジルさんはその指の指している方を見て、互いにほくそ笑む。
「ふっ、なるほどな!!行くぞ小娘!ギヒッ」
「はい!でも、小娘はやめてください!」
スーツの人が指さしていたのは、魔水晶の北側!そっち側は配置されている王国軍が少ないようだ。あれぐらいの人数なら、俺たちだけでも十分いける!
俺たちはそう思い、魔水晶の北側へと急いだ。
エクスタリアにて・・・第三者side
ハッピーたちはエクスタリアの城の中に入っている。
「人間はひどく愚かで劣等種だからね。ぼきゅたちがきちんと管理してあげないと」
「その上、ひどい香りだ」
ナディの説明と、ニチヤの個人的な意見を、ハッピーたちはただ黙って聞いている。
「女王様はここで、人間の管理をしているんだ」
「女王様は、素敵な香りさ」
ニチヤがキラキラしながら言うけど・・・セシリーは、「はっきり言ってどうでもいいんだけど~」と、心の中で思っている。
「勝手に増えすぎると厄介だからね~」
ナディは後ろを歩いているハッピーたちの方を向き直る。
「いらない人間を女王様が決めて、殺しちゃうんだ」
「な・・・なんでそんなこと・・・」
ハッピーたちはナディの言うことに驚き、質問してみる。
ナディは前を向いて、再び歩き始める。
「失われつつある魔力を正常化するためだと、女王様はおっしゃった。女王様はこの世界だけでなく、アースランドの人間も管理しておられる。
「人間の“死”を決めてるの?」
「女王様にはその権限がある。なぜなら、あの方は神なのだから」
「「神!?」」
ニチヤの言葉にハッピーとセシリーは驚く。
「私たちの任務って・・・何?」
ここにきて、さっきまでずっとうつむいていたシャルルが口を開く。
「私には、生まれたときから任務が刷り込まれていた」
シャルルがそう言うと、ナディとニチヤは顔を見合わせる。
「女王の、人間人間管理によって選ばれた・・・滅竜魔導士、ウェンディの抹殺」
「「えっ?」
シャルルの言ったことに、ハッピーとセシリーは驚く。
「ど、どういうこと!?シャルル!!」
「黙ってて」
シャルルがハッピーを制しようとするが、ハッピーは話すことを止めない。
「ウェンディの抹殺って、どういうことだよ!?」
「ハッピー・・・」
驚くハッピーの風呂敷を、セシリーは引っ張る。ハッピーはセシリーの方を向くと、セシリーはさっきまでのシャルル同様に、暗い顔になっている。
「シャルルがウェンディの抹殺ってことは~・・・」
「はっ!!」
ハッピーはそこで、セシリーの言おうとしていることがわかり、頭を抱える。
「あれ・・・それじゃあ・・・オイラの任務って・・・」
(僕の任務って・・・まさか・・・)
「あんた・・・知らなくて幸せだったわね・・・」
頭を抱えて座り込むハッピーと、ただ無言で立っているようだが、心の中では動揺を隠しきれないセシリー。
そして、二人は同時に叫んだ。
「ナツを・・・オイラが抹殺する任務に!!」
「シリルを・・・僕が抹殺する任務に~!?」
二人は自分たちの任務に驚き、頭を抱えた・・・
(なんでセシリーが驚いてるのかしら?)
シャルルは驚いているセシリーとハッピーを見て、そう思っている。
「落ち着きなさい!セシリー!オスネコ!
私たちは、任務を遂行してないし、遂行するつもりもなかった。なのに、どうして完遂していることになってるわけ!?」
シャルルはニチヤとナディに向かってそう叫ぶ。それを聞いた二人は、なぜか驚いた顔をする。
「記憶障害か?」
「仕方ありませんよ。上書きによる副作用は未知数なのですから」
二人が話していると、シャルルがそちらを指さす。
「答えなさい!!」
「ぼきゅが説明するよ」
ナディはそういって、語り始める。
「女王様の人間管理に従い、6年前、100人のエクシードを、アースランドに送ったんだ。
卵から孵ると、滅竜魔導士を捜索し、抹殺するように情報を持たせてね。
しかし、状況が変わったんだ。人間の作り出したアニマが、別の可能性を導き出したからね」
シャルルたちは目を見開き、ナディの話を聞いている。
「アースランドの人間を殺すのではなく、魔力として利用するものなんだ。
中でも滅竜魔導士は別格の魔力になるみたいだよ~?」
それを聞いてシャルルの表情がますます驚きに変わる。
「なので、君たちの任務を急遽変更したんだ。【滅竜魔導士を連行せよ】とね」
それを聞いた三人は、固まってしまい、動けなくなる・・・
そして、シャルルは膝をつき、手を地面につけて涙を流す。
ハッピーとセシリーも同様に、その場で固まって、涙を浮かばせていた。
そのころシリルは・・・シリルside
広場ではついに、魔力抽出が始まろうとしている。俺たちは北側に移動しようとしたが・・・あまりにも人が多くて身動きができない・・・
俺たちが動けないでいると、魔力抽出の準備が着々と続いていってしまう。
急がないといけないのに・・何か突破口はないのか?
パンッ
「花火だ!!」
「いいぞ!!もっとやれ!!」
こんなときに花火まで上げやがって・・・
「なんだ!?」
「花火なんて聞いてないぞ!?」
すると盛り上がる見物人とは対照的に、王国軍はその花火を見て驚いている。まさか、さっきのスーツの人か?
何かヒントをくれるといいんだけど・・・
その後も花火は次々に打ち上がり、全部で五個の花火が打ち上げられる。
その花火には、一つ一つにアルファベットが書いてあった。
NORTH
花火にはそう書いてあった・・・北・・・
そうか!!あの文字を利用して、王国軍を北側に動かしちゃえばいいのか!!だったら・・・
「あそこ見て!!何か文字が書いてあるよ!!」
「広場の北だ!!怪しい野郎が、魔水晶を狙ってるみたいだぜ!!」
俺とガジルさんはそう叫びながら前に進んでいく。最前列につくと、王国軍は俺たちの誘導によって慌て、大半の王国軍が北側を守りに向かっていた。
「下がってください!!」
「もっと後ろへー」
王国軍はそういって見物人を後ろに下げる。おかげで、暴れるには十分のスペースが出来た。
「よーし!これで大暴れできるぜ!ギヒッ」
「さて・・・行きますか」
「おい!何をしている!下がれ!」
王国軍の一人が俺たちにそう言ってくる。だけど・・・下がらないんだよねぇ、俺たちは。
ガジルさんは羽織っていたマントを投げ捨てる。
「俺が兵隊を倒しますんで、ガジルさんはそのうちに・・・」
「おうよ!!任せとけ!!」
俺とガジルさんは魔水晶に向かって走り出す。
「ぶっ飛べ!!水竜の・・・翼撃!!」
「「「「「「「「「「うわああ!!」」」」」」」」」」
俺の攻撃で王国軍は一気に飛ばされる。
その内に、ガジルさんは魔水晶に向かってジャンプする。
「あのミストガンて野郎はうさんくせぇ奴だが、ひとまずは信じてやるぜ!!鉄竜剣!!」
ガジルさんが魔水晶に滅竜魔法を打ち込む。
「なんだあいつ!?」
「やめさせろ!!」
王国軍は騒ぎを聞き付けて少しずつ戻ってくる。
「お前らはおとなしくしてろ!!水竜の咆哮!!」
俺の咆哮で集まってきた王国軍は水に飲まれて飛んでいく!!
「まだまだ!!うお!!」
ガジルさんがそういって何度も滅竜魔法を放つと、魔水晶は光出した。
すると、その魔水晶はみるみる小さくなっていく。
「え?」
「何!?」
俺たちは元に戻った人たちを見て、驚いてしまった。
そのころ、ハッピーたちは・・・第三者side
「やはり、遠隔での命令上書きでは、うまく伝わらなかったようですね」
「しかし結果オーライ。お前たちは滅竜魔導士を連れてきたんだからな」
唖然としている三人に、ナディとニチヤはそう言う。三人はそれに対して、全員が涙を流している。
「魔力化、すなわちマジカライズは、人間どもに任せてある。そういうのは人間どものほうが得意だからな」
「ち・・・違う・・・私は、自分の意思で・・・エドラスに・・・」
シャルルは震えながらそう言う。しかし、ナディが指を振りながら、それを否定する。
「ううん。命令を実行しただけだよ」
「みんなを・・・助けるために・・・坑道へ・・・」
「気づいてなかったのかい?ぼきゅたちが、誘導したんだよ」
シャルルは坑道のことを思いだし、苦しそうな顔をする。
「私は・・・私は・・・ウェンディが大好きだから・・・守りたいって・・・」
「それは一種の錯覚だね。命令が【抹殺】から【連行】に、すなわち、殺してはいけないと変更――――」
「ウソだーーーー!!!」
シャルルは頭を抱えてそう叫ぶ。セシリーもそんなシャルルを見て、涙を流し、ハッピーは悔しそうな顔をしている。
「お前たちの行動すべては、私たちの命令によるものだ」
ハッピーはそういわれ、手を強く握りしめる。
シャルルは声を出して泣き叫び、セシリーはただ辛そうにシャルルを眺める。
すると、そんな中、ハッピーが立ち上がり、そして・・・
「オイラたちは操り人形じゃないぞ!!」
「「!?」」
ハッピーはシャルルたちの前に立ち、ナディたちにそう叫ぶ。
ナディとニチヤは、予想外の言葉に驚いてしまう。
「お・・・おす・・・」
シャルルはゆっくりと顔を上げて、ハッピーを見る。セシリーも同様に、ハッピーを見つめる。
「オイラたちは・・・妖精の尻尾の魔導士だー!!」
ハッピーはそう叫び、ニチヤとナディは何も言わずに固まってしまう。
「ハッピィ・・・」
「ハッピー・・・」
シャルルとセシリーは、前に立つハッピーの背中を見つめ、名前を呟いた。
後書き
いかがだったでしょうか。
これからシャルルとハッピーが「でぇきてぇるぅ」って状態になるので、先にシャルルとセシリーの仲良くなったストーリーを出してみました。
当初は、エクスタリアでシャルルの見ていた「夢」ということで出そうとしたのですが、仲良くなったときの夢を見たのに、あんなに暗い顔をするわけないなと思い、ただの回想にしちゃいました・・・(汗)
次回はハッピーの両親と、セシリーのお母さんが出てきます。
次回もよろしくお願いします。
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