| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

A's編
  第九十九話 魔導師デビュー戦

 アリサとすずかの魔術回路の安定化が無事に済んでから一週間後、時空管理局本局の演習室にて士郎のデバイスを使用した模擬戦が行われようとしていた。

 していたのだが

「……なんでさ」

 士郎の視線の先には演習室を監視及び見学することが出来る部屋。

 そこには士郎の騎士であるリインフォース、模擬戦でデバイスのデータを確認するためにプレシアとマリー、希少技術管理部魔術技術課の上司であるグレアムに使い魔のリーゼ姉妹。
 ここまではまだわかるのだが、リンディ、レティ、クロノ、エイミィ、なのは、フェイト、はやて、ヴォルケンリッター、アルフ、ユーノ、さらにはエステートと時空管理局の知り合いがほぼ勢ぞろいしていた。

 一局員の初戦とはいえ模擬戦にこれだけの面子が揃うなど士郎自身予想にもしていなかったのでため息が零れてしまう。

 そんな時

「そういうな、主はやてもテスタロッサ達もお前の実力を知らぬからな。
 興味津々なのだろう。
 もっとも私もこうしてお前と本気で剣を交えるのは初めてだからな、それなりに楽しみにしているぞ」

 そんな台詞を言いつつ、士郎の傍に降り立つ一人の女性。

「俺の相手はやっぱりシグナムか」
「なんだ?
 私が相手では不満か?」
「不満なんて無いさ。
 武器のタイプから恐らくシグナムだろうと予測していただけだよ」

 士郎の言葉にそれならいいがと首を竦めて見せるシグナム。

「さて、役者も揃ったのだし始めましょうか」

 プレシアがモニターが表示され、その声に士郎とシグナムが頷く。

「模擬戦のルールを説明するわ。
 管理局の戦闘訓練準拠で行い、当然だけど非殺傷設定で行うわ。
 カートリッジの使用に制限は無いけど、今回は両方共にアームドデバイスだからやりすぎて防護服を抜かないように注意して頂戴。
 何か質問は?」
「大丈夫だ」
「ありません」

 プレシアのルール説明に士郎とシグナムが首を横に振り、アイコンタクトで三十メートルの間合いを空け、向かいあう。

「さて、始めるとするか」
「ああ、レヴァンティン!」
「シュミーデアイゼン!」
「「騎士甲冑展開!」」
「「Anfang(起動)」」

 その言葉を合図に士郎とシグナムが騎士甲冑にその身を包む。

「ベルカの騎士の先達として負けてやるわけには行かないからな。
 本気で行くぞ、レヴァンティン」
「Jawohl」

 シグナムがレヴァンティンを正眼に構える。

「後輩とはいえ、たやすく負ける気もない。
 隙を見せたら遠慮なくやらせてもらう。
 行くぞ、ミーデ」
「Jawohl, Mein Lade」

 士郎がシュミーデアイゼンを自然体で握り構える。

「これより模擬戦を開始します。
 それでは、試合開始!!」

 プレシアの言葉で戦いの火蓋は切って下ろされた。



 試合開始と同時に士郎とシグナムが同時に踏み込み

「「紫電―――」」
「「Explosion」」

 レヴァンティンが一発、シュミーデアイゼンが二発のカートリッジがロードされ膨れ上がる魔力。
 振りかぶられたレヴァンティンは炎を纏い、腕を交差し構えられたシュミーデアイゼンは真紅の魔力を纏う。

 両者の地上での疾走は一瞬で三十メートルの間合いを駆け抜け

「―――一閃!!」
「―――双牙!!」

 振り下ろされた一閃と十字に交差する双牙が正面からぶつかり合う。

「「はああああっ!!!」」

 力が拮抗するも士郎が押される。
 だが次の瞬間

「ミーデ、カートリッジロード!!」
「Explosion」

 シュミーデアイゼンにさらに二発のカートリッジがロードされ、膨れ上がる魔力。
 シグナムも耐えようと踏ん張るも拮抗は一瞬。

「おおっ!」

 衝撃で両者が弾かれながら、跳ね上がるレヴァンティンと不安定ながら振りぬかれたシュミーデアイゼン。

「打ち勝った!!」
「正面からの打ち合いで士郎が押し勝ちやがった」

 その光景にフェイトが驚きの声を上げ、ヴィータも強引な力技に目を丸くする。
 他のメンバーもあそこからさらにカートリッジのロードをするとは思わず、目を丸くしている。

 そして、打ち勝った士郎が僅かに早く体勢を立て直し、再び踏み込む。
 僅かな遅れ
 だが、剣での戦いの中では致命傷となる遅れ。

 それは

「レヴァンティン!」
「Explosion, Schlangeform」

 レヴァンティンが連結刃へと姿を変える事で覆り、連結刃の刃が踏み込んだ士郎に迫る。

 しかし、士郎の表情に焦りや緊張はない。

「阻め、鋼の軛!」
「Explosion, Stahljoch」

 シグナムの向かって突き出た複数の刃は連結刃を阻む盾となり、士郎の足場となる。
 だが士郎が軌道を変え、魔法を発動のために僅かに行った減速の時間にシグナムは体勢を立て直し、士郎の経験が少ない空へと舞い上がろうとする。

 しかし、シグナムが完全に空に上がるよりも早く。

 士郎が間合いを詰め、剣を振るう。

 士郎の初撃をかわし、二撃を魔力を纏った鞘で受け止める。
 士郎は鞘で止められたことに驚くことも無く、さらに追撃を放とうとするが

「ちっ!」

 背後から迫る危機を本能的に感じ取り、視線を向けると鋼の軛に弾かれてもなお士郎を追う連結刃。

 三撃目をシグナムでは無く

「Scharlachrot Wirkung」
「はあっ!」

 身体を一気に回転させ真紅の魔力を纏い、連結刃を迎撃し、弾き飛ばす。
 だがその隙をシグナムが逃すはずも無く、踏み込み蹴りを放つ。

 シグナムに蹴り飛ばされる士郎。
 しかし、その蹴りはしっかりとガードし、自ら地を蹴る事で威力を逃がしていた。

 さらに蹴り飛ばされながらも空中跳躍の要領で、空中を手で叩き、飛行魔法を使う事無く最低限の体勢を整え

「ミーデ!」
「Explosion, Bogenform」

 シュミーデアイゼンのカートリッジが一発ロードされ、双剣の柄が連結し一つの弓となる。

 引かれる弦に番えられる実体弾の矢。

 そして、放たれる必中の九射。
 それをシグナムは連結刃を振るい叩き落す。

 その隙に着地し、弓を構えなおす士郎。
 そんな士郎に向けて大技を放とうと連結刃を引き、鞘に収めるシグナム。

「抉れ!」
「Explosion, Spirale Kugel」

 シュミーデアイゼンの二発のカートリッジがロードされ、二本の矢が絡み合い捩れ、一つの矢となり魔力が込められる。

「Explosion」
「飛竜―――一閃!!」

 鞘に収められたレヴァンティンの最後のカートリッジがロードされ、抜刀のように連結刃が抜き放たれる。

「螺旋弾!」

 士郎の弓から放たれた螺旋弾は正確に連結刃の先端を捉える。

 だが、士郎とシグナムでは魔導師としての根本的な魔力量に差がある。
 結果として士郎の放った螺旋弾は軌道が逸らされ、シグナムを捉える事無く壁を撃ち抜く。

 そして、螺旋弾により威力が殺されているとはいえ、士郎に迫る連結刃は、士郎の実力からして防ぎきることは出来ない。

 故に士郎が取った選択は防御ではなく迎撃。

 士郎が弓の柄を両手で持つと

「Zwei schwertform」

 柄の連結が解かれ、シュミーデアイゼンの形態が元の双剣に戻る。

 そのまま、この試合の最初の一撃と同じように腕を交差し構える士郎。

「Explosion」
「紫電―――」

 真紅の魔力が噴き出し、シュミーデアイゼンを纏う。

 そして、迫る連結刃を冷静に見据え、踏み込み

「―――双牙!!」

 一閃し、弾き返した。

 レヴァンティンの形態もまた弾き飛ばされた連結刃を回収するように

「Schwertform」

 元の剣に戻る。

「弓といい、剣といい、いい腕だ。
 特に弓は凄まじいな」
「ありがとう。
 しかし、実際に戦うと剣の腕は言うまでもないが、連結刃もずいぶんと厄介だな」
「褒めても手加減はせんぞ」
「残念、少し期待したのだが」

 この濃密な模擬戦の戦いぶりを互いに称えながら、シュミーデアイゼンのカートリッジクリップは排出され、新たなカートリッジが装填される。
 同様にレヴァンティンもカートリッジの装填口が開き、シグナムがカートリッジを装填する。

「「Nachladen(装填)」」

 両者のカートリッジが再装填されると、静かにそのまま構える二人。

 そんな時

「二人ともストップよ」

 プレシアによって戦いが止められた。

「どういうことですか?」
「ああ、まだどちらも明確なヒットは与えてないぞ」

 いきなりのプレシアのストップに首を傾げるシグナムと士郎。
 そんな二人の様子に大きくため息を吐くプレシア。

「よく周りを見てみなさい」

 プレシアの言葉に内心で首を傾げながら演習室に視線を奔らせる二人。

 踏み込みぶつかり合った地には亀裂が走り、他にも士郎が放った矢や鋼の軛に地面が抉れ、シグナムの連結刃で削れ、軌道が外れた螺旋弾のためだろう穴が空いていた。

「「ん?」」

 そこで二人は何かがおかしいことに気がつく。

 演習室は本局内にあるため防護フィールドが張られ、壊れないようになっている。
 無論、魔力と魔力のぶつかり合いだ。
 それでも強固に作られた壁や地面がダメージを受けても全壊はしないようになっているはずである。

 しかし、士郎とシグナムが見つめる先には防護フィールド突き破るどころか、分厚い壁を抉り大穴を空けている壁があった。

「大穴が空いた演習室でこのまま試合続行させるわけにはいかないでしょう。
 というかやりすぎよ」
「いや、シグナムも俺もまだ余力を残していた。
 演習室の強度不足じゃないかとぜひ反論したい」

 呆れたようなプレシアの言葉に、慌てて反論する士郎。

「強度不足って演習室に大穴が空いたことなんて過去、一度も無いのだけど」
「まあ、聞いた事は無いわね」

 士郎の反論をばっさりと否定するリンディとレティ。

 もっとも士郎とシグナムもいささかやりすぎたとは思っているようでどうしたものかと、冷や汗だらだらであった。

「まあ、今回は良いんじゃない?
 初めてのデバイスを使用した模擬戦で力加減を誤ってということで」
「そうね。
 多少、お叱りはあるでしょうけど、一度目は大目に見るとしましょう」

 リンディとレティの言葉にほっと安堵する士郎とシグナム。

「いささか不完全燃焼ではあるが」
「そうだな。だがこれから決着をつける機会はあるだろう」
「確かに。
 ならそれまでにさらに腕を磨いておくとしよう」
「ああ、私もさらに精進しておく」

 こうして士郎の魔導師としてのデビュー戦はなんとも不完全な試合で幕引きとなった。

 本来ならこの後、シュミーデアイゼンのデータ解析の予定だったのだが、演習室の修理の話で後日に改めてということで、士郎たちは海鳴に戻ることとなった。

 士郎たちが海鳴に戻った後、すぐに演習室は修理されたが、当然のように演習室の強度アップと防護フィールドの強化は行われた。

 もっともこの演習室は今回の比ではないレベルで壊れることになるのだが、それは数ヵ月先の未来のお話 
 

 
後書き
というわけで士郎の魔導師戦でした。

そして、更新が遅れてごめんなさい。
色々手を加えてたら間に合いませんでした。

もっとも魔導師戦といっても基本的な戦い方は変わってないですけどね・・・
オリジナルの魔法が出ていますが、詳しくは「オリジナルデバイス&魔法関連」話を参照してください。
設定関連のところに追加してます。
あと士郎の魔導師についても「キャラクター設定」話に追加してます。

さて、士郎のデバイス、アリサとすずか達の魔術と舞台は整い始めましたので、A's編も締めということでサウンドステージのお花見話に次話から行きます。
ようやくA's編もこれで完結です。

ちなみにシュミーデアイゼンの愛称ミーデは塔城黒歌様の案を頂戴いたしました。
塔城黒歌様、ありがとうございました。

それでは次回にまたお会いしましょう。

ではでは 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧