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日本では大丈夫

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1部分:第一章


第一章

                       日本では大丈夫
 あるイギリス人が日本に英語を教えに来ていた。つまり英語教師として日本に来たのである。それと共に日本の文化や歴史も学ぶことも目的にしていた。
 その彼がだ。その日本の文化や歴史を勉強してだ。多いに驚くことがあった。それで同僚になっている日本人の国語の教師にだ。こう話すのだった。
「日本は凄い国だよ」
「凄い?何がだい?」
 その日本人はだ。落ち着いた様子でイギリス人に言葉を返した。
「文化や歴史が変わっているっていうのかい?」
「変わっているなんてものじゃない。オスカー=ワイルドを知っているね」
「ああ、イギリスの作家の」
 十九世紀のイギリス文学を代表する作家の一人である。アイルランド生まれであり作風としては耽美派に属する。代表作としてサロメ等がある。
「あの人がどうしたのかな」
「彼は捕まっているんだ」
 イギリス人は強張った、尚且つ真剣な顔で日本人に話した。
「同性愛の罪に問われてね」
「えっ、同性愛の罪?」
「そうだ、それで捕まっているんだ」
 これは本当のことだ。ワイルドはとある貴公子との恋によりだ。牢獄に入れられてしまったのだ。それにより心身を著しく消耗しその命を縮めてしまったと言われている。尚ワイルド自身の無闇に挑発的な態度は発言が当局を刺激してしまったことも逮捕、入獄の一因でもある。
「けれど日本ではそれで捕まっている人はいないんだね」
「同性愛で捕まるんだ」
「そうだ、昔のイギリスひいては欧州ではそうだった」
 キリスト教でだ。許されない大罪の一つとされていたからだ。
「だが日本では」
「織田信長も武田信玄も上杉謙信もそうだったよ」
 名だたる戦国大名の面々がだ。そうした趣味の持ち主だったというのだ。
 
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