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ハリー・ポッターと蛇の道を行く騎士

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第七話 本の中の世界

 読み終えた本をあちらこちらに山のように積み上げたふみは、ついにその視線を禁書のしまってあるエリアへと向ける。
 デメリットと好奇心を天秤にかけるように少しだけ考え込むふみだったが、その僅かな思考の後に確かな足取りで本棚へと向かう。
 禁書のエリアへと足を踏み入れたふみはそこにしまわれる数々の本達を一望する。躊躇
ためら
うことなく進むと、一瞬の躊躇
ちゅうちょ
も無くその中の一冊を引き抜く。
 封印を解除して本を開く。ページをめくり、文字を読む。読み終わったら次の本を開いて繰り返し。本当に危険な書だけを避けて新たな本を読んでいく。

 やがてふみは一冊の本と出会う。

『てやんでぇ、今度の主様は随分とちみっこいお嬢ちゃんだなぁ!?』

 本を開くと突然の爆音と激しい光を伴った衝撃がふみに襲いかかり、突如やかましい声が脳に直接叩き込まれる。突然の事に身をすくめて眉をひそめたふみは崩れて来て自分を埋める本をそのままに、やかましい本に話し掛けた。

「……うるさい。……あなたは一体、……何?」

『ほい、おったまげたぁ。知らずに開いたんかい嬢ちゃん。わいはインテリジェントブックのエニグマや、この世界図絵っちゅう本の人工知能をやっとる。主な仕事は暗号化された文章の解読と情報の収集やな。……ところでロタロタはどないしたん?あいつ怒らせて封印掛けられたんが最後の記憶やねんけど……』

「……ロタロタは別の場所で仕事中。……あなたは禁書の棚にしまってあるのを私が見つけ、封印を解除した……」

『ほんまかいな!おおきになぁ。ところでわいのこと知らへんっちゅうことは一応説明せなあかんかいな?』

「……うん。……その方が、ありがたい」

 エニグマはふみの意識を本の中に引きずり込むと、早速説明を始める。説明といっても言葉や文字で教える訳ではない。
 知識を分け与える。……情報を直接頭に叩き込む行為だ。
 頭の中に知らない知識がある。自分が聞いたことも、見たこともない記憶があるという奇妙な感覚を覚えて困惑するふみ。

 ふみが引きずり込まれた本の中の世界は上下も左右も前後すらない真っ白な空間であった。
 試しに知識の中にある行動を取る事にする。右手を軽く突き出して見たことも聞いたこともないはずのパネルを想像する。すると、暗号が書かれたウィンドウが複数と操作用のパネルがふみの目の前に出現した。

『分かったかいな?わいの仕事はその暗号化された文章や情報を主人である嬢ちゃんが読めるように変換することや』

 物凄い勢いでウィンドウに書かれた暗号が文章へと変換されていく。どんどんと画面がスクロールして、ふみの周りではいくつものウィンドウが閉じたりまた開いたりを繰り返す。……しかし、ここで問題が発生した。

「……エニグマ?……これ、読めないんだけど」

『んな!?そうやった、嬢ちゃんドイツ語は読めへんのか……どないしよう?』

 しばらく作業が止まっていたが、再び凄い勢いで文章が変換されていく。ドイツ語から英語に変換された文章を読んで、この世界図絵の使い方を覚える。

『───ほな、契約完了や。これからよろしゅう頼むで主様』

「───ふむ。なかなかに面白そうな事をやっているな」

『な、なんやー!?』

 ふみとエニグマだけで、第三者が入って来られない筈の空間に突如第三者が表れる。
 鋭い目つきや威圧感のある雰囲気など身に纏う空気は違うが、外見だけならばふみとまったく同じ見た目の少女が白い空間内に姿を見せる。

「……起きたの?……おはよう、サタン」

『サタンやってー!?あの、地獄の長の?……こりゃまたえらい大者が出てきよったなー』

「何故もっと早く起こさないのだ。こんな面白そうな事を俺に教えぬ積もりか?」

「……別に。……知りたいことは知れたから、もうどうでもいい」

「……まあいい、仕方がない。次は呼べよ?」

 サタンが出て来てから、一度も会話に混ざれぬエニグマ。
 自分中心の言動をする点でいえば、この2人は似たもの同士であろう。



 エニグマを置き去りに、ふみはパネルを操作して白い空間から出る。

 目が覚めると図書館にいた筈なのに、何故か自分の布団で寝ていた。
 首を傾げつつも枕元の魔法書を抱え持ち、食堂に向かう。
 
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