病でも元気
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第一章
病でも元気
テディー=オッターは生来身体が丈夫でない、心臓があまり強くないのだ。
それで激しいスポーツも出来ない、だから幼い頃から本ばかり読んでいてしかも勉強もよくした。その結果彼女は成長して医者になった。勤務先はドルトムントのある大きな病院だ。
おっとりとした緑の垂れ目で普通の高さの鼻、小さな唇に豊かで波がかった長い茶色の髪。背は一六五程でスタイルはいい。膝までの黒いスカートの上の白衣がよく似合う。
小児科の医師であり心優しく真面目で子供達からも人気がある、だが。
その彼女にだ、看護師の女性陣が食事中に共にいる彼女に言うのだった。
「あの、ドクトルって」
「いつも思うんですけれど」
「スポーツお好きですよね」
「はい」
優しい笑顔でだ、テディーも答える。
「大好きです」
「けれどご自身は、ですね」
「スポーツは」
「あまり身体が丈夫でないので」
それで、というのだ。
「ですから」
「それで、ですよね」
「ご自身ではスポーツはされないですよね」
「それはないですよね」
「はい、ですが自分が出来ないこともあって」
そのせいもあってとだ、テディーは看護師達に話した。
「それで余計になのです」
「スポーツがお好きですか」
「そうなのですか」
「そうです、観ることは大好きです」
テディーの趣味はスポーツ観戦なのだ、生まれ育ち勤務先の病院もあるドルトムントで行われる競技は大抵観に行く位だ。
「サッカーも他のスポーツも」
「そうですよね」
「それで、ですよね」
「いつも観戦されていて」
「それで、ですね」
「はい、楽しませてもらっています」
ハンバーグの横の潰したジャガイモを食べつつだ、テディーは答えた。
「いつも」
「それで今夜もですか」
「観戦に行かれるんですね」
「そうです、特に今夜は」
その観戦に行くスポーツのことも話すのだった。
「フェンシングですので」
「あっ、フェンシングがですか」
「特にお好きなんですか」
「そうなのです」
実際に、というのだ。
「ですから是非です」
「行かれてですか」
「そのうえで」
「あの人が勝たれる姿を観たいです」
「あの方!?」
テディーの今の言葉にだ、看護師達全員がだった。
目を瞬かせてだ、こう言ったのだった。
「あの、今あの方と仰いましたけれど」
「ドクトル、それは一体」
「あの方とはどなたですか?」
「その方は」
「はい、ハンス様です」
テディーは頬を赤らめさせて看護師達に答えた。
「私がファンの方でして」
「フェンシングの選手ですか」
「そうなのですか」
「大学でフェンシングをされている方でして」
テディーは大学の医学部を出て医者になっている、花の二十六歳だ。その彼女と比べると大学生の彼は。
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