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ロード・オブ・白御前

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もう一つの運命編
  第10話 黒影・真vsロシュオ!

 気づけば黒影・真は開けた場所にいた。

 ロシュオもまた、黒影・真の前にいたので、内心慌てて三叉槍を構えた。

『ここならば愛する者を巻き込む心配はあるまい』
『――あんた、意外といい奴だな』

 オーバーロードの王と言うから、もっとおどろおどろしい性格をしていると思っていた。だが実際は、こうして彼自身の妻だけでなく、巴のことまで慮る、良識者だった。

『こういう形でやり合いたくなかった――ぜ!』

 先攻は黒影・真が取った。踏み出し、ロシュオへ向けて三叉槍を横に薙いだ。
 ロシュオは軽く引いて斬鉄剣で三叉槍を受け止めた。
 防がれているだけなのに、重い。弾き飛ばして仕切り直すことすらできない。

 斬鉄剣を握っていたロシュオの手の片方が柄を離れ、掌が黒影・真に向けられた。
 ロシュオの掌から放たれたのは白い衝撃波だった。

『どわっ!?』

 黒影・真は吹き飛ばされ、後ろにあった木の幹に背中をぶつけたが、何故か痛みは少なかった。


 “戦極ドライバーより強い変身ができますよ”


(そういうことか。疑って悪かったな、光実)

 黒影・真は再び走り、ロシュオに斬りかかった。

『ぅおりゃあ!』

 黒影・真は三叉槍を駆使してロシュオを攻撃する。量産型ドライバーを使っていた時よりも、断然体が軽く、動きやすい。

『ぬぅん!』

 しかし、ロシュオは斬鉄剣で三叉槍を弾き、逆に斬りかかってくる。

 黒影・真の三叉槍が斬っても、ロシュオの体表はすぐ再生する。
 逆に斬鉄剣が掠めるだけでも、黒影・真は裂傷を負った。

 ――ロシュオは知恵の実の異能を使おうとしない。今くり広げられているのは、武器と武器をぶつけ合うだけの、原始的な戦い。
 小難しく立ち回るのが苦手な黒影・真にとって、それは口惜しくも有難いことではあった。

『どうした。その程度か』
『まだっ……まだだぁ!』

 黒影・真はドライバーのレバーに手をかけた。

《 マツボックリエナジースカッシュ 》
『ぬおおおおおお!!』

 槍撃のラッシュをくり出した。いくつかはロシュオに上手く攻撃が入ったが、それ以上にロシュオの防ぐスピードが速かった。重そうな見た目に反し、俊敏性が高い。

 今度はロシュオのほうから斬鉄剣をくり出して来た。
 真正面から正直に受ける黒影・真ではない。三叉槍で上手くいなしながらロシュオから距離を取った。
 こういった場での経験値稼ぎのためにこそ、タワー前のインベスの群れと戦ったのだから。

(落ち着け、俺。倒さなくていい。トモがヘキサを元に戻すまでの時間さえ稼げりゃいいんだ。呑まれるな。一度は量産型ドライバーでオーバーロードだって倒しただろうが)


 “一緒なら、どんな困難だって乗り越えていける”


(トモだって今、ヘキサを取り戻すために、きっと戦ってる。俺もトモも独りじゃない)

 斬鉄剣が降り抜かれる。間違いなく黒影・真を袈裟切りにする軌道で。それを彼は避けられない。わずかながら戦いに触れた身だから、分かった。

 黒影・真はコンプレッサーを乱暴に3回押し込んだ。

《 マツボックリエナジースパーキング 》
『おおおおおおおお――ッッ!!!!』

 黒いソニックブームを限界までまとった3つの穂先を、ロシュオへ一直線に突き出し――






 膝を突いたロシュオは、黒い戦士がくり出した刺突によって体の中心に負った傷に、手を当てた。

 知恵の実さえあれば即時再生は可能だ。だが、ロシュオはすぐに彼の妻のもとに戻ることはしなかった。

 ――おそらく妻もまた、あの少女によって黄金の果実を失っているだろう。

 そう思い描くことに、抵抗は少なかった。
 何故だろうかとロシュオは自身の考えに思いを致し、簡単に答えを見つけた。

 ロシュオはただ逢いたかっただけだ。愛する妻に。愛したただ一人の彼女に。滅びてしまう前に。

 その願いは果たされた。
 例え短い時間でも、遠い昔のように隣同士に在ることができた。

 それだけでロシュオという男は満足してしまった。


 負った傷は再生を始めている。黄金の果実がない身では、比較にならない遅さで。この傷によってロシュオが死ぬことはない。

 どれくらいそこで膝を突いていただろうか。

(フェムシンムの長として、最後の役目を果たす時が来たようだ)

 ロシュオは新たな招かざる客の気配を二つ感じ、立ち上がった。 
 

 
後書き
 ※改題しました 
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