ONE PIECE《エピソードオブ・アンカー》
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episode13
─海軍本部─
ジンベエの正拳突きが直撃したために長い間療養していた海兵...ストロベリー少将は、病み上がりの痛々しい姿であの時の闘いの報告を行っていた。
新聞記事では語られなかった事実。当人しか知らない情報を明らかにするのは、大きな組織にいる以上避けられない事項でもある。
そのストロベリー少将が語るのは、自分を含む多くの海兵たちを戦闘不能に追い込んだ魚人の存在であった。
「特に凶暴なのはジンベエです。アレの強さは尋常ではなかった...!」
「このまま、のさばらせておくには危険すぎるか...」
「ああ、それともう1つ報告が......。例の、人間の件です。アレは、人間ではありません。...魚人です」
「なに...?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
─とある沖合─
「なんじゃこりゃ!?」
普段通り飛来して来たニュース・クーによってばら撒かれた新聞の内の1つを拾ったアンカーの声が上がった。その声色は驚愕を表している。
原因となるのは、その手に握られた新聞...の間から落ちた手配書。
足元に無造作に拡がった手配書には、見知った顔が2つ。1つはジンベエ。もう1つはアンカー。
「はあッ!? な、何で僕が!?」
金額が上がったことにより新しく印刷されたのであろうジンベエの手配書は理解出来た。しかし、自分の手配書は理解不能だった。
“海峡のジンベエ” 2億5千万ベリー。
“多節鎌のアンカー” 1500万ベリー。
驚くな、と言う方が無理だろう。
「ほう。お前さんが賞金首とはな...」
「嘘でしょ...。なんで...?」
「この間のことが原因と考える他無いじゃろう」
手配書のアンカーの顔は怒りに満ちていた。「僕は魚人だ!」と叫んだあの時の表情である。
あの時の反撃を“危険”と感じた海軍たちの判断だろう。
ニュース・クーが運んでいるということは、世界中の人間や魚人や人魚が1度は目の当たりにするということだ。
もはや、絶望的......。少なくとも、アンカーにとっては。
「僕は、賞金首になりたかったわけじゃないのに...」
「ほれ落ち込んどる暇はないようじゃ」
近くにいた船にはドクロのマーク。
それと反対側にはカモメのマーク。
海賊と海軍に挟まれた。狙いはもちろん、ジンベエとアンカーである。
「分かったよ。どうせ、やることは変わらないんだ」
アンカーは武器を手に取る。いつもは2節、3節で戦っているのだが、今回は最大の7節。
周りの仲間に当たらないように注意を促すと、それを頭上で振り回したまま船尾で敵を待つ。ジンベエはアンカーの周りに数人残し、自分は甲板で敵を待った。
海軍は船尾から。海賊は甲板へ。
先に船に着いたのは海軍。遠くから放たれる弾丸を多節鎌で防ぐ。節が普段より多くなっているお陰か、振り回せば振り回すほど鎖が伸びて威力が増す。長くなった鎌の先を、身を乗り出している奴らに向かって投げ付けると、その内の何人かは負傷して数が減った。
「今から大立ち回りするから、皆は海から奴らを狙って!」
「おう!」
「僕の攻撃も避ける自信がある奴は残って、援護を!」
「おっしゃあ!!」
次々と海へ飛び込む仲間たちを見送り、乗り込んで来た海兵に向かって攻撃をする。
海兵の中には能力者もちらほら見られたが、アンカーの武器に触れた者は全て刃を受けて倒れた。物理攻撃が効かないはずの自然系の能力者も全てである。
「くそっ! あの小さい奴、妙な武器を...!」
「あの鎖に触れると力が抜ける...。まさか、海楼石か!?」
「遠距離から攻撃するんだ! あの鎖が当たらない場所からの攻撃に集中しろ!!」
船に乗り込んでいた者も1度引き上げ、船からの攻撃に移る。だが、その船の底には、船に穴を空けるべくその場を漂う魚人が多数。全ての海兵が引き上げた瞬間、船が真っ二つに割れ、あっという間に海に沈んで行った。
アンカーに気を取られたのが仇となり、海に飛び込んだ魚人の存在を軽視した結果である。
海軍側の掃討が予想より早く終わり、ジンベエの加勢に向かったがそちらもちょうど同じく掃討を終わらせていた。
ジンベエは驚いた様子で「もう終わらせたのか」「殺してないだろうな」と声を上げた。
「毎度のことだけど、僕そんなに信用無い?」
「お前さんは分からんからな」
「大丈夫。殺してないよ、今回は...」
「今回“は”!?」
「今回はそんな暇なかったし、冷静だったから大丈夫!」
自信満々に胸を張って言い切ったアンカーの脳天に、ジンベエの拳が振り落とされたのは言うまでもない。
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