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ガウチョスタイル

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第四章

「いい感じじゃないか」
「そうだろ、いいだろ」
「こんな服があったんだな」
「俺が若い頃に着てたんだよ」
「牛飼いをしていたその時にか」
「昔は牛飼いは皆その服を着て働いてたんだよ」
「そうだったんだな」
 ホセも祖父の話に納得した。
「祖父ちゃん達は」
「もう着ている奴はいないな」
 フェリペはこのことは残念そうに言った。
「本当にな」
「誰も着ていないんだな」
「実際御前も知らないだろ」
「ああ、確かにな」
「そういうことだ、服も着ないとな」
「忘れられるんだな」
「そうだよ、けれどこの服ならな」
 ガウチョ、この服装ならというのだ。
「誰でも似合うからな、いいんだよ」
「確かにな。ひょろ長い俺でもな」
「いい感じだろ」
「粋か?粋っていうんだな」
「自分でもそう思っていいぞ、とにかくな」
「この服ならいけるな」
「ああ、似合ってるぞ」
 祖父はにやりと笑ってだ、孫のその背中を叩いた、叩かれる孫もにやりとしていた。
 それで実際にそのガウチョで登校してみるとだ、クラスメイト達は驚いて言った。
「おいおい、いい服着てるな」
「似合ってるぞおい」
「何だよその格好」
「何処で見つけてきたんだ?」
「祖父ちゃんが若い頃に着てたファッションだよ、仕事中にな」
 ホセはここでも嘘を言わなかった。
「ガウチョっていうらしいな」
「へえ、ガウチョか」
「ガウチョっていうのは」
「そんなファッションもあったんだな」
 周りものこの服装について知らなかった。これも時代の流れだ。
「成程な」
「いや、いい服だな」
「それなら御前でもな」
 服にどうしても五月蝿くなっているホセでもというのだ。
「いけるな」
「いいぜ、その服」
「いかした感じだよ」
「そうだな、俺もこれからはこうした服装でいくぜ」
 ガウチョかガウチョ的なものでというのだ。
「いや、祖父ちゃんにいいもの教えてもらったよ」
「そうか、じゃあな」
「これからはそのファッションだな」
「そのファッションでいくんだな」
「そうするさ、いや祖父ちゃんにはいい服紹介してもらったから」
 それでとだ、ホセは満面の笑顔でこんなことも言った。
「お礼しないとな、たまにはうちの国の美味いワインでもプレゼントするか」
「ワインか、粋だな」
「すっかり粋になったな、御前も」 
 そのガウチョを着てだ、クラスメイト達も笑って彼に言った。ホセは実際に祖父にお礼としてチリ産のワインを贈った、するとフェリペはその孫に笑って言った。
「俺も今からガウチョを着る」
「もう一着持ってたんだな」
「そうだ、今からガウチョ同士で飲むぞ」
「おいおい、俺もか?」
「牛飼いは粋と伊達なんだよ、粋と伊達に生きる奴はな」 
 フェリペは笑って孫に話すのだった。
「酒は一人で飲むもんじゃないんだよ」
「二人でか」
「そうだ、俺もワインを出すからな」
「じゃあ二人で飲むか」
「そうするぞ、俺と御前でな」
 こうして祖父と孫はガウチョを着てだった。そのうえで二人でワインを楽しんだ。粋と伊達のガウチョを着て二人で飲むワインは絶品だった。


ガウチョスタイル   完


                           2015・5・28 
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