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アルカナ・ファミリア~刹那の時と星空を越えた場所で~

作者:杏菜
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帰ってくる。



交易島・レガーロ。
ここは誰もに幸せを送り届けるといわれる、平和で豊かな島。
過去に貧困や統治者の横暴な行為、流行り病などが蔓延していたがそれすらを乗り切った島は、争い事が目に見えることなどなかった。

そしてこの島を守る自警組織・・アルカナファミリアが平和なレガーロを守っている。



「あらノヴァ君めずらしいねぇ」

「こんにちは。あの・・そのコスモスを一輪ください。」

「はいはい。まいど!ラッピングするかい?」

「・・はい、お願いします」


ノヴァは花屋の店主からオレンジにラッピングされた白いコスモスを渡された。


「ありがとう、またよろしくね!」


その花屋を後にするとノヴァは急ぎ足でとある場所へと向かう。



「・・・勘違いされた・・・か?・・・」


自分がこのコスモスを誰かにプレゼントすると店主は思ったのかかすかに二ヤついていた・・・

「はぁ・・・・巡回は終わったものの僕が花を買ってはおかしいのだろうか・・・」

さっきからチラチラ辺りを見渡すと周りから視線が飛び交うような・・・




夕焼け空が広がる地平線。髪をなびかせる風が冷たかった。


「・・・・・もう秋か・・。」

いつも見ているこの風景は僕にとってかけがえのないものとなっていた。
笑顔が絶えないこの島は庭の様なものであり家のようなものでもあった。
パーパやマンマを抜いてなら誰よりもレガーロを愛し、誰よりもこの島を理解している。そう思っている。


本当の両親が目を覚まして4ヶ月・・・だんだんと分かり合えているような気がする。

まだ両親が目覚めていないときいつも傍ら(かたわら)で支えてくれたのは家族(アルカナファミリア)だった。
いつも素直になれない自分がいてなかなか言えない事だが今でも心から感謝している。

もっとも、今日のパーティの主役となるノノカという人物は僕が幼い頃からそばにいてくれた。
僕より1つ年下だが優しい心の持ち主だった。


「あれ?ノヴァ~!!」

「フェリチータ。それに・・・ルカか。」

「何をしてるんですか?巡回はとっくに終わってますよね?」
フェリチータの隣りにいた人物は大量の荷物を抱えているせいか顔が認識できない。

「あぁ。これからちょっとな」

「これって・・・コスモスの花だよね?誰にあげるの?」

「・・・これは・・墓参りだ。」


「・・・そっか・・・」

「・・お嬢様、行きましょうか」

「そうだね。じゃあまた屋敷のパーティで」

「あぁ。」


悪い空気にしてしまった。

僕がこの花を持っているのはとある人物の墓参りのためだった。



少し歩いてレガーロを一望できる有名な花畑についた。
ここは辺りが一面花で囲まれ、レガーロの町を一望できる。

そしてここを墓場と決める人間も数少なくない。


「ここか・・・・。」

何度きてもきれいに彫りだれている「SETSUNA(セツナ)」という文字。


「・・・今日であれから十年が経ちました。」

ここに眠るセツナという人物はまだ14歳の若さでこの世を去った。

今生きているなら彼女は24歳・・・ということになる。


「・・僕は相変わらず楽しく毎日を送っています」

これは眠りから覚めていなかった両親にも同じように言っていた。


「・・・今年は綺麗なコスモスが咲きましたね」
そっと墓にコスモスの花を置く。

「今日は我が家にあなたの妹が帰ってきて・・・また騒がしくなりそうです」


そういうとノヴァは静かにその場から立ち去った。







その日の夜。レガーロの住民とアルカナファミリアのメンバーは港に集結していた。
1人の少女の帰りを待つ。

「俺、初めて会う」
アッシュは何か準備運動でも行っているような動きをしながらフェリチータとリベルタに話していた。

「そっかぁ。アッシュは初めてノノカと会うんだよねー。」

「でもお嬢だってファミリーとして会うのは初めてだろ?実質、3年ぶりか。」


「・・・・・・。」

私は3年ぶりにノノカと会う。
ノノカは極秘任務があって僅か12歳にして剣のセリエの幹部を辞めてしまったらしい。

それは私の知らないノノカだ。彼女がどれだけ部下達に慕われていたのかも、どれだけ強かったのかも
知らない。

でもそんな事を考えていても私はノノカに会えるのを心から楽しみにしていた。


「お嬢?」

リベルタは心配そうに下をうつむいていた私の顔を覗く。

「・・うんうんっ!なんでもない!」
心配させてしまったのか・・・・。それを考えて明るく振舞うようにした。


「あれじゃないですか?」
ルカが海の向こうをさしていた。小さいながらそこには二隻の船が見える。

「おォ。やっとお出ましか。」
さっきまで黙っていたデビトも表情が明るくなりルカの指す海を見つめていた。

暗い海なはずなのに月がその海を照らし、船はゆっくりと港へ向かってくる。


「おまえらぁーっ!!」

「ダンテの声だ!!おぉーーい!!」
パーチェはダンテの声がした途端、腕を大きく横に振る。

「おーーい!みんなぁ!」
もう1つの船からは小さい少女の姿が捉えられる。

するとみんなの顔が笑顔になった。私もパーチェに負けじと
「おーーーい!!!ノノカーーーーーっ!!」

腕を大きく振り、声を出した。






「フェル姉!!!」

パーティーは大成功した。黒いスーツにミニのフリフリのスカートを着用し、深紫の髪は大人びた髪飾りでまとめていた、
栗色の瞳を持ったノノカはとても嬉しそうにみんなに振舞っていた。
ほとんどの人達は1年ぶりだったのだが私やルカは屋敷から離れていたので3年ぶり。
でもノノカの成長期があったらしく1年あってないだけでもかなりの違いがあって最初、船で見た時はみんな戸惑っていた。

「ノノカ!!」
私は船の前でも抱き合ったがもう一度その小さな体を抱いた。
ノノカの身長は私よりも小さいがノヴァの身長を越しそうだった。

「3年ぶりだよね!相変わらず美人さん!」

「もう・・からかわないでよー」
ぷぅとほほを膨らますと。

「ルカも大変だよねー。こんなかわいいお嬢様が自分の主なんて」
とからかうのは3年経っても変わらない。

「それにしても随分成長したなー。」
リベルタはノノカの頭をポンッとたたくと

「成長期ですよ」

「・・・・・・。」

「どうしたの?ノヴァ?」
パーチェが顔が暗いノヴァの様子を見て不思議そうに質問した。

「・・・・いや。なんでもない。」
しかし暗いのには変わりないので周りにいたリベルタ、パーチェ、ルカ、デビト、アッシュ、ノノカ、私は首をかしげる。

「あー。」
するとリベルタは何かに気づいたのか急にニヤつき始めたのである。

「お前もしかして・・・ノノカが自分の背を越しそうなの気にしてんの?」
からかうように笑うとノヴァは

「・・・リベルタッッ・・・・お前ッ・・・・・」
ブチ切れそうで自慢の日本刀を構えている。
だがリベルタはそれをさらに悪化させるように・・

「ははぁーん。さっすがプリンシペ(王子様)ノヴァさんっ!プッ!」
ノヴァがもう耐えられないと言わんばかりに

「リベルタッ・・・もう覚悟が出来ているということだな・・・っっ!!」
日本刀を抜くとリベルタに向かって振り回し始めた。

「おっと!!!あぶねーじゃねぇーか!!」

「切られるような発言をしたのが悪い!!」

「ふーん。もしかして図星だったか?そりゃー悪かったな!」

「リベルタッッ!!!」

すると私も周りも止めにかかろうとするがカットラスを取り出しリベルタも暴れ始めたので
むやみに近づくことは誰にも出来なかった。

しかし止めないと・・・と思いナイフを構えていると黒い何かが自分の横をすばやく通りすぎた。

「おい」

声がした方を見ると日本刀とカットラスは宙を舞い、振り回していた本人達は壁に追いやられた状態だった。
そこに細長い剣を突きつけていたのはノノカだった。

「いい加減にしろ」

「・・・・・・・ッ!!」

そして2人の顔はとても青ざめていた。

「・・・さすがノノカですね」

「・・・俺・・・怒られないように頑張ろ」

「・・・・んだよ」

ルカもパーチェもデビトも感心しているが明らかにビビッている。
それもそうだ。それがほんの数秒で行われいた事に私も驚いている。


「す・・すいませんでしたっっ!」

壁に追いやられた2人は泣きそうな顔で同時に謝る。

そんな中・・・・

「2人ともそんなんでびびってんのか。ダッセ!」

とんでもない発言が静かなロビーに響き渡った。


「「「「「んなっっ!!!!」」」」」

ノノカとその人物以外の全員が同じ反応とした。

「アッシュさん?」

「あぁ。まー初めましてだな」

「そうですねー。」

「ちょっくら試しに勝負しないか?」
私はつい3時間前の記憶を振り返る。港で準備運動みたいな動きをひたすら続けていたアッシュの姿。

「ここで?」

「あぁ。ちょうどいい感じに人がいるしな。」

すっかり周りはアッシュにあきれているのである。それ以前、ノヴァとリベルタは「やめとけ!」と念を押してるようだった。

「別にいいけど・・・「じゃあ勝負だ!!!」

ノノカがしゃべり終わらないうちに言い切って剣を抜いた。

「手加減はしなくていい!」

「それって完璧強制的過ぎますよね・・・」
まさにその通りだ。

「じゃ、行くぜ!!!」

アッシュが剣を思いっきりノノカに降りかかろうとした途端。

「ッッ!?」

その場にノノカの姿はなかった。


「ここですよ!!!」

アッシュが後ろを振り向くとかなり距離があったがすばやい動きでアッシュの首に細剣(レイピア)を置く。

「ここまでです!」

ルカが今にも怒りそうな勢いで止めた。






 
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