『八神はやて』は舞い降りた
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第4章 戦争と平和
第38話 水の星へ愛をこめて
前書き
はやて「生の感情を丸出しで戦うなど、これでは人に品性を求めるなど、絶望的だ。やはり人は、よりよく導かれねばならん。指導する絶対者が必要だ」
曹操「……」
一瞬の奇妙な感覚のあとも、部屋の風景は変わっていない。
しかしながら、ピリピリとした空気を感じる。そう、これは戦場の空気だ。
サーゼクスたちは臨戦態勢をとっており、とりあえず校舎に強力な結界を張ったようだった。
窓の外をみやると、魔法陣の中から次々とローブを着た魔法使いらしき影が現れてくる。
彼らは一直線にこちらに向かって来ていた。
「テロか。まあ、反発は予想していたし、反対派がいるのはわかっていた。直接武力行使にくるのはさすがに予想外だったがな」
「アザゼルの言う通りですね。和平に反対する者たちでしょうが、なぜ人間が攻めてきたのでしょうか」
「推測はできる。だが、今は目の前の敵に対処すべきだ」
手慣れた様子で、動いていくのは、さすが勢力のトップだといえた。
突然の奇襲にもかかわらず平然としている。
「くそっ、連れてきた護衛は軒並み停止してやがる。これじゃ組織的な抵抗は無理だな。この効果は、『停止世界の邪眼』で間違いない。おい、グレモリー。あのハーフの吸血鬼と連絡とれるか?」
「えっ!? ギャスパーがですって! ……連絡取れません。旧校舎にいるはずなんですが」
「ならソイツが犯人で決定だ。おそらく無理矢理使わされているんだろう。放置しておくと命にかかわる」
「ッ! なら、私たちで奪還してきます」
「それがいいだろう。リアス、私たちが囮になる。校庭でひと暴れするとしよう。魔王が2人もいるんだ。思い知らせてやる」
「サーゼクスちゃん、お冠ね☆ かくいう私も頭に来ているけどネ」
「おいおい、勝手に決めるなよな。ヴァーリに囮をやらせるつもりだったんだが」
アザゼルは一つため息をつく。
「ハア……あの魔法使いどもは中級悪魔程度の実力がありそうだが、その程度話にならんな。俺たちでグレモリー眷属を守る予定だったが、こいつらは十分に強い。ただ、ソーナ・シトリーは姉のレヴィアタンが守ってやれ。俺は、ヴァーリと一緒に蹴散らしてこよう」
「はーい☆」
「私も久々に戦場に出るとしましょう」
「了解」
とんとん拍子に作戦が決まった。
まあ、作戦といっても囮が暴れている間に、ギャスパーを取り戻すだけだが。
意気込んで突っ込もうとする俺を、グレイフィアが呼び止めた。
部室にある『戦車』の駒に、キャスリングで飛ぶことができるらしい。
最大2人までいけそう、とのことで、部長と俺の二人で飛び込むことにした。
転移する前、アザゼルが、神器を抑制する腕輪を投げてよこす。うさん臭いおっさんだが、いいやつなのかもしれない。
待っていろよ、ギャスパー。すぐに助けてやる。
◆
「ふん、こんなものか」
今俺は校庭で暴れている。囮……のはずが、このまま敵を殲滅しそうな勢いだ。
魔王に天使長に総督。そうそうたるメンバーに襲撃をかけること自体無謀だといえる。
今回の襲撃は旧魔王派によるものだが、身の程を知らないにもほどがある。
いや、だからこそ内訌で破れたのだろう。
禍の団と内応している俺としては、襲撃犯と敵対していいのか。
事前に襲撃を知らされていたので、曹操に尋ねたところ気兼ねなく戦っても構わないとのことだった。
理由を尋ねると、今回の襲撃は旧魔王派によるものであり、人間の魔法使いも旧魔王派の手駒にすぎないから、らしい。
一枚岩ではないのだな。まあ、俺は強者と戦えればそれでいい。アザゼルの下では他の神話世界に喧嘩を売れないだろう。まずは、アース神族からだ。
「禁手化するまでもなかったな。つまらん。歯ごたえのない奴らばかりだ。――ならば、無理やり強敵と戦うまでのこと」
『ヴァーリ、油断するなよ』
あの八神はやてが自ら鍛えたというのだ。油断などできるわけがない。
アルビオンの忠告に苦笑しながら、俺は、校庭へと援軍にやってきた赤龍帝に向かって、魔力弾を放った。
◆
「ギャスパー、無事だったのね!」
リアス・グレモリーは、キャスリングによって旧校舎に乗り込み、ギャスパーの救出に成功していた。
アザゼルに渡された神器を抑える腕輪をはめたことで、時間停止結界も解除された。
「部長、付近の掃討が終わりました」
そういって扉から入ってきたのは、赤龍帝、兵藤一誠だった。
ギャスパーの確保をリアスに任せると、安全の確保のため敵を次々と撃破していったのだった。
そのさまは圧倒的で、リアスを安堵させた。
(本当に頼もしくなったわね)
惚れた男のかっこいい姿に、改めて惚れ直すリアス。初めてあったときのエロいだけで何のとりえもない一般人だった面影はない。
校庭ではいまだテロリストと兄サーゼクスたちが戦っている。自分たちも参戦しようと旧校舎からでたところで――
「きゃあっ!」
突然一誠に抱えられて驚く。しかし、すぐに現状を把握した。
いきなり攻撃を受けたのだ。その敵は――味方だったはずの白龍皇ヴァーリだった。
一誠によって直撃は避けられたが衝撃によって意識が遠くなるのを感じる。
「部長!!」
最後に聞こえたのは、必死な形相を浮かべた、愛する男の姿だった。
◆
攻めてきた魔法使いだけではなく、護衛に来たのであろう天使、堕天使や悪魔が大勢躯を晒していた。 血塗られた校庭の中に、白髪の青年はいた。
ヴァーリ・ルシファー、今代の白龍皇、赤龍帝である俺の因縁の相手だ。
圧倒的な力と纏っている覇気に怖気づいてしまうが、それ以上に部長を傷つけられたことで、俺は怒りに支配されかける――。いかん、こういうときこそ冷静にならないと、八神さんとの特訓を忘れるな。
「やあ、今代の赤龍帝。なかなか来ないから、ついつい遊んでしまったよ――。腰が引けているようだな。戦場では、びびった者が死ぬんだ。覚えておけ!」
魔法使いを殺し、裏切った後は味方だった堕天使たちを殺した姿は、全く悪びれる様子がない。ヴァーリとっては強者と戦うことが全てで、弱者のことはどうでもいいのだろう。
不快だ。たまらなく不快だ。殺すことを何とも思っちゃいない。
バトルジャンキーといえばシグナムを思い出すが、見境なく殺すような真似はしなかった。力をもった幼児のようなやつ。こいつは危険だ。
それにコイツは俺ごと部長を巻き込もうとしていた。許せん! 怒りに任せてヴァーリに突撃する。
やつも応じ、殴り合いが続く。やはり、地力では奴の方が上か……。ならば―禁手化!
「貴様! 人が死んだんだぞ!? いっぱい人が死んだんだぞ!?」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!』
「それがどうした。お前もその仲間に入れてやるってんだよー!」
『Vanishaing Dragon Balance Breaker!!!!』
「なぜ、そうも簡単に人を殺すんだよ! 死んでしまえ!」
ヴァーリが俺に攻撃をしてきた。殺すつもりの一撃だとわかる。だから俺だって容赦しない。
神器は感情によって反応するという。いまかつてないほど絶好調だ。テンションが上がり切って、身体の底から力が溢れだすのを感じる。
いまなら、いまならいける! いくぞ、これこそ究極技法!
「左手に魔力、右手に気……咸卦法! 遊びでやってるんじゃないんだよー!!」
「なんだと? あ、あ、あれは…!」
「生命は、生命は力なんだ! 生命は、この宇宙を支えているものなんだ! それを、それを…! こうも簡単に失っていくのは、それは、それは、酷いことなんだよー!」
「こ、こいつは何だ?(なんだこのオーラは、攻撃が効かないだと)」
「何が楽しくて、戦いをやるんだよ!? 貴様のような奴はクズだ! 生きていちゃいけない奴なんだー!!」
「あ、あの光、赤龍帝の思念なのか?」
「貴様の様なのがいるから、戦いは終わらないんだ!」
「俺を戦いに駆り立てたのは貴様だ! そんなことを言えるのかよ! 俺がこの手で殺してやる。そしたら戦わずに済むだろぉッ!」
「ヴァーリ・ルシファー! お前は戦いの意思を生む源だ! 生かしてはおけない! ――修正してやる!」
◇
ヴァーリ・ルシファーのやつ、遊んでいるな。まあ、赤龍帝を挑発すれば全力での戦闘を楽しめる、とそそのかしたのはボクなんだけれど。のりのりで兵藤一誠を挑発している。
セリフ回しもボクが考えた。前世の記憶のロボットアニメから拝借したのだが、なかなか様になっている。兵藤一誠の受け答えも素晴らしい。
なぜか彼らの後ろ姿にパイロットスーツを着た人間を垣間見た気がした。いかん、ボクも疲れているんだろうか。
一見ヴァーリ・ルシファーは大量の人間たちを殺したように見えるが、きちんと手加減されている。リアス・グレモリーを傷つけられ、怒りに支配された兵藤一誠は気づけなかったようだ。
目論み通り怒りで覚醒、パワーアップしたようだ。ピンチに陥ると強くなる。主人公体質とでもいうのだろうか。反則だと思う。
咸卦法は究極技法と呼ばれるだけあり、非常に習得が困難だ。原作通り才能のない兵藤一誠も練習はしていたが、うまくいっていなかったはずである。
努力・友情・勝利のジャンプ漫画の主人公みたいになってやがる。
さて、ボクもお仕事をしませんとね。
◆
「私は、ハイディ・E・S・インクヴァルト。真正古流ベルカの格闘武術覇王流の正統後継者です。白龍皇の邪魔はさせません」
少し離れた場所では、赤龍帝と白龍皇の激戦が繰り広げられている。既に手出しをできる雰囲気ではない。巻き込まれないようにと部長とギャーくんはこちらに逃している。
アザゼルの方を見ると、新たに転移してきたカテレア・レヴィアタンと一進一退の攻防をしていた。
ミカエルとサーゼクスの方をみやると、こちらもやたらと強い敵の出現に手を焼いているようだった。神器を宿していることから人間のようだが、強い。
彼らは部下を巻き添えにしないために、全力を出し切れていないというのも痛い。アザゼルたちの全力戦闘の余波を防ぐために、戦いながら結界を構築するという離れ業をやってのけていた。
何とか救援に向かいたいが、私たちと同年齢くらいの女性が、立ちふさがった。
こちらの戦力は、塔城子猫と、リアス・グレモリー、姫島朱乃、木場祐斗、アーシア・アルジェント、ギャスパー・ウラディ。グレモリー眷属が勢ぞろいしている。
八神家に鍛えられた私たちなら生半可な敵では相手にならない。事実、数に勝る魔法使いを圧倒していた。
そこに現れたのが、ハイディ・E・S・インクヴァルトと名乗る女性だった。すぐに戦闘になる。覇王流という聞いたことのない流派を名乗っているが、こちらも強い。
ただ、気のせいか手加減されているように感じる。まるで、私たちの戦力を調査しているような、そんな風に思った。
「スターライト・ブレイカァー!」
「覇王断空拳」
私の必殺技と敵の技が激突する。拳に激しい振動が走り痺れるが、相手は何の痛痒もないようだった。追撃を警戒するも何もしてこない。
さきほどからずっと同じだ。こちらから攻撃しても、あまり反撃してこない。
奇妙な膠着状態がしばらく続くと、爆音が聞こえた。そちらを見やると、アザゼルによって首謀者のカテレア・レヴィアタン打ち取られたようだった。しかし、アザゼルも無傷とはいえないようで、腕を一本犠牲にしていた。
「ふむ、決着はついたようですね。それでは、また会いましょう」
そう言い放つと速やかに撤退していく。敵側の生き残りも撤収していくようだ。そうはさせじと追撃しようとするが、やたらと強い神器持ちの人間とインクヴァルトとが殿を務めており、あまり戦果はあげられていないようだった。
安堵の息を吐くと「一誠!!」と、部長の叫び声が聞こえる。慌てて見やると――
――そこには、血だまりの中に倒れ伏した一誠先輩の姿があった。
後書き
・兵藤一誠
最強のニュータイプが憑依しました。
・ヴァーリ・ルシファー
最強のオールドタイプが憑依しました。
・咸卦法
ネギま! に出てくる技。主にトリプルTが使用していた。究極技法と呼ばれるだけあり、習得は非常に困難。
・努力・友情・勝利
少年誌にみられる王道パターン。土壇場で急成長するという理不尽な主人公特性をはやては警戒している。
・ハイディ・E・S・インクヴァルト
身バレを防ぐため変身している。アインハルトちゃんのリングネームでもある。いったいだれなんだー(棒
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