極短編集
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短編59「マグマまで10キロ」
僕の高校時代の話だ。地球の裏側までとはいかないが、マグマまで掘る大作戦を、高校の時に本気で考えた事があった。きっかけは、地理の授業からだった。
「この地表の下には、たくさんの岩盤など地層があり、その一番下がモホ断絶面と言い、その下が、とうとうドロドロのマグマになっています」
と、先生が話していた。そして、モホ断絶面までは、だいたい10キロだそうだ。(ホモ?ホモ!って授業中、盛り上がったなあ)そうしたら、僕の後ろに座っていたオガッチが……
「ミズキ、10キロだってよ!すぐ、そこじゃん」
と、言い出した。
おいおい、10キロって、すぐかよ!と思ったが……当時、オガッチは、バイクに乗っていたから、10キロと聞いて、すぐと感じたのだった!(ちなみに、僕は、30歳で車の免許を初めて取りました。それまで自転車オンリー)
「行けるよ、ミズキ!俺達で、マグマ見ちゃおうぜ!!」
と、オガッチは意気込んでいた。そして、その話をオガッチの後ろのワタサンも聞いていて(コイツもバイクに乗っていた!)
「えっマジ、10キロ!すぐじゃん、やってみようよ!!」
と、言っていたが、やはり僕は自転車の感覚なので、「え~!」っと、シブッていた。が、二人から……
「「マグマ見ちゃおうぜ!」」
の、一言に僕はググッと来て、僕らは、取りあえず掘る方法を考えたのだった。昼休み、僕らは掘る方法を考えた。始めは、シャベルとツルハシで掘るか?と言っていたが……
「シャベルで掘ってたら、疲れちゃうよ!それならパワーショベルだろ!」
と、ワタサンが言うと、みんなで、パワーショベルについて考えた。
「やっぱり大型パワーショベルでガーッだよ!」
「いやいや、小さい方が小回りきいていいだろ!!」
と、盛り上がった。そのうちオガッチが……
「いや、どうせ借りるんだったら、ボーリング(細い穴掘る重機)にしよ!」
と、言ったので……
「それ、いーねー!」
という事になった。次は、どうやって借りてくるか?という事になったが、僕が……
「つーか、どこで掘るんだ俺達!?」
と、言うと……
「「う~ん」」
と、考えこむ事になった。重機を使う訳だし、そんな広い場所なんて近所になかったからだ。
「借りてくるにしても、そんな知り合いはいないし、誰も重機なんて運転出来ないだから、もっと現実に考えよう!」
と、オガッチが言った。しばらく沈黙が続いた。すると、ワタサンが……
「井戸掘りはどうなん?」
と、言った。
「昔は、重機もないのに何百メートルも井戸掘ったんでしょ?それに井戸ぐらいの大きさなら、部室棟の裏ならバレないよ!」
と、ワタサンが言った。確かに部室棟の裏ならは、いい場所だ!隠れて掘るには良いだろう!!と、いう訳で僕らは、ワタサンのアイディアに賛同し、放課後になると、図書室に向ったのだった。
そして、調べていたら「かずさ堀り」というのに行きついた。原理は、水を流しながら、竹の棒で地面をつく。何度もやるとドロドロになるから、そしたら、竹棒を抜いて、桶でドロドロをすくい取るのだ。
繰り返して行くと深くなるのでそしたら、桶にヒモをつけてすくいあげる。途中、竹の長さが足りなくなったら、新しく竹を継ぎ足していくのだ!
「これなら出来るんじゃん!」
と、言ってレポート用紙に書き写した。そのあと、竹の長さなど計算したりした。しかし、問題が出た!僕らは、井戸を掘る訳ではないのだ、井戸ならある程度なら岩盤の固まりをよけて掘るらしいのだが、さらに掘るとしたら、いずれ巨大岩盤にぶつかってしまうのだ。
「しょうがねえ。そしたら、オイラが潜って、コンコン削るよ!」
と、オガッチが言った。
「「……酸素、どうすんだよ!?」」
「そしたら、ホースをくわえるよ!」
「「……」」
「じゃあ、まあ岩盤に当たったら考えよう!」
と、いう事になった。取りあえず、まずは竹だ。僕らは材料の竹の調達をする事になった!しかし、その竹が調達出来なかった!!しばらくあちこち探したのだが、竹林なんてものは、近所にはなく(笹はあったが)
「買うか?」
と、なったが意外にも高かった。(2メートルで950円)たとえ、200メートル掘るにしても、継ぎ足し部分を含めて、10メートル以上の竹を何十本も必要とした!
「仕方ない、じゃあ鉄パイプで!」
と、言う事になったが、工事などの足場用鉄パイプを試そうとしたが、とてもじゃないが、重かった!(しかも、さらに高かった!)結局は、材料不足で断念となってしまった。
「マグマまで10キロ!」
を、合言葉にいろいろ調べた日々。何度も、部室棟の裏に行っては……
「ここに掘ろう!」
と、盛り上がった。わずか、2週間ぐらいの期間だったが、非常に楽しかった。そうそう……
「モホ断絶面の下が、マグマの活動している所!」
と、言ってた地理の先生にも、相談しに行ったっけ。
「そっかあ、そっかあ、地球の上なんて、人間に例えると実はカサブタみたいな物なのです!ちなみに人間は、カビくらいかな?楽しみだね、マグマ見るの!」
なんて言ってたなあ、あの地理の先生!実際、無理な事は知っていたけど、僕らの冗談みたいな相談に乗ってくれたのが嬉しかった。考えたら、凄い研究だなよなあ!
「マグマってさあ、ところで何度あんだ?防護服どうする!?」
って、本気で心配してたなあ!(その前に何十ある岩盤に穴あけられないし!穴の中には酸素ないし、有毒ガスだってあるよ!!アハハハ)
結局は、企画だけで終わってしまったが、壮大な計画と想像を共有し、ワクワク出来たのが、とても嬉しかった思い出なのであった。
おしまい
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