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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十話 雨が続いてその四

「もうね」
「行きたくないわね」
「まして見るものも」
 それもと言う美沙さんだった。
「ないのよね」
「あの銅像だけ?」
「実際そうなのよね」
「そんなところなのね」
「何か首都には色々あるみたいだけれど」
 あの首領様の巨大な銅像以外にもだ。
「主体思想塔とかもあるけれど」
「それでもなのね」
「あまりないわよ」
「美味しいものは」
「飢餓状態だから」
 それも二十年位前からそうらしい、これもよく知られていることだ。これもあの首領様一族の失政が原因だと聞いている。
「美味しいものもね」
「食べるものがないと」
「そもそもね」
「お話にならないから」
「だからね」
「期待出来ないのね」
「そうなのよ」 
 絶対に日本で食べた方が期待出来る、僕もそう思う。
「だから行くことはお勧め出来ないわ」
「よくわかったわ」
「まあアマゾンはね」
「行ってみることもね」
「いいわよね」
「私も一回行ってみたいわ」
 ニキータさんもこう言った。
「船なり何なりね」
「そうね、私も機会があれば」
 美沙さんも言う、二人でこうした話もしていた。
 とにかく梅雨で雨が多い、この日も朝から雨で外国から来た娘達は皆やれやれといった感じだった。けれど。
 行きはバスだ、僕はこのことに感謝をしていた。 
 それでそのバスで通学をして学校に着いてからだ、皆それぞれの部活に向かう途中で小夜子さんにこう言った。
「雨でも車で通えたらね」
「本当に楽ですよね」
「うん、濡れなくて済むからね」
「そうですね、ただ」
 ここでだ、小夜子さんはこんなことを言った。
「神戸は雨が多いですね」
「毎年こんなのだよ」
「呉の辺りとは少し違いますね」
「ああ、呉とか江田島の辺りはね」
「瀬戸内は」
「はい、雨が少ないです」
 このことは僕も知っている、瀬戸内の辺りは降水量が少ないのだ。
「ですから柑橘類の栽培も盛んです」
「雨が少なくて日差しが強くて」
「そうした場所です」
「小夜子さんは広島市だよね」
「あの街で生まれ育ってきました」
 その広島県だけでなく中国地方の中心都市だ、県庁所在地であると共に政令指定都市でもある街として知られている。
「いい街です」
「広島はまだ雨多いよね」
「はい、呉や江田島よりも」
「あの辺りが特別なんだ」
「瀬戸内の方は」
「そういえば夏に江田島に行ったことがあるけれど」
 一年の時の部活の合宿の時にだ。
「雨に遭ったことはなかったよ」
「そうだったのですね」
「それに暑かったね」
「はい、神戸よりも」
「同じ海に面していてもね」
「また違いますね」
「じゃあ梅雨の時も」
「雨は降りますが」
 それでもというのだ。
「ここまで多くはないです」
「そうなんだね」
「江田島にも時々行っていますが」
 それで知っているというのだ、江田島のことを。
「あの島は雨が少なく夏は暑くて冬は暖かいです」
「冬に暖かいのはいいことだね」
 僕は神戸にいるから余計にそう思った。 
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