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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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ALO編 Running through to take her back in Alfheim
Chapter-15 紡ぐ未来のその先へ
  Story15-10 終わりへの道標

聖音side

病院の正面エントランスへと激痛のはしる体を引きづりながら歩いて行く。

出血の激しい箇所を右手でおさえながら最も会いたい人の待つ場所に急いだ。

「うぐ…………っああ…………っ…………」

あぶね……桜華にこんなの見せたらひっくり返るからな…………! 白い服着てこなくてよかった…………

俺がスイングドアを開けると同時に、横の自動ドアが開く。きっとキリトが呼んだのだろう。

「はは…………俺もついてねーな」


俺は誰もいないのを確認すると、カウンター内のパスカードを掴み取ってエレベーターへと向かう。

エレベーターは12階に停止しており、中々来なかった。その時間さえも永遠に感じられ、俺の体は悲鳴をあげる。

数秒後に着いたエレベーターも、病院なので加速は緩やかなので余計につらい。

頼む……もってくれ…………俺の体…………!



エレベーターが18階に停止し、ドアが開くと、はやる気持ちをおさえられず、エレベーターを飛び出して桜華の部屋への数十メートルを歩き出す。


長い時間……それこそ永遠にも感じられる時間と距離……俺の体があとどれくらい持つのかも分からないのでとにかく必死に進むと、正面に白いドアが見えた。


夕焼けに包まれた仮想世界の終焉、現実に帰還してからの現実、別の仮想世界の夕焼け…………俺はずっと桜華を探していた。

ようやく……その時が来る。俺の長い旅路にここで終止符を打とう。


でも……ここで倒れるわけにはいかない。もう少しで手が届くところに……桜華がいる。


ポケットからパスカードを取り出してスライドさせようとするが、汗で滑り落ちる。

あわてて拾い、再びパスカードを持ってメタルプレートのスリットに差し込み、一気に滑らせる。

インジケータの色が変わり、モーター音と共にドアが開いた。ふわりと花の香りが流れ出した。


室内の照明は落ちている。窓から差し込む雪明かりがほのかに白く光っている。中央は大きなカーテンで仕切られており、その向こうにジェルベッドがある。

俺はさらに足を進めて、カーテンを開ける。はやる気持ちはもうおさえられない。

「…………」

純白のドレスにも似通った診察衣を纏った少女が上体を起こしてこちらを見ている。両手の中に……ナーヴギアがあった。

「桜華…………」

俺は音にならない声で呼び掛けた。少女はこちらに振り向き、夢から覚めたばかりの瞳でこちらを見ている。

「聖音くん……」

初めて聴くその声は……何物にも変えられないほど美しく響いた。

桜華の手が俺に向けて差し伸べられた。それだけで力を使うのか、わずかに震えていた。俺はそっと……その手を取った。

「やっと……帰ってきたんだな…………お前」

「うん…………!」

桜華の声が空気を震わせる度に、俺は言い様のない達成感に包まれた。



だが、運命の神様ってのはそう簡単には望むものをくれないらしい。

「…………桜華危ねぇ!!」

桜華をベットに伏せさせると、1発の銃弾がドアのガラス窓を貫通して飛んできた。伏せさせなければ、桜華に直撃していた。

「……何をしているのかな? 俺の女に…………!!」

ドアのところに立っていたのは、須郷兄。手には拳銃。

「テメェの女だぁ? 笑わせんな、桜華は桜華自身のものだ」

「食らえ……」

「させるかっ!!」

1発の銃弾は放たれるもかなり反れて窓ガラスを突き破る。

「聖音……くん…………?」

恐怖に怯えた顔に、精一杯の励ましをかける。

「心配すんな……必ず、戻ってくる」

俺はそのまま須郷兄を外に出すとドアを閉めた。

……こんなところで…………終わってたまるか……!!


「うらぁぁぁぁ!!」

壁にぶつけて衝撃を与えると、腰からスティックを一本取り出して顔面にぶつける。先程のダメージがあったので、もう大丈夫だろ…………!!

ダァン!!

「がはっ…………げほっ!!」

あわててハンカチで口を塞ぐ。

「ふはは……そのまま……死んでしまえ…………!!」

ガクッ

須郷兄は気絶したが…………俺の体は、もう限界だった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






第3者side

聖音が須郷兄を外に出したあと、桜華は一人怯えていた。聖音がどうなったのか、気になってしょうがなかった。

――聖音くん……!!

ダアン!!

「…………っ!!」

鳴り響く1発の銃声。不安はいっそう掻き立てられる。

――聖音くん……無事だよね? 絶対に戻ってくるよね?




ウウウン

ドアが開いた。聖音が現れた。

「桜華……ちゃんと戻ってきたぜ…………!

ちょっと腹痛いけどな……!」

「聖音くん…………」

聖音は右手で桜華の頬に触れた。

――あ……桜華に俺の血ついちゃったかな…………まずい……!

「どうしたの……聖音くん……?」

「ごめん……ちょっとドジった…………がはっ!!」

「……!!」

聖音がたまらず膝をつき、床に血を吐いた。桜華は、何が起こっているのか理解できていないようだ。

「ちょっと……手貸してくれるか…………?」

桜華が言われるままに手を出した。聖音は左手で掴もうとした。

しかし……その手はどこにも触れることなく地面に落ちた。聖音の体は床に倒れこんだ。

「聖音くん……起きてよ…………笑ってよ……!!」

反応がなかった。ここまでの戦いはそれほどまでに聖音に負担をかけていたのだ。

桜華は聖音の触れた自分の頬に触れた。血の感触が、そこに確かに存在した。

「…………そんなの嫌だよ…………あんまりだよ…………!」

桜華の目から涙が溢れる。止まらない悲しみの奔流が静かな夜に流れ落ちる。

「…………誰か助けて……………………!」

桜華は震える手で呼び出しボタンを押した。

不意に見えた聖音の顔に曇りが一切なかったことに、桜華は余計に不安を覚えた。



「私を一人にしないでよ…………」















Story15-10 END 
 

 
後書き
久々の第3者sideは疲れたな……でもこうしないとこの話は書けませんでした。
さて、キリトとは反対の結末をシャオンは迎えました。言っておきます。シャオンは主人公です。

さて……次回からはChapter-Final……文字通りラストチャプターに入ります。ここまでお付き合い下さって皆様、もう少しだけお付き合いくださいませ。

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