劇場版・少年少女の戦極時代
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鎧武外伝 バロン編
ドラゴンフルーツvsドラゴンフルーツ ②
咲は今日のステージがある場所へ全速力で走った。
“室井。俺はこいつを適当な所へ連れて行く。お前はステージのほうへ行け”
“へ。何で”
“おそらく奴は俺たちがビートライダーズだと知っている。チームの連中に強硬手段に出るかもしれない。お前はリトルスターマインのガキどもが痛めつけられていいのか?”
“! すぐ行く!”
階段状のステージの上では、赤と黒の男たちと、ピンク地に流れ星のアップリケのTシャツを着たコドモたちが共演している。
咲は安心してその場にしゃがみ込んだ。
「咲っ」
ステージの上には、久々に見るヘキサの姿があった。
「下りてきて。いっしょに踊りましょ」
「うんっ。今行く……」
答えきるより速く。
赤いソニックアローが2本、ステージ両脇のスピーカーを破壊した。
観客が悲鳴を上げて散っていく。咲は逃げる人波に逆らって客席を駆け下り、ステージに跳び上がった。
「咲!?」
「戒斗くんのイヤな予想ビンゴ! ザックくん、変身して! 早く!」
戸惑う元チームバロンたちに事情を説明する間も惜しい。今この時も、タイラントはどこからステージを狙撃するか分からないのだ。
「変身!」
《 カモン ドラゴンフルーツアームズ Bomb Voyage 》
着けっ放しだった戦極ドライバーに錠前をセットすれば、頭上から炎の形をした果実の鎧が咲を装甲して月花へ変えた。
「だあぁ! 後でちゃんと説明しろよ! ――変身!」
ザックもまた量産型ドライバーにクルミの錠前をセットし、落ちてきた鎧に装甲されナックルとなった。
『お前らは俺らの後ろに……!』
ナックルが後ろのチームメイトと元リトルスターマインのメンバーに言うより速く。
再び赤いソニックアローが連続してステージに放たれた。
ステージ上にショックウェーブが生じ、全員が吹き飛ばされ、散り散りに地面に倒れた。
『ヘキサ! みんな! いやぁッ!』
『このヤロ……! 誰だ! どこにいやがる!』
月花は転んで擦り傷を負ったヘキサに真っ先に駆け寄った。
『だいじょうぶっ?』
「大したことないみた…… ! 咲、後ろ!」
『え?』
血相を変えたヘキサに吊られてふり返れば、まさにそのヘキサを狙った軌道で赤いソニックアローが飛んできていた。
月花はとっさにヘキサを、一番近くにいたトモのほうへ突き飛ばした。トモがヘキサを受け止める。
ソニックアローは月花に直撃した。
「咲ッ」
変身が解けて咲自身も地面に転がった。
『まずは一人』
ついにタイラントが姿を現した。
弓のストリングは引いたまま、余裕綽々に客席を下りてくる。
『さて。あなたにはシャプールとあの男を釣り上げるエサになってもらいましょうか』
この男は咲に、暗に戒斗とシャプールに対する人質になれと、今言ったのだ。
「おことわりよ。ヒトの友達こんなにしといて、虫のいいことゆーな!」
『それが答えですか。では』
タイラントが次に向いたのはナックルのほうだった。
『咲と同じアームズ……』
『その娘のものより性能はこちらが断然上です。確かめてみますか?』
ナックルはステージからジャンプし、一息にタイラントとの距離を詰めてクルミボンバーをくり出した。
だが、ナックル渾身のパンチを、タイラントは弓で悠々と受け止めて見せた。
さらにその状態から、ストリングを引いて零距離でナックルにソニックアローを放った。
『がはっ!?』
咲の前にナックルが転がされた。
『やだ、ザックくん!』
ダメージで変身が解けたザックを、タイラントが踏みつけた。
『ドライバーとロックシードを捨てて、大人しく私に付いて来なさい。さもないと――』
「もういい! わかったから!」
咲は戦極ドライバーとドラゴンフルーツのロックシードを放り捨てた。
「煮るなり焼くなりスキにしなさいよ。だからもうここのみんなに手出しすんなっ」
『物分りの良いコドモは好きですよ』
アルフレッドが赤いエナジーロックシードを畳んで変身を解いた。
「では、物分りの悪いコドモを呼び出すため、お手伝いをお願いしましょうか。小さなレディ」
「……はい」
肯いた直後、鳩尾に強力なパンチを入れられた。
人体の構造に従い、咲は意識を失った。
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