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自分の力で

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第八章

「要は言われないだけの実力を見せればいいから」
「自分自身で」
「そう、自分の歌でね」
 つまり自分の力でというのだ。
「やるから」
「ジョアン君にはなのね」
「何もしない様にね」
「しないといいの」
 そうだというのだ。
「あの人は」
「本当に厄介な子ね、昔から」
 マリーはジョアンのことをやれやれと呆れた笑顔出言うだけだった。
「ソフィアのことになると」
「昔からね」
「これまで数え切れない位決闘って言ってるし」
 今回だけではないのだ、ジョアンがこう言うことは。
「子供の頃から」
「何かというとね」
「あんたをいじめた子とかいればすぐにだから」
「そう、その子に決闘って言って手袋投げて」
「その度に騒動になってね」
「それが困ったところなのよ」
 もっと言えば自分のことになると何かと騒ぎを起こすことがだ、ソフィアにとっては困ったことなのである。
 そうしたことを話してだ、そしてだった。
 ソフィアはだ、母に言った。
「じゃあ後はね」
「後はなのね」
「これまで以上に練習して体調も管理して」
「そしてなのね」
「実力養うから」
 それで、というのだ。
「そうした中傷をされないだけのものを備えるから」
「頑張ってね」
「そうしていくわ」
 こう言ってだ、そしてだった。
 ソフィアはこれまで以上に練習に励み様々な作品の勉強、語学も含めてしていった。体調管理も忘れずにしてだった。
 実力を極めてだ、そうしてだった。
 そうした誹謗中傷を跳ね返してみせた、次の役で誰もが唸る名唱をしてみせたのだ。これにはネットの書き込みも殆ど止まった。
「凄い歌だったな、映像観てもわかるよ」
「ああ、アドリアーナ=ルクヴルールな」
 今度歌ったのはこの作品のだ、タイトルロールだったのだ。ソプラノ歌手が歌う役の中でもかなり印象的な役である。
「凄い歌唱だったらしいな」
「そのアリアで凄い拍手受けたらしいな」
「カーテンコールも何回も受けて」
「どの評論家も絶賛してるぜ」
「俺達が聴いてもな」 
 ネットで誹謗中傷を書き込んでいた彼等もというのだ。
「凄い歌だったからな」
「あんな歌は滅多にない」
「まだ若いのにな」
「それであれだけの歌だとな」
「文句はないな」
 つまりだ、誹謗中傷出来ないまでだというのだ。
 こうしてだ、ソフィアはその実力でネット上での誹謗中傷を消してみせた。自分の力でそうしてみせたのだ。
 そうしてだ、ジョアンに言うのだった。
「これでもうね」
「ネット上での誹謗中傷はなくなったんだね」
「そう、だからね」
 それでとだ、ジョアンに今回の本題を告げた。
「もう二度と決闘とかはね」
「言わないで欲しいのだね」
「うん、言わないでね」
 もっと言えば騒がないで欲しいというのだ。
「そうしてね」
「わかったよ、ソフィア」
 ジョアンはソフィアのその言葉に素直に答えた。
「それではね」
「そういうことでね」
「うん、しかしソフィアの歌は本当に素晴らしい」
 今度はこうしたことを言うジョアンだった。
「ここに来てさらに成長したね」
「努力したから」
「そしてその成長した実力で誹謗中傷する愚か者達を黙らせた」
 ジョアンもこのことを悟ったのだった。 
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