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死蝶

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第五章

「ラフレシアに続いてな」
「ラフレシアに群がってるな」
 ムガジのその興奮するハジャカの横で彼に言った。
「これはな」
「ああ、これはだよな」
「この蝶はラフレシアから養分を吸ってるな」
「そうだな、変わってるな」
「花には蝶が寄るっていうけれどな」
「それで、だな」
「ああ」
 ハジャカはムガジの言葉に頷いてだ、ここで。
 背負っていたリュックからあるものを取り出した、それは。
 小さな豆粒程の黒い玉だった、その玉を出してだ。
 蝶に向かってトスの要領で投げた、すると。
 それぞれ蝶に付着した、ハジャカはその付着まで確認してからムガジに言った。
「これでいいな」
「あとはそのボールから通してな」
「蝶の生態を見られる」
「便利な道具だ」
 蝶に付着してその蝶の目をそのままコンピューターに動画として送付する、科学が生み出した生物調査の技術の一つだ。
「これでかなり生物研究が進歩しているからな」
「有り難いものだ」
「じゃあ後は」
「見るか」
 その蝶の生態をだ、こうしてだった。
 ハジャカはその映像を見た、すると。 
 蝶はラフレシアだけでなくだ、他にもだった。
「おい、動物のか」
「ああ、死んだな」 
 ムガジはハジャカが観ているノートパソコンを観てハジャカに言った、ハジャカもそれを観つつ彼に応える。
「それに群がってるな」
「そうした蝶か」
「ラフレシアだけじゃなくてな」
「しかもな」 
 数多くの蝶のそれぞれの生態を見ているとだった、さらに。 
 蝶は動物の死骸に群がりだ、その養分を摂取するだけでなく。
 さらにだった、その中に。
 卵を産んでいた、そしてその腐肉をだった。
 幼虫が食べていた、それを観てムガジはまた言った。
「随分えぐいな」
「奇麗な割にな」
「こうした虫もいるからな」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「いや、意外だって思ってな」
 ハジャカはこう言ったのだった、ここで。
「こんな奇麗な蝶なのにな」
「屍肉を食ってな」
「そこから出て来るなんてな」
「そうだな、花に寄るんじゃなくてな」
「こうした蝶もいるんだな」
「ちょっとないな」
「蠅みたいだな」
 ハジャカはこうも言った。
「これだと」
「そうだな、けれどな」
「これも昆虫だな」
「それで蝶だろ」
 ムガジはこうハジャカに言ったのだった。
「哺乳類でもあるさ」
「外見は怖そうでもな」
「大人しい動物いるさ」
「その逆もな」
「ああ、ライオンだって実はな」  
 多くの星にいるこの肉食動物はどうかというと。
「百獣の王っていうけれどな」
「実際はハイエナの食い残し漁る方が多いしな」
「雄はあまり働かないんだよ」
「そうだったな」
 雄のライオンは鬣のある立派な姿だが実はそうなのだ、ライオンは雌の方が勤勉に働き動く生きものなのである。 
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