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砂金

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第五章

「それは言っておくぜ」
「忠告悪いな」
「まあ生きていけることは生きていけるさ」
「稼ぐことはか」
「金を掘り当てられなくても山は当てられる」
 金を見付ける以外の方法で、というのだ。
「それは事実だからな」
「わかったさ、ここのことが」
「そうだろ、じゃあそれなりに楽しんでくれよ」
「そうさせてもらうな」
 こう親父と話してだリチャードはこの店では酒を飲んだ。客はかなり多く繁盛していた。
 それから妻と二人で西部を見られるだけ、回れるだけ回ってだった。幸いお互いに無事だったことを神に感謝して。
 それからだ、村に戻ってロバートにこう語った。
「実際金で儲けてる奴なんてね」
「僅かか」
「うん、本当にね」
「それでか」
「他のことで儲けてる人の方がずっと多かったよ」
「そういうものか」
「そうだったよ」
 それが西部の実態だというのだ。
「何かそっちの方が金脈だね」
「金を目指す奴の持っている金こそが」
「金脈みたいだね、それに」
「それに?」
「僕もわかったよ」
 リチャード自身もというのだ。
「僕もその金脈を持ってるね」
「畑だな」
「うん、あっちに行った人が残してくれた畑がね」
「随分な広さの畑が安く手に入ったからな」
「しかもどの畑も肥えていてね」
 さらに都合のいいことにだった、彼にとって。
「だからね」
「畑が金脈か」
「そうだったんだよ」
 こう話すのだった。
「僕にとってはね」
「そうか、それじゃあな」
「その金脈をだね」
「ああ、これからもな」
「耕して」
 そして、とだ。リチャードは祖父に答えた。
「どんどん実り多くしていくよ」
「頑張れよ」
「金脈は金だけじゃない」
 また言ったリチャードだった。
「他にも色々あるんだね」
「そうだな、皆金を求めて西部に向かったが」
「他にもあるなんて」
「面白い話だ」
 ロバートはリチャードに微笑んで応えた、そしてだった。
 リチャードにだ、こう言ったのだった。
「何か飲むか」
「お酒かな」
「いや、コーヒーだよ」
 それをどうかというのだ。
「今から淹れるがな」
「そう、それじゃあね」
「これからな」
「そういえばコーヒーを売っても売り方次第でかなり儲かるから」
「そっちも金脈だな」
「そうだね」
 こうしたことも話しつつ祖父と孫でそのコーヒーを楽しむのだった。金とその素は何であるのかを理解したうえで。


砂金   完


                         2015・1・16 
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