恋姫†袁紹♂伝
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第1話
永興2年(154年)
―――その日、豫州汝南郡汝陽県(河南省商水県)にある後漢時代に4代にわたって三公を輩出する名門汝南袁氏 名家 袁逢(えんほう)の屋敷は住人達はあわただしく動いていた。
理由は袁逢の妾である麗華(れいか)が出産直前の状態だったからである
「ええい、まだか!もう随分たったのだぞ 麗華は無事か!?」
屋敷の自室にて袁逢は落ち着きの無い様子で辺りを行ったり来たりを繰り返している。
少し前は出産を控えた麗華の部屋の中にいたものの、彼女の苦しみように取り乱したため産婆に部屋から追い出され
部屋の前にいたっては騒ぎ立てるように彼女の安否を心配していたため結局自室まで部下たちに引っ張られてしまっていた。
「少しは落ち着きなされ兄上、ここで騒いだとてしかたあるまい」
「しかし袁隗(えんかい)心配なのはしかたなかろう、麗華は体が弱いのだぞ」
袁逢の妹――袁隗がなだめようと言葉を口にするもののいっこうに落ち着く気配は無い、それもそのはず。
今、出産を控えた袁逢最愛の妾である麗華は体が弱く出産に耐えられる体には無いかもと医師に診断されており
母体ともに子も危険な状態とされていた
「麗華様ならばかならず成し遂げられる、今は彼女を信じ無事を祈られよ」
「う、うむそうだな 取り乱したりしてすまない…」
たしなめられ少し落ち着きを取り戻した袁逢であったが、椅子に座った後もしきりに体をゆすり腕をくんだ状態でそわそわと、普段の威厳など欠片も感じられない姿をさらしていた。
袁隗が余り見たことの無い兄の動揺っぷりに思わずといったかたちで頬を緩ませていると――
「袁逢様産まれました、産まれましたよ!!」
袁逢に付き従う側近達が言葉遣いも忘れ部屋になだれ込むように入室し報告すると。
「ほう、では兄「麗華ぁぁぁぁっっっっ」あ、兄上っ!?」
それまで座っていた椅子から飛び出すように廊下に出て、眼にも留まらぬ速さで我が子と愛妾が待つ部屋へ駆け抜けていった。
「まったく兄上は、では私達も向かうとするか」
「袁隗様、実は…」
「どうした?――まさか、麗華様が!?」
………
……
…
「麗華っ!」
ダンッと音を立て部屋になだれ込むように入った袁逢に愛妾である麗華は微笑みながらその顔を、大事そうにその腕に抱えられている我が子から袁逢に向けた。
「お、おぉぉ…」
少しふらつくような足取りで彼女の側へと歩み寄る、体調を心配していた麗華の微笑みに袁逢は安心し我が子に目を向ける―――しかし子の誕生に浮かれていた袁逢は麗華の顔が血の気の引いた蒼白になっていることには気づけなかった…
「さぁ袁逢様、この子を抱いてあげて下さいませ」
「う、うむ! して、この子は男児か?いや――このように愛らしいのだ女児に違いない」
顔をとろけさせ我が子に満面の笑みを浮かべながら性別を予想する袁逢に麗華は微笑んだ
「フフフッ、袁逢様この子は男の子ですよ」
「おおっ男児であったか、我が勘もあてにならぬな」
笑いながら袁逢はそう言ったものの、この時代の名のある者たちの大半を女がしめていたため、袁逢の予想は無理からぬものであった。
「さて、お前の名を決めねばな――、お前の名は『袁本初』真名は『麗覇(れいは)』だ!」
………
……
…
「さて、お前の名を決めねばな――、お前の名は『袁本初』真名は『麗覇(れいは)』だ!」
父親らしき男がそう告げる
(へぇ、袁本初か変わった名…、え!?袁本初!それってあの有名な三国志の袁紹のことか?ってか真名って何!?)
自分の名を聞いてパニックになる俺――前世日本人の袁本初はここが恋姫†無双という原作があることをまったく知らずに産声を上げた
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