ワールド・エゴ 〜世界を創りし者〜
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parallel world8-『萃まる神々』-
ましろは、ルークから授けられた真偽の力を振るって、闇の獣達を屠り続けた。
タツの『言霊』が多大なる軍勢を蹴散らし、アッシュの魔術がその敵意を焼き払う。
皇影と薄葉の剣がその意志を斬り捨て、一誠の操る重力がその肉体を押し潰す。
闇の獣達が放つ攻撃は悉く里奈に打ち消され、次の瞬間には亜紗の闇の珠に呑み込まれた。
正に蹂躙だ。闇の獣達は抗いようも無く消滅していく。
ましろ達が訪れた世界にも、やはり闇の獣達は出現していた。
この世界は、今回の『用事』に必要不可欠だ。堕とされる訳にはいかない。
故にましろ達は闇の軍勢に総攻撃を仕掛け、この世界を奪還した。
「これで終わりですか?」
「はい、そうですね。見た所生き残りは居ないようです」
薄葉の質問にアッシュが答え、更地と化した近辺を見渡す。
ましろ曰く、ここは人の全く近づかない地域らしく、犠牲の心配も無いようだ。
「で、ましろさん。ここに何の用なんだ?」
「ああ、説明してませんでしたね」
一誠の疑問に、ましろが『そういえば』といったように答える。
「今回の援軍はあなた方だけではないのです。マスターが別で動いて、メンバーを集めています」
「マスター……確か、ルークという名だったよな?」
「はい。そのマスターとの合流地点に、この世界を設定していたのです」
皇影の質問に答えつつ、東の空に視線を向ける。
--コロッセオ。
イタリアの首都、ローマに存在するその建造物こそ、ルークが指定した合流地点だった。
なぜそこを指定したのかは全く不明だが、何か意図があるのだろう。
ましろ達は、とにかくそこへ向かう事にした。
◇◇◇
ライトから放たれた雷が、闇の獣達を焼く。
闇の軍勢が一気にユキへと雪崩れ込むが、その牙がユキへ届く事は無く、そして軍勢は文字通り消し去られた。
リュートの使役する伍の鬼が闇を引き裂き、フィントの操るビットが獣達の首を刈り取った。
イタリアの首都、ローマ内部。コロッセオ闘技場の中心に、四人は集まっていた。
全員、アルマによって集められた強力な異能者達である。
ユキに至っては、かの不存在存在《アスリウ》と同じく、『存在しない存在』だ。その力は常識を逸している。
だが、その四人を集めた本人は、その場には居なかった。
「……で、追い払ったはいいけど、援軍ってのはいつ来るんだよ」
「焦るな。もう近い」
ライトの愚痴にユキが答え、西の空を見た。
ただの人間では何も映らないが、ユキの視界にはしっかりとその八つの影が映っていた。
ユキは、ルークに呼ばれた訳では無い。未来を読み取り、その未来を変えるべく、自ずと現れたのだ。
だから、ルークからは何も聞いていない。しかし、すべき事は分かっていた。
数秒後、やはり八つの影はコロッセオに到達した。
「……どうも。状況は分かっていますね?」
「ああ、要件は分かっている」
ましろの問いかけに、ユキが答える。
ましろは頷くと、自らの主を呼ぶ為、懐から宝玉を取り出す--
「呼ぶ必要はないよ、ましろ」
寸前で、呼び止められた。
「マスター!」
いつの間にか其処には、ルークが現れていた。
同時に、前に一度でも会った者達は一斉に違和感を感じた。
着ているものが着物調なのもそうだが、何より『性質』と雰囲気が全く違う。まるで別人だ。
「--オイ、アルマ」
「話は後にしよう。君達にはまた直ぐに動いてもらう。そろそろ彼らが来る頃だ」
フィントが言いかけるが、ルークはそれを片手で制し、空を見上げ、とある一点--太陽を見つめた。
--ふと、太陽の中心に亀裂が入った。
「マスター……あれは?」
「神話の神々だよ。僕の友人--いや、友鬼といった方が良いかな?--に頼んで、『萃めて』もらった」
亀裂は、少しずつ広がっていく。
亀裂の中から、一本の手が伸びた。
その手は亀裂を押し広げ、そして広がった亀裂からはもう一本の腕が伸びる。
二本の腕は亀裂を裂き、さらに広げていった。
たちまち亀裂は巨大な穴となり、その中の存在は、その一歩を踏み出した。
「--天空神・ゼウス。戦神・オーディーン。雷神・トール。軍神・タケミカヅチ。創造神・伊邪那岐大神。
太陽神・天照大神。……まだまだ居るね、名のある神のオールスターだ」
「……なぜ……ここまでの神が……?」
「彼らとて、死ぬのは御免だという訳だね。説得したら、アッサリと協力してくれる事になったよ」
「たわけ、誰が好き好んで貴様のような胡散臭い男に力を貸すものか」
「おっとゼウス様。それ僕じゃないです。っていうか『6番目』は何をしたんだ……」
「神の座に侵入して全兵を拘束、解放して欲しくば協力しろ。との事だ。貴様がいう6番目とやらがした事はな」
「……うわぁ……下衆だ……何やってんだあの馬鹿……」
頭を抑え、頭痛を堪えるようにルークが呻く。
少なくとも、前まではこんな性格ではなかった筈だ。人の迷惑など知った事ではない傍迷惑な奴だった。
それが他人に対する迷惑に悩んでいるなど、以前彼と会った者達にとっては奇妙な光景だった。
「……っと、いけないいけない。時間が無い。よく聞いてくれ」
アルマはましろ達の方に向き直ると、真剣な声色で話し始めた。
「……これから、戦争が始まる。拒む者と、受け入れる者の戦争だ。この戦争には、文字通り全世界の存続が掛かっている。
僕は断固として拒む。君達も拒む者だ。ならば戦おう。今、盲目白痴の神は目覚めようとしている。
今一度アザトースを深い眠りへと誘うのだ」
謳う様に告げ、ルークは言った。
「--大切な物を守る為に、立ち上がれ」
第一幕『千年夢想』
-完-
世界転生まで、あと54時間。
《滅びの依り代》の完成まで、あと52時間。
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