シャンタウゼー
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
2部分:第二章
第二章
ポップコーン屋に着いた。見れば赤い屋根のごく普通の店だ。何の変哲もない。
「普通の店だな」
「そうだな」
彼等はそう話をする。店にいるのは一人の老人だった。赤い肌に皺だらけの顔をした彫の浅いアジア系の顔をしている。如何にもといった感じのネイティブの老人だった。
「おじさん」
四人はその老人に声をかけた。
「ポップコーン貰えるかな」
「一人一つに」
「あいよ」
老人は笑顔で四人に応えた。そしてすぐに袋に入れたポップコーンが差し出された。四人はそれを受け取りすぐに食べはじめた。
「おっ」
「これは」
四人はそれを食べてすぐに笑顔になった。その理由ははっきりしていた。
「美味いな」
「ああ」
笑顔のまま話を交える。彼等は今食べているポップコーンを気に入ったのだ。
「こんな美味いポップコーンはな」
「はじめてだな」
「おじさん」
四人は老人に顔を向けて声をかけた。
「凄く美味いよ」
「どうやったらこんなに美味しくできるんだよ」
「ははは、それは当然だよ」
老人は四人に笑って応えてきた。屈託のない笑顔が皺により表わされていた。
「当然?」
「それどういうこと?」
「だってわしはずっととうもろこしを扱ってきたからね」
老人は四人に対して語る。
「ずっとっていうとさ」
「子供の頃からか」
「ははは、それより前からさ」
四人に対してまた言った。
「それよりって」
「おじさん生まれていないんじゃ」
「生まれる前からだよ」
この言葉は四人にとってはわからないものだった。言葉を聞いてもどうにも首を傾げてしまう。老人が何を言っているのかわかりかねていた。
「どういうこと、それって」
「生まれる前からって」
「生まれ変わったっていうのかい?前世とかで」
「そうでもないんだよ」
老人は生まれ変わりは否定した。それを言われると四人は余計にわからなくなった。
「何かさ」
「そう言われると余計にわからなくなったけれど」
「知恵じゃよ」
老人の次の言葉はこうであった。
「知恵?どういうことなのかね」
黒人の少年は老人に問うた。
「俺完全にわからなくなったけれど」
「そうだよな」
「全くだぜ」
他の三人も同じである。その彼等に老人はまたしても述べた。
「わし等はな。ずっとこの大地で暮らしてきた」
「ずっと?ああ、そうか」
茶髪の少年はここでやっとわかった。会心したように頷く。
「おじさんネイティブだもんな」
「ていうとだ」
金髪の少年も合点がいった。やっとといった感じであった。
「あれか。部族の」
「その通り」
老人の笑みが変わった。好々爺の笑みだった。
「はっきり言うとあるものをほんの少し入れてはおるな」
「あるもの?」
「調味料じゃないよな」
これも彼等にはわからない。何が何なのか。
「じゃあ一体」
「何なのか」
「これじゃよ」
老人が笑顔で出してきたのは一輪の小さな花だった。それは。
「タンポポ?」
「それを入れていたのか」
「そうなのじゃよ。ほんの少しだけな」84
それが老人の言葉だった。話はそういうことだった。
「入れたのじゃよ」
「成程ねえ」
「それで美味いのかな」
「わしの部族ではな。タンポポを大事にするんじゃ」
そう少年達に語る。
「ある理由からな」
「理由?」
「また何で」
「古い話じゃよ」
老人は四人に対して語りだした。静かな笑みと共に。
「よければ話すが。いいかの」
「ただならな」
「聞かせてもらいたいな」
「ははは、金なぞいらんよ」
軽やかに笑いながら四人にまた言った。
「もう貰ったしな。では話させてもらうぞ」
「ああ」
「頼むよ」
四人はポップコーンを食べはじめながら老人の話を聞きはじめた。何故かポップコーンが余計に美味く感じだしそれと共に寂しい愛を感じさせられていた。
ページ上へ戻る