ロンジー
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第一章
ロンジー
ミャンマーの首都ヤンゴン郊外の町の商店街を歩きつつだ、グン=サン=スー=チーはうんざりしてだ、友人のミル=ハス=シー=トーにこんなことを言った。二人共黒のロングヘアで日に焼けた顔をしている。スー=チーの目ははっきりしていて大きくシー=トーの目は切れ長で睫毛が長い。二人共背は一六〇位ですらりとしている。胸はシー=トーの方が幾分大きいだろうか。着ている服は通っている高校の制服である。
「暑いわね、今日は」
「特にっていうのね」
「ええ、ミャンマーの夏は暑いけれど」
「確かに今日は暑いわね」
「半袖でもね」
それでもだというのだ。
「全然涼しくないわね」
「日差しは強くて」
それにというのだ。
「湿気は多くて」
「毎日夕方になるとスコールが降って」
「そのせいでね」
湿気も凄いというのだ。
「もう滅茶苦茶暑いわね、今日は」
「本当にね、しかしね」
「しかし?」
「この暑さを昔皆は平気だったのかしら」
「そうなんじゃないの?」
シー=トーはこうスー=チーに答えた。
「やっぱり」
「昔は今より暑かったのよね」
「いや、暑さは一緒でしょ」
こう返したシー=トーだった。
「昔も今も」
「そうなの」
「ミャンマーは昔も今も暑いわよ」
このことには定評がある国だ、そしてそのことは二人もわかっている。だから本来は言うまでもないことであるがだ。
それでもだ、二人は言わずにはいられなかった。
「この暑さもね」
「昔から一緒で」
「それでもよね」
「皆この夏も生きていたのね」
「どうやっていたのかしら」
「それが不思議っていうのね」
シー=トーはスー=チーに返した。
「あんたは」
「不思議も不思議よ」
スー=チーはタオルで汗を拭きつつ答えた。
「こんな暑い中で平気だったのかしら」
「半袖で生地が薄い服で」
「ズボンでラフな靴」
「精一杯涼しくしてるわよね」
「けれどそれでも暑いのよ」
また暑いと言うスー=チーだった。尚二人の名前はそれぞれ名字がない。ミャンマー人、ビルマ族の名前の特徴で名前だけなのだ。
「私は」
「今日は特に」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「何か解決案ないかしら」
「ないんじゃないの?」
シー=トーはあっさりとだ、スー=チーに答えた。
「扇風機お家にあるでしょ」
「クーラーはないけれどね」
ない理由は簡単だ、ないからだ。
「扇風機はあるわ」
「じゃあお家に帰ったら扇風機にあたることね」
「それで涼めっていうのね」
「氷でも食べて」
それもというのだ。
「涼しくなることね」
「結局そういうことしかないのね」
「というか他にないでしょ」
かなり率直にだ、シー=トーはスー=チーに話した。
「涼しくないたいのなら。何なら裸になる?」
「そんなこと出来る筈ないじゃない」
裸と言われてだ、スー=チーはシー=トーにむっとした顔になって言い返した。
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