長命鎖
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第四章
「聴くのじゃ」
「?祭りの音楽か?」
「そういえばそろそろはじまるな」
「演奏出来る人達も用意してるしな」
「それじゃあ今からか」
「その音楽を聴けっていうのか」
「いや、違う」
そうではないとだ、長老は断りを入れた。
「音楽もよいがもう一つあるのじゃ」
「何か爺様のもう一つって多いな」
「だよな、何かって言うよな」
「そうだよな、今回もだしな」
「じゃあ何だ、それって」
「そのもう一つって」
「耳を澄ませるのじゃ」
長老は微笑み若者達に言うのだった。
「よくな」
「よく?」
「よくか」
「これからか」
「耳を澄ませて聴けってのか」
「これから」
「そうじゃ、今からな」
こう言ってだ、長老は目を閉じた。そして。
若者達も沈黙し長老が言う通り目を澄まさせた。すると。
彼等の耳に音楽が入って来た、その音楽はというと。
普通の音楽ではなかった、楽器で演奏され歌われるものでは。その音楽はというと。
銀の飾り、少女達が身に着けているそれがだった、彼女達が動く度に動きそして触れ合って。
奏で合っていた、それが長老の言う音楽だった。その音楽を聴いてだった。若者達は目を瞠ってそのうえで言った。
「ああ、これがか」
「これが爺様が今言う音楽か」
「成程、これがな」
「いい音楽だな、確かに」
「楽器でも歌でもないけれどな」
「これも音楽だな」
「それもかなりいい」
若者達は耳を澄ませつつ感銘して言うのだった、そのうえで。
長老にだ、あらためて言った。
「わかったよ、こういう音楽なんだな」
「確かにいい音楽だな」
「いや、爺様の言う通りな」
「素晴らしい音楽だな」
「この音楽も聴いてな」
そのうえでとだ、長老は目を伏せたまま若者達に話した。
「わしは長生きしているのじゃよ」
「そうした意味でも長命鎖なんだな」
「その音を聴かせても長生きさせてくれる」
「錠前で命をつなぎ止めるだけじゃない」
「こうした意味でもあるんだな」
「そうなんだな」
「そうじゃ、皆も聴くのじゃ」
長老はまた若者達に言った。
「そして長生きするのじゃ」
「ああ、爺様みたいにな」
「そうさせてもらうな」
「そして長生きするか」
「爺様みたいにな」
若者達も応えた、そしてだった。
その音楽も楽しみ心を安らかにさせるのだった、その音楽には確かに命を癒すものがあった。その音楽に長老と共に楽しんだのだった。
長命鎖 完
2015・4・26
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