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インディアン=ドレス

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第三章

「お兄ちゃんがいつも言っているね」
「ええ、人のお話はね」
「まずは聞くこと」
「それからよね」
「何につけてね」
「そう、だからね」
 まさにだ、それ故にというのだ。
「聞くんだよ」
「それじゃあ」
「これからお話を聞いて」
「ネイティブの人がどんな人なのか」
「確かめましょう」
「まあ怖い人じゃないから」
 このことをだ、セオドアはまた妹達に話した。
「安心してね」
「うん、じゃあね」
「今からね」 
 中に入ろうと話してだ、そしてだった、
 二人は兄に応えてだ、そのうえで。
 三人で先生の家の中に入った、セオドアがチャイムを鳴らしてそうして挨拶をしてから中に入った、すると普通のアメリカ東部の家に入ると。
 中からごく普通のだ、アジア系の顔の中年の男の人が出て来た。優しい顔立ちで背は一七五程だ。がっしりした身体つきでだ。
 髪の毛と目の色は黒だ、鼻は低く目尻に皺がある。服は普通の洋服だ。
 その人と一緒にいるやはり黒髪に黒い目の優しい感じの中年のアジア系の女の人を見てだ、ジョーンもエマも言った。
「何かね」
「普通の人よね」
「日系の人とも中国系の人ともね」
「一緒よね」
「ごく普通のね」
「アジア系の人よね」
「当たり前だろ?ネイティブの人はアジア系なんだから」
 人種的にとだ、セオドアは二人に答えた。
「日系の人や中国系の人とそっくりで当然だよ」
「それもそうね」
「言われてみれば」
「そうよね」
「同じだから」
「そうだよ、けれど先生はネイティブだから」
 セオドアは二人にまた言った。
「日本語も中国語も喋らないさ」
「ははは、アパッチ族の言葉は使えるけれどね」
 低いバスの声でだ、先生も笑って言って来た。明るく優しい笑顔だ。
「日本語も中国語も知らないよ」
「そうなんですね」
「やっぱりアパッチ族の方なんですね」
「あのジェロニモの」
「あの部族の人なんですね」
「そうだよ、とはいっても僕はずっとここに住んでいるよ」
 このボルチモアにというのだ。
「カレッジはここでね」
「そうなんですか」
「じゃあ長い間ここに住んでおられるんですか」
「そうだったんですね」
「ボルチモアに」
「趣味はホッケー、スポーツはそっちをしていて音楽はゴスペルだね」
 先生は二人に笑って話していく。
「妻はフィリピン系、子供達はハーフになるよ」
「別に斧とか持ったりしないで」
「普通に暮らしておられるんですね」
「だからさっき言っただろ、アパッチ族でも西部劇とは違うんだ」
 このことをだ、セオドアはまた二人に言った。話をしながらそのうえでだ、一行は先生の奥さんにリビングに案内されてだった。そうして。
 奥さんの作ってくれたハンバーガーやサラダ、ポタージュを楽しんでいた。その中で妹達に言ったのである。
「先生だって平和に暮らしてるんだよ」
「そうなのね」
「別に部族の中じゃなくて」
「普通になの」
「暮らしておられるのね」
「だから僕が何回も言ってるじゃないか、騎兵隊とかね」
 それこそというのだ。 
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