ルイズが赤い弓兵を召喚
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召喚
前書き
二、三話で終わる予定。
つまり急展開あり。
そしてテンプレあり。
勿論ご都合主義あり。
どうして……?
少女の疑問は聞こえない
お願い……!
少女の願いは届かない
「ミス・ヴァリエール、もう……」
ピンク色の髪が汗で額に張り付き、肩で息をする少女に声がかかる。
先程から繰り返し行われているサモン・サーヴァントは、既に十の失敗を超えいる。
それを見守る男子教師の顔からは焦燥と諦めの色が。
彼からさらに、少し離れた所にいる級友達からは嘲笑が、その少女に向けられている。
しかし、その全てを受ける少女は、諦めない。諦められない。
あらゆる魔法で爆発を引き起こす少女にとって、『何も起きない』サモン・サーヴァントはいつもと異なる結果を―――成功を引き起こしてくれるはずなのだ。
その、誰にも理解されないどこか確信めいた想いを胸に。
『ゼロ』の呼び名を返上すべく、また自身の努力を形にすべく、再度息を整え杖を振るう。
絶対に、諦めない!
そうして。
何度目かになる彼女の声にならない慟哭が、ひとつの魔法を成功させる。
眩い光が辺りを照らす。
叫び声や悲鳴が聞こえる中、少女は必死で目を凝らす。
閃光が収まると、そこには一人の男が眼を閉じたまま立っていた。
浅黒い肌に白い髪。
背が低めである少女が見上げるほどの身長。
赤い外套と鎧を身に纏うその姿はまるで騎士のよう。
しかし何より。
そこに在るだけで感じる異様な存在感が、少女にその男が何者なのかを印象付ける。
人の形であるのに、けれど本能が、その男を人でないと訴える。
人を超越した存在だと。
「誰だ?私なんぞを召喚大馬鹿者は」
男の声は不機嫌に。
少女と周りの困惑を他所に、その声は続く。
「まあ、こうして呼ばれたからには仕方なし。それで、私のマスターとなった憐れな魔術師は何処だ?」
誰も言葉を発さない中、男はため息をついた。
「無理に名乗りを上げる必要はない。周囲に自身の無能をさらけ出すことになるからな」
口元を皮肉気に歪め、腕を組み、そして杖を振るった体勢のままの少女をチラリと見ながら出た台詞は、予想外の展開の連続で固まっていた彼女を再起動させるのに十分であった。
「なん……ああああ!」
なんですって!?
と叫ぶはずの言葉は絶叫となってその口から放たれた。
右手の甲から発した熱が、鋭い痛みを伴って少女の反論を封じたのだ。
「ううぅ……なに……よ……これぇ……」
その言葉を最後に彼女はその場に膝を付き、そして気を失った。
――――――――――――
目が覚める。
見慣れた天井。
体を起こし、ボーッと、いつも通りの、ベッドの上からの景色を眺める。
あれ?しかし外が薄暗い。
一体何時だ。
早くに起きすぎたのだろうか。
今日の予定は何だったっけ。
「!」
そうだった!サモン・サーヴァントをしたら赤い男が出て腹が立って右手がすっごく痛くなって……。
右手はどうなったのだろう。
見ると、そこには見たことのない、赤い印がついていた。
「令呪だ」
「ひゃあ!?」
驚いた。
変な声も出た。
突如現れた男はこちらの反応が面白かったのか、ニヤニヤしながら私を見下ろしていた。
あの赤い男だ。
「あ、あ、あんた……!」
「お早う、マスター。不本意ながら先程君に召喚された使い魔だ。あぁ、先に言っておこう。手違いかもしれんが、間違いではない。残念なことに、マスターの右手にあるその令呪が何よりの証。それを持つ限り、君は私のマスターであり、私は君のサーヴァントだ」
えーとえーと……。
「へ……使い魔?」
我ながら情けない声が出た。
「理解したようで何より。私のことは『アーチャー』と呼んでくれれば良い。それと私を召喚した後倒れた君をここまで運んだのはコルベールという教師だ。あとで礼を言っておくといい」
男……アーチャーはそれだけ言うと腕を組み口を噤んだ。
え?なんなのこの態度。
理解してないっての。
残念って言った?
貴族である私に向かって何なのこの態度。
えーと……、とりあえずこれはしっかり分からせてやるしかないわね。
どちらが上なのかってことを!
「あんt「ところでマスター」……」
こいつ……態と被せてきたわね?
私の言葉を遮るなんていい度胸じゃない。
いや、今更か。
「私はまだマスターの名前を聞いていないのだがね」
……なによそのしたり顔。
「よ、よく聞きなさい! わたしの名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! あんたのご主人様よ!」
――――――――――――
「令呪とはサーヴァントに対する絶対命令権だ。と言っても万能なものではない。与える命令が明確で瞬間的なものほどその効力は強くなるし、曖昧で長期間なものほど弱くなる」
頼んでも無いのに説明を始める偉そうな使い魔。
こちらの名乗りを
「了解した、マスター」
の一言で済まし、
「さて、ではマスターが気になっているその右手の印について説明しよう」
ときた。
無礼だわ!
他に言うことがあるでしょ?
まったく、これだから平民は。
「例えを出そうか。そうだな……」
「ちょっと待ちなさい!」
語り続ける男にやっとのことで待ったをかける。
もう慌てる時間よね?
「どうしたマスター。大声を上げるなぞ、淑女としてはいただけない所だが」
「黙りなさい! いい!? 貴族である私が名乗ってやったのよ?だからあんたも『アーチャー』とか偽名を使わず『ギュルルルゥ』……」
顔が、熱い。
もうちょっと空気読んでよ私のお腹。
使い魔から呆れたような、笑いを堪えた様な声がかかる。
「昼食の時間も君はそこで惰眠を貪っていたからな。夕食には少し早いが、食堂にでも行って何か軽く胃に入れるといい。腹ペコ貴族様?」
そんな使い魔の態度に腹が立っていた私は、召喚の時痛いほど感じていた彼の存在感(プレッシャー)が、殆ど感じないほど小さくなっていることに全く関心を示す事が出来なかった。
あるいは、このやり取りこそ彼が意図したものなのかもしれなかったが。
後書き
ルイズさんはコントラクト・サーヴァントを忘れているようです。
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