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美しき異形達

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第四十五話 博士その二

「一体」
「それはわからないけれどね」
「誰に言われたのかをかよ」
「そうだよ、僕達は何処からか生まれて姿を見せていない相手に言われて」
 そして、というのだ。
「君達のところに来ているんだよ」
「あんた達も知らないってんだな」
「親とかはいないんだ」
 怪人はこうも言った。
「誰もね」
「へえ、あたし達と同じか」
 怪人の話を聞いてだ、薊はこう言った。
「それじゃあ」
「そうなるんだね」
「面白い一致だな、そりゃ」
 また言った薊だった。
「あたし達と同じ孤児ってな」
「そうだね。それでもね」
「今はそういうこと問題じゃないな」
「そうだよ、僕達の仕事は君達を倒すことだから」
 それで、とだ。怪人は言ってだった。
 空中から薊を見下ろしながらだ、言った。
「このまま一撃離脱の攻撃をしても仕方ないから」
「だからかよ」
「切り札を出すよ」
 今ここで、というのだ。
「いいね」
「面白いな、出してみなよ」
 薊は両手に七節棍を持ち身構え上を見上げつつ応じた。
「あたしも破ってやるさ」
「それじゃあね」 
 怪人は薊の言葉を受けてだった、そのうえで。
 その目を赤く光らせてだ、そこから。
 両手に何かを出して来た、それはカミキリ虫の歯そのままの形をした刃だった。しかもその刃はというと。
 一つではなくだ、幾つも出してだった。手の指と指の間に挟んで持ってだ。そしてその刃を上から薊に向かって投げだした。
 薊はその刃をかわす、そしてその横では。
 蛾の怪人が手に何かを出していた、やはり空に留まりつつ。それが毒蛾の色をした禍々しさを漂わせるボールだった。
 そのボールを見てだ、向日葵はすぐに察して言った。
「毒ね」
「流石に察しがいいわね」
 怪人は向日葵のその言葉を受けて笑って返した。
「伊達にこれまで戦ってきた訳じゃないわね」
「うん、毒蛾だしね」
「そうよ、毒蛾だからよ」
「毒のボールね」
「私の身体にある毒の鱗粉を集めたものよ」
 まさに毒蛾のそれをというのだ。
「それも只の毒蛾のものではないわ」
「普通のよりもずっとね」
「強いわよ」
 その毒が、というのだ。
「それこそ鯨でも倒せる」
「私が受けたら」
「終わりよ」
 まさにそれで、というのだ。
「覚悟はいいかしら」
「覚悟はいつもしてるから」
 この状況でもだった、向日葵はいつもの向日葵だった。明るくしかも天真爛漫で陰を感じさせるものが全くない。
「だからね」
「怯えないのね」
「怯えたら負けっていうから」
 このことかも言うのだった。
「そうならない様に気をつけてるの」
「それで、なのね」
「毒を出されても」
「怯まないのね」
「これまでも何度かあったし」
 毒を持っている相手との闘い、それがというのだ。 
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