八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十七話 日本の花その八
「自分のお金は自分で稼がれると」
「八条家からの支援をですか」
「医者になられてからは断られていました」
「だから親父の生活費は」
「全てあの方がご自身で稼がれていました」
「結構以上でしたよね」
何しろ渾名がブラックジャックだ、年に億単位の収入を得ていたことも有名だ。僕にも寒い思いもひもじい思いもさせなかったしお小遣いも充分だった。
「けれど親父は」
「そうでした」
医者になってからはというのだ。
「ご自身で全てを稼がれていましたので」
「そうなのですね」
「ですから」
「ですが僕は」
「そこで止様に及ばないとですか」
「自分で稼いでますからね」
今もだ、例えそのお金で豪遊していてもだ。
「僕なんか」
「いえ、管理人もです」
「殆ど畑中さん達がしてくれていますけれど」
「義和様は義和様の出来ることを充分されていますので」
「それでなんですか」
「充分です、ですから」
お給料もというのだ、管理人としての。
「それだけのものがあります」
「だといいですけれど」
「はい、止様に劣るということはです」
「思わなくていいんですね」
「そうです、全く」
こう言うのだった、そしてだった。
僕にだ、畑中さんはこうも言ってくれた。
「お気になさらずに」
「親父に劣ってるって思うこともたい焼きや僕自身のことも」
「全てです」
「そうなんですね」
「八条家には資産があり義和様は義和様です」
「僕は僕ですか」
「はい」
その通りだというのだ。
「左様です」
「それじゃあ」
「肩肘を張らず」
そうしてというのだ。
「義和様のままでいいのです」
「やっていって、ですね」
「そうです、これからも」
「それでいいんですね」
「無論人は過ちを犯してしまう生物でありますから」
「間違えることもですね」
「あります」
これはあるというのだ、だが。
ここで終わる畑中さんじゃない、それでさらに言うのだった。
「しかしその際は」
「畑中さん達がですか」
「謹言させて頂きますので」
「お願いします」
「その様に」
こうした話もした、そしてその日曜の夕方にだ。
僕達はその八条神社に行った、昼には雨が降ったがそれが止んで地面はまだ濡れているがであるがだ。
空は青さを戻していた、その青空を見上げてだ。
僕は笑顔になってそのうえで皆にこう言った。
「かえってね」
「雨が降ってなのね」
「うん、雨上がりだから」
それでとだ、僕は詩織さんに応えつつ話した。
「紫陽花には丁渡いいよ」
「そうよね」
「紫陽花には雨上がりが似合うの?」
ニキータさんは僕のその話を聞いて問うてきた。
「そうなの」
「うん、紫陽花って六月のお花で」
「六月はなの」
「日本では雨が多いからね」
「それでなのね」
「雨上がりの時が特にね」
「合うお花なのね」
「そうなんだ」
こう僕に話した。
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