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剣を手に

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2部分:第二章


第二章

「是非」
「そうか。それではだ」
「はい、では今夜に」
 こうしてだった。話は決まった。
 ベイオウルフはこの日王宮において相手を待った。その彼にだ。
 兵達は怪訝な顔でだ。彼に声をかけるのだった。
「あの、本当にです」
「宜しいのですか?」
「相手は強いですよ」
「それもかなり」
「強いか」
 ベイオウルフは冷静な声で応えたのだった。
「そうだな。巨人だからな」
「俺達の同僚もかなり食われてますし」
「騎士の方もです」
「多くの人間が食われてますけれど」
「それでもいいんですか?」
「その巨人を倒す為にだ」
 その為にだとだ。ベイオウルフはまた言った。
「俺は今ここにいるんだ」
「じゃあいいんですか?」
「本気でその巨人を倒すんですか」
「グレンデルを」
「絶対にな。倒す」
 こう言ってだ。それでだった。
 彼は肉、干したそれを食いながら待っていた。そしてだ。
 程なくだ。向こう側から叫び声が聞こえてきた。
「来たぞ!」
「あいつが出て来たぞ!」
「グレンデルだ!」
 こうだ。兵達の声がしてきたのだ。
「あいつが来た!」
「こっちだ!」
「何とかしろ!」
 その声を聞いてだ。ベイオウルフは。
 その手に剣を持った。その剣を見てだ。
 周りの兵達はだ。驚いて言うのだった。
「何ですか。その剣は」
「随分大きいですけれど」
「俺達程の大きさですけれど」
 見ればその剣は異様な大きさだった。兵達程の大きさでベイオウルフが持ってもだ。全く遜色ないまでのものだった。その剣を持ってだ。
 彼は叫び声の方に向かう。その動きは。
 とてつもなく重いことがわかる剣でもだ。彼は平然と持って行くのだった。
「大丈夫だ」
「大丈夫って」
「そんな重い剣を持ってですか」
「戦えるんですか」
「俺ならいける」
 その彼ならだというのだ。
「それにだ」
「それに?」
「それにっていいますと」
「この剣でないと駄目だ」
 王宮の中を駆けながらだ。同行する兵達に話すのである。
「あいつ相手にはな」
「その巨人には」
「グレンデルには」
「巨人には大きな剣だ」
 彼はまた言った。
「だからだ。これでいい」
「じゃあ。御願いしますね」
「とにかくあいつを倒さないとどうしようもないですから」
「そうだ。これ以上誰も死なせはしない」
 ベイオウルフも言い切る。
「この剣で。奴を斬る」
 これが彼の決意だった。その決意を以て。
 声がした部屋に来た。そこにいたのは。 
 青緑の不気味な濡れた肌に苔の付いた緑の髪、そしてぬらぬらと濡れた禍々しい牙、赤く異様に光る目を持った巨人がいた。
 腰巻だけを着けた巨人は丁度哀れな兵を一人頭から食っていた。頭は無残に砕かれ噛む度にあらゆるものが潰れ砕けていく音が聞こえる。 
 
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