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もう一度、大空に

作者:白月黒夜
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1.日々の崩壊

「どうして・・・・・・何なの、これ」
 少女の声が、全てが破壊された世界に響く。
 建物は壊れ、荒れた大地が広がり、木々が焼け落ちていく。空は赤黒く濁っている。雲が重く垂れ下がり、息をするのも苦しくなるような。人はほとんどいない。そんな酷く残酷な光景。
 そんな中、ひとりの少女が、倒れている一人の少年の側に座り込んでいた。少年はボロボロで見るに耐えない姿だった。少年からは止まることなく紅い血が流れでいる。それは少年を抱える少女の手をも紅く染めた。まるで、そこだけ色があるかのように紅い。
「ねぇ・・・・・・目を、目を開けて?・・・・・・お願い、――」
 少女が少年の名前を呼ぶ。しかし、少女の悲痛な声は少年には届かない。
 そこへ突然、白い光が舞い降りてきた。白い光は人の姿をしていた。光っている訳ではない。その人物は、着ている服も、軽く跳ねている髪も真っ白だった。
「あーあ。簡単に壊れちゃった~。もう少しくらい楽しめるかと思ったんだけどね~」
 場違いなほどに明るく、楽しそうに笑いながら光は言った。それは無邪気な子供のようで、はたまた狂ってしまった人のようで。
 少女はゆっくりとした動作で光の方へ顔を向けた。その少女の目は、暗く、闇の底を覗き込んでいるかのようだった。
「あなたが・・・・・・?あなたが彼を・・・・・・みんなを殺したの?」
 その声は酷く枯れていた。少女がやっとのことで口にした問を光は
「んーまぁそうだねー。・・・・・・でもこの世界の彼らは全然だったなー。この世界じゃ何もなかったみたいだし?リボーン君やヴァリアーのザンザス君もほとんど一般人みたいなものだったし」
 と先ほどと同じように、楽しそうに、けれどどこかつまらなそうに呟いた。表情は変わらずえがおだった。知らない名前やよくわからないことに少女は顔をしかめていた。
「この世界の彼は面白くなかったや。あっという間にやられちゃってさ~」
 光は、否、光を纏った白い悪魔は一人で喋っていた。少女の憎しみのこもった視線を受けながら。それを分かっていながら、より一層愉しそうに話す。
 世界だの何だのと、少女には理解できなかったが、ただ一つだけ分かることもある。それは、この人物が大切なものを奪ったのだということ。少女にはそれだけわかれば十分だった。
「そういえば、この世界での彼の大切な宝物は君なんだねー。もうこの世界も終わったし、ここで一緒に君も、殺してあげるよ。・・・・・・彼と一緒のほうが嬉しいでしょ?」
 そう言いながら、悪魔は手を少女の前に突き出した。少女はそれをただ睨みつけることしかできない。悪魔は心底愉しそうに目を細めた。
「許さない・・・・・・。絶対に・・・・・・」
 少女の頬を透明な雫が伝う。それはむき出しになった地面に落ち、少しだけ染みをつくった。
「まぁ、君も災難だったね?彼の傍にいたせいでこんなことに巻き込まれて。フフッ。・・・・・・じゃあね、この世界の彼の大切なモノ」
 光が少女に降りかかった。少女は最後まで白い悪魔を睨みつけていた。
 自身の体から流れ出ていく濃い紅をその瞳に映しながら、少女は願う。

――どうか、もう一度

 薄れゆく意識の中で少女は祈る。

――たとえ、どうなってもいい。どんなことになってもいい。だからどうか

 少女の最後の願いは聴き届けられるのか・・・・・・。

―――どうか、もう一度、彼と共に―――

 最後に残ったのは、息絶えた少年と彼を守るように覆いかぶさる少女の亡骸だけだった。





 「おはよう」
 学校で、教室に入ると、小さい時から聞いている声が聞こえた。ユウナ、西尾佑那はその声に振り返り、挨拶を返す。
「おはよー。今日は早いね。明日は雪か~?」
 と笑いながら言えば
「なっ!失礼な奴だな!たまたま早く起きただけだ」
 といつものように突っ込まれた。明るい茶髪は相変わらず重力を無視して跳ねている。佑那はその様子を見ながら嬉しそうに笑う。
 こんな何気ない会話ですらなぜだか嬉しく感じてしまう。
「まーたいちゃついてんのか、お前ら」
 突然後ろから声をかけられ、佑那は驚いてに振り返る。そこには黒髪でそこそこ身長の高い、メガネをかけた男子生徒がいた。
「シグレ!いきなり声かけるな!そしていちゃついてなんてない!」
「そうだよ。シグレ。勝手なこと言うなー」
 司桑煉太朗(しぐわれんたろう)。茶髪の彼と同じで佑那たちの幼稚園からの幼馴染。名前をもじって、シグレというあだ名をつけた。レンでいいのではという人もいるが、ありきたりだからという理由で却下された。
 ちなみにさっきの言葉は、佑那、茶髪の彼の順だ。
「いつも仲良く、二人一緒じゃねーか。もういっそのこと付き合えよ、お前ら」
 とシグレに呆れ半分、冗談半分で言われた。「うるさい!」、と突っ込んでいおいて、赤くなった頬を誤魔化(ごまか)すように佑那はそっぽを向いた。幼馴染三人揃って、高校生にもなって彼氏(彼女)いない歴イコール年齢である。ユウナも欲しくない訳ではい。けど、今のこの場所が一番落ち着くから他の場所を欲していないのかもしれない。
 そんな風に、いつもと変わらないいつもの会話、いつもの笑顔を交わしていた。
 今日も平和に平凡に終わると思っていた。終わってくれると思っていた。この時までは―――



 いつも通り授業を受け、隣で寝そうになっているシグレを叩き起し、昼には屋上で3人揃ってお昼を食べる。いつも通りの日々に佑那はどこか安心していた。ずっとこんな日々が続いていくと。
 それは突然終わりを迎えた。
 まばゆい光が見えたと思ったら、すでに世界は荒廃していた。ほんの数秒目を閉じていただけなのに。三人は驚きを隠せない、何が起こったか理解できない、という風に目を見開いていた。
 校内から聞こえてくるたくさんの人の声が、校舎が少しずつ崩れていく音が耳に届く。そうしてようやく我に返って、動いた。
「っ!?やばい、崩れるぞ!ここは危険だ、早く降りよう!」
 彼の声に頷き、隣で未だ呆然としていたシグレの手を引き階段を駆け下り始めた。途中でシグレも我に返り、自分で走り始めた。
 下の階へ行くと、現状が理解できていない生徒たちが不安げな声を上げながらも外へ向かって階段を下りていた。教師ですら全く分かっていなさそうな顔をしている。上の階からはだんだんと人がいなくなっていった。教師はこんな状況でもきちんと生徒を誘導しているのだから、すごいと思う。「なんなんだ!?」「地震?」「いや、違うだろ!」、と外へ向かいながらも生徒たちの騒ぎは止まない。
 混雑する階段、出入口、校門には全校生徒がひしめき合っていた。
 佑那達が玄関までたどり着いたときには、そこは騒然としていた。外の惨状を見た生徒も教師も我先にと外へ向かい走り出していた。みんながみんな早く家へ帰ろうとしていた。それは、どうやら叶わなかったようだが。
 佑那と二人はその光景にただ呆然とするしかなかった。
 外に突然降り注いだ光。真っ白な光が音もなく降ってきた。
 光が消えたその場には、ただ荒れ地が広がるのみだった。その部分だけが削がれたようになり、周りの景色から浮いていた。
 そこにいた多くの人は、文字通り、跡形もなく消え去っていた。
 声も出なかった。ただ息をのむ音と荒い呼吸音しか聞こえなかった。
 世界は一瞬の静寂(せいじゃく)の後、けたたましいサイレンが鳴り響いたかのように突如(とつじょ)騒音に呑まれた。 
 

 
後書き
 はじめましての方は初めまして。白月黒夜です。
 まだ、最初に書きはじめた方の小説は完結していませんが、書きたくなったので書いてしまいました。すみません。(読んでる人はいないでしょうが・・・)
 さて、こちらの小説はパラレルワールドのツナと主人公と幼馴染が死んで原作世界に行くというものです。
 リボーンの世界ではパラレルワールドが存在するとあったので、こういうのもありかな、と書いてみたくなりました。
 先に言ってしまいましたが、パラレルトリップです。はい。まぁ、行った後はほとんど原作通りになるかと思います。ネタバレばかりしてすみません。
 こちらの更新はだいぶ遅れると思います。すみません。
 いろいろ謝罪したところで、それでは、またお会いしましょう。  
                                          by 白月 
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