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トールと従者

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4部分:第四章


第四章

 彼等が心から謝っているのを見てだ。態度をかなり軟化させた。そのうえでだ。
 あらためて人間の家族にだ。こう言ったのである。
「この償いはどうしてくれるのだ?何かしらのものが必要だが」
「ああ、それならだ」
 ここでだ。待ってたとばかりにロキが出て来た。そのうえでだ。
 トールと人間達の間に入ってだ。しれっとした顔でこう言った。
「この子供達がトールの従者になるというのはどうだ?」
「俺のか」
「そうだ。償いとしてあんたに仕える」
 ロキはトールに対して言う。トールは腕を組みロキに顔を向けてその話を聞いている。
「償いとしては妥当ではないか」
「それは確かにそうだが」
「君達もそれでいいか?」
 ロキは人間達にも顔を向けて問うた。
「子供達を従者に差し出すということでだ」
「はい、トール様に失礼をして怒らせた償いとしてはです」
「これ以上はない位有り難いです」
 両親はほっとした顔になってロキの言葉に応えた。何しろだ。
 トールは怒ると怖い。伊達に巨人達を成敗して回っている訳ではないのだ。実際に今その怒りを見て震えあがった。だからこその言葉だった。
「ではそれでお願いします」
「是非共」
「よし、ではこれで決まりだ」
 両親の言葉を聞いてだ。ロキは安心した顔になり頷いた。
 そして今度はだ、またとールに尋ねたのである。
「あんたもそういうことでな」
「いいだろう。それではな」
「わかった。ではな」
 こうしてだ。シアルフィとスクヴァはトールの従者になった。そうしてだ。
 彼は従者達、新しくそうなった彼等を引き連れてアスガルド、神々の国に戻った。彼等は賢明で忠実でしかも俊敏でだ。彼にとって実にいい従者達だった。彼は最高の従者達を得た。
 しかしある日だ。トールはその旅で共にいたロキに尋ねたのだった。
「あの時御前は山羊の足もすぐに治したな」
「そうだがそれが何かあるのかい?」
「しかもあの家に入る前に従者がどうかと話してだ」
 そしてだというのだ、
「そうしてあの子供達は山羊の骨の髄を食べてだ」
「あんたの従者になったな」
「従者になった時も御前が間に入って話を進めた」
 トールはこのことも指摘した。
「全て御前の思い通りではないのか?」
「私のか」
「そうだ。俺に従者を与えようというのな」
 それではないかとだ。トールはロキに問うたのだった。
「それではないのか」
「さてな」
 しかしだ。ロキはだ。含み笑いを浮かべてだ。
 そのうえでだ。こうトールに返すだけだった。
「気のせいだろう。しかしだ」
「しかしか」
「よかったではないか。あんたは優秀な従者を得たのだ」
 このことはいいとだ。彼は言うのだった。
「そうだな。ならいいではないか」
「問題はないというのか」
「しかも二人だ。余計にいいではないか」
「ふん。確かにな」
 トールもそう言われると悪い気はしなかった。
「ではこのことは喜ぶべきか」
「よかったではないか。違うか」
「そうだな。では貴様に他意はないのだな」
「全くない」
 ロキは何気ない顔で嘯く。
「安心しろ。それではな」
「あの者達をか」
「大事にするのだぞ」
 その優秀な従者達をだというのだ。これがトールが従者達を得た一部始終だ。そこにロキの善意があったかどうかはわからない。しかしこのことにロキが関わっているのは紛れもない事実であり物語にも残っている。このことは確かなことである。


トールと従者   完


                      2012・2・23
 
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